奈良県野迫川村で暮らす魅力とは?移住に役立つ仕事・住まい・支援の情報
この記事では移住を考えている人に向けて、奈良県野迫川村(のせがわむら)の特徴や仕事、住まいなどの、暮らしに役立つ情報を紹介します。
奈良県野迫川村は奈良県の南西部に位置しており、和歌山県と隣接している村です。日本で最も人口が少なく、都会の喧騒とは無縁の穏やかな時間を過ごすことができます。
今回は、産業課の中川さんに、地域の魅力や暮らしの情報、移住支援についてお話を伺いました。
野迫川村の3つの特徴
北部に霊験あらたかな高野山、南部には高野龍神国定公園の一部である護摩壇山などが連なる山々に囲まれた地域です。標高が高く冷涼なため、夏季は避暑地として快適に過ごせる他、年間を通して幻想的な雲海が望めます。
また、地域おこし協力隊の方々が活躍していたり、スロバキアと国際交流があったりするなど、オープンな環境も野迫川村ならではの特徴です。
そんな野迫川村への移住は、以下のような方に向いています。
- 都会の喧騒から離れ、ゆったりとした時間を過ごしたい
- 野迫川村の自然の美しさを発信したい
- 人とのつながりを大切にしたい
野迫川村の3つの特徴をもとに、その理由を解説します。
特徴1:雲海の景勝地。年間通して神秘的な絶景を堪能
▲眼下に広がる雲海は、まさに壮大な自然が織りなすシンフォニー
自然に囲まれた野迫川村ですが、その中でも村の魅力の一つであり、特色を象徴しているのが雲海です。雲海は十分な放射冷却と大きな寒暖差が必要なため、山々に囲まれた盆地ならどこでも眺められるというわけではありません。
野迫川村は、標高が高い寒冷地だからこそ雲海の発生率が高く、年間を通して大パノラマの絶景を眺望できます。特に春と秋の夜明け〜早朝が見頃で、有名なビュースポットである県道高野天川線沿いの高野辻休憩所には、この時期になると遠方からも観光客が訪れます。
四季折々の雲海を堪能できるのは、野迫川村に住む人の特権と言えます。
▲白く柔らかな雲が静寂な山々の間に厳かに広がる
▲山峡を包み込む雲海。風がない晴れの早朝に発生しやすい
▲神々しくオレンジ色に輝く朝焼けと雲海
特徴2:色鮮やかな風景で、季節の移ろいを感じられる
野迫川村は雲海だけでなく、季節ごとに色を変える風景も魅力です。春から初夏にかけては、「紀州の屋根」と呼ばれる護摩壇山や日本二百名山に選定された伯母子岳の山々が、鮮やかな新緑を茂らせます。
野迫川村の夏の風物詩と言えば、満天の星空です。「荒神社」が建つ荒神岳や鶴姫公園内の展望台などが、観測スポットとして知られています。周囲には派手な街灯やネオンライトがないため、都会では見られない星本来の明るさを体感できます。
▲山々に囲まれた「鶴姫公園」。遊び場やビュースポットとして利用されている
▲鶴姫公園内に設置されている展望台。星空が観察できる人気スポット
10月下旬~11月上旬になると、村のいたるところで紅葉の鑑賞が可能です。弘法大師が建てたとされる「野川弁財天」の境内は、イチョウや紅葉のカラフルな色どりで覆われます。
高野山と龍神温泉を結ぶ全長約42kmの「高野龍神スカイライン」では、秋は紅葉スポットとしてドライブが楽しめる他、冬になると冬期通行規制がかかるまでの間、木々の霧氷を眺めることができます。
▲村民から「野川の弁天さん」と呼ばれて親しまれている「野川弁財天」の紅葉
特徴3:オープンで温かな地域の絆
▲野迫川村の保育所で開催されたクリスマス会
野迫川村は日本一人口の少ない村で、村民が340人程度しかいません。(2022年4月時点)そのため、地域のコミュニティは、全員が身内のような深い結びつきで形成されています。情報網が速く、顔を見れば「〇〇さんの子ども」と認識できる環境は、地方ならではの特徴とも言えるでしょう。
「笑顔があふれる村づくり」をスローガンを掲げ、介護予防に向けた取り組み「いきいき百歳体操」や、保育園のクリスマス会などの地域イベントも活発に行っています。
▲「いきいき百歳体操」を通して、地域の高齢者が交流する
一方で、野迫川村は地域のコミュニティだけでなく、外部との交流も盛んです。
例えば、野迫川村では1997年頃からスロバキアと国際交流を行っています。当時のスロバキアの駐日大使夫人が、野迫川村の郷土料理に興味を持ったのがきっかけで、交流が始まりました。
2023年現在も駐日大使と交流するなど関係が続いています。その他、地域おこし協力隊の受け入れにも前向きです。
このように、野迫川村の方々は地域のコミュニティに固執せず、村外の人や新しいノウハウを受け入れるオープンな温かさを併せ持っています。
2023年にはスロバキアの方々を村に招待して、食文化を学ぶために郷土料理を作っていただく予定です。
野迫川村の暮らしに関する情報
ここでは、野迫川村に移住する前に知っておきたい暮らしの情報を紹介します。
気候 | 野迫川村に観測地点がないため、近隣の奈良県五條市のデータを掲載 8月平均気温:26.5 ℃ 1月平均気温:3.3℃ ※参考:気象庁 |
