北海道最北の島、利尻町へ移住：豊かな自然と充実した支援制度を解説

この記事では、地方移住を検討している方に向けて「北海道利尻町」をご紹介します。

利尻町は、北海道北部の「利尻島」にある町。日本百名山にも選ばれている利尻山と日本海に囲まれた、豊かな自然環境が大きな魅力です。

移住や、出産・子育てに関する支援が手厚いので、「早く移住をしたいけれど金銭面がネック」という方や、子育て世帯の方には特におすすめの移住先と言えます。また、人の温かさも町のご自慢。イベントなどを通し地域の中で交流する機会も多く“人と人とのつながり”の中で暮らしたい方にもピッタリです。

そんな利尻町について、暮らしの特徴や仕事・住まい探しについてなど、移住に役立つ情報をたっぷりとお届けします。

利尻町の暮らしを彩る3つの特徴：自然、支援、人のつながり

地方移住を検討している方の中でも、特に次のような方には利尻町がおすすめです。

• 海や山や植物が好きで、豊かな自然の中で暮らしたい方
• 早く移住をしたいが、引っ越しなどの初期費用が気になる方
• 子育て中、またはこれから子育てを予定している方で、出産や子育てに対する支援が手厚い自治体を希望する方
• 地域のイベントや行事に積極的に参加し、移住先の地域社会に溶け込みたい方

以下では、なぜこのような方に利尻町が適しているのか、その理由を踏まえながら、利尻町の暮らしの特徴を詳しく紹介していきます。

特徴1：利尻富士と海に囲まれた豊かな自然環境

▲自然の磯を利用した「仙法志御崎公園」は、小魚や水生動物などが暮らす、いわば天然の水族館

利尻町は、北海道北部、日本海に浮かぶ利尻島の西側に位置しています。島の中央にそびえるのは、その美しい山容から"利尻富士"と称される「利尻山」です。この山は島内のどこからでも眺めることができ、利尻島のシンボルとなっています。

このような環境にある利尻町は、まさに自然の宝庫です。季節や時刻によって様々な表情を見せる利尻山を毎日楽しめることに加え、春から夏にかけては色とりどりの高山植物が咲き誇り、多くの野鳥にも出会えます。自然や生き物が好きな方にとっては、毎日が新しい発見と感動の連続になるでしょう。

また、利尻島の周辺では、豊かな海の恵みである昆布、ウニ、ホッケ、タコなどの海産物が豊富に獲れます。特に、昆布の最高級品として知られる「利尻昆布」や、その利尻昆布を餌として育った「エゾバフンウニ」と「キタムラサキウニ」が代表的です。町内の飲食店では、これらの地元食材を使った様々な料理を味わうことができます。

▲利尻島の夏の風物詩「昆布干し」。香り高く上品な味わいの利尻昆布は、高級料亭などで重宝される

さらに、利尻町では、利尻山に降った雨や雪解け水が長い年月をかけて地中をくぐり抜けて湧き出した「麗峰湧水」を楽しむことができます。飲み口がまろやかなこの湧水は、コーヒーやお米、料理などの味を引き立てると評判です。町内の「利尻 島の駅」で提供されるコーヒーにも、この水が使用されています。

美しい風景、豊かな海の幸、おいしい天然の水。利尻町は、日々の暮らしの中で、大自然にまるごと包まれているような感覚が味わえる町なのです。

特徴2：移住者を応援する充実した支援制度

利尻町は、移住者や子育て世帯に対するサポートが手厚い町です。主な支援制度を見ていきましょう。

転入奨励金	利尻町に生活の本拠を移し、引き続き定住し就業する世帯（単身を除く）に対して【100万円】を支給
定住促進住宅	利尻町に定住の意思が認められる方に対して、住宅用地のあっせん、公営住宅・民間住宅の紹介を行う ○利尻町定住促進団地「あけぼのニュータウン」 年間賃貸料：45,000円／300.00平方メートル
利尻町離島妊産婦安心出産支援及び少子対策事業	利尻町にお住まいの方が島外で妊産婦検診・出産した場合、その経済的負担を軽減するため、交通費を一部助成
出産祝い金	利尻町に1年以上住所を有し、引き続き定住すると認められる方が3人以上出産した場合【子ども3人目から、1人につき25万円】を支給
出産子育て応援給付金	＜伴走型支援＞面談やアンケートを行った上で、状況にあった支援を実施 ＜物質的支援＞出産子育てへの応援として【妊婦一人当たり5万円】【児童一人当たり5万円】を支給
子ども医療費の助成	0歳から18歳（高校卒業）までの子どもが対象で、医療費全額助成

