佐渡市移住の魅力とは?自然・食・文化が織りなす島暮らし
この記事では、地方移住を検討している方に向け、新潟県佐渡市(さどし)の生活情報をまとめてお届けします。
佐渡市は、東京から飛行機と高速船を利用すると、最短で約3時間半で行ける島です。東京23区よりも広い面積を持ち、海や川などの自然も豊富。独自の給付金や奨学金支援制度など、子育て世帯にうれしいサポートも充実しています。
今回は、佐渡市役所移住交流推進課の遠藤さんに取材し、佐渡市の特徴や暮らしの魅力について教えていただきました。
佐渡市の暮らしを彩る3つの魅力:自然・食・子育て支援
日本海にある新潟県佐渡市は、本州最大の島です。そんな佐渡市には、次のような特徴があります。
- 海岸線の長さは約280kmを誇り、釣りをはじめ多彩なアウトドアが楽しめる
- 新鮮な米・野菜・果物が豊富!人とのつながりも感じられる
- 3人目以降の子どもが生まれた世帯に総額200万円を支給するといった子育て支援策を実施
取材した内容を取り入れながら、これらの特徴を詳しく解説します。
特徴1:約280kmの海岸線が織りなす多彩なアウトドアライフ
市街地から歩いて20分ほどで海や山に行ける佐渡市は、アウトドア好きのご家族にもおすすめです。
佐渡市の海岸線の長さは約280kmに及び、豊富な釣りスポットで季節や天候によって様々な種類の魚が釣れます。中でも、立派な大きさのクロダイが釣れることは有名で、佐渡市は「クロダイアイランド」とも呼ばれているほどです。
都市部よりも釣り人の数は少なく、佐渡の美しい景色を眺めながらゆったりと釣りを楽しめます。
▲見渡す限りブルーの海も、佐渡市の魅力。山の景色も堪能できる
その他にダイビングやSUP(※)といったマリンスポーツも可能なので、夏のレジャーには困りません。
(※)スタンドアップパドルボード。大きめのサーフボードに乗り、パドルを使って水上を進むレジャー
▲船に乗ったアクティビティは、親子のレジャーにもおすすめ
さらに、夜に実施されるナイトSUPでは、海の透明感が織りなす幻想的な光景を堪能できます。
▲天気がいい日には、プラネタリウムにも負けない星空が見られるかも
また「山登り」と聞くと、クマやイノシシといった害獣が心配な方もいるでしょう。しかし佐渡市の山にクマやイノシシはいないので、遭遇する心配はありません。
佐渡市の「金北山(きんぽくさん)」は花の百名山に選ばれており、珍しい草木もたくさん生えています。(※参考:さど観光ナビ)お子様を連れて、四季折々の花の観察に出かけるのも楽しそうです。
特徴2:豊かな食材と温かい人々のつながりが育む佐渡の食文化
日常的な会話やおすそわけなど、比較的ご近所さんとのつながりが強いのも佐渡市の特徴です。
柿をはじめとする果物や、栽培環境にこだわった米など、新鮮な食材が充実。新潟県を代表するお米、コシヒカリも豊富に栽培されています。おいしい米が手に入りやすい環境なので、食べ盛りのお子さんを育てているご家族にもおすすめです。
国の特別天然記念物「トキ」の生態に配慮し、農薬の使用量を減らすなど安心・安全で生きものを育むことのできる環境に優しいお米を育てています。
特徴3:充実の子育てサポートと独自の奨学金制度で安心の子育て環境
佐渡市では、さまざまな独自の子育て支援を行っています。その一つが、3人目以降の子どもが産まれた多子世帯に対して総額200万円を支給する仕組みです。
また、子どもを預かってもらえる「ファミリーサポートセンター」や、育児相談にも対応した「子ども若者相談センター」など、サポート環境も整っています。
詳しいサポートの内容は公式サイトをご確認ください。
さらに、Uターン(✳︎1)やIターン(✳︎2)で佐渡市に引っ越し、所定の条件を満たすと奨学金の返還支援制度を利用できます。Uターンの場合は年間最大で30万円、Iターンでも年間最大で15万円(2分の1を補助)の奨学金の返還を佐渡市に補助してもらえる制度です。
