初めてでも淡路人形浄瑠璃を満喫!「淡路人形座」で伝統芸能と和の文化に親しむデート

この記事では、兵庫県南あわじ市に本拠を構える「淡路人形座」の魅力についてご紹介します。公演会場は、「うずしおクルーズ」が発着する福良港に隣接しているため、淡路島南部に立ち寄るカップルならば、観劇のチャンスを作りやすいでしょう。

江戸初期から歴史を重ねた、国指定重要無形民俗文化財・淡路人形浄瑠璃を間近で観劇できます。人形浄瑠璃に初めて触れる場合も、上演前に分かりやすい解説があったり、バックステージツアーが催されたりするため、十分に楽しむことが可能。

今回は、そんな「淡路人形座」の魅力や想いについて、一緒に見ていきましょう。

人形浄瑠璃を親しみやすく今に伝える「淡路人形座」

「淡路人形座」の正面外観
▲「うずしおクルーズ」が出港する福良港に建つ「淡路人形座」

兵庫県・淡路島には、江戸初期~昭和初期に至るまで、大小さまざまな座元が存在していました。彼らは淡路島内のみならず全国を興行して回り、多くの人々に人形浄瑠璃(※1)の魅力を伝えています。
(※1)三味線の伴奏で太夫が物語を語る、日本の伝統芸能が「浄瑠璃」。浄瑠璃に合わせて人形を操る伝統芸能が「人形浄瑠璃」で、太夫・三味線・人形遣いの三業が息を合わせて演じる総合芸術である。

その中の大座の一つ、「吉田傳次郎座」の道具類を継承して、1964(昭和39)年に設立されたのが「淡路人形座」。500年超の歴史を誇る淡路人形浄瑠璃を上演している、現在唯一残るプロフェッショナル集団となっています。

ここからは、「淡路人形座」の現役座員(人形遣い)である、吉田廣の助(ひろのすけ)さん・吉田幸路 (こうじ)さんお二方にお話を伺ってみましょう。

500年超の伝統!御神事を起源に持つ淡路人形浄瑠璃

編集部

今回初めて「淡路人形座」さんにお邪魔しました。最初に、国指定の重要無形民俗文化財にもなっている淡路人形浄瑠璃の起源について、簡単にご紹介をお願いします。

吉田さん

三人遣いの人形・義太夫(ぎだゆう)(※2)・太棹(ふとざお)三味線で演じられる、淡路島を代表する伝統芸能・淡路人形浄瑠璃は、国生み神話に縁(ゆかり)の「戎舞(えびすまい)」が始まりとされ、人形を操りながら行う御神事が起源です。
(※2)義太夫節(ぶし)の略。竹本義太夫が広めた浄瑠璃の一派で、太棹三味線を奏でながら語るのが特徴。

人形浄瑠璃自体は、江戸時代に上方(京都など関西圏)で生まれて、それが淡路島にも伝来しました。それ以前、500年以上前の室町時代から、御神事として人形操りを行っていた淡路島の人々には、人形浄瑠璃を自然に受け容れる素地があったと思われ、大いに人気となります。

最盛期の江戸中期には、淡路島内に淡路人形浄瑠璃を公演する40座余りが存在したそうです。とりわけ大座になると、島外での公演も行っていて、全国に人形浄瑠璃の魅力を広めました。

新しいファン層を育てることも大切!人気のバックステージツアーも

編集部

「淡路人形座」の座員の皆さんは、どのような想いで日々公演されているのでしょうか。

吉田さん

淡路人形浄瑠璃は、こちら淡路島で500年以上も守られ、演じられてきた伝統芸能です。先人たちから受け継いだ、かけがえのない無形の資産を次世代にも確実に引き継ぎたいと思っています。

「淡路人形座」の劇場内部(客席)
▲「淡路人形座」の客席から舞台を望む。舞台との距離が近く、迫力満点の観劇を楽しめる

舞台は、演じる者と観る者とが同時に存在して、初めて成り立つ芸能です。演じる側の後継者の育成と並んで、若い世代を中心とした新しいファン層を育てていくことも、非常に大切なことだと考えます。

伝統芸能は難しい、敷居が高いという人々の先入観を払拭(ふっしょく)していくためにも、私たち座員が淡路人形浄瑠璃を楽しく、分かりやすいものにしていく継続的な努力が必要だと感じてきました。

