福島県浪江町への移住!豊かな自然と充実の支援制度で新生活をスタート
この記事では、地方移住を検討している方に向けて福島県浪江町(なみえまち)の魅力や生活に役立つ情報を紹介します。
浪江町は福島県沿岸部のほぼ中央に位置するまちです。東日本大震災の原発事故による全町避難がありましたが、東北の復興のための「福島国際研究教育機構(F-REI・エフレイ)」の設置や駅周辺の再構築が進んでいて大きな発展が見込まれています。
大手出版社が発行している田舎暮らしのハウツー本による「2023年版 第11回住みたい田舎ベストランキング」では、各部門で上位を獲得(※)しました。
そんな浪江町の魅力について、浪江町移住・定住相談窓口を運営している一般社団法人まちづくりなみえの菅野さんに話を聞きました。
※参考:浪江町が2部門で1位!2024年版「住みたい田舎ベストランキング(人口1万人未満の町)」
浪江町の魅力:移住を考える人が知るべき3つの特徴
浪江町は利便性の高い市街地と、海・山・川に囲まれた自然豊かなエリアに分けられます。商業の町で古くから人の流入が多いため、移住者を迎え入れるオープンな地域柄も特徴的です。
2023年現在、商業施設やコミュニティ施設を集結する駅前再開発計画が進行しています。さらに、町内の産業団地には大手企業が次々と進出するなど将来性が期待されているまちです。
以下では、浪江町のこれらの魅力をさらに詳しく解説します。
特徴1:コンパクトな市街地で便利な暮らしを実現
▲請戸川リバーラインの桜。請戸川の土手1.5㎞にわたって約120本のソメイヨシノが咲き誇る。
浪江町の魅力は町内の利便性の良さです。
中心市街地は住宅が隣接しています。スーパー、コンビニ、診療所、薬局(令和5年10月オープン予定)、郵便局、4つの金融機関、役場が徒歩10分圏内に集結しているので、用事は近場で完結できます。
スーパー以外に「道の駅なみえ」や仮設商業店舗「まち・なみ・まるしぇ」があり、食料品や一般生活品の買い物には困りません。ただし、大型商業施設や大きな病院はないため、車で25分程度の南相馬市へ行きましょう。
市街地から車で5分~10分走ると田園風景が広がります。車で15分の圏内に海・山・川がすべてそろっているので、豊かな自然環境を求める人は市街地から離れたエリアがおすすめです。
移住目的や理想のライフスタイルに合わせて、住むエリアを選べる点も浪江町の魅力でしょう。
特徴2:人とのつながりが生む豊かな暮らし
浪江町は生活に必要な施設はそろいますが、都会のように娯楽施設や仕事などが豊富ではありません。そのため、選択肢を多く持ちたい人は不便を感じるかもしれません。
しかし、浪江町の良さは物質的な豊かさではなく「人」です。
商業で栄えてきたまちだからこそ、新しいものを生み出すクリエイティビティに富んだ人たちが多く活躍しています。商店街の中心「新町通り」に新店舗や地域のイベントが増えていることからも、住民の手によってまちが創生されていると実感できるでしょう。
そして、古くから人の流入が多い土地柄、移住者に対してオープンです。定期的な環境整備「クリーン作戦」を実施して町民の交流促進に励んでいます。
このような地域柄も一つの要因となり、宝島社が発行する『田舎暮らしの本』(2024年2月号)の「2024年版 第12回 住みたい田舎ベストランキング」で、浪江町は「全国人口1万人未満の町の部」総合部門第1位(※)を獲得しました。
※参考:浪江町が2部門で1位!2024年版「住みたい田舎ベストランキング(人口1万人未満の町)」
2022年には移住窓口へ問い合わせが約260件あり、そのうち30人程度が転入しています。人口が少ないからこそ「良い町にしよう」という住民の意識が高く、人を受け入れる温かさがあります。
クリーン作戦をきっかけに親睦が深まったという方が多くいます。被災地だからこそ環境整備の話に関心を持って参画する姿勢も重要ですね。
特徴3:未来志向の再開発で町の発展に期待
▲浪江駅周辺グランドデザイン。さらに利便性が高まって観光客や移住者が増えると見込まれる
2023年現在、浪江駅西側には、町の方々が交流できる複合施設「ふれあいセンターなみえ」が整備されています。今後、駅東側では浪江駅周辺グランドデザイン計画による様々な施設整備(交流施設・商業施設・公営住宅・交通広場・芝生広場他)が進められ、町のにぎわいの中心的な場所となる予定です。
さらに、東北の復興のための「福島国際研究教育機構(F-REI・エフレイ)」(※)も建設予定で、国の研究機関や多くの研究者が国内外から浪江町に訪れることが見込まれます。「地域活性化の中心核となるのでは?」と期待を寄せる住民も少なくありません。
