福島県檜枝岐村で暮らす良さとは?移住のための仕事・住居・支援情報

この記事では、東北地方への移住を検討している人に向けて、福島県「檜枝岐村(ひのえまたむら)」での暮らしに役立つ情報をご紹介します。

福島県の南西部に位置する檜枝岐村は、自然と伝統文化、そして人との繋がりを大切にする地域です。

「ゆさんする(楽しんで暮らす)」という村の言葉を体現するかのように、村民は穏やかな方ばかりで、移住者からも「みんなが顔見知りなので安心感がある」という声もあるほど。子育て支援が手厚く、かゆいところに手が届くサポートが充実している点も、子育て世帯から評判が良いです。

今回は檜枝岐村役場総務課の星さんにインタビュー取材させていただいた内容をもとに、檜枝岐村の特徴や魅力についてお伝えしていきます。

本日お話を伺った方
檜枝岐村総務課の星さんの写真

檜枝岐村 総務課

星 満さん

檜枝岐村が誇る3つの特徴

福島県檜枝岐村の場所を紹介する画像

福島県の南西部に位置する檜枝岐村は、日本有数の豪雪地帯にある村です。生活エリアは民家や商店などが立ち並ぶ全長3kmほどの範囲で、自然に囲まれたその場所にはのんびりとした時間が流れています。

そんな檜枝岐村が移住者から選ばれている特徴には、以下があげられます。

  • 尾瀬国立公園をはじめ、豊かな大自然の恩恵を受けて暮らすことができる
  • 福島県の重要無形民俗文化財「檜枝岐歌舞伎」を270年以上にわたり継承している
  • 児童生徒の給食費や修学旅行費が村負担9割など、子育て世帯への支援が手厚い

ここからは、それぞれの詳細や移住者から選ばれる理由について紹介していきます。

尾瀬の自然の恩恵を受け、自宅で温泉が楽しめる

福島県檜枝岐村の春の六地蔵の写真

檜枝岐村は、尾瀬国立公園の福島県側の玄関口として、各地から観光客が訪れる場所です。尾瀬国立公園は日本最大の山岳湿地として知られ、春のミズバショウや夏のニッコウキスゲ、そして秋の草紅葉など貴重なものも含めた多くの花々や美しい景色が見られます。

檜枝岐村の子どもたちは尾瀬国立公園で「尾瀬学習」を行うことになっていて、未就学児はハイキング、小中学生は山小屋での宿泊学習など、大自然を身近に感じながら自分たちが暮らす地域について学んでいくそうです。

また檜枝岐村では、尾瀬の玄関口に湧く温泉を自宅で楽しむことができます。旅館や民宿はもちろん、多くの一般家庭にも温泉が引かれているので、蛇口をひねれば温泉が溢れ出るそうです。

泉質は単純温泉(※1)で刺激が少なく(※2)、子どもから大人まで安心して入れます。
(※1)参考:一般社団法人日本温泉協会(尾瀬檜枝岐温泉
(※2)参考:温泉ソムリエ協会公式サイト(単純温泉について

農民芸能「檜枝岐歌舞伎」を270年以上守り続けている

「檜枝岐歌舞伎」とは、檜枝岐村で270年以上続く農民芸能です。1999年3月31日には、福島県の重要無形民俗文化財に指定され、檜枝岐村を訪れる観光客を魅了し続けています。一般的な歌舞伎とは違い、観客席は野外で神社に向けて建てられた舞台で夕方から上演されます。

そんな伝統文化を後世に伝えていくため、檜枝岐村の中学生たちは文化祭で本格的な歌舞伎のワンシーンを演じるそうです。指導するのは檜枝岐歌舞伎を演じている歌舞伎座「千葉之家花駒座」の役者であり、檜枝岐村に暮らす地元のみなさん。日中はほかの仕事をされ、役者と二足のわらじを履いていらっしゃいます。

身近な大人たちに指導してもらいながら、子どもたちは化粧練習をしたり、実際の衣裳を身に纏ったりと真剣に練習を重ね、自ら檜枝岐歌舞伎を演じることで次の世代へ伝承していくそうです。

