徳島県神山町への移住ガイド:自然と先進性が融合する町での新生活
この記事では、地方移住を検討している方に向けて徳島県神山町(かみやまちょう)の魅力や移住に役立つ情報を紹介します。
神山町は徳島県の中部にあり、山林が約86%を占める自然豊かなまちです。
地域活性化のため国際交流や空き家を利用したサテライトオフィスの設置など、多彩なプロジェクトを実施して成功を収めていることから、「地方創生の聖地」として全国的に注目されてきました。
2023年4月に「コトを起こす」人材の育成を目的に高専を開校して以降、さらに子育て世帯の移住が増加しています。
そんな魅力あふれる神山町について、神山町役場産業観光課の田中さんにさらに詳しく伺いました。
神山町の3つの魅力:自然環境と先進的な取り組みの共存
神山町は集落が点在する山間地域で、農業・林業で発展してきました。
今では「地方創生の聖地」と言われるように、子育て世帯向け集合住宅の設置や独自のカリキュラムを採用した教育施設の開校など、多様なライフスタイルに対応した環境作りを行っています。
豊かな自然環境とクリエイティビティを併せ持つ神山町への移住は、以下のような方におすすめです。
- 日常に自然を感じられる穏やかな環境を求めている
- 農業や起業など新しいことにチャレンジしたい
- テレワークに不便のない移住先を探している
- 子育て環境が整備されている場所を探している
- 自然体験だけでなく時代に合った教育も受けさせたい
その理由を神山町の魅力とともに解説します。
特徴1:山林86%の壮大な自然景観と穏やかな生活環境
▲神山町大久保地区に咲き誇る菜の花。のどかな田園風景を黄色に染める
神山町は山林が86%を占めているように、どこからでも丹生山・高根山・東宮山などの標高1,000m近い山々の景観を楽しめます。
他にも吉野川水系の一級河川である鮎喰川や、日本の滝100選に選定された「雨乞の滝」があるように、都会にはない雄大な自然を日常生活で感じられる環境です。
3月には大久保地区や江田地区で菜の花が咲き誇り、棚田一面を鮮やかな黄色に染め上げます。明王寺の樹齢100年と80年の枝垂れ桜もまた、神山町の春の風物詩として有名です。
▲明王寺に咲くしだれ桜。3月下旬から4月上旬には「明王寺さくら祭り」が開催される。
秋になるとたわわに実った稲穂が畑を黄金に彩ります。米以外にも生産量日本一を誇るすだち、梅などさまざまな農作物を栽培しているため、就農目的の移住者も珍しくありません。
▲9月の田園風景。昼夜の寒暖差が大きい神山町産のお米は甘みが凝縮されている
雌・雄2段で落下する夫婦滝「雨乞の滝」は日本の滝100選に選ばれた名瀑で、県外からも観光客が訪れる人気の観光スポットです。11月下旬になると紅葉も一緒に楽しめます。
▲日本の滝100選「雨乞の滝」。古くよりこの滝で神仏に祈雨していたことが由来
雄大な自然環境は心身の健康促進に効果が期待できます。穏やかな生活を求めている方や子育て環境を見直したい方にとって、神山町の環境は理想的と言えるでしょう。
特徴2:多様性を重視した先進的なまちづくりと充実したテレワーク環境
神山町は大自然が広がる田舎町でありながら、新しい時代にフィットする取り組みを行うクリエイティブな一面があります。
2004年には四国初の全戸光ファイバー導入を実施しました。これを機にIT業界のベンチャーが続々とサテライトオフィスを開設。その後も、ワークライフバランスを重視する企業や起業家が集まり、まちづくりのプロジェクトを発足しています。
移住者が起業した例として、オルタナティブスクール「森の学校みっけ」が挙げられます。自然の中で子どもの主体性を育む教育観が特徴で、それに共感して移住してきた方も少なくありません。
さらに、2023年に開校した「神山まるごと高専」は、テクノロジーなどを学べる独自のカリキュラムと、民間企業の出資による学費の実質無償化が話題となりました。
このように、時代にフィットするまちづくりが行われているため、多様なライフスタイルが叶いやすい環境です。
長く移住している方からは「神山町は人が面白い」という話をよく聞きます。神山町にはない事業を起こす人も多く、飲食店やサービス店、地ビールなども増えました。
特徴3:自然を活かした子育て環境と充実した子育て世帯向け住宅支援
▲徳島県神山町の鮎喰川。川遊びを楽しむなど自然が子どもたちの遊び道具
神山町に住む子どもたちの遊び場は大自然そのものです。鮎喰川の河川敷で川遊びをしたり野山で昆虫採集ができたりと、自然体験を取り入れた子育てが叶います。
町内には木製の迷路や長いすべり台などの遊具がそろう「神山森林公園イルローザの森」もあり、遊び場には困りません。
また、地域創生プロジェクトの一環として、子育て世帯向け町営住宅「大埜地の集合住宅」を設置し、安定した子育て環境を提供しています。敷地内のコモンハウスや芝生広場は新しいコミュニケーションを生み出す場として、多くの町民から利用されています。