このような想いから、皆さんに人形浄瑠璃の公演を観ていただく前に、舞台裏の見学ができるバックステージツアーも催しているんですよ。まるごと淡路人形浄瑠璃を体感できるメニューでして、おかげさまで高い評価をいただいています。

人形遣いが使用する高下駄を履いていただいたり、人形浄瑠璃の台本である床本について説明させていただいたり、伝統芸能を身近に感じていただく工夫をしてきました。たくさんの人形に囲まれながらの記念撮影もできますよ。

最古の「戎舞」が一番人気!現代語での作品作りにも取り組み

編集部

演目についても教えてください。特に人気が高いものがあれば、併せてご紹介いただけると嬉しいです。

吉田さん

先にも触れた「戎舞」が一番人気の演目です。私ども「淡路人形座」でも、最も古い形式を残した出し物であり、福の神・戎さまが登場します。

「淡路人形座」で上演される演目「戎舞(えびすまい)」の一幕
▲人気が高い演目「戎舞(えびすまい)」は、淡路人形浄瑠璃で最古の演目でもある

太鼓のリズムに合わせ、戎さまが楽しげに舞う御神事で、おおらかな心を持ち、えびす顔で前向きに生きていくという、人間の幸せの原点が示されているような作品です。

また、基本的な演目は、江戸時代から演じられてきた古典作品になります。

例えば、「玉藻前曦袂 道春館の段(たまものまえあさひのたもと みちはるやかたのだん)」や「一谷嫩軍記 須磨浦組討の段(いちのたにふたばぐんき すまのうらくみうちのだん)」、「東海道中膝栗毛 赤坂並木の段(とうかいどうちゅうひざくりげ あかさかなみきのだん)」などですね。

公式:淡路人形座「淡路人形座について/演目一覧」

最近では、若い世代にも親しみを持っていただけるように、「ももたろう」や「泣いた赤鬼」などの現代語での作品作りも意欲的に取り組んでいますよ。

「淡路人形座」で上演される演目「ももたろう」の一幕
▲現代語で演じられる演目「ももたろう」。お子さまや若年層の観劇ファンを意識している

異ジャンルとのコラボも!女性も活躍してきた淡路人形浄瑠璃

編集部

主な座員の方のご紹介をお願いします。

吉田さん

私ども「淡路人形座」の主力座員と言えば、人形遣いの吉田新九朗(よしだしんくろう)と三味線奏者の鶴澤友勇(つるざわともゆう)です。

「淡路人形座」の人形遣い・吉田新九朗(よしだしんくろう)氏▲ベテラン人形遣いの吉田新九朗(よしだしんくろう)氏

「淡路人形座」の三味線弾き・鶴澤友勇(つるさわともゆう)氏▲スター三味線奏者である鶴澤友勇(つるざわともゆう)氏

新九朗と友勇は、二人とも芸歴40年というベテラン座員でして、人形浄瑠璃の枠に留まらず、異ジャンルのアーティストとのコラボ公演などにも意欲的に取り組んできました。

また、入座11年目の女性同級生コンビである、人形遣いの吉田千紅(よしだせんこう)と太夫(たゆう)の竹本友里希(たけもとともりき)は、若手リーダーとして頭角を現しています。

「淡路人形座」の人形遣い・吉田千紅(よしだせんこう)氏
▲若手人形遣いの一人である吉田千紅(よしだせんこう)氏

「淡路人形座」の太夫(だゆう)・竹本友里希(たけもとともりき)氏▲太夫(たゆう)・竹本友里希(たけもとともりき)氏も、若手リーダーの一人

同じ人形浄瑠璃でも、男性のみで演じる文楽とは異なり、淡路人形浄瑠璃は伝統的に女性も活躍してきました。当座では、太夫・三味線・人形遣いという三業すべてに、女性が在籍していますよ。

人形遣い・新九朗さんと三味線奏者・友勇さんの技にも注目

編集部

座員の皆さんそれぞれの、こんなところに注目してほしい、というポイントなどがありましたら、お話しいただけますか。

吉田さん

人形浄瑠璃は、太夫・三味線・人形遣いの三業で成り立つ芸能です。とりわけ人形遣いは、3名で1体の人形を操りますから、個々の座員の得意演目や役どころというのは、基本的にはありません。

