日之影町への移住はどう?暮らし・仕事・住居・支援内容を解説

この記事では、地方移住を検討している人に向けて、宮崎県西臼杵郡にある日之影町の暮らしを紹介します。

日之影町は宮崎県の最北山間部に位置する、山と川に囲まれた自然豊かなまち。訪れた人々を魅了する山々やV字渓谷といった自然景観はもちろんのこと、神楽や農村歌舞伎等の伝統芸能、竹細工などの伝統工芸品など、地域に脈々と受け継がれてきた文化や芸術が残っているのも特徴です。

そんな日之影町での暮らしの魅力をはじめ、移住支援制度などを詳しく解説していきます。

本日お話を伺った方
日之影町地域振興課課長補佐の関雅人さん

日之影町 地域振興課 課長補佐

関 雅人さん

日之影町の特徴

宮崎県日之影町の暮らしの特徴

日之影町は宮崎県最北部に位置する人口約3,300人のまち。まちの面積の約9割を山林が占める豊かな自然が特徴です。

日之影町を象徴する景観が、大小の河川が山を削って流れ込んだことにより形成された深いV字型の渓谷です。初めてまちを訪れた人からは「切り立つ山々の急な斜面や緑に驚いた」という声も上がるほど。河川の両岸が断崖となっている高低差のある地形の中で数々の集落が形成されています。

そんな水と緑に恵まれた日之影町では、棚田を活用した小規模農業がさかんです。2015年12月には伝統的な農業・農法や土地景観を評価され、日之影町を含む高千穂郷・椎葉山地域が「世界農業遺産」に認定されました。神楽や農業歌舞伎など、各地で伝統文化や芸術が大切に継承されているのも、日之影町ならではの特徴です。

そんな日之影町の移住をおすすめしたいのは次のような方です。

  • 豊かな自然を活かした、都会ではできない体験がしたい
  • 地域の人々と助け合いながら暮らす田舎暮らしを楽しみたい
  • 移住した先で農業をはじめたい
  • その土地ならではの伝統文化や芸術を大切にしているまちに魅力を感じる

ではなぜそのような人に日之影町をおすすめしたいのか、日之影町の暮らしの魅力を3つ紹介します。

豊かな自然の中で、ここでしかできない楽しみ方ができる

宮崎県日之影町の青雲橋
▲日之影町のシンボル「青雲橋」

日之影町の特徴は、何といっても深いV字の渓谷を中心とした広大な自然景観にあります。日之影町にはこのV字渓谷を結ぶ日本有数の規模を誇る橋が数多く架かっており、特に町中心部に架かる「青雲橋」はまちのシンボルとなっています。

日之影町は2006年に九州で唯一森林セラピー基地(※)の認定を受けており、6つのウォーキングコース「森林セラピーロード」を整備しています。豊かな森林の癒し効果を受けながらウォーキングをすることで、心身ともに健康になれそうです。
※森林セラピー:森の持つ癒し効果を科学的に解明し、心身の健康づくりに活かす取り組みのこと

宮崎県日之影町の森林セラピーの様子

もちろんアクティブに自然を堪能することもできます。実は日之影町は、九州の中でも屈指のボルダリングスポットとして注目を集めているのです。見立渓谷内には巨岩(ボルダー)が点在しているため、さまざまなスポットでボルダリングを楽しむことができます。

宮崎県日之影町のボルダリングの様子
▲自然の巨岩を楽しめるボルダリングスポットが多数。日之影町仲組地区の仲組公民館にはクライミングウォールも整備

農林畜産業が盛ん。農業・林業移住にもおすすめ

日之影町の基幹産業は農林畜産業です。水稲をはじめ、「ひのかげくり」と呼ばれる栗、椎茸、ほおずき、高千穂牛など数々の特産品があります。

中でも品質の良い栗を活かした栗きんとんはふるさと納税の返礼品でも大人気。そんな自然と水の恵みを生かしたおいしい食を日常的に楽しむことができるのは、日之影町ならではの魅力と言えるでしょう。