育児の経済的・精神的負担を軽減する支援制度もそろうことからも、20~40代の子育て世帯に住みやすい環境と言えるでしょう。
▼子育てに関する支援一例
子どもはぐくみ医療費助成制度 | 0歳から高校修了まで医療費無料 |
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保育料無料 | 子どもの人数にかかわらず無料 |
出産祝い金 | 出産時5万円支給(第3子以降は10万円) |
病児・病後児保育事業 | 保護者が就労などの理由で保育ができないときに子どもを一時的に預かる事業 |
支援制度の詳細は下記よりご確認ください。
神山町での日常生活:教育・仕事・住まいの具体的情報
▲大粟山から眺める神山町の景色。山々に囲まれている
「神山町にどんな仕事があるか知りたい」「教育面は充実している?」などの疑問を解消するために、神山町の暮らしに役立つ情報を紹介します。
気候 |
1月平均気温:6.5 ℃ |
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人口 | 人口:4,841人 世帯数:2,439世帯 (2023年8月1日時点) |
病院 | ・病院:1院 ・クリニック:2院 ・歯科:3院 |
学校 | ・保育施設:2園 ・小学校:1校 ・中学校:1校 ・高校:1校 ・高専:1校 |
レジャー・観光 | ・雨乞の滝(日本の滝百選) ・神通滝 ・上臈ヶ滝 ・出会い滝 ・神山森林公園イルローザの森 ・道の駅温泉の里神山 ・粟飯原家住宅(国の重要文化財指定) ・ゆうかの里 ・神山温泉 |
交通 | 【電車】 ・最寄りの駅:JR「石井駅」(車で約30分) ※町内に駅がないため最寄りの駅を記載 【車】 ・国道:193号、438、439号 【その他】 ・乗り合いタクシー |
近隣都市 | 徳島市、吉野川市、美馬市、石井町、那賀町、上勝町、佐那河内村 |
※縁結び大学調べ 2023年8月現在
以前に商店街があった神領は、集合住宅や店が集中しています。各地区に個人商店はありますが、スーパーは1店舗となります。車で約30分の石井町や徳島市には大型ショッピングセンターなどの商業施設がそろいます。
なお、神山町は電車の停車場がないので、車は必要不可欠です。乗り合いタクシーは助成があり、自己負担15%という公共バス程度の料金で利用できます。年齢・利用目的・利用回数の制限がなく、車を購入するまでの間利用するのも一つの手でしょう。
若い世帯は車を一人一台保有するケースが大半です。助成適用の乗り合いタクシーは高齢者を中心に利用されています。
教育環境:国際交流プログラムと私立高専で広がる教育の選択肢
神山町では中高生の国際教育に取り組んでいます。2017年から「国際交流プロジェクト」を導入しました。数週間海外へ滞在して異文化を体験する訪問プログラムと、訪問先の学生を神山町へ招く受け入れプログラムで国際交流を図っています。
そして、「神山まるごと高専」では、SF小説家の講師によるSFプロトタイピングの授業、農業を通して地域交流を図る「まるごとファームクラブ」など、他にはない学びが得られます。
この2つの取り組みで、転入者数だけでなく町内に住む学生の進学率も増加しました。地方にいながら活発な国際交流やテクノロジーを学ぶことで、将来の選択肢を広げられる教育環境は多様性のある神山町ならではと言えるでしょう。
国際交流プロジェクトの海外留学では、2017年、2018年にオランダを訪問した実績があります。オランダで働く人たちとの交流やホームステイを楽しみました。
仕事環境:就農支援や起業チャンスが豊富な多様な働き方の実現
▲神山町のすだち。生産量日本一を誇りシェア率は約95%を占める
大手求人サイトに掲載のある、神山町の正社員求人数は以下の通りです。
神山町 | 約40件 求人一例 |
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徳島市(通勤30分圏内) | 約8,000件 求人一例 |
石井町(通勤30分圏内) | 約700件 求人一例 |
※縁結び大学調べ 2023年8月現在
神山町の求人は、製造ラインや介護職、事務職など職種はさまざまですが、求人自体はそう多くありません。車で30分圏内の徳島市と石井町まで範囲を広げてみましょう。
なお、神山町はITのベンチャーを中心に複数社のサテライトオフィスがあり、テレワークで働く方も珍しくありません。移住を機に起業する方もいるように、働き方にも多様化が見受けられます。
神山町は林業とすだちの栽培を中心とする農業で発展してきたため、新規就農者向けの補助金制度やJA協定の研修制度が充実しています。