福島県檜枝岐村の檜枝岐歌舞伎の親子写真
▲「千葉之家花駒座」は村民が役者の歌舞伎座なので、親子共演もできる

檜枝岐歌舞伎についてさらに詳しく知りたい方は、下記の公式サイトをチェックしてみてください。

公式:尾瀬檜枝岐温泉観光協会

子育て支援が手厚く、家計に嬉しいサポートが充実している

檜枝岐村で集まる親子の写真

檜枝岐村は子育て支援が手厚く、子どもたちを「村の宝」として地域全体で成長を見守っています。

妊娠中から子どもが大学を卒業するまでのあいだ、さまざまな制度が檜枝岐村の子育て世帯をサポートしてくれるので、実際に暮らしている方からは「中学校まではほとんど子育てにお金がかからない」という声が出るほど。

ここからはそんな檜枝岐村の子育て支援について、出産支援と子育て支援に分けてご紹介します。

”あったらいいな”を実現「檜枝岐村の出産支援」

妊婦通院費補助事業 村で母子健康手帳の交付を受けた妊婦や転入してきた妊婦に対し、通院費を補助
(※)母子健康手帳を持っている人のみ対象
特定不妊治療費補助事業 特定不妊治療を受ける際の費用を補助
(※)福島県特定不妊治療費助成の交付決定を受けている等の要件を満たす人を対象

参考:檜枝岐村移住サイト(村での子育て

檜枝岐村には妊婦健診を受ける場所がないため、妊娠中は村外の病院まで定期通院しなければなりません。車で2時間ほどの距離になると、多くの交通費が必要になりますが、檜枝岐村では妊婦1人につき50,000円の通院費を補助してもらえるそうです。

申請方法など詳しい情報については、以下の檜枝岐村村役場の公式サイトをご確認ください。

公式:檜枝岐村(妊婦通院費補助金交付事業について

嬉しいサポートが盛りだくさん「檜枝岐村の子育て支援」

出産祝金
  • 第1子:100,000円
  • 第2子:100,000円
  • 第3子以降:500,000円
(※)対象児の出産時に村民で、永住見込みの保護者に支給
児童館使用料無料 児童館の使用料が無料。有料で延長保育も実施し、満2歳以上の子どもの一時預かりにも対応
放課後子どもクラブ 利用料無料で、放課後に多様な体験や活動を支援する場所を提供
尾瀬寮費の減免 16~22歳までの就学生が2人以上いる家庭で、そのうち1人以上が尾瀬寮に入舎する場合には、入舎料の一部を減免
教育振興助成金 村民で2人以上の者が大学および高等学校等に就学し、1人以上が尾瀬寮および同負担程度の寮を利用しない家庭の保護者に対し、助成金を交付
奨学資金及び支度金貸与 村出身の生徒または学生で、経済的な理由により就学困難と認められる方に対し、奨学資金及び支度金を無利子で貸付
給食費補助事業 小・中学校給食費の9割を村が補助
各種学校行事旅費補助事業 児童生徒に対して各種学校行事で旅費が発生する場合、村から9割補助

参考:檜枝岐村移住サイト(村での子育て

檜枝岐村では、子どもたちが成長する過程ごとにさまざまな制度が設けられています。まず注目したいのは、「尾瀬寮費の減免」についてです。

檜枝岐村には高校がないため、進学する子どもたちは親元を離れて学校の近くの寮やアパートで生活をすることになります。

多くの子どもたちは会津若松市にある檜枝岐村村営の高等学校寄宿舎「尾瀬寮」を利用するそうですが、16~22歳までの2人以上の子どもが居る家庭のうち1名が尾瀬寮を利用する場合、入舎料の一部が減免されます。

高校生で地元を離れるのは親子ともに不安がつきまとうものですが、村営の寄宿舎であれば顔なじみも多く安心できますし、2人以上の子どもがいる世帯なら家計に優しいところも嬉しいです。