そんな日之影町では、農業移住の希望がある人にも適した仕組みを整えています。町が出資する農業法人「ひのかげアグリファーム」では、農業に興味を持つ学生や若い世代の方を対象とした就農体験「日之影町ワーキングホリデー事業」を実施しています。栗や柚子の収穫や稲刈り体験ができ、最短2週間から参加可能。日之影町での農業を体験できる貴重な機会となるのではないでしょうか。

また、「ひのかげ就農奨励金」や、農業経営などに関して包括的な相談に乗ってもらえる「農地相談員」など、新規就農者への町独自施策も充実されています。

ひのかげ就農奨励金 町内居住者やUIターン者等を対象に、新規就農者への助成を行う制度。
助成金:100万円(夫婦で就農した場合は150万円
※15歳以上65歳未満の方を対象

日之影町では林業も盛んなため、農業だけでなく林業移住者の受け入れ実績も少なくありません。町でも担い手確保のための支援を行っているため、林業移住を検討されている方もチェックしてみてください。

林業就労条件等整備事業 素材生産業者の新規雇用に対する雇用保険、健康保険、厚生年金を助成する制度。
林業担い手創出事業 町内の林業事業体を対象とした、新規雇用職員の3年間給与の一部を助成する制度。

まちの誇りと魅力を形成する伝統文化・芸術や伝統工芸

日之影町では神楽や歌舞伎など、古くから伝わる伝統文化・芸能が各地で受け継がれています。大人(おおひと)歌舞伎と呼ばれる歌舞伎は九州唯一の農村歌舞伎で、毎年春と秋に公演があります。また、毎年11月から2月にかけては、実りへの感謝と五穀豊穣への祈願として町内の各地で神楽が奉納されています。

また日之影町では文化・芸術のみならず、竹細工やわら細工など、伝統工芸品も有名です。この日之影町の誇る技術は、それに魅了されて移住し職にされている方もいるほどで、世界的にも価値が認められています。

受け継がれてきた技術や芸術があることは、そのまちに住むことへの誇りや愛着にもつながります。その誇りを感じながら暮らすことができるのは、日之影町ならではの魅力と言えるでしょう。

日之影町の暮らしに関する情報

実際に日之影町に住むなら知っておいた方が良い、気候や病院などの暮らしに関する情報をまとめました。

気候 8月の平均気温:27.0℃
1月の平均気温:6.8℃
※参考:気象庁ホームページ(日之影町内に観測地点が無いため、延岡市地点を参照)
人口 約3,300人
※2023年9月現在(町公式サイト参照)
病院 病院:1(日之影町立国民健康保険病院)
歯科医:1
交通 町内に鉄道はないため、最寄り駅はJR延岡駅となる。町内の公共交通での移動はコミュニティバス、タクシーの利用が必要。

【車】
延岡方面:所要時間約40分
宮崎方面:所要時間約2時間
近隣都市 延岡市、高千穂町、美郷町、諸塚村、大分県豊後大野市、大分県佐伯市

日之影町は平均気温が15.5℃、年間を通して比較的過ごしやすい気候です。ただし急峻な地形であることから、台風や集中豪雨の影響を受け土砂崩れなどの災害発生が起きやすいという特徴もあります。雄大な山々に囲まれて暮らせる魅力がある一方で、自然と共存しながら暮らしていく上でのデメリットも事前に把握しておくことが重要です。

国道218号線を中心に、スーパー、コンビニなどの生活に必要な施設は揃っており、日用品の買い物には大きく不便はありません。ただし大型ショッピング施設は町内にないため、延岡市や高千穂町まで出かける人も多いそうです。

子どもをのびのびと育てられる子育て環境あり!ICT教育など特徴ある教育制度も

学校・保育施設 【保育施設】
保育所:2か所

【学校】
小学校:3校
中学校:1校

日之影町では出産祝い金の支給や、中学校卒業までの医療費無料化など、子育て世帯に対する金銭的な補助制度が整っています。「子ども家庭総合支援拠点」という包括的な相談窓口も身近にあるため、移住先での子育て不安も軽減されるのではないでしょうか。