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人口 | 人口:約340人 世帯数:約200世帯 (2022年12月時点) |
病院 | クリニック:1件 |
学校 | ・義務教育学校:1校(小学校〜中学校の義務教育を一貫して行う学校) ・保育所:1園 |
食べ物 | 【特産品】 ・わさび ・しいたけ ・あまご ・凍り豆腐 ・素麺 【郷土料理】 ・香茸(こうたけ)ごはん ・あまごの南蛮漬 ・ケンチャ ・凍り豆腐の煮物 ・漬物 ・笹寿司 ・芋餅 ・ホット ・イタドリの煮物 ・大根葉の油炒め ・スサイ飯(大根飯) |
娯楽 | ・荒神社(通称「立里荒神社」) ・平維盛歴史の里 ・高野豆腐伝承館 ・鶴姫公園 ・高野龍神スカイライン ・北今西キャンプ場 |
イベント | 平維盛の大祭(7月) |
交通 | 【空港】 伊丹空港 (野迫川村から伊丹空港まで車で約2時間30分) 【電車】 最寄り駅:南海電鉄鋼索線「高野山駅」 (タクシーで約30分) 【バス】 ・奈良交通(五條方面) ・南海りんかんバス(高野山方面) ・お買い物バス(五條市行) ・村営バス 【車】 ・五條市まで約1時間 ・奈良市まで約2時間 ・和歌山県和歌山市まで約1時間30分 |
近隣都市 | 五條市 |
野迫川村は寒冷で、夏は避暑地として知られるほど涼しく快適に過ごせます。一方で、冬は20~25cmの降雪があり、道路や家の雪かきが必要です。
町内には小さな商店が2件ありますが、スーパーやコンビニはありません。日用品や雑貨などの買い物には、五條市のショッピングモールをつなぐ「お買い物バス」が便利です。村民は利用無料で、2時間半の買い物時間が設けられているためゆっくりと楽しめます。
また、コープの移動販売「移動店舗ふれあい便」を利用すれば、外出しなくても買い物が完結します。運送業者も問題なくくるため、ネットショッピングも可能です。
村営バスやお買い物バスは運行していますが、車の保有は必須です。冬は雪が積もるので、車を購入する際は四駆が好ましいと思います。
【仕事】1時間圏内の近隣地域に求人多数あり
大手求人サイトに掲載されている正社員求人数は以下の通りです。
▼野迫川村と周辺の求人数
野迫川村 | 約30件 ※参考:求人情報の一例 |
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約30分~1時間圏内 | ・五條市:約1,200件 ・和歌山県高野町:約90件 ・和歌山県橋本市:約1,200件 ※参考:求人情報の一例 |
(※2023年6月 縁結び大学調べ)
野迫川村は役場で雇用創出を行っているように、村内の求人は多くありません。業種は部品の組立て・加工といった製造業やホテルのフロント業務などに限られます。
そのため、仕事を探す際は近隣地区まで範囲を広げてみましょう。20~30分圏内の和歌山県高野町をはじめ、1時間圏内の五條市や和歌山県橋本市は民間企業が多く、村内よりも業種・職種を選べます。
【住まい】居住環境整備中。空き家状況は要問い合わせ
野迫川村では、居住環境の整備を行っているため、即入居できる空き家は限られます。(2023年12月時点)
また、東京の不動産関連の会社に勤務されていた方を地域おこし協力隊として招き、空き家を活用した事業や住まいの補助金制度の導入などを進めている最中です。
現在は、戸建てや空き家バンク、村営住宅の利用が難しい状況ですが、整備が終了すれば住まい環境の充実が期待できます。空き家バンクや村営住宅の空室状況を知りたい方は、役場へ問い合わせてみてください。
▼村営住宅の一例
※スライドすると村営住宅の写真が見られます
【教育】自然体験で子どもの知的好奇心を刺激
野迫川村は、標高が800m~900mの高地にあるという珍しい地勢から、教育面において他にはない自然体験ができる点が魅力です。大自然を遊び道具として活用することで、自然に関する知識だけでなく、豊かな発想力や知的好奇心が育めます。
村内には歴史的建造物があり、校外学習では、世界遺産「熊野参詣道小辺路(くまのさんけいみちこへち)」を歩く授業が導入されています。
日本三荒神の一つ「荒神社(こうじんしゃ)」や、平清盛の孫である平維盛の歴史館「平維盛歴史の里」もあるため、日常生活で地域の歴史的背景を体感できるでしょう。
▲野迫川村の中央にそびえる荒神岳に鎮座する「荒神社」
▲「荒神社」は、弘法大師が高野山を開山する際に神の分霊を祀ったとされている
▲「平維盛歴史の里」。平維盛は野迫川村で最期を遂げたと伝えられている
また、下記の通り子育て世帯をサポートする制度も設けられています。
子ども医療費助成事業 | 満18歳まで就学時の医療費無料 |
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給食費無料化 | 小・中学校の給食費無料 |
学童保育の無料化 | 小学校6年生まで学童保育料無料 |