また、「浪江町棚塩産業団地」には「福島水素エネルギー研究フィールド」「福島高度集成材製造センター」「福島ロボットテストフィールドの滑走路」といった施設が整備され、様々な業界の企業が進出しています。今後も大手企業が増える見込みなので、就職先の選択肢が広がる可能性が期待できるなど将来性が感じられます。
浪江町での生活:子育て・仕事・住まいの具体的情報
▲福島県浪江町の航空写真。まちの中心部に住宅や施設が密集している
「浪江町は東北地方だから雪が多い?」「子どもたちが遊べるおすすめの施設を知りたい」といった疑問を解消するために、浪江町の基本情報をまとめました。子育て・住まい・仕事などの暮らしに役立つ情報もわかります。
※2023年9月時点
気候 | 1月平均気温:2.2℃ 8月平均気温:24.0 ℃ ※参考:気象庁 |
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人口 | 人口:2,106人 世帯数:1,314世帯 (2023年8月31日時点) ※浪江町に住んでいる人の数(町外へ避難されている方は除く) |
病院 | ・診療所:1院 ・歯科:2院 |
学校 |
・認定こども園:1園 |
レジャー・観光 | ・道の駅なみえ ・ふれあいげんきパーク ・丈六公園 ・請戸漁港 ・震災遺構・浪江町立請戸小学校 ・コスモスガーデン ・立野地区のひまわり畑 ・請戸川リバーライン ・大聖寺境内文化財群 ・相馬野馬追祭(7月) ・十日市祭(11月) |
交通 |
【飛行機】 |
都市部までの所要時間 | 【福島市】 ・車:約1時間30分 【仙台市】 ・電車:約1時間10分 ・車:仙台東部道路・常磐自動車道利用で約1時間15分 【東京】 ・電車:約3時間20分 ・車:常磐自動車道利用で約3時間40分 |
近隣市町村 | 南相馬市、飯舘村、川俣町、葛尾村、田村市、大熊町、双葉町 |
浪江町は太平洋に面しているため北西からの季節風は強いですが、年間の平均気温や日照時間は首都圏とさほど変わりません。雪も日中には溶ける程度しか降らず、過ごしやすい気候です。
町内には観光・レジャー施設も多数あり、復興のシンボルである「道の駅なみえ」には、県外からも多くの観光客が訪れます。
▲ 買い物や食事、休憩ができる「道の駅なみえ」。レストランでは請戸漁港で水揚げされた新鮮な魚介類を使った刺身や海鮮丼が味わえる
▲2021年に道の駅内にオープンした地場産品販売施設。新鮮な野菜や地酒、特産品が手に入る。
立野地区のひまわり畑は、7月~8月になると一面が元気なオレンジ色に染まります。
▲立野地区のひまわり畑。春は菜の花、秋にはそばの花など四季折々花が咲き誇る。
古くから水産業の拠点として発展してきた請戸漁港では、ヒラメやカレイ、ホッキ貝などが水揚げされます。毎年1月2日に大正時代から続く伝統行事「請戸漁港出初式」を開催して、1年の海上安全と豊漁を祈願します。
▲請戸漁港出初式。震災前は約100種類もの水産物が水揚げされ、高い評価を受けてきた
その他、海が一望できる「丈六公園」や、大聖寺銅鐘などの文化財が集まる「大聖寺境内文化財群」など、大人が楽しめるスポットも少なくありません。
子育て・教育:地域ぐるみのサポートと充実の施設
▲ふれあいげんきパークのキッズスペース。木製のおもちゃから遊具までそろう
浪江町には、育児の負担を軽減する支援金や子どもたちが遊べる施設があります。
▼子育てに関する支援制度
浪江町立学校児童生徒就学支援金交付 | 町立学校に通う子どもの学用品・通学用品費など支給 ・項目によって支給上限あり |
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浪江町立なみえ創成小・中学校制服等支給 | 小・中学校で使用する制服・運動着を支給 ・制服など:中学生(1回) ・運動着など:小・中学生(年1回) |
子ども医療費助成事業 | 18歳までの子どもの医療費を一部補助 |
子どもたちの遊び場といえば、交流センター内にある「ふれあいげんきパーク」です。乳幼児から小学生まで利用できる屋内施設で、児童向け図書がそろう図書館や屋外広場も併設されています。
ポケモンのキャラクター『ラッキー』をモチーフにした、全国初の「ラッキー公園」がある町としても有名です。園内にはポケモンキャラクターの遊具があり、町外から遊びに来るファミリーも珍しくありません。
町内の小中学校は「なみえ創成小学校」「なみえ創成中学校」の1校ずつです。少人数なので生徒と先生の距離が近く、目が行き届く環境の中で勉学に励めます。
▲「なみえ創成小学校」「なみえ創成中学校」の校舎。同敷地内には「浪江にじいろこども園」がある。
▲なみえ創成小・中学校のグラウンド。多目的用のロングパイル人工芝を使用している。