また、自然の中でのびのびと子どもを育てることができるのも日之影町ならではの魅力です。夏休みには子どもが自然に親しむことができる「山の学校」が開催されるなど、山と川に囲まれているからこその遊びを子どもに体験させることができます。

宮崎県日之影町で開催された「山の学校」の様子
▲追川上地区で開催された「山の学校」の様子

子どもの教育面でも特徴ある取り組みが進められています。日之影町内の学校では自宅の勉強にも活用できるタブレット端末が一人1台支給されるなど、ICT教育にも重点が置かれています。

さらに日之影中学校では地域と協働したキャリア教育も実施されています。中学3年生の生徒が行う「ひのかげ近未来会議」は、地域の人と協働しながら日之影町の課題と向き合い、主体的に探究できる場です。子どもの郷土愛の醸成、考える力の育成につながる教育の場があるのは嬉しいポイントです。

宮崎県日之影町日之影中学校の「ひのかげ近未来会議」の様子
▲「ひのかげ近未来会議」では独創性のあるアイディアが数々生まれている

集落ごとに特徴あり。希望する暮らしをイメージした上で移住する地域の選択を

宮崎県日之影町の中川集落にあるチューリップ畑

日之影町には112の集落が存在し、地域によって特徴が異なります。

国道沿いは店舗が集結しているため比較的生活の利便性も高くなっていますが、山の上の方にある地域は不便を感じることも少なくないようです。住むのには東西に通る国道から離れないエリアの方がおすすめですが、周りにあまり住宅のない地域を希望して移住する方もいるそうです。

ただし、いずれの集落にも温かい人たちが多く、助け合いながら生活している環境があります。山間部の人口が少ない集落でも移住者を温かく受け入れてくれる雰囲気があるそうです。

各集落ではそれぞれ固有のしきたりやイベント、行事などがあります。例えば中川集落では地区住民とボランティアが協働で稲刈りを終えた田んぼに約3万本のチューリップを植え、見頃を迎える4月には毎年お祭りを行っています。

移住の際には日之影町の各集落の特徴を見て、実際の生活を想像した上で移住先の地域を決めることをおすすめします。

【仕事】町内外に雇用あり。農業・林業に加え起業支援も

日之影町の正社員の求人数を大手求人サイトで調べると、約40件の正社員の求人がヒットしました。30分圏内で通勤できる範囲で近隣も含めて調べると、約300件の正社員の求人数がヒットしました。(2023年9月現在)
※参考:求人情報の一例(町内)
※参考:求人情報の一例(25km圏内)

実際に、延岡市や高千穂町など町外の企業に勤務している人も多いそうです。旧役場庁舎跡を活用して整備が進められている新たな施設にはコワーキングスペースの整備も予定されているため、リモートワークをされている方も働きやすくなるのではないでしょうか。

先述した通り、日之影町に移住して農業や林業といった一次産業に従事する方も少なくありません。またカフェをオープンする方など移住を機に起業する方もおり、働き方には多様な選択肢があります。起業を考えている方は補助金の制度もありますので、参考にしてみてください。

日之影町ふるさと起業応援補助金 日之影町内で意欲ある個人、法人が起業・創業するのに際しかかる費用の2分の1以内を、100万円を上限として(貸店舗の場合は70万円)補助する制度。

【住まい】住まいに関する補助制度が充実

日之影町内には賃貸物件の数は少なく、タイミングによっては空きがないときもあります。空き家バンクに登録されている物件も現在は多くはありませんが、空き家購入による補助金の支給もあるため、良い物件が出てくるタイミングを待つというのも一つの手かもしれません。

日之影町では空き家購入補助をはじめ、住まいの取得に関する充実した補助制度があります。町内居住者に対しても補助があるため、補助金を利用したリフォームや住み替えも念頭に置きながら住まい探しをしてみるのが良いでしょう。

