奈良県川上村移住ガイド:水源の村で始める新生活の魅力

この記事では、関西地方での移住を検討している方に向けて、奈良県川上村(かわかみむら)の暮らしに役立つ情報を紹介します。

奈良県南東部にある川上村は、山と川に恵まれた地域で、吉野林業発祥の地や吉野川(紀の川)の水源地の村として知られています。

近年は移住サポートにも力を入れ、移住希望者のニーズに寄り添う「トータルサポート」や日帰りの「村内ツアー」なども実施しているとのこと。

今回は川上村役場・くらし定住課の大辻孝則さんと筒井晴香さんにインタビュー取材させていただいた内容をもとに、川上村の特徴や魅力についてお伝えしていきます。 

本日お話を伺った方
川上村役場 くらし定住課の大辻孝則さん

川上村役場・くらし定住課

大辻 孝則さん

川上村役場 くらし定住課の筒井晴香さん

川上村役場・くらし定住課

筒井 晴香さん

川上村の3つの魅力:移住者を惹きつける特徴

奈良県川上村の暮らしの特徴

川上村で暮らす大きな特徴として、次の3点が挙げられます。

以下では、これらの特徴について詳しく紹介していきます。それぞれの特徴が、川上村での暮らしをどのように豊かにしているのか、具体的に見ていきましょう。

特徴1:移住者へのトータルサポート体制が充実

奈良県川上村から見た山の写真

川上村では、移住・定住を促進するため、「子育て」「教育」「住まい」「暮らし」「仕事」の5つの分野を包括的にサポートする「川上ing作戦」を展開しています。

この取り組みにより、移住希望者は必要な情報を効率的に入手でき、準備がスムーズに進められます。また、多角的な情報提供によって、移住後の生活をより具体的にイメージすることができます。

さらに、移住検討者向けの「川上ingツアー」では、1日かけて村内を散策し、地域の雰囲気や子育て環境を直接体験できます。先輩移住者から実体験を聞く機会もあり、より現実的な情報を得られます。

ツアーでは、「保育園」「事業所」「住宅」など、日常生活に欠かせない場所を見学できます。2024年2月のツアーでは、村営住宅を含む4つの住宅の内覧や、参加者のニーズに応じた事業所・学校紹介が行われました。

ツアー開催を待てない方には、個別対応も可能です。興味のある方は、川上村役場に直接お問い合わせください。

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(川上ingツアー

川上村役場 くらし定住課の大辻孝則さん
大辻さん

一つの側面だけでなく、村全体の魅力を体感していただきたいです。気に入っていただけると嬉しいですね。観光でのご来村も大歓迎ですので、ぜひ一度お越しください。

特徴2:手厚い子育て支援と相談しやすい環境づくり

奈良県川上村に住む親子が談笑している写真

川上村では、保健師による子育て相談の体制が整っていることも村の魅力のひとつです。

村の端から端までは車で30分ほどの距離がありますが、村北部の役場内にある「子育て世代包括支援センター」と南エリアの地域子育て支援拠点「のびっこ広場」が設置されているため、子育ての不安や悩みがあるときは、近くの専門職にすぐに相談できます。また、小学生・中学生には自宅付近までスクールバスの送迎があります。

参考:川上村役場(子育て世代包括支援センター
参考:川上村役場(のびっこ広場

川上村役場 くらし定住課の大辻孝則さん
大辻さん

私の子どもたちが生まれたときも、村の保健師さんがケアしてくれたのですごく助かりました。

さらに、2024年4月には保育園を併設した小中一貫教育の施設「かわかみ源流学園」が開校します。この施設内の保育園には「子育て世代包括支援センターあま☆ごん」も併設されます。

奈良県川上村の義務教育学校かわかみ源流学園のエントランス写真

奈良県川上村の義務教育学校かわかみ源流学園の校舎と遊具の写真

奈良県川上村の義務教育学校かわかみ源流学園の教室の写真

スクロールで写真が見られます→

子育て世代包括支援センターは年末年始以外は営業しており、住民なら誰でも気軽に訪問できる環境を整備しています。移住後は、親子でぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(義務教育学校「川上村立かわかみ源流学園」