また「各種学校行事旅費補助事業」では、学校行事のなかでも保護者負担が多い「修学旅行」の旅費も対象になるので、なにかと出費がかさむ卒業シーズンを迎える家庭の負担軽減にもつながるのではないでしょうか。

ほかにも、檜枝岐村の児童や学生を対象とした「檜枝岐村奨学資金制度」などもあるので、詳細が気になる方は公式サイトからご確認ください。

公式:檜枝岐村(檜枝岐村奨学資金制度について

檜枝岐村総務課の星さんの写真
星さん

本来なら小中学校が複式学級(※1)になるところを、村雇用の教員を採用することで単式学級(※2)にしています。子どもたちの教育の質を高めるためのサポートを日々考えていますよ。

(※1)子どもが少ない小規模の小・中学校などに多い、数学年の子どもで編成された学級
(※2)同一学年の子どもで編成された学級

檜枝岐村の暮らしに関する情報

福島県檜枝岐村の冬の写真

それでは、檜枝岐村の暮らしに関するデータを見ていきましょう。

気候 1月:平均気温−3.8°C
8月:平均気温20.3°C
※参考:気象庁ホームページ
人口 508人
(2023年9月末時点)
病院 診療所:1
学校 小学校:1、中学校:1
交通 路線バス(会津バス)

※人口以外の数字は2023年12月時点のものです

路線バスは1日に上下線2本ずつ運行のため、檜枝岐村で暮らしていくためには車が必須と言えるでしょう。

買い物できる場所は日用品が揃う檜枝岐村農協のみなので、週末には車を1~2時間ほど走らせ近隣都市の大きいスーパーでまとめ買いをする家庭が多いとのこと。星さんによると、ネットショッピングも併用すれば、とくに不便なく生活できるそうです。

総合病院や妊婦健診などの受診は車で2時間ほどかけて通院する必要がありますが、風邪症状などであれば檜枝岐村にある診療所で診てもらうことができます。休診日を除いた平日と土曜日は医師が常在しているので、体調が悪くなった段階ですぐに医療機関にかかることが可能です。

村には保育園や幼稚園はないものの、村内には満3歳から6歳までの子どもが無料で利用できる児童館があります。現在は、満2歳以上の子どもが半日利用や一時預かりも利用できるそうなので、子育て中の息抜きにも活用できるのではないでしょうか。

仕事:リモート環境も◎村での仕事は村役場で紹介してもらえる

檜枝岐村の正社員求人を大手の求人情報サイトで検索したところ、約10件の求人が見つかりました。また、車で30分程度の通勤圏(25km圏内)まで範囲を広げると、約100件の求人情報がありました(2023年12月時点)
※参考:求人情報の一例(檜枝岐村のみ
※参考:求人情報の一例(檜枝岐村から25km圏内

星さんにお話を伺ったところ、檜枝岐村内には企業がないため、旅館や食堂、特産品の加工販売やイワナの養魚場など観光業や公共施設で働いている人が多いとのこと。

移住を考えている人には、求人情報サイトには取り上げられていない仕事を紹介していただくこともできるそうなので、気になる方は檜枝岐村村役場の総務課にお問い合わせください。

公式:檜枝岐村移住サイト(お問い合わせページ

また、檜枝岐村内は光回線が開通しているので、リモートワークが可能です。檜枝岐村で自分に合った仕事がなかなか見つからない方でも、リモートワーク可の職業を選択すれば、自然に囲まれながら好きな仕事をすることができるでしょう。

檜枝岐村総務課の星さんの写真
星さん

現在、ワーケーションができる施設を準備中で、2024年にオープン予定です。お試し移住にも使っていただけるようなものを考えています。

住まい:まずは「村営住宅」豪雪世帯の暮らしを体験しよう

福島県檜枝岐村の雪道の写真

檜枝岐村の賃貸物件を大手住宅情報サイトで検索したところ、該当するデータはありませんでした(2023年12月時点)

というのも、檜枝岐村は山に囲まれた平地が少ない場所なので、すでにある住宅や村営住宅で宅地が埋まっています。

また、檜枝岐村は豪雪世帯なので、近隣住宅に配慮しながら行う雪かきがとても大変とのこと。そのような理由から「移住先ですぐにでも一軒家を購入して暮らしたい」という人にあまり向いていません。