それでも、前出の人形遣い・新九朗は、淡路人形浄瑠璃が得意とするケレン味「早変わり」や、動物の人形を遣うことが得意です。

早変わりをお楽しみになれる演目には、「本朝廿四孝 奥庭狐火の段(ほんちょうにじゅうしこう おくにわきつねびのだん)」などがあります。

また、三味線奏者・友勇は、三味線の音で物語を描くような、力強い演奏を得意としてきました。

楽しみながら舞台を勤められるように日々稽古

編集部

座員の皆さんの稽古時・公演時の雰囲気などについても、教えていただけるでしょうか。

吉田さん

所属している座員は21~61歳までと、年齢層の幅が広いです。ベテランと若手との関係も、程よい感じだと思います。

出演の合間や、公演後に稽古をしているのですが、芝居の通し稽古だったり、鏡の前で自分の動きを確認したりなど、その時点で最も大切なことを粛々と実行していくんですよ。

「淡路人形座」の稽古風景
▲いつも真剣勝負の稽古風景。高下駄を履く人形遣いさんも

稽古中には、時として厳しい指摘が入ることもありますが、若手もそれによく応えており、公演本番では、座員たち全員が楽しみながら舞台を勤めています。

20~30代のカップルも増加!迫力ある舞台間近での観劇も魅力

編集部

公演会場は、基本こちら「淡路人形座」さんの劇場、という理解でよろしいでしょうか。また、観劇に訪れるお客さまは、どのような方が多いのですか。

吉田さん

はい、主な活動場所は、常設館であるこちら「淡路人形座」です。

収容人数は179席で、お客さまと舞台が物理的にも近く、太夫の語りや三味線の音色、人形の動きを間近にご覧になっていただけます。圧倒的な迫力がありますし、初めての観劇でも親近感を感じながら、舞台をお楽しみいただけるでしょう。

それに加え、小学校や中学校などへの出張公演も、精力的に行っていますよ。

お客さまは、60~70代の方が多い印象ですが、昨今はSNS投稿の効果もあるようで、20~30代の若年層カップルも目立ってきました。

淡路島を観光で訪れて、福良港から「うずしおクルーズ」を利用される際に、「淡路人形座」にもお立ち寄りいただいた、という方も散見されますね。

SNSも効果的に利用!今後は認知度向上と後継者育成に注力

編集部

「淡路人形座」さんとしては、今後どのようなビジョンで活動をされたいとお考えですか。

吉田さん

「淡路人形座」は、まだまだ全国的な認知度が低いですので、公式SNSを活用してのショート動画発信を行うなど、まずは皆さんに知っていただけるように努めています。

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また、日本の伝統芸能のみならず、さまざまな異ジャンルの芸能とのコラボレーションなどを通じて、淡路人形浄瑠璃の古くて新しい魅力を多くの皆さんにお届けできるよう、一層露出度を上げていきたいと考えているところです。

他方、郷土が誇る淡路人形浄瑠璃という伝統芸能が将来も受け継がれていくよう、地元の小学校、中学校、そして高等学校での部活動指導などを通して、後継者育成にも力を注いでいますよ。

「淡路人形座」観劇と一緒に楽しめる周辺デートスポット

編集部

カップルが「淡路人形座」さんでの観劇を楽しむ前後に、周辺で立ち寄れるおすすめのデートスポットを思い付かれましたら、ご紹介いただけるでしょうか。

吉田さん

それでしたら、こちら「淡路人形座」の周辺には、座員たちがよくお邪魔しているお店がいくつかありますよ。

例えば、徒歩2~3分のところにある「焙煎工房&淡路牛バール Giro d' Awaji(ジロ・デ・アワジ)」さんは、ランチ利用・ディナー利用ともにイチ推しです。淡路牛のローストビーフが絶品で、おいしい焙煎コーヒーも楽しめます。

ランチ利用ならば、コスパ抜群で満足度の高い「淡路牛のローストビーフ丼」などもおすすめですよ。その場で焙煎して販売してくれる、こだわりのコーヒー豆も、コーヒー好きカップルのお土産にはぴったりだと思います。

公式:焙煎工房&淡路牛バール Giro d' Awaji

もう一つ、スイーツファンのお二人ならば、徒歩1分ほどと至近のアイスクリーム専門店「G・エルム」さんも外せません。こちらも地元・淡路島の厳選素材を使っているお店で、いろいろなフレーバーのイタリアンジェラートがおすすめです。

