岡山県「最上稲荷」日本三大稲荷の一つ・歴史を感じるお寺デート

「日本の良さを再認識できるお寺回りを楽しもう♪」特集でご紹介するのは、岡山県岡山市にある「さいじょう稲荷(最上稲荷山妙教寺)」さんです。

最上稲荷山妙教寺は日本三大稲荷に数えられる有名なお寺で、家内安全、商売繁盛、開運招福、厄除けなどの御利益があるとされ、毎年多くの参拝客で賑わいます。

建築物には国の登録有形文化財に指定されているものも多く、いたるところに貴重な文化が隠れる歴史の深いお寺です。

お寺めぐりが好きな方や、歴史が好きな方はぜひ読んでみてくださいね。

最上稲荷の見どころについて

最上稲荷の本堂といちょう

最上稲荷山妙教寺は岡山県岡山市北区にあり、日本三大稲荷に数えられる有名なお寺です。

本尊の「最上位経王大菩薩」は、商売繁盛や開運など多くの福徳をそなえ、脇神として水の神さま「八大龍王尊」、開運を招く「三面大黒尊天」が本殿に一緒に祀られていることから、最上三神と呼ばれています。

最上稲荷では、縁切り・縁結びを一気に行う「両参り」をできることが特徴です。最上位離別天王に悪縁を断つ縁切りを祈願した後、最上位縁引天王に良縁祈願という順にお参りをします。「美麗」・「人気」・「愛嬌」などのご利益を求めてカップルや女性同士で参拝してはいかがでしょうか。

また、境内にある売店では、オリジナルの御朱印帳やお線香を購入できるのも魅力のひとつ。特に御朱印帳は、稲荷らしく狐のおでこにイチョウが乗っていて、とても可愛らしいデザインですよ。

今回は、最上稲荷の広報部にお勤めの有村美香さんに、お寺の魅力や見どころについてインタビューしました。

1200年以上の歴史がある最上稲荷

インタビュアー

どのようなお寺か教えてください。

有村さん

最上稲荷の正式名称は「最上稲荷山妙教寺(さいじょういなりさんみょうきょうじ)」、785年に報恩大師によって創建された寺院で、伏見・豊川と並ぶ日本三大稲荷と称されます

1200余年の長きに亘り、備中高松の地で、世の中の安泰と平和と人々の幸福を祈ってきました。

最上稲荷の歴史は、今から1200余年前にさかのぼります。天平勝宝4年(752)、報恩大師に孝謙天皇の病気平癒の勅命が下り、龍王山中腹の八畳岩で祈願を行いました。

すると白狐に乗った最上位経王大菩薩が八畳岩に降臨しました。大師はその尊影を刻み祈願を続け、無事天皇は快癒されたといいます。

その後延暦4年(785)、桓武天皇ご病気の際にも大師の祈願により快癒したと言い伝えられています。これを喜ばれた天皇の命により、現在の地に「龍王山神宮寺」が建立されました