(✳︎1)佐渡市出身者が進学・就職などで別の地域に引っ越し、自らの意思で再び佐渡市へ戻ってくること
(✳︎2)別の地域から佐渡市へ移住すること
ご自身はもちろん、子どもが成長した後のことを考えても、奨学金の負担を配慮してもらえるのは魅力的といえるでしょう。
佐渡市内おすすめエリア:ライフスタイルに合わせた住まい選び
佐渡市は大きく7つのエリアに分かれており、地区によって生活が異なるのが特徴です。利便性と自然の豊かさのニーズに分け、おすすめエリアを紹介します。
利便性重視なら国中・南佐渡・両津エリア:都市的な暮らしを楽しむ
交通や買い物など、利便性を重視する方には、国中・南佐渡・両津エリアが向いています。中でも佐渡市の中心部に位置する国中エリアは、比較的交通の便もよく、移住スタートにもおすすめです。
まずは国中エリアに住み、慣れてきたら他のエリアに引っ越す方もたくさんいらっしゃいます。
「佐渡の玄関口」と称される両津エリアには、昔ながらの商店が建ち並び、新潟県最大の湖沼「加茂湖」があります。南佐渡エリアにある羽茂本郷は佐渡のコンパクトシティと呼ばれ徒歩圏内にスーパー、コンビニ、ホームセンターがあります。
自然派におすすめ相川・前浜・外海府・内海府エリア:大自然を満喫
市内の移動が苦にならない方は、自然が豊かな相川・前浜・外海府・内海府エリアを選ぶ手もあります。
相川エリアは観光地としても人気があり、建物や風景には江戸時代の面影が残されているのが特徴。前浜エリアは、岩首昇竜棚田など昔ながらの景色が残り、海と共に大自然を感じられるエリア。季節感を感じながら暮らせます。商店などは少ないですが、各集落に残る地域芸能の種類も多彩です。
外海府・内海府エリアはいずれも海に近く、絶景やダイビングなどのアクティビティも楽しめます。中でも内海府エリアの北小浦はダイビングスポットとして人気な一方、外海府エリアにある亀の形をした一枚岩「大野亀」はミシュラングリーンガイド2つ星に選ばれるほどの圧巻の見ごたえです。
佐渡市での暮らし:教育・仕事・住まいの基本情報
続いて、佐渡市で暮らす上で知っておきたい基本情報をまとめてお伝えします。まずは、下の表をご覧ください。
気候 | 8月平均気温:26℃ 1月平均気温:4℃ ※参考:気象庁(新潟県 相川) |
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人口 | 人口:約5万1,000人 ※2020年度時点 |
病院 | 病院:3か所 診療所・クリニック:25か所 歯科:21か所 |
学校 | 保育園:21園 幼稚園:2園 認定こども園:2園 病後児保育:1園 小学校:22校 中学校:13校 高校:3校 中等教育学校(中等一貫校):1校 特別支援学校:1校 通信制高校:1校 専門学校:2校 ※2024年5月時点 |
交通 | 【空港】 ・新潟空港 【新幹線】 ・上越新幹線「新潟駅」 ・北陸新幹線「上越妙高駅」 【港】 ・新潟港 ・直江港 【車】 ・関越自動車道「新潟中央IC」 ・磐越自動車道「新潟中央IC」 ・日本海東北自動車道「亀田IC」 ・北陸自動車道「上越IC」 |
アクセス | 【東京から】 飛行機:約70分 新幹線:約2時間 車:約4時間 【大阪から】 飛行機:約65分 新幹線:約5時間 車:約9時間 |
特産品 | ・おけさ柿 ・コシヒカリ ・寒ブリ ・日本酒 ・佐渡牛など |
主な行事 | 【スポーツ】 ・トライアスロン ・トキマラソン ・ロングライド ・オープンウォータースイミング 【伝統芸能】 ・佐渡おけさ ・薪能 ・鬼太鼓 【祭りイベント】 ・アースセレブレーション ・鬼太鼓どっとこむ ・寒ぶり大漁祭りなど |
アクティビティ | ・登山 ・SUP ・カヤック ・釣り ・温泉 ・スノーボード ・海水浴 ・ダイビング ・キャンプ ・ゴルフ ・サイクリングなど |
新潟県は雪国といわれますが、対馬暖流の影響を受ける佐渡市は、新潟県本土よりも積雪量が少ない傾向にあります。