手作り感にあふれた店内のインテイリアも心地よく、初めて訪れてもリラックスできる雰囲気だと思います。毎週水・木曜日が定休日ですから、そこはご注意くださいね。

公式:G・ELM

「淡路人形座」からカップルへのメッセージ

編集部

「淡路人形座」さんでの観劇を検討中のカップルへ向けて、何かメッセージがありましたら、ぜひお話しください。

吉田さん

今年(2024年・令和6年)、私ども「淡路人形座」は、設立60周年を迎えます。一年を通して、さまざまな淡路人形浄瑠璃の公演や、イベント開催を企画しておりますので、ぜひご期待ください。

人形浄瑠璃、伝統芸能と聞くと、難解だったり敷居が高かったり、といった先入観を持たれやすいことも事実です。

それでも、ご心配は全く要りません。お芝居が始まる前には、人形についての解説や、あらすじの説明などを毎回させていただくんですよ。淡路人形浄瑠璃に初めて触れる方でも、不安なく公演を楽しんでいただけます。

併せて、お芝居を一層楽しく満喫できると好評の、バックステージツアー付きの公演もありますから、デート途中でもお気軽にお立ち寄りくださいね。終演後には、縁起のよい福の神・戎さま人形との記念撮影も大人気です。

お二人のお越しを、座員一同お待ちしております。大切な方との特別なひと時を、「淡路人形座」でお過ごしいただけたら幸いです。

編集部

今の時代、伝統芸能に日頃から触れる機会があるカップルは、相当少ないと思います。それだからこそ、初めてでもシッカリ楽しめる「淡路人形座」さんの公演は、忘れがたい非日常の体験になることでしょう。

吉田さん、興味深いお話をお聞かせいただきまして、本日は大変ありがとうございました。

「淡路人形座」を観劇した皆さんの口コミ・感想

「淡路人形座」で上演される演目「泣いた赤鬼」の一幕
▲「泣いた赤鬼」の一幕。こちらも現代語で演じられる演目の一つ

「淡路人形座」や淡路人形浄瑠璃に興味を持ったカップルの参考になるよう、実際に観劇した皆さんが残した口コミ・感想もチェックしてみました。

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人形浄瑠璃を初めて観ましたが、事前に分かりやすく、親しみやすい説明があるため、大いに楽しめました。バックステージツアーでは、初心者の質問にも丁寧に答えていただき、ホスピタリティも抜群です。
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見応えもあり、アッと言う間に楽しい時間が過ぎた。舞台道具や舞台装置など、普段は目にできない物に触れられるバックステージツアーも好印象。ぜひまた観劇したい。
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人形が本物の人間のようで、まるで生きているかのようです。感情の動きもシッカリ伝わってきて、彼氏と二人で期待していた以上に惹き込まれました。
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上演前に、人形の操り方の説明や舞台・バックステージの見学があって、初めての人形浄瑠璃なのに十分楽しめました。幕引き後に人形と記念撮影もさせていただき、サービス満点です。

とても評判のよい観劇体験だと思います。淡路人形浄瑠璃に初めて触れた方も多いようでしたが、分かりやすい事前説明や、バックステージツアーがあるおかげで、ほとんどの方が十分に楽しめているようです。

デート中の初めての観劇だったとしても、非日常の、満足度の高いひと時を過ごせると感じました。

「淡路人形座」の観劇チケット購入方法

「淡路人形座」の正面外観

「淡路人形座」のチケットは、基本的には、観劇当日に劇場のチケット窓口での購入となります(大人一人1,800円)。また、「じゃらんネット」からの予約・購入も可能です。

なお、チケット窓口で購入する場合のみ、障がい者の方向けに割引設定があります(要事前確認)。

「淡路人形座」の基本情報

住所 〒656-0501
兵庫県南あわじ市福良甲1528-1地先(淡路人形浄瑠璃館内)
電話番号 0799-52-0260
チケット料金 大人:一人1,800円
高校生・中学生:一人1,300円
小学生:一人1,000円
幼児(3歳以上):一人300円
※劇場のチケット窓口で購入する場合のみ、障碍者の方向けに割引設定あり(事前確認のこと)
平均公演時間 一本45分程度
公式サイト https://awajiningyoza.com/ja/top
公式SNS TikTok
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休館日

毎週水曜日(祝日の場合は翌日休館予定)

※出張公演等による臨時休館の場合もあり(事前確認のこと)

※最新の情報は、公式サイト等で都度ご確認をお願いします。
※記事中の金額は、すべて税込の表示です。