移住者居住支援事業 移住者の住宅確保を支援するため空き家の購入または改修、家財道具処分、住宅の新築等を行う場合に費用の一部を補助する制度。

【補助率】
  • 空き家購入・改修:2/3(上限80万円)
  • 住宅新築:1/10(上限100万円)
  • 既存住宅改修:1/2(上限50万円)
  • 家財道具処分:2/3(上限15万円)
※子育て世帯は別途加算措置あり
空き家活用定住促進事業 町内在住者が空き家へ移り住む(転居する)ため空き家の購入または改修、家財道具処分を行う場合に費用の一部を補助する制度。

【補助率】
  • 空き家購入・改修:1/2(上限50万円)
  • 家財道具処分:2/3(上限15万円)
三世代同居支援事業 親世帯と子・孫世帯の多世代による暮らしの支え合いを実現するために、住宅の新築や既存住宅等の改修を行う場合に費用の一部を補助する制度。

【補助率】
  • 住宅新築:1/10(上限80万円)
  • 既存住宅改修:1/2(上限50万円)

日之影町への移住者の声

宮崎県日之影町の移住者の声

ここでは、実際に日之影町に移住された方の声を紹介します。

  • 日之影町では新鮮な野菜が手に入る。育てた方の顔が分かるのでよりおいしく感じられる
  • 集落の方と仲良くなり、畑仕事を手伝ったり地元の特産品を教えてもらったりしている
  • 日之影町でのボルダリングは岩場だけでなく川もあるので、他のボルダリングエリアとは全く違う魅力がある。川で泳いだり水遊びをしたりできるのも癒される
  • 自然が素晴らしく、良い人が多い。
  • 温かく親切な方々の中でおいしい食べ物をいただき、毎日楽しく過ごしている

日之影町ならではの自然や、そこで育まれた食べものに魅力を感じるという声が多く聞かれました。そして特徴的なのは、人の温かみを伝える声。集落で助け合う文化のある日之影町では、温かい人の中で楽しく田舎暮らしができる環境があるようです。

日之影町への移住ステップ

ここからは日之影町への移住を考える方に向けて、移住に向けて取るべき具体的な行動を紹介します。

まずは日之影町を実際に訪れてみよう

日之影町への移住に興味が出た方は、まずは日之影町を訪れ、日之影町ならではの良さを体感してみましょう。日之影町は高低差のある地形で集落ごとの生活利便性の差も大きいため、いろいろな集落を見ておくことをおすすめします。

日之影町には魅力的な宿泊施設も多くあります。例えば「TR列車の宿」は、全線廃止となった旧高千穂鉄道の2車両を宿泊施設として生まれ変わらせたもの。車窓から見える日之影町の自然風景を楽しみながら、列車に泊まるという珍しい体験ができます。

宮崎県日之影町の「TR列車の宿」
▲鉄道好きにはたまらない、日之影町の自然を見ながら列車の中に泊まることができる「TR列車の宿」

ワーケーションがてら訪れたいなら、日之影キャンプ村がおすすめ。管理棟にワーキングスペースがあるため、仕事とアウトドアの遊びを両方楽しむことができます。

宮崎県日之影町の「日之影キャンプ村」
▲自然の癒しを受けながら仕事もはかどる「日之影キャンプ村」でのワーケーションがおすすめ

移住定住コーディネーターなどの相談窓口を利用

日之影町には移住定住コーディネーターという、移住・定住の支援をしてくれる方々がおり、住居等の情報提供や、空き家や地域の人とのマッチングなどの役割を担ってくれています。

また町役場の地域振興課でも移住相談を受け付けているため、移住に際して疑問や不安があればまず相談してみるのが良いでしょう。

移住定住コーディネーターは移住前だけでなく、移住後も地域にとけ込めるようサポートしてくれます。移住前も移住後も心強くフォローしてくれる体制があることは、日之影町への移住を決める後押しとなってくれそうです。

日之影町への移住に関するお問い合わせ

担当課 日之影町 地域振興課
住所 〒882-0401
宮崎県西臼杵郡日之影町大字七折9079番地
電話番号 0982-87-3800(代表)
0982-87-3801(直通)
対応時間 8:30〜17:15
公式サイト http://www.town.hinokage.lg.jp/