旧弘前偕行社で明治日本を体感して郷土の歴史・文化を再発見するデート|青森県の史蹟

この記事で紹介するのは、青森県弘前市に建つ「旧弘前偕行社(かいこうしゃ)」で、国指定の重要文化財となっている明治生まれの洋館を見学し、郷土の歴史・文化を再発見するデートプランです。

ちょっと知的なデートでいつもと違う週末を過ごしたい、レトロな建築とインテリアを満喫したい、そんな二人にはぴったりのスポットになると思います。周囲には、明治期の洋館が複数残っているので、旧弘前偕行社とあわせて訪ねてもいいですね。

今回は、旧弘前偕行社の特徴や見どころなどについて、同館マネージャーの佐々木さんにお話を伺いました。  

旧弘前偕行社の展示品はレトロな建物とインテリア

「旧弘前偕行社」の正面外観(空撮・春)
▲桜が咲く季節の正面外観(空撮)。弘前の街に溶け込むレトロで、何ともお洒落な明治の洋館

「旧弘前偕行社」は、東北地方に現存している旧陸軍関係施設の代表的遺構。津軽の天才的な名棟梁が手掛けた明治期の洋館建築の傑作で、建築史の観点からも保存価値が高い建物なんですよ。国指定の重要文化財になったのも納得できます。

ここからは、そんな旧弘前偕行社について、具体的に見ていきましょう。

100年以上前の姿を復元!津軽の景色に溶け込む美しい洋館建築

編集部

今回初めて旧弘前偕行社にお邪魔しましたが、クラシカルな外観は元より、天井のシャンデリアや漆喰(しっくい)の装飾も何とも趣があって、見惚れてしまいます。

最初に、施設全体の概要やロケーションなどについて、ご紹介をお願いします。

「旧弘前偕行社」会場の天井に設置されるシャンデリア
▲天井のシャンデリアも、精緻な作りにセンスの良さを感じる

佐々木さん

当館は、今から100年以上前、日露戦争後の明治40(1907)年に、旧陸軍第8師団の将校向けの親睦・学術研究のための集会所として建設されました。イタリア・ルネサンス風様式を基調としており、木造の平屋建てです。

建物の設計は、当時の弘前を代表する名棟梁・堀江佐吉が手掛けました。第8師団を示す、「蜂のレリーフ」があるポーチ付き玄関は、寒冷地らしく、雪止めの付いた鉄板葺きとなっていて、当時の職人の技の冴えを感じますよ。

こちらのロケーションは、旧弘前藩主の別邸があった場所でした。嘉仁(よしひと)親王殿下(後の大正天皇)が宿泊された際、庭園の美しさに感嘆して、「遑止園(こうしえん)」と命名されたほどです。

「旧弘前偕行社」の庭(春)
▲桜が満開になった「旧弘前偕行社」の庭。令和の世とは思えない、のどかで穏やかな光景

平成13(2001)年には、国指定の重要文化財となっています。令和2(2020)年に大規模な保存修理を終えて、明治40年当時の姿に復元しました。現在は、館内見学や各種イベントなどに活用されており、地元でも穴場のデートスポットですよ。

ガイド付きの見学がおすすめ!館内のさり気ない展示品にも注目

編集部

館内の見学可能エリアで、佐々木さんが特にお好きな展示品などがありましたら、教えていただけますか?

佐々木さん

お気に入りの展示品は、「当時からある灰皿」です。私は禁煙してから10年ほど経つのですが、一度はこの備品の灰皿で、往時の将校さんのように煙草を吹かしてみたいものです。

「旧弘前偕行社」で当初から使われていた備品の灰皿
▲明治期から使われていた灰皿が今も残る。旧陸軍を示す星マークが入った本物で、いかにも質実剛健なデザイン

ちなみに、敷地内は館内を含めて、現在は全面禁煙となっています。かつての将校さんたちなら、きっと耐えられないでしょう(笑)。

館内には、何気なく置かれているものや小さなものでも、貴重だったり今では珍しかったりする展示品もあります。ぜひ、お二人でお気に入りを探してみてくださいね。

編集部

佐々木さんおすすめの、旧弘前偕行社の見学方法などありましたら、ぜひ教えてください。

佐々木さん

おすすめは、何と言ってもガイド付きでの見学です。私ども専属スタッフが当館の歴史や、保存修理工事の様子などをご説明しながら、館内を案内させていただきます。

「旧弘前偕行社」の客室南内部の様子
▲庭に面した客室南。クラシカルなインテリアも、ガイド付きで見学すると一層感慨深い

「旧弘前偕行社」の会場内部の様子
▲会場内部の様子。会場とは、館内で最大の大広間のこと。談笑する往時の高級将校たちが目に浮かぶ

1日1回のみ正午(12:00)スタートで、所要時間40分程度、20名さま限定です(ガイド付き見学料:1人500円)。見学を希望される日の3日前までに、電話でのご予約をお願いしています(電話:0172-33-0588)。

公式サイトや、観光ガイドブックなどには載っていない情報もお話ししておりまして、当館にご興味のある方には、断然おすすめです。館内にある小さな展示品のいわれなども、ぜひ尋ねてみてくださいね。

なお、ガイドなしでの一般見学(見学料:1人300円)ならば、ご予約は要りませんよ。

>>公式サイト「見学のご案内」ページ

匠の技が光る!興味が尽きない旧弘前偕行社の見どころ

「旧弘前偕行社」の正面外観と満開の藤棚(春)
▲正面外観と満開の藤棚。日本らしい春の光景と見事に一体となった明治の洋館

編集部

佐々木さんが思われる、旧弘前偕行社全体としての見どころは、どちらになるでしょうか?