グラウンドでは運動会も開催され、家族だけでなく町民や企業も参画して町民が一体となって盛り上がります。
人口が少ないため部活動には少し不便があるようですね。ただ、目が行き届くので町全体で子どもたちの成長を見守っているような温かな環境です。
仕事情報:豊富な求人と多様な就業支援制度
大手求人サイトに掲載されている浪江町の求人数は以下の通りです。
正社員 | 約130件 求人一例 |
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非正規雇用 |
約110件 求人一例 |
※縁結び大学調べ(2023年9月時点)
浪江町は労働者が不足しているため人口と比較して求人数が多く、南相馬市などの近隣地域から働きに来る方も少なくありません。特に土木・建設業界など復興に携わる仕事の募集が多い状況です。
非正規雇用の求人数は、パート・アルバイトが約30件、契約社員・派遣社員は約80件です。女性は大半がパート勤務で、町内のコンビニや飲食店、スーパーなどで働いています。
就農や起業する方向けの支援制度も設けています。
Fターン移住支援事業補助金 | 東京圏(一部地域除く)在住の方へ事業補助を交付 ・支援金:単身60万円、世帯100万円 ・18歳未満の子どもがいる場合、子ども1人につき100万円加算 |
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その他の就業に関する支援制度は以下よりご確認ください。移住を機に新しい仕事に挑戦したい方はぜひ活用しましょう。
公式:浪江町「就業・企業支援」
住まい事情:手厚い家賃補助で移住者の居住をサポート
浪江町へ移住する人の多くが賃貸物件を利用しています。
大手不動産サイトに掲載されている浪江町の物件数は以下の通りです。
賃貸物件 | 約15件 物件一例 |
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※縁結び大学調べ(2023年9月時点)
なお、浪江町の住居費の目安は次の通りです。
中古住宅を購入する場合 | 1,000~2,000万円 |
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戸建て賃貸 | 6万円~8万円 |
アパート | 4.5万円~7万円 |
子育て世帯が賃貸物件を利用すると補助金制度が適用されるので、月々の家賃を抑えることが可能です。
浪江町子育て支援家賃補助金制度 | 賃貸住宅に入居する子育て世帯に対して、家賃の一部を補助 ・補助額:家賃の月額1/2以内(上限3万円) |
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子育て世帯以外の移住者の方が利用できる家賃補助制度もあります。
浪江町移住者向け住宅支援補助金 | 町内不動産事業者の管理する賃貸物件に入居する移住者(一定の要件あり)に対して家賃の一部を補助 ・補助額:月額家賃のうち37,000円を超える金額について最大月4万円(最長2年間) ※子育て世帯向け家賃補助との併用不可 |
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浪江町では、上記で紹介した移住者の方が使える家賃補助制度が2つあります。「子育て支援家賃補助」は、18歳までの子どもを養育する世帯であれば対象となります。もう1つは「移住者向け住宅支援補助」です。ちなみに、これら2つの家賃補助制度の併用はできませんが、どちらの制度も12市町村移住支援金との併用は可能です。
住宅購入を希望する場合は空き家バンクを利用しましょう。登録されている物件の多くは空き地ですが、タイミングによっては売却物件・賃貸物件も見つかります。
2023年9月時点では、売却物件4件・賃貸物件2件の登録があります。(2023年8月17日更新分)
売却物件の一部にはリフォーム済みもあるものの、大半は老朽化が進んでいて改修が必要です。改修などに関する支援制度もあるため活用しましょう。
空き家バンクに売却・賃貸物件がない場合は、浪江町役場もしくは浪江町の不動産会社に相談してみてください。
はじめは賃貸物件を選ぶ移住者が多いです。まずは町との相性を確認して、移住生活に慣れてきたタイミングで住宅購入を検討してくださいね。
浪江町移住者の声:自然の恵みと人の温かさを実感
ここでは、浪江町に移住した方の体験談と感想を紹介します。
- 食べ物がおいしい。特にヒラメ・カレイ・シラスなど海の幸が絶品。
- 山と海がある自然豊かな環境が気に入っている。森林の香りや浜の香り、さわやかな風がどれも心地良い。涼しい気候で過ごしやすい点も魅力。
