
南部利康霊屋を拝観して東北で花開いた絢爛な桃山文化を体感するデート|青森県の史跡
この記事でご紹介するのは、青森県三戸郡南部町にある「南部利康霊屋(なんぶとしやすたまや)」で、青森県南部地方に伝わった桃山様式(※1)の華麗な霊廟建築を堪能して、地元の歴史・文化の豊かさを再発見するデートプランです。
(※1)装飾に金や漆を多様した豪華絢爛、かつ緻密な建築様式。日光東照宮や、二条城二の丸御殿が代表例。
南部利康霊屋は、北東北最大の中世武士団・三戸南部氏の居城だった「史跡聖寿寺館跡(しせきしょうじゅじだてあと)」に位置します。気分を変えてちょっと知的なデートを楽しみたい、地元を治めてきた南部家の息吹に触れたい、そんな二人にぴったりのスポットになると思います。
今回は、南部利康霊屋の特徴や魅力、楽しみ方などについて、南部町教育委員会社会教育課の主事・冷水さんにお話を伺いました。
東北きっての絢爛さ!南部利康霊屋は貴重な歴史遺産
▲覆堂の外観。「南部利康霊屋」は、この覆堂の中に大切に保存されている
国指定の重要文化財「南部利康霊屋」は、用材はすべて最高品質の木曽檜(ヒノキ)を使用し、江戸初期の豪奢(ごうしゃ)な桃山建築の様式を採り入れています。東北きっての絢爛さと称賛する方も多い霊廟なんですよ。
ここからは、そんな南部利康霊屋について、具体的に見ていきましょう。
国指定の重要文化財!桃山様式の粋を極めた南部利康霊屋
編集部
今回初めて南部利康霊屋を訪れていますが、覆堂(おおいどう)の中に大切に保護されていて、「三戸城」に向かって建っているのですね。黒漆塗りの丸柱や極彩色の文様、金銅製の飾り金具など、素人目に眺めても見事な造りの霊廟(霊屋)だと分かります。
最初に、南部利康霊屋について、初めて訪れるカップルにも分かりやすいよう、ご紹介をお願いします。
冷水さん
南部利康は、南部家27代目当主・利直の四男として、江戸初期の慶長13(1608)年に、三戸城中で生を受けました。父の利直が参勤交代で国元を離れている間は、三戸城内に居を構え、留守を預かって政務を取り仕切る有能な青年だったようです。
父・利直からの期待も大きな息子だったと伝わっていますが、病を患ってしまい、寛永8(1631)年に、惜しくも24歳の若さでこの世を去りました。早逝した息子・利康を悼み、利直がこの霊屋を建立しています。
▲「南部利康霊屋」の外観。絢爛豪華な桃山様式の霊廟
藩政期には、南部利康霊屋を守る「霊屋守」も置かれました。昭和28(1953)年には、国指定の重要文化財となっています。
霊屋は、漆塗りに極彩色で、鍍金金具を施しており、こちらの地方に伝えられた桃山様式による華麗な霊廟建築です。建設には、当時の三戸郷中(ごうちゅう)(※2)の1年分の収入高が充てられたと言われており、当時の南部家が大きな経済力を持っていたことを窺い知れますね。
(※2)江戸期における地方を指す。「郡中」とも言われる。
「史跡聖寿寺館跡」の中に位置!常設展示や休憩スペースも
編集部
こちら南部利康霊屋は、「史跡聖寿寺館跡」の一角にあるわけですよね?
冷水さん
そうです。南部利康霊屋は、「史跡聖寿寺館跡」の中に位置しています。聖寿寺館跡は、北東北最大の中世武士団であった三戸南部氏の、室町~戦国時代にかけての居城でした。
城館(じょうかん)(※3)からは、東北最大級の建物跡や、全国的にも貴重な高級陶磁器類、装飾金具類などが次々に発掘されまして、三戸南部氏の東北有数の権勢と格式を感じさせます。
(※3)城郭と住居を兼ね備えた、大型の建築物を指す。
毎年5~10月には、発掘調査を実施しており、カップルで発掘現場を見学いただくことも可能ですよ。
▲「南部利康霊屋」がある史跡聖寿寺館跡の発掘調査風景。歴史ファンは、見学もできる
そして、「史跡聖寿寺館跡案内所」の展示室には、南部氏の歴史を解説したパネルや、聖寿寺館跡から実際に発掘された食器や茶器、武具、食品などの一部が常設展示されています。展示品の中には向鶴やワンちゃんの土人形、絶滅した巨大ザメ、鯉、馬、鹿、クマなど、ところどころに動物の意匠や素材が隠れています。どこにあるのか探してみるのも面白いかもしれません。
休憩スペースも設けられており、デートの一環で訪れたお二人も、無料でご利用可能です。
▲「史跡聖寿寺館跡案内所」には、常設展示コーナーや休憩スペースも
▲「史跡聖寿寺館跡案内所」の常設展示コーナー。解説パネルと出土品の一部
また、史跡聖寿寺館跡案内所では、御城印を販売しています。こちら以外の、青森・岩手・秋田3県の南部氏関連施設でも、御城印を販売中です。お二人で御城印を集めつつ、のんびりと南部氏とゆかりあるお城巡りをされるのもいいかと思います。
▲史跡聖寿寺館跡案内所で受けられる御城印。昨今は、収集する方が増えている様子
拝観前に電話連絡を!「史跡ガイド」の解説付きで見学がおすすめ
編集部
南部利康霊屋のおすすめの鑑賞方法について、ぜひ教えてください。
冷水さん
南部利康霊屋の拝観を希望される方は、まずは史跡聖寿寺館跡案内所までお越しください。スタッフが、覆堂の解錠を致します。拝観時間は、毎日9:00~16:00となっておりまして、年末年始以外は毎日開館しています。
あらかじめお申し込みいただければ、「史跡ガイド」の解説付きでのご案内も可能です。南部利康霊屋と合わせて、史跡聖寿寺館跡をガイドと一緒に回って、三戸南部氏の歴史と絢爛な文化を存分に体感してみてはいかがでしょうか。
歴史の前提知識がない方にも分かりやすいように、建立時期や建築方法など、興味深いお話をさせていただきますよ。ガイド料は無料ですし、個人の方にも対応できますので、ご遠慮なくお申し込みください。
小規模でも奥が深い!南部利康霊屋の見どころ・魅力
▲「南部利康霊屋」の左右側面に配置された、金箔押しの花頭窓(かとうまど)。桃山様式の典型的なもの
編集部
冷水さんが思われる、南部利康霊屋の魅力・見どころは、どちらになるでしょうか?