インタビュアー

1200年前は、現代の風邪程度の病気も命に関わる時代ですよね。そんな時代に、二度も天皇のご病気が治癒したのは奇跡に近いものを感じます。

それにより、天皇が建立を命じられたことがはじまりだったんですね。

有村さん

建立以来、「龍王山神宮寺」として繁栄を極めました。

しかし、備中高松城水攻めの際、戦火によって堂宇を焼失し、本尊の「最上位経王大菩薩」のお像のみが八畳岩の下に移され、難を免れました。

このお像をもとに慶長6年(1601)、新たに領主となった花房公が関東より日円聖人を招き、霊跡を復興しました。

寺名も「稲荷山妙教寺」と改めて、今日の興隆の礎を築きました。

ご本尊の最上さま(最上位経王大菩薩・さいじょういきょうほうだいぼさつ)は様々な福徳をお持ちです。

初詣では主に「家内安全、商売繁盛、開運招福、厄除け」の御利益を求めてご参拝される方が多いです。

インタビュアー

一度消失した過去もあるんですね……。最上位経王大菩薩のお像が無事でよかったです。

最上位経王大菩薩像自体が戦火を免れていることが、像が持つ福徳の強さを感じますね。

様々な御利益がいただけそうです。

有村さん

最近では、「縁切り」と「縁結び」が一つの場所で一度に祈願できる、縁の末社への参拝も増えております。

広い境内には、ご本尊をお祀りする本殿を始め、多数の施設が存在します。

その中でも、旧本殿は岡山市重要文化財に、根本大堂(本堂)や仁王門など33件の建造物が登録有形文化財に指定されています

インタビュアー

貴重な建造物が多く存在するお寺なんですね。

立派な建物をじっくり拝見してみるのも、最上稲荷の楽しみ方の一つですね。

歴史とモダンが混在している境内

最上稲荷の旧本殿

インタビュアー

最上稲荷を訪れた際の見どころはどこでしょうか。

有村さん

古きものと新しいものが混在するところです。

例えば建物で言うと、旧本殿は、明治維新前の神仏習合の時代にあって中世の神社建築の様式を伝承した貴重な文化遺産と評価され、現在の本殿が建立される際にも解体せず曳屋方式で現在地に移されました。

社殿と仏殿の特徴が巧みに融和し、細部に施された彫刻の豊かさと相まって、古来より我が国で培われた信仰のあり方を物語る木造建造物として評価されています。

ですから、寺院建築の特徴でとされる瓦葺きではなく、檜皮葺の建物です。

インタビュアー

確かに、檜皮葺ですね!恥ずかしながら、教えていただくまで気づきませんでした。

思わずスルーしてしまうような場所に、実は歴史や貴重な文化が隠れているんですね。事前に知識を得て伺うと、見る場所が違ってきそうです。

新しいものはどの辺りなんでしょうか?

有村さん

1979年に完成した現在の本殿は、コンクリート造りで、例年三が日で約60万人が訪れる初詣には数百人が一度にご祈祷を受けられるようにと、規模の大きい建物となりました。

授与所やトイレなども参拝者への利便性を考えて改修がなされています。

インタビュアー

本殿はとても大きく迫力がありました。利便性を考慮されているおかげで、毎年多くの方が参拝できているんですね。

そういえば、最上稲荷はお寺ですが、本殿には1.5トンもの立派な大注連縄がありますね。

有村さん

最上稲荷は、お寺でありながら鳥居や神宮形式の本殿を有するのも特徴です。

日本の古い信仰の形である、神仏習合の名残が見られるところも珍しいんですよ。

インタビュアー

なるほど、神仏習合の名残で、本殿が神宮形式になっているんですね!

願いが叶うことで知られる七十七末社

最上稲荷の七十七末社

インタビュアー

七十七末社について教えてください。

有村さん

七十七末社というのは、御本尊の最上位経王大菩薩に仕える七十七の諸天王を表します。

江戸後期には現在の信仰形態が成立したと思われ、それぞれが異なる御威徳をお持ちで願いを叶えるとされます。

霊応殿と七十七末社周辺は、参拝者にとって日本古来の信仰の歴史を感じられる場所で、「文化財ゾーン」と称されます。

特に多くの信仰を集める荒熊天王社や日車天王社など、いくつかの建物は国の登録有形文化財となっています。

インタビュアー

七十七末社は美麗、人気、愛嬌など、特に女性に嬉しい御利益がいただけるとのことで、先ほど丁寧にお参りさせていただきました!

カップルでお参りしながら、貴重な登録有形文化財や歴史を感じるデートをするのも落ち着いた時間が過ごせますね。

本殿以外にもおすすめの場所がたくさん

最上稲荷の秀吉本陣

インタビュアー

本殿以外におすすめの場所はありますか。

有村さん

羽柴秀吉が備中高松城水攻めを行う前に陣を敷いた「秀吉本陣 一の丸」や、備中高松城の守護神「北辰妙見大菩薩」をお祀りする妙見堂などは、歴史に興味がある方がよく訪れます。

また、国道180号線から「最上稲荷入口」の信号を折れて県道241号線を進むと、ベンガラ色に輝く大鳥居が出迎えてくれます。

県道241号線に立つ大鳥居

1972年に「世界平和、人命尊重・交通安全、開運招福」という願いを込めて建立されました。カメラで撮影される方も多いのですが、車の行き交いがありますので、気をつけてください。

その他、おみくじは江戸時代から伝わる内容とされており、表には版木で刷られたものを、裏面には現代語訳と心構えを載せています。

インタビュアー

秀吉本陣を先ほど拝見しましたが、あの秀吉が同じ場所を通ったと考えると大変感銘深いものがありました。

それから、県道241号線の大きな鳥居は1972年に建立されたものだったんですね。鳥居は、ある程度距離を取らないと画面に収まりきらないため、周囲に注意しながら撮影する必要がありますね。