- 地域の方々が温かい。地域イベントを通していろんな方と交流を持てるのは、人口が少ない浪江町ならではのおもしろさだと感じる。
- 浪江町の穏やかな空気感が好き。散歩中に近所の方と会って話すと日常の安らぎを感じる。
浪江町に移住した方は、山と海の恵みを五感で感じているようです。「食べ物がおいしい」「涼しくさわやかな気候が快適」といった、太平洋に面したまちならではの魅力に感動する声が多く集まりました。
さらに、「人の温かさに癒される」という声も少なくありません。商業の町として栄えてきて人の流入も多い土地柄、移住者に対して抵抗がなくオープンな関係を築きやすいように感じます。
浪江町への移住準備:お試し宿泊と支援金活用の2ステップ
地方移住の失敗を回避するには下見は欠かせません。そこで、浪江町への移住準備で押さえておきたい「お試し宿泊施設」と「移住支援金制度」について紹介します。
ステップ1:最大30日間のお試し宿泊で浪江町を体験
▲公共宿泊施設「福島いこいの村なみえ」のロッジ。
浪江町では移住を検討している方のために、公共宿泊施設「福島いこいの村なみえ」のロッジを移住お試し施設として提供しています。浪江駅から車で約5分の緑豊かな丘の上に建ち、ロケーションも良好です。
移住体験の宿泊料金は定額2万円で、最大で30日間宿泊できます。照明や家電、エアコンなどの設備は整っているため、着替えや日用品などの最小限の荷物しか必要ありません。
町内視察にレンタカーを利用する場合は、月額のレンタカー料金の補助制度もあります。
▲「福島いこいの村なみえ」のロッジの内観は、木のぬくもりに溢れていて清潔感もある
宿泊施設の詳細は公式サイトから確認できます。
公式:福島いこいの村なみえ
その他、移住を検討している方を対象に、宿泊費の一部を補助する制度もあります。
町内滞在宿泊費補助制度 | 1泊あたり2,500円まで宿泊費を補助(上限5泊) ※宿泊施設指定あり |
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補助金対象の宿泊施設は以下よりご確認ください。
一般社団法人 まちづくりなみえ「お試し滞在支援」
さらに、福島県では下見にかかった交通費を一部補助するサポートも実施しています。
ふくしま移住希望者支援交通費補助金 | 移住に向けた現地調査を行った場合の交通費を一部補助 ※交通費と基準額を比較して低いほうの額を支給 |
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下見の際はお試し住宅や各種補助制度を利用して、納得のいくまで浪江町を体験しましょう。
暮らしやすさの基準は人それぞれです。移住体験を通してデメリットも見つけてみてください。例えば首都圏や関西の方なら、積雪量を把握するために冬に来てみるのがおすすめです。
ステップ2:充実の移住支援金制度を活用して新生活をスタート
福島県では、原発事故により避難指示となった、浪江町を含む12市町村へ移住し就業等の要件を満たした場合、移住支援金を交付しています。その上、東京圏からの移住であれば子どもがいる世帯は加算されるため、移住に関する経済的負担をさらに軽減できます。
福島県12市町村移住支援金 | 県外から移住し、就業等一定の条件を満たす場合に支援金を交付 ・支援金:単身最大120万円、世帯最大200万円 ・東京圏のからの移住で18歳未満の子どもがいる場合、子ども1人につき100万円加算 |
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東京圏とは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の4つを指します。さらに、条件不利地域もあるため、受給条件に該当するか確認しておきましょう。
浪江町移住の相談窓口:まちづくりなみえに気軽に問い合わせを
相談窓口 | 一般社団法人まちづくりなみえ (浪江町委託移住・定住相談窓口) |
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住所 | 〒979-1513 福島県双葉郡浪江町幾世橋字大添52-1 |
電話番号 | 0240-23-7530 |
対応時間 | 9:00~18:00 水・日曜、祝日、年末年始を除く |
一般社団法人まちづくりなみえ | https://www.mdnamie.jp/ |
浪江町公式サイト | https://www.town.namie.fukushima.jp/ |
移住は人生の大きな選択です!移住・定住窓口では、住まいや子育てなどさまざまな疑問・質問に合わせて情報を提供しているので、まずはお気軽にお問い合わせください。