【サウザーの婚活指南Vol.6】人生の師が僕に教えてくれた、恋愛の真髄
全6回のマッチングアプリ大学特別企画、「サウザーの婚活講座」は、ついに最終回。
彼女のいない歴=年齢のまっちゃん(仮名)が、恋愛の師として数多の男性から崇拝されるサウザーさん(@Fist_of_Phoenix)に出会って成長していく本当の話を、小説風のタッチでお届けします。
<これまでのあらすじ>
ついに”女性経験ゼロ”からの脱出を果たしたまっちゃんに、サウザーは「いつまでも俺がアレコレ教えているわけにはいかない」と言った。ついに、卒業の時が来たのだ。
最後のミッションとして伝えられたのは、「彼女の好き度を高めること」と「彼女以外にもうひとり、新たな女性を落とすこと」だった。
まっちゃんは、最後のミッションを無事にクリアできたのか。
- 第1回:彼女のいない歴=年齢。なぜ僕に恋愛経験がないのか。
- 第2回:「オス度を高める!?」人生を変えたい非モテ男が踏み出した最初の一歩
- 第3回:「女性には2つの人格がある」モテ男が教える”女の姿
- 第4回:「チャンス!せっかくできた彼女を「振るべき」衝撃の理由
- 第5回:脱・女性経験ゼロ!師から伝えられる最後の課題
「好き」の上書きよりも「好き」の新規作成が難しい
僕は、六本木のとあるレストランに来ていた。開放的なテラス席は、きらきらと輝く東京の夜景に包まれていて、僕は座面の深いソファでくつろぎながら「デートに使えそうなお店だな」と思う。
ついこの間まで、恋愛経験すらなかったというのに。
いつのまにか「デートに使えそう」なんて考えるようになった自分がおかしくて、笑ってしまう。
「まっちゃん、お待たせ。……ニヤニヤして、何かいいことでもあったのか?」
ひさびさに会ったサウザーさんは、また少し体が締まったように思える。僕は少しだけ姿勢を正して「ちょっと、考え事をしていて」と笑ってごまかした。
僕たちは、近くにいた店員を呼んで、ビールと軽くつまめそうなメニューを頼む。サウザーさんはメニューを決めるときも、店員を呼ぶ仕草もスマートだ。
僕がこの身のこなしを身に着けるには、まだまだ修行が必要だと改めて感じる。
「じゃあ、さっそく、まっちゃんの最後のミッションの結果を聞こうか」
運ばれてきたビールで乾杯をしたところで、サウザーさんが切り出す。
「毎週彩香ちゃんを抱く。無事に達成できました!」
「おっ、やったな!彼女の気持ちにも変化はあったか?」
「最初は感じていた”彼女の心の壁”みたいなのがなくなったのを感じます!」
「これで、女を惚れさせるために効果的なことがまっちゃんもわかっただろう。応用編として、女と距離を置きたいときは抱くのを一切やめれば疎遠になりやすいから、機会があったら試してみてくれ」
「なるほど」と返しながら、僕はサウザーさんの言葉をスマホのメモ帳に打ち込んだ。サウザーさんの言葉を細かくメモするのは、最初に会ってから半年ほど経った今も変わっていない。
「それで、もうひとつの、彩香ちゃん以外の女を落とすのは……。
すみません、うまくいきませんでした」
僕の言葉を聞いて、サウザーさんは渋い顔をして腕組みをした。
「一応、新しく3人の女性と会ったんです。
まあ、ひとりは会社の同期なんですけど」
「いいじゃないか。会社の同期にもトライするってのは見上げた根性だ」
「一応、新しく3人の女性と会ったんです。
会社の同期は無事に家に来てくれたものの、その後の関係などを考えたら少し怖くなってしまって、抱けませんでした……。
残りのふたりは、手をつなぐところまでは成功したんですが、”付き合っていない人の家に行くのはちょっと”とグダられてしまって」
恋愛のカードを切らなくても抱くことはできるはず
「会社の同期となると、セクハラと感じられるリスクもあるからな。
家にまで呼んだのに何もしないってのは少し情けないが、まあ無理に手を出す必要はないと思う」
同期の彼女とは、その後も変わらない関係ではある。ただ、もしかしたら彼女もサウザーさんと同じように、僕を『情けない、軟弱な男』だと感じてるかもしれない。
「あと、”付き合ってないと嫌”という女に対する回答だが……。毎回、付き合うだの付き合わないだの、恋愛のカードを切らなくてもいい。シンプルに”抱かせて!”と口説いても成功する」
僕は、困ったように眉を下げながら「付き合ってない人の家にいくのはちょっと…」と言った彼女たちの顔を思い浮かべる。
あんなに渋っていた彼女たちを、「抱かせて!」と言って家に連れ込むのは、なんとも難しいように感じた。
そんな僕の気持ちを見透かしたように、サウザーさんは話を続ける。
「前に、女には表層的な人格と深層的な人格があるって話をしただろ。
巧みな言葉で表層的な人格のご機嫌取りをするんじゃなくて、ド直球に本能に訴えかけて、深層的な人格を惚れさせるのが大切なんだよ」
「なるほど……」
表層的な人格と深層的な人格については学んだつもりだったのに、つい表層的な人格のご機嫌取りをしようとしていた自分が情けなくなる。
「実際、恋愛カードを切らずに女を抱いている男は多いしな。
最近のデータでは、20代男の54.7%、30代男の52.0%が恋人や結婚相手以外の女と体の関係を持っているらしいぞ」
「え!? 半数以上!?」