冷水さん
何と言っても、南部利康霊屋それ全体が見どころです。ぜひ、じっくりと鑑賞して、味わっていただきたいと思います。
先にも触れましたが、漆塗りに極彩色で仕上げられて鍍金金具も施されており、青森県南部地方に伝えられた桃山様式の美しい霊廟建築が魅力です。
利康は申(さる)年の生まれで、幼名は「猿千代」を名乗りました。霊屋正面には猿の彫刻、内部には猿の絵が描かれているなど、猿にちなんだ装飾も特徴ですよ。この辺りも、見どころになってくるでしょう。
なお、霊屋の正面には、利康の生まれた地であり、政務を執っていた三戸城を望むことができます。
南部利康霊屋からのメッセージ
▲「南部利康霊屋」の天井(外陣)。42に仕切られており、一つ一つに美しい色彩で、四季の草花が狩野派的構図法で描かれている
編集部
これから南部利康霊屋を訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがあれば、ぜひお話しください。
冷水さん
北東北にありながら、三戸南部氏が全国の錚々たる戦国大名たちにも劣らない文化を持っていたことが肌感覚でも分かる史跡が、南部利康霊屋だと思います。史跡聖寿寺館跡とあわせて、一度足を運んでみてください。
編集部
南部利康霊屋は、歴史ファンの二人が訪れたら、とても興味深いスポットに映るでしょうね。そして、どちらかが南部町出身のカップルならば、改めて地元に愛着と誇りを感じるようになるだろうな、と思いました。
冷水さん、本日はお忙しい合間にお時間を作っていただき、どうもありがとうございました。
南部利康霊屋の口コミ・感想をチェック!
▲「南部利康霊屋」の内陣正面の様子。精緻な意匠が美しくて、思わず溜息が出そう
ここまで、南部利康霊屋の特徴や魅力について伺ってきました。デートの一環で訪れる際の参考になるよう、実際に拝観された皆さんの口コミや、感想についてもチェックしておきましょう。
- 「史跡聖寿寺館跡案内所」に電話をすると、スタッフさんが来て、入口を解錠してくれました。録音説明を聞きつつ拝観できるので、分かりやすいです。
- お願いした「史跡ガイド」さんに、とても親切に案内していただいた。当時の精一杯の経済力と技術力で造られた霊屋だと分かる。
- とても見事な装飾の霊屋でした。霊屋自体の写真撮影は不可なので、注意が必要です。
全体として、高評価の印象でした。贅を尽くした精緻な造りをじっくりと鑑賞できたことや、「史跡ガイド」さんの丁寧な解説・案内を受けられたことに、多くの方が満足されている様子が伝わってきます。
カップルがデートの一環で拝観したとしても、来てよかったと感じられるスポットではないでしょうか。
南部利康霊屋の料金・割引・予約
▲「南部利康霊屋」の桟板戸(さんいたど)。内部は外陣と内陣に分けられ、中仕切りになっているのは、四天王の描かれた桟板戸
拝観料金 | (高校生以上)一人300円 ※中学生以下は無料 ※「史跡ガイド」のサービスは、無料 |
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割引 | 要問合せ |
予約 | 拝観の受付は「史跡聖寿寺館跡案内所」へ。 ※拝観時間は、9:00~16:00 ※「史跡ガイド」のサービスは、要予約(電話:0179-23-4711) ※霊屋の写真撮影と、拝観時の喫煙は不可 |
※金額はすべて税込表示です。
南部利康霊屋の基本情報(アクセス・営業時間など)
住所 | 〒039-0104 青森県三戸郡南部町小向正寿寺62ー1 |
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電話 | 0179-23-4711 ※史跡聖寿寺館跡案内所にて対応※対応時間は、9:00~16:30 |
アクセス | 南部町役場南部分庁舎から車で約5分 青い森鉄道線の三戸駅から車で約7分 東北新幹線の八戸駅から車で約38分 |
駐車場 | 無料駐車場あり ※普通車12台分 |
拝観時間 | 9:00~16:00 ※史跡聖寿寺館跡案内所の利用時間は、9:00~16:30 |
定休日 | 年末年始(12月29日~1月3日) |
公式サイト | https://www.town.aomori-nanbu.lg.jp/index.cfm/10,380,44,188,html |
※最新の情報については、電話・公式サイト等でご確認をお願いいたします。
※記事中の金額はすべて税込表示です。