詳細：ふるさと定住促進事業｜利尻町

転入奨励金は100万円と高額です。移住には、引っ越し代や仕事が決まるまでの生活費、賃貸住宅の場合は敷金礼金など、様々な初期費用がかかります。「早く移住をしたいけれど、そのためのお金を貯めなくてはいけない」というジレンマを抱えている方にとって、この奨励金は大きな後押しになるでしょう。

出産・育児へのサポートも充実しているので、子育て世帯の方や、これから利尻町で家庭を築いていきたい方にも魅力的な制度が整っています。

特徴3：地域イベントで深まる人々の温かなつながり

利尻町は、お祭りやイベントなど地域の交流の場が多く、また人と人とのつながりが豊かな町です。人とのコミュニケーションを楽しむ方にとって、理想的な環境といえるでしょう。

例えば、町内の「沓形港」に停泊した大型クルーズ船が出発する際には、ブラスバンド演奏などの「見送り隊」が登場します。夏には、古くから受け継がれる神社の例大祭や、2日間にわたって盛り上がる夏祭りなどが開催されます。

▲「利尻浮島まつり」は、利尻町最大の夏祭り。名物「浮島音頭」踊りのパレードや、露店などで盛り上がり、地域が一体感に包まれる

これらの地域イベントは、一つひとつが地域の人々の協力によって成り立っています。積極的に参加することで、町に溶け込み、地域の暮らしをより深く知ることができるでしょう。

人と人との密接なつながりは、都会ではなかなか体験できないものです。その意味では、都会から地方へ移住する醍醐味とも言えます。人によってライフスタイルの好みは異なりますが、人と向き合うことが自分を見つめ直すきっかけにもなるかもしれません。

利尻町は、人々の温かさも町の自慢のひとつです。その心地よさを実際に体験してみてはいかがでしょうか。

▲北見冨士神社の例大祭では、行列に天狗や獅子舞も登場。伝統芸能として継承される「四ヶ散米舞」も奉納される

利尻町での生活：気候、医療、教育など暮らしの基本情報

ここでは、移住を検討するうえで重要となる、利尻町の暮らしに関するさまざまなデータをお届けします。

気候	1月平均気温：-4.0℃ 8月平均気温：19.9℃ ※参考：気象庁ホームページ（沓形地点）
人口	人口：1,880人 世帯：1,033世帯 ※令和5年5月末現在
近隣自治体	利尻富士町、礼文町、稚内市
公共交通	路線バス：宗谷バス
近隣都市へのアクセス	札幌へ：利尻町～利尻空港（利尻富士町）車で約10分、利尻空港～丘珠空港（季節運航で新千歳空港）約1時間 稚内へ：利尻町～鴛泊（おしどまり）港フェリーターミナル（利尻富士町）車で20分、鴛泊港～稚内港（約1時間40分）
病院	病院1、歯科2
学校	高校1、中学校1、小学校2
レジャー・観光	運動公園、森林公園、博物館、利尻 島の駅、神居海岸パーク、ウニ種苗生産センター

北海道の最北端に位置する利尻町は、海に囲まれていることから夏冬の寒暖差が比較的小さいです。北海道内陸部に比べると温暖な気候といえます。ただし、海に近いため風が強く、冬場には吹雪に見舞われることもあります。

町内にはスーパー、ホームセンター、ドラッグストア、コンビニなどがあり、日常生活に必要なものはほとんど手に入ります。ネットショッピングも活用すれば、生活に大きな不自由はありません。医療面では、島内に自治体病院がありますが、手術や出産の際は島外の医療機関を利用することになります。

出産・子育てへの支援が手厚い利尻町は、子どもがのびのびと身体を動かして遊べる場所が多いことも魅力的です。野球場やパークゴルフ場、大型遊具を備えた広い冒険広場のある運動公園、森林浴やキャンプが楽しめる森林公園など、広々としたスポットが充実しています。個人でも利用できる総合体育館もあり、多くの子どもたちがスポーツに親しんでいます。

また、楽しみながら町のことを学べるお出かけスポットも豊富です。例えば「博物館」では、海と共に生きてきた人々の生活や文化に関する貴重な展示が多数あります。「利尻 島の駅」では、「海藻押し葉」のワークショップや展示を通じて、地域文化を発信しています。

漁業のまち利尻町：独自の研修制度で新規就漁をサポート

2023年6月現在、大手求人情報サイトで、利尻島内（利尻町・利尻富士町）の正社員求人を検索すると、約170件が見つかりました。
参考：正社員求人情報の一例

利尻町は、漁業と観光業がメインの産業。就漁を目指して移住される方も多いそうです。新規就漁は、漁師の仕事になじみのない方に決して簡単ではありませんが、利尻町ならではの研修制度や後継者支援制度も利用できます。興味のある方は、まずはお問い合わせをしてみてください。