「まあ、これは金銭を対価とするサービスも含まれている数字だが……。
口で”付き合ってないと嫌”なんて言いながら、実際はそうじゃない女は少なくないはずだ」
結婚生活をうまくいかせるためにも、精神的コストは男が払え
「男女の関係では、男が精神的コストを払うことが大切だ」
「精神的コスト……ですか?」
聞きなれない言葉に、僕は首をかしげる。
「男が負担を背負って、男の責任で物事を進めるってこと。
たとえば、”付き合おう”と切り出すとか、体の関係を求めるとか。
精神をすり減らさなきゃいけないようなことは、すべて男が担うのが大切なんだよ」
「なるほど。
よく女性は、”告白は男から”とか”プロポーズは男から”とか、決断を男性に求めますしね」
「俺が見てきた限り、精神的コストを払う経験をしていない男は、結婚してもかかあ天下な家庭になるんじゃないか。
かかあ天下ってのは、女に決断をさせつづける……精神的コストを払わせ続ける関係だ。
女が不満を抱くから、離婚につながってもおかしくないと思うね」
確かに、決断力のない男が奥さんの尻に敷かれて、そのうち奥さんに浮気をされる……。
なんていうのは、ドラマや漫画はもちろん、現実世界でもよく見かける話だ。
「結婚生活をうまくいかせるためにも、
自分がリードして、精神コストを払う経験を積んでおくんだ。
それ以外にも、彼女に浮気現場を目撃されて修羅場になるとか、一種の修行みたいな経験もありだ。」
彼女の友達に手を出す経験を積んでもいいのか
「修行……ですか」
修行だとか、経験を積むだとか、そんな話を聞いていて、ふと僕はあることを思い出す。
「そうだ。」
サウザーさんに聞きたかったんですが、サウザーさんは彼女の友達を狙ったことはありますか?」
「彼女の友達か……俺はないな。
基本的に女って、自分よりも可愛い女を彼氏に会わせることはないし」
サウザーさんの言葉に「この子はまっちゃんに会わせたくない! だって可愛いんだもん」と、言っていた彩香ちゃんを思い出す。
「基本的に彼女より可愛い女には出会えないと思うが、
もし出会えたら乗り換えるべきだな。
顔が可愛い女は見ていて幸せになるから。
幸せになるためには、よりレベルの高い女に出会って結婚したほうがいい」
彩香ちゃんに何か不満があるわけではないが、不満があるわけではないからこそ、彩香ちゃん以上の子がいたら、もっと幸せになれるのかもしれない。
彩香ちゃんを傷つける可能性があるのは申し訳ない。でも、僕はもう、自分のためにも覚悟を決めたんだ。
「前にも言ったが、まっちゃんは経験が少なすぎる。いまどき出会いツールはたくさんあるから、これからもどんどん新規開拓していくんだ」
「はい。手をつないだり家に呼んだりするのも、最初はすごく緊張して。なかなかうまくできなかったんです。
けど、最近は慣れてうまくやれるようになりました。
経験を積めば積むほど自分のレベルも上がるのを感じます。
……頑張ります!」
サウザーさんの指導で生まれ変わった恋愛人生
「さて、俺が指導できるのは今日が最後だが……。
言いたいことは、すべて伝えきった」
最後という言葉に、僕の心臓がドクンと波打った。
そうだ。今日でサウザーさんの指導は最後になるんだ。
わかっていたはずなのに、心細い気持ちでいっぱいになる。
心に広がった寂しさをかき消すように、僕は少しぬるくなったビールをゴクゴクと飲んだ。
「本当に、この約半年間、ありがとうございました。
サウザーさんに出会って、僕の人生、ガラリと変わりました」
まっすぐに、目を見て伝える。
サウザーさんは少しビックリした顔をしてから、ふっと笑った。
「まっちゃん。初めて会ったときから、ずいぶん変わったよな。
この半年間は、どうだった?」
「そうですね……。
いままで僕は、恋愛市場に商品として並んでなくて。
”いつか恋に落ちて、愛を育んで幸せになるんだ”って妄想しながら、恋愛市場のことなんて何も知らなかったんです。
でも、サウザーさんに出会って、実際に恋愛市場に参入できて。
見える世界がこんなにも違うのかと驚きました」
「まっちゃんが泣きそうな顔をしながらバーで飲んでいた日が、懐かしいもんだな」
あの日の僕をからかうように、サウザーさんは笑う。
僕はまだ、ようやく恋愛市場に並んだばかりですけど……。
たくさん経験を積んで、自分のレベルも上げて。
心の底から”この人だ!”と思える女性と結婚したいです
たった半年前なのに、この半年間が濃すぎて。ずいぶん前のように感じられます。」
僕の決意表明に、サウザーさんはやさしく頷いた。
別れ、そして僕の恋愛はここから始まる
「この半年間、まっちゃんを見ていたから、俺も頑張らないとって気持ちになったよ。
まあ、俺が教えるのは今日が最後だが、別にこれが今生の別れってわけじゃない。
こうしてまた、酒でも飲もう」
そういって、サウザーさんは眼前に広がる、まぶしすぎるほどの夜景に目を向けた。
僕も、同じように目を向ける。
同窓会で、僕だけが馴染めなかったあの夜。
ひとり寂しく飲みなおしたバーでサウザーさんに出会ったあの夜。
東京の夜景は、あの夜と変わらず、ギラギラと輝いている。
でも、今日は、この街のきらびやかな夜に、僕もほんの少しだけ馴染めているような気がする――。
そして、僕の物語は、ここから始まるのだ。