佐渡市から新潟市へ渡る場合は、新潟市の新潟港へ運航するフェリーを使います。フェリーは、同じ新潟県内の上越市・直江津港を往復する便もあります。
▲フェリーからは、きれいな虹が見えることも
佐渡市内に電車は通っていないので、生活するには車を持っていた方が便利です。
佐渡市内にはコンビニが複数あり、中心部には書店やドラッグストア、ファストフード店などもそろっています。総合病院もあるので、日常的な買い物や通院は市内で行えます。
教育:伝統芸能「鬼太鼓」と自然共生の心を育む佐渡の学び
佐渡市は学校教育の中で、地元の伝統芸能を学ぶ機会を設けています。
伝統芸能の一つは、太鼓の音に合わせ面を付けた鬼役が舞う「鬼太鼓」です。市内には、120を超える集落独自の鬼太鼓があるとされています。
子どもたちは地域住民から教えを受けながら、太鼓の叩き方や振り付けについて学び、その成果を地域の祭りなどで披露する地域もあります。地元への誇りや愛着を育む教育となっています。
また佐渡市では、生活に欠かせない「自然と共存する意識」も育てています。
例えば、地域の小学生が学校の沿道にチューリップの球根を植え、世話をして花を咲かせる行事があります。また、授業で里山の手入れをする学校もあります。
子どものうちから美しい自然を保つための大変さを体験し、「自分には何ができるか」という自主性へとつなげていくのです。
佐渡市では2地区の小中学校で親子での島(離島)留学も実施しています。おだやかな土地で新たな発見や強さを見につけることができます。
仕事:多様な雇用形態と人気上昇中のリモートワーク環境
佐渡市では米作りを中心に、柿などの果実栽培も行われています。イカやブリなどの漁業や、豊かな自然を生かした観光業も盛んです。
これらの仕事は季節に左右されるため、すき間時間で日雇いや時給のアルバイトをする方も多いそう。佐渡市が運営する「さどマッチボックス」に登録すると、ご自身の空き時間にあわせた単発お仕事が可能です。
大手求人情報サイトで佐渡市内の正社員求人を検索してみると、約740件の求人がヒットしました。飲食店・ホテルのスタッフから事務や介護職員まで、職種もさまざまです。(2023年12月時点)
※参考:求人情報の一例
一方で佐渡市は、ITベンチャー企業の誘致に力を入れており、開業のサポートも豊富です。実際に、佐渡市に支社を構える企業も多く、リモートワークを想定したコワーキングスペースも充実しています。
公式サイトに詳細が記載されているので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
都市部から移住される方の中でも、年々移住元での仕事を継続されるテレワーク勤務の件数が増加しています。移住者の中には飲食店を始めるケースもあって、そのお店には別の移住者や観光客の方が多く集まっている印象です。
住まい:賃貸から空き家バンク活用まで多様な住居選択肢
大手の住宅情報サイトで佐渡市内の賃貸物件を検索してみたところ、70件ほどのアパートが見つかりました。(2023年12月時点)
※参考:賃貸物件の一例
特に、利便性の高い国中エリアは比較的物件も多く、1K・2DKの広さだと、駐車場が付いて3万円〜5万円ほどが相場です。
まずは賃貸物件に住み、佐渡市の暮らしに慣れたタイミングでマイホームの購入するなど、段階を踏んだ移住をおすすめします。
佐渡市は空き家バンクの活用にも力を入れており、公式サイトでは随時空き家が公開されています。賃貸と売買がありますが、売買物件がほとんどです。価格帯は50万円台〜2,000万円台とさまざまで、リフォームの有無などの条件も異なります。
人気の空き家はすぐに成約される傾向にあるので、興味のある方は公式サイトでこまめに情報をチェックしてみてください。
佐渡市移住者の声:実際の暮らしから見える島の魅力
続いて、実際に佐渡市へ移住した方々から寄せられた感想をまとめて紹介します。