佐々木さん

見学される皆さんに、ぜひとも押さえてほしい見どころは3つです。

まずは、最初に少し触れましたが、「蜂のレリーフ」ですね。正面玄関には、旧陸軍第8師団の「八」にちなんだ、「蜂」が装飾されており、当館のシンボルマークにもなってます。

「旧弘前偕行社」のポーチ付き玄関に設置された「蜂のレリーフ」
▲ポーチ付き玄関にある「蜂のレリーフ」。「旧弘前偕行社」のシンボルマークにもなっている

次に、窓ガラスです。すでにお気付きかもしれませんが、館内の大多数の窓ガラスは、気泡が入ったり、波を打っていたりしている製品です。明治期の貴重な窓ガラスが使われておりまして、レトロな雰囲気を今に伝えてくれます。

「旧弘前偕行社」に残る明治期の窓ガラス
▲貴重な明治期からの窓ガラスも残る。気泡が入っていたり、波打っていたりと、温かみのある趣がたまらない

そして、星マーク入りの換気口ですね。換気口には、旧陸軍のマーク・五芒星の鉄製レリーフが見られます。不思議なことに、逆さ五芒星も中にはあるのですが、今となっては理由は分かりません。後でご覧になってみてください。

「旧弘前偕行社」館内に設置されている換気口
▲レトロな雰囲気の換気口。五芒星のレリーフに注目

編集部

ほかの類似施設と差別化できるポイントや、ちょっと自慢したい部分などがありましたら、お話しください。

佐々木さん

旧偕行社は、最大時で国内に58か所、海外に8か所が存在していました。現在では、国内にわずか6棟、台湾・台南市に1棟のみが残っており、大切に修繕・保存されています。旧弘前偕行社は、その中の貴重な1棟です。

現存している国内と台湾の旧偕行社の建物を見てまわるのも、面白いかもしれませんね。弘前市内で重要文化財の指定を受けている建築物23棟の中で、建築面積が最も広いのが旧弘前偕行社なんですよ。

「旧弘前偕行社」の外観左正面(空撮・夏)
▲「旧弘前偕行社」の全景(空撮)。弘前市内の重要文化財の中で、最大の建築面積を誇る

編集部

旧弘前偕行社を訪れる時期や時間帯を変えることによって、違った楽しみ方ができるようでしたら、教えていただけますか?

佐々木さん

正門の門柱上部には、令和2(2020)年に復元した電燈が設置されています。何とも味わい深い雰囲気で、暖色系の灯りを見ていると、自然に心が落ち着いてくるでしょう。インスタ映えも、なかなかのものですよ。

「旧弘前偕行社」の門柱と煉瓦塀
▲正面の門柱と煉瓦塀。門柱の上には、復元された電燈が見える

「旧弘前偕行社」館内で展示される門柱の電燈(冬季)
▲冬季は館内で展示される門柱の電燈。温かな色合いの光は、懐かしくて落ち着く

点灯期間は、4月中旬~11月中旬となっており、点灯時間は、日没~19:30となっています。通りかかった際には、ぜひご覧になってみてくださいね。

なお、冬季には電燈を取り外しまして、館内展示とさせていただいています。

旧弘前偕行社周辺のデートスポット

「旧弘前偕行社」のドーマーウィンドウ
▲「旧弘前偕行社」のドーマーウィンドウを眺める。細部にも手を抜かない見事な匠の技に溜息

編集部

カップルが旧弘前偕行社を見学する前後に立ち寄れる、おすすめのデートスポットが周辺にありましたら、ご紹介をお願いします。

佐々木さん

「津軽・弘前を代表する名棟梁・堀江佐吉が手掛けた洋館をめぐる」、というデートのテーマはいかがでしょうか。

こちら、旧弘前偕行社を見学された後は、「青森銀行記念館(旧第五十九銀行本店本館)」へ向かいます。堀江が晩年に手掛けた建物で、それまでに彼が修得した和洋すべての技法を投入した力作です。

>>弘前市役所「旧第五十九銀行本店本館」

次は、「旧弘前市立図書館」に足を運びましょう。八角形の双塔を持つルネッサンス様式を基調としながらも、随所に和のテイストも採り入れた木造3階建で洋館です。この建物を眺めると、堀江は天才だったのだなと実感しますよ。