川上村役場 くらし定住課の筒井晴香さん
筒井さん

川上村は集落が点在しているので、村では子どもたちが集まれる場所や機会を意識して施設づくりを行っています。

妊娠前から切れ目のない子育て支援を行っている

子育て支援に力を入れている川上村では、妊娠を望んでいる人や子育て世帯に嬉しいサポートが充実しています。以下に、川上村の特徴的な制度を「妊娠・出産」「子育て」「子ども医療」の3つに分けて紹介していますので、参考にしてください。

▼妊娠・出産に関する支援

不妊治療費の助成 不妊治療・不育治療に係る費用について、保険適用分(自己負担額)を助成
妊娠判定受診費用の助成 妊娠判定にかかる費用を1回あたり上限7,000円まで助成(年2回)
妊婦健康診査費の助成 妊娠健康診査にかかる費用を全額助成※保険適用分、薬代は除く
産婦人科医へのオンライン相談無料 Kids Public(※)と連携した産婦人科医へのオンライン相談料が無料
(※)参考:Kids Public

▼子育て世帯への支援

こども祝い金 出生時、1歳、2歳の誕生日に各10万円を交付
※保護者が村内に居住して1年が経過している者
一時預かり保育の「預かり料」無料 生後10ヶ月~未就学児を対象に、一時保育の「預かり料」が週3回まで無料
※保護者の就労、急用等目的を問わずに利用可
保育料無料 1歳1ヶ月から入園できる「やまぶき保育園」の保育料が無料
※ただし、満3歳児未満の子どもについては要件あり
子育て応援手当て 16歳~18歳の子どもを養育する世帯に、対象の子ども1人あたり毎月5,000円を支給(2024年9月まで実施)
高校通学費の補助 村内から高校へ通う学生を対象に、通学距離に応じた通学費を補助(全額)

▼子ども医療に関する支援

子どもの医療費無料 0~18歳までの子ども医療費が無料
小児科医へのオンライン相談無料 Kids Publicと連携した小児科医へのオンライン相談料が無料
インフルエンザ予防接種費の全額助成 生後6ヶ月~高校生を対象に、年2回までインフルエンザ予防接種費用を全額助成
※ただし、未就学児の予防接種は川上診療所以外の医療機関での接種が必要

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(子育ての支援・助成

川上村には産婦人科や小児科はありませんが、専門医へ無料でオンライン相談できる仕組みを導入したり、村内から近隣町村の高校へ通う子どもがいる家庭に通学費を補助したりと、川上村の暮らしで不便になり得る面をサポートする取り組みが積極的に行われています

「自然に囲まれた環境で子育てしたいけど、不便さが心配」という方でも、子育て相談体制が充実し、妊娠前から切れ目のない子育て支援を行っている川上村であれば、理想に近い移住生活が送れるのではないでしょうか。

川上村役場 くらし定住課の筒井晴香さん
筒井さん

ちなみに、村内に3年以上居住予定の新婚の方には、結婚祝い金として10万円を交付しています。結婚を機に移住先を探している方は、川上村での暮らしも検討してみてください。

特徴3:500年の歴史を持つ吉野林業と「水源地の森」の保全

川上村は、村内を流れる「吉野川(紀の川)」の源流となることから、水源地の村として長い歴史を刻んできました。

奈良県川上村にある吉野川の写真
▲吉野川の水は透き通っているので、川の生物も観察しやすいです

1999年には、最源流部の原生林740ヘクタールを村が購入し、現在も「吉野川源流‐水源地の森」として水源地を守り続けています

参考:吉野地域日本遺産活性化協議会(吉野川源流)

奈良県川上村にある原生林の写真
▲神秘的な雰囲気が漂う水源地の森では、ゆっくりと時が流れます

村内には湧き水のある場所が多く、きれいな湧き水を水道水として使用しているため、毎日美味しい水が飲めるのも川上村で暮らす魅力の一つです。

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(川上村ってどんなところ

人工林をはじめ、山や川の自然が豊かな環境から、自然の良さを求めて移住する方も多くいます。子育て中の移住者からは「家の周りがすべて公園のようで、子どもたちが自由に遊び場を見つけてのびのびと暮らせる」という声も聞かれます。