- 隣の人が野菜や果物をおすそ分けしてくれ、助かっている
- 地域の活動に参加する中で、自然に住民と仲良くなれた
- 子育て支援センターがほどよく空いていて、他のママさんとゆっくり話せる
- 子どもを連れて買い物をしていると、住民から声をかけてくれる
移住者の感想からも、気さくであたたかい佐渡市民の人柄が伝わってきます。一方で「ある程度は、自分から話しかけていくことも大切」という声もありました。
「人見知りをしてしまう」という方は、3か月に1回ほどのペースで開催されている「移住者交流会」への参加もおすすめです。お菓子などを持ち寄り、移住者同士で話しながら親睦を深められます。
佐渡市移住サポート:お試し暮らしから相談窓口まで充実の支援体制
暮らしに関する情報に触れ、さらに佐渡市の移住に興味を持った方もいるのではないでしょうか。ここからは、移住の準備に役立つ取り組みや、相談窓口を紹介します。
「さど暮らしサポーター」:先輩移住者に聞く佐渡暮らしのリアル
さど暮らしサポーターを利用すると、実際に移住して佐渡市で生活している方々に、移住の不安や悩みを聞いてもらえます。移住後の楽しさはもちろん、大変さなども教えてくれるので、より客観的な視点から判断できます。
20人以上のサポーターが登録(2023年12月時点)しており、起業や子育て、二地域居住など、条件で検索できるのが特徴です。まずは公式サイトで、ご自身の状況に近いサポーターを探してみてくださいね。
公式:さど暮らしサポーター
「定住体験住宅」:佐渡暮らしを実感できるお試し移住プラン
佐渡市では移住前のお試し暮らしとして、定住体験住宅を10棟(2023年10月時点)整備しています。こちらの住宅は、間取り、年齢要件によりますが、光熱水費、インターネット料金を含めて月額2~5万円で利用できます。
公式:佐渡市定住体験住宅
▲佐渡市の衣・食・住を体験できる「定住体験住宅(相川地区きょうまち住宅)」
▲キッチンも広く、明るい雰囲気
「保育園留学」:子育て世帯向け佐渡の暮らし体験プログラム
佐渡市では民間企業と連携し、1〜2週間ほどの期間で、こどもが保育園に通いながら家族で好きな地域に滞在し、暮らし体験をすることができる「保育園留学」を実施しています。都会にはない、自然を感じる保育園で過ごすことができます。
公式サイト:佐渡市保育園留学
保育園留学滞在先からすぐ近くの場所に、ホステル併設のコワーキングスペースもあります。保育園留学中にテレワークをする保護者も多く、仕事場として利用していらっしゃいます。
実際に保育園留学をした方々からは、「地域住民と触れ合えて楽しかった」という感想が寄せられているそうです。
移住相談窓口:港に直結&オンライン対応で気軽に相談可能
移住に関する相談には、佐渡汽船両津港直結のコワーキング「SADO PORT LOUNGE」内の「移住相談窓口」で応対しています。
「佐渡市に移住したい!」と思ったら相談窓口に連絡をし、手続きや住宅・仕事探しなどについて質問してみましょう。
来所が難しい場合には、Zoomを使ったオンライン相談も可能です。
佐渡市移住に関する問い合わせ先:専門スタッフが丁寧にサポート
▲インタビューに答えてくださった遠藤さん(左から2番目)を含む、佐渡市役所・移住相談窓口の方々
担当課 | 佐渡市役所 移住交流推進課 移住交流推進係 |
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住所 | 〒952-1292 新潟県佐渡市千種232 |
電話番号 | 市役所:0259-67-7153 移住専用ダイヤル:080-2596-5371 |
対応時間 | 市役所:8:30~17:15(土日祝日、年末年始除く) 移住相談窓口:9:00~17:00(年末年始除く) |
公式サイト | https://www.city.sado.niigata.jp/site/ijyu/ |