他にも、スロバキアとの国際交流や、山村留学の受け入れを実施しているように、野迫川村では子どもたちへ充実した学びの場を提供しています。
住宅地の一角でテーマを決めて、ごっこ遊びをする姿をよく見かけるように、村の子どもたちは「あるもので楽しむ」という創造性に長けているように感じます。
野迫川村に移住した人の声・感想
ここでは、野迫川村に移住した方の声を紹介します。
- 自分が目の届かないところで、こどもを見てくれている
- 村民の人たちが移住者を歓迎してくれる
- 熱を出したときに、みなさんが心配してくれて差し入れをいただいたことがある
- 「若いファミリーが来てくれた」と喜んでくれた
上記の他にも「のびのびと子育てができる」「雲海が美しい」など、自然環境の良さを評価する声がありましたが、村民の方の優しさに感謝する声が最も多い印象です。
子育てや暮らしの面でアドバイスをしてくれたり、子どもの面倒を見てくれたりと、親身になって接してくれるため、移住者の方は「この恩を地域へ還元したい」という気持ちが高まるようです。
日本一人口が少ない村でありながら、さまざまな人や文化に触れる機会が多い野迫川村ならではの人柄の良さと言えるでしょう。
野迫川村へ移住するための3ステップ
移住先のミスマッチを防ぐには、段階を踏んで慎重に準備を行いましょう。最後に、野迫川村へ移住するための具体的なステップを紹介します。
ステップ1:移住体験施設「ぶなの森」で暮らしを体験
野迫川村には、移住・定住促進施設「ぶなの森」があります。廃校となった小学校の校舎を活用した施設で、館内の「移住体験室」を利用すると最長30日間の宿泊が可能です。
▼「ぶなの森」移住体験室の詳細
利用期間 | 2日以上30日以内 ※日帰り利用不可 |
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利用料金 | 1日目~10日まで:1,500円/日 11日目~20日まで:1,000円/日 21日目~30日まで:500円/日 |
設備 | 家電製品・備品、インターネット(Wi-Fi)完備 |
注意事項 | 車必須・最寄りのコンビニまで約1時間、スーパーまで約2時間(村外) |
※スライドすると施設の写真が閲覧できます
施設の利用を希望する場合は、まずは総務課に相談しましょう。「ぶなの森」公式サイト内の問い合わせフォームからも問い合わせ可能です。
施設の付近には、世界遺産の熊野参詣道小辺路が通っていて観光も楽しめます。移住ガイドを希望される方は、お問い合わせの際にお伝えください。
ステップ2:地域おこし協力隊の参加を検討する
野迫川村は地域おこし協力隊の活動に前向きで、さまざまなジャンルで協力隊を募集しています。参加すると、住宅の家賃、活動に係る公用車貸与などの支援があります。
▼地域おこし協力隊募集要項
募集要項 | 待遇・給与 |
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森林整備 | 造林作業や間伐作業、森林関連の産業振興活動 など ・月額200,880円 ※参考:地域おこし協力隊(林業) |
(※2023年12月現在)
過去には、ガソリンスタンドの運営を引き継いでくれる隊員を募集して、愛知県の方を招き入れた実績があります。知見やノウハウがある方は、ぜひ地域おこし協力隊として村の活性化に貢献しましょう。
地域おこし協力隊の活動は、以下からチェックできます。
YouTube:野くる -nokuru- 野迫川村地域情報発信サークル
高齢化による事業の継承者不足や人手不足を解消してくれる担い手を探しています。興味のある方は地域おこし協力隊として、一緒に村を盛り上げてほしいです。
ステップ3:子育て世帯向けの支援金制度を確認
野迫川村では、定住促進と村の人口増加を目的に、子育て世帯向けの支援制度を設けています。
定住者奨励事業 | 小学生以下の子どもがいる転入者へ支援金を支給 ・子ども1人:100万円支給 ・第2子以降は10万円を支給 ※転入後に生まれた子どもは支給対象外 |
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移住を検討している子育て世帯はぜひ活用しましょう。事業の詳細は下記より確認できます。
公式:野迫川村定住者奨励事業
野迫川村への移住に関するお問い合わせ
担当課 | 産業課 |
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住所 | 〒648-0392 奈良県吉野郡野迫川村大字北股84 |
電話番号 | 0747-37-2101(代表) |
対応時間 | 8:30〜17:00 土曜・日曜日、祝日および年末年始は休み |
公式サイト | https://www.vill.nosegawa.nara.jp/ |
野迫川村はチャレンジできる環境です。子育て世帯はもちろん、新しいことを始めたいという方にも向いています。地域の方々との交流を通して、一緒に村に活力を与えてくれる方をお待ちしています。