このように、長年豊かな自然に恵まれてきた川上村は、「自然に囲まれて生活したい方」や「のびのびと子育てしたい方」にとって理想的な地域と言えるでしょう。

川上村の多様な暮らし:エリア別の生活スタイル

奈良県川上村にある集落を冬に撮影した写真

川上村内には26の大字(※)があり、規模の大きな集落では300人、小規模な集落では4人が暮らしています。
(※)市町村内の区画名称である字の一種

職員さんによると、村での生活は「川」と「山」の2つのエリアに大別され、川の流域にある集落と山の上にある集落では、生活様式や文化に違いがあるそうです。

さらに、同じエリア内でも集落ごとに特色があるため、移住を検討している方は希望する集落を事前に訪問し、自分の理想とする生活が実現できるかどうかを確認することをおすすめします

川上村での生活:気候・医療・教育・交通の基本情報

奈良県川上村にある山の写真

それでは、川上村の暮らしに関するデータを見ていきましょう。

気候 1月:2.9℃
8月:24.6℃
※参考:気象庁ホームページ
(川上村に観測地点がないため、近隣の上北山のデータを掲載)
人口 1,202人
(2024年3月31日時点)
病院 診療所:1、歯科:1
学校 保育園:1、義務教育学校:1
交通 【バス】やまぶきバス(川上村コミュニティバス)、ゆうゆうバス(広域連携コミュニティバス)

【タクシー】川上タクシー
近隣都市 【奈良県】吉野郡吉野町、黒滝村、天川村、上北山村、東吉野村

【三重県】松阪市、多気郡大台町

※人口以外の数字は2024年3月時点のものです

川上村の冬は雪が降りますが、標高差のある山が多いため、集落によって積雪量が異なります。全く積もらない集落もあれば、膝下まで積もる場所もあるので、移住の際は希望エリアの冬の暮らしについても下見しておくことをおすすめします

川上村の公共交通はコミュニティバスとタクシーのみで、バスの運行は一日数本のみです。そのため、村での生活には車が欠かせません。

川上村役場 くらし定住課の筒井晴香さん
筒井さん

雪の降る地域なので、移住後はスタッドレスタイヤが必須です。

また、村内移動には「川上タクシー」が便利で、村が運賃を半額助成しています。電話予約が必要なので、あらかじめ予定が決まっているときは早めに予約しておくと安心です。

参考:川上村役場(公共交通

村内にはスーパーはありませんが、役場近隣にある農協や村内全域を回る移動スーパー「かわかみらいふ」があり、普段の買い物には困りません。

車で20分ほどの吉野町にはスーパー、50分ほどの橿原市には大型ショッピングセンターもあります。休日にまとめ買いをしたり、村内では購入できないものを揃えに行くのもよいでしょう。

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(ショッピング・金融機関

【仕事】多様な就業機会:役場紹介とマルチワーク制度

川上村の正社員求人を大手の求人情報サイトで検索したところ、22件の求人が見つかりました。また、車で30分程度の通勤圏(25km圏内)まで範囲を広げると、5,746件の求人情報がありました(2024年3月時点)
※参考:求人情報の一例(川上村のみ)
※参考:求人情報の一例(川上村から25km圏内)

川上村への移住者は関西圏内から来られる方が多いそうですが、移住前の職場までの通勤時間が長くなることから、移住を機に転職する方がほとんどだそうです。

村内には観光業・製造業・林業などの就業先があり、村役場に相談すれば具体的な就業先を紹介してもらえるそうです。

また川上村には、「働く×住む」を軸にした地域密着型のマルチワーク「かわかみワーク」があります。

「事業協同組合かわかみワーク」が正規雇用した人材を、働き手を求める登録事業所に派遣する事業で、求職者は村内のさまざまな仕事に携わることができます。

仕事が合わない場合でも次の仕事へ切り替えやすく、自分に合った仕事を見つけやすいメリットがあることから、「かわかみワーク」へ転職した移住者もいるそうです。

「さまざまな仕事を体験してみたい人」や「村内の仕事を知りたい人」にとっては理想的な働き方なので、興味のある方は下記の公式サイトをチェックしてみてください。

公式:かわかみワーク

【住まい】選べる居住スタイル:村営住宅と空き家活用

大手住宅情報サイトで川上村の賃貸物件を検索しても、掲載物件は見つかりません。

職員さんによると、移住後の住まいは主に村営住宅や空き家となり、住居を構える場所は移住者のニーズに応じて異なります。

アクセスの良い集落にある村営住宅に入居する方が多い一方で、田舎暮らしや昔ながらの生活を希望する方は、集落内の空き家に移住する傾向があるそうです。

参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(村営住宅

空き家を利用する場合は「川上住まいるネット」への登録が必要です。気に入った物件があれば役場の担当者と一緒に現地見学できます。2024年3月時点で登録物件数は7件あります。川上村での住まいに空き家を検討している方は、以下のサイトで詳細をご確認ください。