おみくじも江戸時代から伝わる内容ということで、最上稲荷は見るべき場所が多く何時間でもいられそうな気がします。

最上稲荷の縁の末社の鳥居

一般の人も参加できる定期的な催し物

インタビュアー

一般の人も参加できる行事や体験などはありますか。

有村さん

縁の末社で両縁参り」ができます。1月を除く毎月7日に行なっており、時間は11:00からで奉納料900円です。

僧侶の祈願後は、縁の末社の正式参拝の方法をご案内します。縁結絵馬と縁切札をご奉納ください。

参拝後は、縁についてのありがたいお話と茶菓のご接待もあり、お帰りの際には特別な「縁御守」を授与します。

また、運気カフェも人気の催しです。12月と1月を除く毎月第4土曜日、時間は11:20からで参加料500円です。

大正時代に建てられた大客殿の中庭(寒松庭)に面した部屋で、ご神水で準備した月替わりのお飲み物を味わいつつ、僧侶による運気向上をテーマにした法話を聞いていただたいた後は、ご祈祷を体験できます。

現在は密を避けるため、人数制限や内容の一部変更を行っています。詳細は公式サイトをご覧ください。

インタビュアー

定期的に催し物があるんですね。

縁の末社での両縁参りと運気カフェはどちらもありがたいお話が聞けるとのことで、より日常が前向きに充実していきそうです。

しっかり参拝したいときは、行事に参加するといいですね。

おすすめのデートは「縁の末社で両縁参り」

最上稲荷の良縁みくじと絵馬

インタビュアー

デートでおすすめの見どころや行事などがあれば教えてください。

有村さん

縁の末社がおすすめです。お二人の仲を邪魔するものを払い、より深くご縁をつなぐためにお参りされてはいかがでしょう?

正式参拝の作法を学ぶのであれば、「縁の末社で両縁参り」にぜひご参加を!