星さんからは「いきなり一軒家を持つのではなく、檜枝岐村の冬の暮らしを知ってもらう意味でも、まずは村営住宅へ入居される方が良い」と伺っているので、まずはリーズナブルな価格で利用できる村営住宅で檜枝岐村ライフを始めた方が良さそうです。

単身者向け・世帯向けの2タイプ「村営住宅の家賃」

村営住宅は単身者向けと世帯向けのものがあり、それぞれ家賃が異なります。

単身者向けの家賃は12,500~16,000円、世帯向けの村営住宅の家賃は25,000~55,000円となっており、住宅によっては車庫使用料や駐車場使用料、暖房機使用料が別途必要です(2023年12月時点)

村営住宅についての詳細は、下記の公式サイトをチェックしてください。

公式:檜枝岐村(住宅情報ページ

檜枝岐村へ移住した人の口コミや体験談

福島県檜枝岐村に移住者の口コミトップ画像

檜枝岐村の魅力や暮らしについてご紹介しましたが、やはり気になるのはリアルな口コミなのではないでしょうか。ここでは、実際に檜枝岐村に移住した子育て世帯の方から寄せられた声や体験談を見てみましょう。

  • おむつやミルクが村内で購入できなかったり、近くに小児科がなかったりしますが、あまり不便だと感じていません。「困ったときはお互いさま」の精神で貸し借りをするなどして、自然と助け合える環境のおかげだと思っています。
  • 子育てがしやすく、自宅から車で2~3分の場所に温水プールやスキー場、釣り堀があるので、身近に子どもたちと一緒にアクティビティを楽しめる場所があるのは嬉しいです。
  • 公共料金が安く、子育て支援も充実しているので、家計に優しい場所だなと感じています。子育てしている全員がママ友で楽しいですし、悩みがあるときも気軽に相談できる関係性なので心強いです。

檜枝岐村では、村民みんなが顔見知りであることから、人との繋がりに魅力を感じている方が多いようです。

また「公共料金が安い」という口コミに関しては、福島市と檜枝岐村の上水道料金を一般家庭に多い口径20mmで20㎥の月額で比較したところ、檜枝岐村の方が約3,000円安いという結果が出ています。

福島市の上水道料金(※1) 5,093円
(2023年12月時点)
檜枝岐村の上水道料金(※2) 1,975円
(2019年10月1日時点)

※1 参考:福島市の上水道料金
※2 参考:檜枝岐村の上水道料金

星さんによると、夏場は涼しくエアコンをつけずに生活することができるそうなので、そういった意味でも「公共料金が安い」という声が多く寄せられているのかもしれませんね。

檜枝岐村への移住は村役場に相談しよう

福島県檜枝岐村で外遊びする子どもたちの写真

檜枝岐村への移住が気になる方は、檜枝岐村村役場の総務課に相談しましょう。

先にご紹介してきたように、檜枝岐村での仕事や住まい探しには檜枝岐村村役場の方への相談が欠かせません。「いきなり電話をするのはちょっと…」という方でも、移住サイトのお問い合わせページから相談内容を送信することができるので、少しでも檜枝岐村の移住に興味を持っている方は、ぜひ活用してみてください。

公式:檜枝岐村移住サイト(お問い合わせページ

檜枝岐村総務課の星さんの写真
星さん

冬期の村暮らしを体験したい方は、短期滞在していただくこともできますのでご相談ください。

檜枝岐村への移住に関するお問い合わせ

檜枝岐村村役場前で撮られた男性職員3名の写真▲インタビュー取材に応じていただいた星さんと、檜枝岐村村役場のみなさま

檜枝岐村への移住については、村役場の総務課までお問い合わせください。

担当課 総務課
住所 〒967-0525
福島県南会津郡檜枝岐村字下ノ原880番地
電話番号 0241-75-2500
公式サイト https://www.vill.hinoemata.lg.jp/index.php
移住サイト https://hinoemata.info/iju/index.php