>>弘前市役所「旧弘前市立図書館」

そして、〆には、「旧東奥義塾外人教師館」を訪ねてみてください。館内には、古い時代の家具や調度品なども残されており、明治期日本での外国人の生活を垣間見ることができます。

1階には喫茶室(カフェ)が入っていますから、お二人でくつろぐのにもぴったりのスポットです。アップルパイなどのスイーツや、コーヒーなどのドリンク、ランチメニューをゆったりと楽しめますよ。

>>弘前市役所「旧東奥義塾外人教師館」

旧弘前偕行社からのメッセージ

「旧弘前偕行社」の南廊下
▲庭に面した南廊下の様子。全面がレトロなガラス窓で、開放感のある、何とも気持ちのよい空間

編集部

これから旧弘前偕行社を見学するカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがありましたら、ぜひお話しください。

佐々木さん

デートでお越しの際には、見どころである「蜂のレリーフ」や「五芒星の換気口」をカップルで探してみると、面白いかと思います。廊下の幅が1.5mほどと狭いですから、自然とお二人の距離が近づくかもしれません。

「旧弘前偕行社」西廊下の様子
▲西廊下の様子。確かに幅が狭くて、カップルの距離が縮まりそう

また、私どもには貸館のシステムもありまして、結婚式の披露宴会場や前撮りの会場などとしても、ご利用になれるんですよ。使用料や空き日については、お気軽にお問い合わせくださいね。

編集部

旧弘前偕行社は、緑豊かな津軽の街・弘前市の風景には、とてもよく映える建物だと実感しました。想像していたよりもずっとフォトジェニックな洋館で、何度も訪れたくなる魅力があります。デートの一環でカップルが初めて見学したとしても、思わず引き込まれるスポットですね。

佐々木さん、本日はお忙しい合間にお時間を割いていただき、どうもありがとうございました。

旧弘前偕行社の口コミ・感想をチェック!

「旧弘前偕行社」の正面外観(空撮・夏)
▲ノスタルジックな雰囲気が漂う正面外観。緑豊かな津軽の街にたたずむイタリア・ルネサンス様式の洋館

旧弘前偕行社でのデートの参考になるよう、見学した皆さんからよく耳にする口コミ・感想をまとめてみました。

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こんな素敵な洋館が市内にあるとは知らず、本当にもったいなかった。今度は彼氏と来たい。
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館内に足を踏み入れると、明治の日本にタイムスリップした感覚になります。
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ここで結婚披露宴を開いたら、最高の雰囲気だと思う。彼女と相談しよう。
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館内も美しく復元されていて、駆け足ではなく、じっくりと鑑賞したい歴史建築です。

素敵な洋館が身近に存在していたことに感動した、明治の日本を体感できて感慨深い、というような声が目立ちます。また、男女や年齢を問わず、全般的に評価が高いことも印象に残りました。

旧弘前偕行社の料金・割引・予約・混雑しない日時

「旧弘前偕行社」の正面外観(夜間)

見学料・予約 【ガイド付き見学】
1人500円
  • 専属スタッフのガイド付で案内
  • 1日1回正午(12:00)スタート(所要約40分・定員20名)
  • 見学希望日の3日前までに、電話にて要予約(電話:0172-33-0588)

【一般見学(ガイドなし)】
1人300円
  • 見学可能時間は、9:00~16:00
  • 予約不要

※底部に金属加工がされている靴(スパイク)や、かかとが細く尖った靴(ピンヒール)等での入館は不可(床材保護のため)
※学校行事やイベント開催等により、見学不可となる場合あり
割引 以下のいずれかに当てはまる場合、一般見学(ガイドなし)の料金を100%割引(無料)
  • 18歳以下の方もしくは70歳以上の方(生年月日の記載がある資料を提示)
  • 障害者の認定を受けている方(障害者手帳を提示)
混雑しない日時 曜日を問わず、どの時間帯も比較的空いている

※金額はすべて税込表示です。

旧弘前偕行社の基本情報(アクセス・営業時間など)

住所 〒036-8185
青森県弘前市御幸町8-10
連絡先 (電話)0172-33-0588
(Web)公式サイト「お問い合わせ」ページ
アクセス 【公共交通機関】
(JR奥羽本線・弘南鉄道弘南線)「弘前」駅下車で徒歩約18分
(弘南鉄道弘南線)「弘前東高前」駅下車で徒歩約17分
(弘南鉄道大鰐線)「弘前学院大前」駅下車で徒歩約18分
(弘南鉄道大鰐線)「中央弘前」駅下車で徒歩約17分
(弘南鉄道大鰐線)「弘高下」駅下車で徒歩約11分

【車】
(東北自動車道)「大鰐弘前」ICより約13分
駐車場 無料駐車場あり
開館時間 9:00~16:00
休館日 毎週火曜日・8月12日~8月15日・年末年始
※具体的な休館日は、公式サイト「見学のご案内」ページの「ご利用カレンダー」をご参照
公式サイト http://www.h-kaikosha.jp/

※最新の情報は公式サイト等でご確認をお願いいたします。
※記事中の金額はすべて税込表示です。