インタビュアー

「縁の末社で両縁参り」にカップルで参加すると良い思い出になりますね!きっと2人のご縁が強いものになると思います。

デートにおすすめの季節は春や秋

インタビュアー

デートにおすすめの時期や季節はいつでしょうか。

有村さん

最上稲荷の行事は「お火たき大祭」「初詣」「節分豆まき式」と冬に集中します。桜や牡丹の咲く春、紅葉が色づく秋のお参りは、人出も控えめでゆっくりお参りできます。

インタビュアー

冬の行事を満喫するのも良いですし、参拝客が控えめな春頃にゆっくり訪れるのも良いですね。

最上稲荷を訪れる際のよくある質問

インタビュアー

拝観時間と拝観ができない日を教えてください。

有村さん

境内のお参りは自由ですが、窓口開設時間は5:30〜16:30です。

また、「縁の末社で両縁参り」を行っている時間帯は、縁の末社のお参りを制限するなど、行事によってご利用を制限する場合がございますのでご了承ください。

インタビュアー

最上稲荷では行事も豊富なので、参拝前に公式サイトで当日のお知らせをチェックしておきたいですね。

寒松庭特別拝観の拝観料について

最上稲荷の寒松庭

インタビュアー

拝観料は必要でしょうか。

有村さん

境内は自由ですが、「寒松庭特別拝観」は有料です。寒松庭は、ご本尊の最上さまが八畳岩でお姿を現された場面を石組で表現した庭とされています。

拝観時間 9:30〜15:00
拝観料 一般 300円
学生・団体 200円
小学生以下無料

※行事開催などにより、拝観を行っていない日や時間がございます。事前にお問い合わせください。

インタビュアー

仏教の清浄の世界や、最上さまが現れた場面が表現されていて大変素晴らしかったです。

せっかく最上稲荷に訪れたのなら、寒松庭の表現を通した歴史にも触れてみて欲しいですね。

参拝におすすめの服装

インタビュアー

どのような服装で参拝すればよいでしょうか。

有村さん

参道入り口(門前町)から少し歩きますので、歩きやすい服装でお参りください。

インタビュアー

歩きやすい靴や参拝しやすい持ち物でうかがうと良さそうですね。

最上稲荷までのアクセス

インタビュアー

最上稲荷にはどのように行けばいいでしょうか。

有村さん

お車では、各方面から岡山自動車道・岡山総社インターより約5kmです。インターで下りて、国道180号線を岡山方面へ進み、「最上稲荷入口」の信号を左折して進みます。

境内には4台の身体障がい者駐車場を設けるのみですが、周辺に民間駐車場が多数ありますので、そちらをご利用ください。

電車では、JR桃太郎線(吉備線)の備中高松駅から約2km、タクシーで5分程度です。

期間限定で備中高松駅と最上稲荷を結ぶシャトルバスを運行していますので、ホームページを確認してください。

インタビュアー

詳しく教えていただきありがとうございます。車でも電車でも行きやすいですね。

シャトルバスを利用したい場合は、事前に運行情報をチェックしておきたいです。

お守りやお札について

最上稲荷の幸運ショップゆかり

インタビュアー

お守りやお札などを受けることはできますか?

有村さん

お札やお守りは窓口(祈祷受付)で授与を行っています。また、記念品は「幸運ショップゆかり」でお求めいただけます。

幸運ショップゆかりは9:00〜16:30の営業です。

インタビュアー

お札やお守りをいただきたい場合は「祈祷受付」、記念品は「幸運ショップゆかり」ですね。

どちらも16:30までなので、時間に気をつけて伺いたいです。

近くでおすすめの観光地

インタビュアー

近くにおすすめの観光地はありますか?

有村さん

最上稲荷は吉備路の一角にあります。

また、岡山城や後楽園のある岡山市内倉敷市の美観地区などへも車で30分程度で訪れることができます。

インタビュアー

参拝前後には、吉備路や岡山市、倉敷市に行くとお食事や観光が楽しめそうですね。

お寺デートを考えているカップルへのメッセージ

最上稲荷の赤い幟

有村さん

新型コロナウイルス感染症の影響により、多方面で私たちの生活に大きな変化がありました。それまでの不安のない日常生活がいかに貴重で大切であったかを痛感したことでしょう。

不安のない心が落ち着いた状態を安心といいますが、仏教では同じ字を「あんじん」と読み、信仰や実践によって到達する心の安らぎや不動の境地をいいます。

1200年もの長きにわたり、世の安泰と人々の幸福を祈るという最上稲荷のあり方は変わりません。

祈りを捧げ、感謝をつなぐ…。お寺として、守るべきものと時代に沿って変化していくものとを見極めながら、これからも岡山の地で在り続けます。

そして、お二人にとっても、明るい未来が、安心(あんじん)ある生活がおとずれますよう祈念いたします。

インタビュアー

まだまだ不安定な生活は続いていますが、最上稲荷を訪れると不思議と心が落ち着きます。きっと、1200年以上も人々の心の拠り所だったからこそですね。

「安心(あんじん)」ある生活を願いながらも、今ある身の回りのことに感謝して、毎日を過ごしていきたいです。

本日は、とても貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

『最上稲荷(最上稲荷山妙教寺)』の基本情報

住所 〒701-1331
岡山県岡山市北区高松稲荷712
電話番号 086-287-3700
公式 http://www.inari.ne.jp/

最上稲荷の後にいきたいデートスポット

最上稲荷と合わせて行って欲しい、おすすめのスポットを2つ紹介します。このスポットは、今回お話ししてくれた有村さんもおすすめしているスポットです。

岡山後楽園で庭園を眺めながら一服

岡山後楽園は、水戸の偕楽園、金沢の兼六園と共に「日本三名園」の一つとも称され、国の特別名勝に指定されています。後楽園の面積は東京ドームおよそ3個弱分という広大で、歩きながら移り変わる景色を眺めることができるよう、工夫された回遊式庭園です。

園内にある福田茶屋では、岡山ならではのきびだんご付きのお抹茶を味わえます。広い園内の散策デート途中の休憩としておすすめです。

URL:https://okayama-korakuen.jp/

倉敷美観地区でお散歩デート

倉敷美観地区は、倉敷駅から徒歩約10分ほどの場所にある観光スポットです。白壁と瓦屋根が印象的な建物が軒を連ねており、まるで江戸時代にでもタイムスリップしたかのような景観を楽しめます。町屋を改装したお洒落なカフェや倉敷デニムのショップなど、落ち着いたデートをしたいカップルにぴったりの観光地ですよ。

URL:https://www.kurashiki-tabi.jp/see-kurashiki/

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