公式:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(空き家・賃貸物件情報
参考:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(川上住まいるネット

さらに、村が空き家を借りて改修した賃貸住宅「住まいる住宅」への入居も可能です。ただし、中学生以下の子どもがいる世帯や、40歳未満の夫婦が対象となります。興味のある方は公式サイトを定期的にチェックすることをおすすめします。

公式:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(住まいる住宅

移住者向け住宅補助金:新築・リフォーム・空き家活用を支援

川上村には、移住者が住まいに活用できる補助金制度が2つあります。これらの制度は、新たな生活をスタートする際の経済的負担を軽減するのに役立ちます。

▼住宅に関する補助金制度

豊かな暮らしづくり住宅補助金 村内に10年以上居住する目的で、住宅を新築・リフォーム・購入する方に、対象経費の1/2を補助(上限100万円)
※川上産吉野材を1.5㎥以上使用した場合や、耐震診断を受診した耐震リフォームについては上限200万円
川上住まいるネット(空き家バンク)登録物件の家財道具処分等補助金 空き家バンクの登録物件に入居する方を対象に、家財道具の処分・清掃にかかる費用を補助(上限10万円)

移住先で新たに住居を構える場合、建設費用や清掃費用などが必要になります。新しい場所で生活をスタートするには予定外の出費も多いため、住宅に関する費用の一部を村に補助してもらえるのはありがたいものです。

各制度の詳細情報は川上村の公式サイトに記載されています。川上村への移住を検討している方は、ぜひ確認してみてください。

公式:川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」(住宅に関する補助金制度

川上村移住者の声:自然の魅力と地域コミュニティの温かさ

奈良県川上村に移住した人の声

川上村の魅力や暮らしについて紹介しましたが、実際に移住した方の声も気になるところでしょう。ここでは、川上村に移住した方々の生の声をご紹介します。

  • 自然が美しく、四季折々の楽しみがある。休日は子どもと一緒に川や山で遊ぶことも多い
  • 水がきれいで、夏にはホタルを間近で観察できる
  • 収入は減ったが、生活コストが下がったので不自由はない。充実した支援により、子育ての経済的負担が軽減された
  • 地元の方が温かく、移住者を受け入れてくれる。近所付き合いが多いので、顔見知りが増えつつある

口コミにもあるように、川上村の村民は親切で、野菜を持って訪問してくれるなど、温かい交流が日常的に見られるそうです。

また、職員さんによると、川上村では近所付き合いをはじめ、集落ごとの交流が深く、奉仕活動や祭りなどの伝統的な文化が今も大切に継承されているとのことです。

人付き合いが苦手な方には少し課題があるかもしれませんが、イベント好きな方や地域との交流を大切にしたい方にとっては理想的な移住先と言えるでしょう。

川上村役場 くらし定住課の大辻孝則さん
大辻さん

移住前は季節ごとに足を運んでいただき、一年を通した村の暮らしを知っていただくことをおすすめします。下見を含め、計画的に準備していただくと、移住後も川上村での生活に溶け込みやすくなりますよ。

川上村への移住に関するお問い合わせ

奈良県川上村にある吊り橋の写真

川上村への移住に関する詳細な情報や支援制度については、川上村役場のくらし定住課までお問い合わせください。専門のスタッフが丁寧に対応いたします。

担当課 くらし定住課
住所 〒639-3594
奈良県吉野郡川上村大字迫1335番地の7
電話番号 0746-52-0111
公式サイト ▼川上村移住・定住ポータルサイト「川上ing」
https://www.kawakaming.jp/
▼川上村役場
https://www.vill.kawakami.nara.jp/