▼新規就農者向けの支援・研修制度
すだち苗木導入事業補助金 | すだち苗木事業導入にかかる苗購入費などの経費を補助 ・補助金:事業費の1/2(町1/4、JA1/4補助) |
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すだち貯蔵用冷蔵庫の導入補助金 | すだち貯蔵用冷蔵庫の導入などにかかる費用を一部補助 ・補助金:補助対象事業費の1/10(最高15万円) |
農業研修制度 | 2年間の研修期間を設け、最大4名の研修生を受け入れ。 ・生活費として国から年間最大150万円受給 |
起業・新規就農にチャレンジしやすい環境なので、興味がある方は新しい働き方を見つけてみてください。
住環境:子育て世帯向け集合住宅やシェアハウスなど多様な住まいの選択肢
神山町には民間の賃貸物件はほぼなく、空き家バンクの活用もありません。(2023年8月時点)
土地や家を見つけづらい状況ですが、代わりにNPO法人に登録された物件が充実しています。子育て世帯向けの「大埜地の集合住宅」は、全20戸完備しています。夫婦用ユニットが47,000円~、単身者用シェアユニットは30,600円~で賃貸可能です。
鬼籠野・神領地区にある「すみはじめ住宅」は、シェアハウスやコンパクトな住宅がそろいます。
NPOグリーンバレー:in Kamiyama「神山町 住まい」
公式:神山町「町営住宅について」
なお、住宅支援として40歳以下を対象とした「若者定住支援住宅新築等補助金」などを設けています。
仕事や住まいの選択肢は決して多くありません。集合住宅はすぐ埋まるため早めにお問い合わせください。
神山町移住者の声:自然と先進性が共存する暮らしの実態
ここでは、神山町に移住した方の体験談と感想を紹介します。
- 自然体験を通して子育てができる。
- 起業する方が多くて町に活気を感じる。時代やライフスタイルに合った働き方が選べる。
- 農業がしたくて移住した方や子育ての場所として選んだ方など、人によって移住目的はさまざま。いろんな方がいるから楽しいし刺激になる。
最も多いのが「自然が美しい」という声です。四季折々の風景はもちろん、川遊びや虫取りなどの自然体験ができるため、子育ての場所として選ぶ方も少なくありません。「神山まるごと高専」や「森の学校」などの独自の教育に魅力を感じて移住してきた子育て世帯も増えています。
リモートワークや起業も盛んなことから、教育から仕事まで選択肢が豊富で理想のライフスタイルが実現しやすい環境という印象です。
神山町への移住を成功させる2つのステップ
地方移住の失敗を回避するには、直接現地へ足を運ぶことが重要です。ここでは、神山町への移住ステップとして、神山町で行っている「町内バスツアー」と「お試し住宅」を紹介します。
ステップ1:「町民・町内バスツアー」で地域の魅力を体感
神山町では、地域の方と移住希望者をつなぐ役割として「町民・町内バスツアー」を実施しています。
サテライトオフィスや集合住宅の敷地内にある「鮎喰川コモン」、地元のレストランなどをマイクロバスで循環するツアーです。
▼「町民・町内バスツアー」の概要
参加費 | 1,500円(食事代として) |
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定員 | 5名~10名程度 |
訪問先 | 町内のお店、サテライトオフィス、各種施設 など |
要望によって訪問先を変更してくれます。参加したい方はまず相談してみましょう。
「町民・町内バスツアー」はコミュニケーションの機会を得られるだけでなく、神山町に対する先入観の払拭にもつながっていると感じています。
ステップ2:お試しハウスで神山町の暮らしを実体験
神山町ではNPO法人が管理する「お試しハウス」を用意しています。納得のいくまで神山町を体験しましょう。
下見時期は神山町の自然を堪能できる新緑や紅葉の観光シーズンがおすすめです。積雪や寒さを確認するために、冬の神山町も体験してミスマッチを防ぎましょう。
NPOグリーンバレー:in Kamiyama「山川ハウス」
神山町移住サポート:詳細な情報とお問い合わせ先
担当課 | 産業観光課 |
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住所 | 〒771-3395 徳島県名西郡神山町神領字本野間100 |
電話番号 | 088-676-1118(産業観光課直通) |
対応時間 | 08:30〜17:15 土・日曜、祝日、年末年始除く |
公式サイト | https://www.town.kamiyama.lg.jp/ |
神山町民自体がまちの魅力となって、県内外から多様な方々が集まっています。興味のある方はぜひ下見にいらしてください。