利尻で漁師になる：段階的な研修制度で着実にスキルアップ

利尻de漁師道	40歳未満の方を対象に、2週間の漁業体験を実施します。参加者は仕事内容や漁業の楽しさ、やりがい、自身の適性などを判断できます。その後、漁業に就く決意をした方は、新規漁業就業者確保・育成対策事業という支援制度に移行し、最長3年間の研修を受けられます。この研修では、経験豊富な親方から漁業のノウハウを直接学ぶことができます。

漁業後継者への手厚いサポート：報奨金制度で新規就業を応援

利尻町漁業後継者報奨金交付事業	利尻漁業協同組合の正会員として5年以上漁業に従事する意思のある方に、報奨金を交付します。 【初年度】50万円 【2年目・3年目】各年25万円

住まい探しのポイント：空き家バンクと住宅支援制度の活用

「暮らしの特徴」でご紹介した通り、利尻町では、定住を希望する移住者に対し、住宅用地のあっせんや、公営住宅・民間住宅の紹介といった支援を行っています。また、住まいに関しては次のような制度も利用可能です。

利尻町住環境改善助成金交付制度	・新築で住宅を建てた方に【100万円】を補助 ※15歳未満の扶養親族1人につき20万円加算 ・住宅のリフォームを行う方に工事代金総額の1/5以内、または【50万円】を補助

さらに、2021年から空き家バンクの運用が始まり、利尻町定住移住支援センターツギノバのウェブサイトで最新情報を公開しています。物件情報は随時更新されるため、興味のある方は定期的なチェックや、直接のお問い合わせをおすすめします。
参照：空き家バンク物件一覧（利尻町定住移住支援センターツギノバ）

利尻町移住者の声：自然の魅力と地域の温かさを実感

ここでは、実際に利尻町に移住して暮らしている方々の体験談や感想をご紹介します。

• 何度か利尻町を訪れ、その豊かな自然環境に魅了されて移住を決意しました。
• 地域のつながりと人々の温かさが移住の決め手となりました。地域の方々はみな親切で、町全体が家族のように感じられます。
• 海と山に囲まれた環境で、のびのびと子育てができ、家族で貴重な時間を過ごせます。

都会では得難い"豊かな自然に囲まれた生活"や"人と人との温かいつながり"を高く評価している方が多いようです。特に子育て世帯の方々からは「子どもを育てるのに最適な環境」という声が数多く聞かれました。利尻町は、自然と共生しながら、地域全体で子どもたちの成長を見守る環境が整っているのが特徴です。

利尻町移住への第一歩：現地訪問と支援センター活用のすすめ

▲「ツギノバ」は、移住に関する相談対応のほか、利尻島内外をつなぐ交流スペースとしても親しまれている

利尻町への移住を検討する際は、情報収集の後、実際に現地に足を運んでみることをおすすめします。

利尻町では、閉校した中学校を活用して定住移住支援センター「ツギノバ」を設置しています。ここでは、住宅や仕事に関する移住相談への対応や、利尻町での暮らしにまつわる情報発信などを行っています。

ツギノバには併設のカフェがあり、コーヒーを飲みながらリラックスして相談ができます。まずは気軽に訪れて、ざっくばらんに移住について相談してみてはいかがでしょうか。

▲移住後にも使えそうなコワーキングスペースもある。Wi-Fi、電源などの設備はもちろん、卓球台やハンモックまで利用できる多機能空間

利尻町への下見を計画する際は、可能であれば「過ごしやすく、植物などの自然が楽しめる5～9月」と「吹雪など厳しい気候になることもある冬場の12～3月」の両方の時期に訪れることをおすすめします。これにより、移住後の生活をより具体的にイメージすることができるでしょう。

また、利尻町ならではの体験として、例年夏場には「昆布干しアルバイト」の募集があります。この仕事を通じて、お給料を得ながら町の特色や生活を深く知ることができます。実際に、多くの方がこのような機会を利用して一時的に滞在し、移住を検討しているそうです。ぜひこの機会を活用してみてください。
詳細：昆布干しアルバイト募集！！｜利尻町

名称	利尻町定住移住支援センターツギノバ
住所	北海道利尻郡利尻町沓形字日出町55
電話番号	050-8880-6920
対応時間	9:30〜16:30
公式サイト	https://tsuginoba.com/