鹿児島県伊仙町で暮らす良さとは?移住のための仕事・住居・支援情報

この記事では、地方移住を検討している人に向けて、鹿児島県大島郡伊仙町の暮らしを紹介します。

伊仙町は世界自然遺産に登録された離島・徳之島にあるまち。珊瑚礁のリーフに囲まれたエメラルドグリーンの海や鍾乳洞など、豊かな自然を存分に味わうことができます。小さなまちでありながら、全国的にも高い出生率を維持しており、子育て世代が多いことも特徴です。

この記事では、伊仙町の魅力をはじめ、暮らしに必要な仕事・住まいの情報、移住支援などについて詳しく解説していきます。

本日お話を伺った方
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伊仙町役場 未来創生課

田部 奈津実さん

伊仙町の暮らしの魅力を3つご紹介

伊仙町の暮らしの特徴

伊仙町は奄美群島のほぼ中央に位置する離島・徳之島にあるまちです。

徳之島は世界自然遺産に登録されるほど豊かな自然景観を持つ島で、伊仙町・徳之島町・天城町の3町で構成されています。島の大きさは奄美群島の中では奄美大島に次いで大きいものの、島の周囲は約80kmと、2時間もあれば車で1周することができます。

伊仙町では、白い砂浜と珊瑚礁のリーフ、エメラルドグリーンの遠浅の開放的な景色や、琉球石灰岩の断崖となっている「犬田布岬」など、多様な自然景観が見られます。

そして伊仙町は長寿世界一としてギネスブックに掲載された2人の出身地としても有名。さらには全国屈指の合計特殊出生率(※)を誇る「長寿・子宝のまち」としても知られています。人口約6,000人の小さなまちでありながら、元気な高齢者や子どもが多く、地域での結びつきも強い、パワーと活気に満ち溢れたまちです。
※合計特殊出生率…15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性が一生のうちに産む平均子ども数を表す

そんな伊仙町での暮らしにおすすめなのは、以下のような方です。

  • きれいな海の近くで自然のパワーをもらいながら暮らしたい
  • 地域とのつながりを深く持ち、助け合いながら生活がしたい
  • 田舎暮らしを楽しみながら、子どもには同世代の子どもの中でいろいろな体験をさせたい
  • 離島ならではの「島文化」を楽しみたい

なぜこれらの特徴を持つ方におすすめなのか、伊仙町での暮らしの魅力を3つご紹介します。

魅力1:海も山もあり、自然のいろいろな表情を楽しめる

鹿児島県伊仙町のサトウキビ畑と海

伊仙町の穏やかで雄大な自然風景は、眺めていると心がおおらかになるような感覚を与えてくれます。海や山はもちろん、珊瑚礁や鍾乳洞、季節を彩る花々など、さまざまな自然の表情を見ることができるのが、伊仙町の最大の魅力のひとつです。

その中でも、伊仙町の象徴とも呼ぶべき犬田布岬は、広大な海と琉球石灰岩の断崖のコントラストが美しい、奄美十景に選ばれるほどの絶景です。水平線に沈む夕陽も見どころ。さらには岬の上からウミガメが泳いでいるところを見られることもあるという、伊仙町を代表する観光スポットです。

岬の突端には戦艦大和の慰霊塔がそびえ立っています。自然の美しさだけでなく、戦争や歴史についても考えさせられるスポットとなっています。

伊仙町の犬田布岬
▲犬田布岬の戦艦大和の慰霊塔ごしに見える美しい海の光景

もうひとつ伊仙町の有名な観光スポットが、阿権(あごん)集落にある樹齢300年のガジュマルです。ガジュマルの木は徳之島内にたくさんありますが、これほどの巨木にはなかなか出逢えません。民家の庭先にあるこのガジュマルの木には、ケムルン(精霊)が宿っていると言われており、パワースポットとしても知られています。

伊仙町の阿権のガジュマル
▲生命力が感じられる阿権のガジュマル

眺めているだけでも癒される風景が多くある伊仙町ですが、トレイルウォーキングやダイビングなど、自然をアクティブに満喫することもできます。瀬田海海浜公園ではバーベキューを楽しむことができ、さらには珊瑚礁のくぼみを削り整備した天然のプールもあるので、家族連れで来ても楽しめます。

伊仙町の瀬田海海浜公園
▲子どもも安心して遊べる自然のプールがある瀬田海海浜公園(町公式サイトから引用)

自然に囲まれた離島ならではの暮らしができる伊仙町は、ただの田舎暮らしではなくこれまでの暮らしでは味わえない自然環境を求める方におすすめの移住先です。

全国屈指の出生率を支える、充実の子育て支援と地域文化

伊仙町は「子宝のまち」として子どもが多いことでも有名ですが、実際に年少人口割合(※)が全国・県平均と比べて高くなっています。
※総人口に占める14歳以下の人口割合

その後ろ盾になるものとして、子育て支援金や給食費完全無償化、6歳までの医療費の全額補償など、伊仙町では公的なサポートが大変充実しています。特に出産祝い金は第3子以降15万円の支給があり、全国的に見ても手厚いのが特徴です。

▼出産・子育てに関する経済的支援(一部抜粋)

不妊治療旅費一部助成 不妊治療指定医療機関で治療を受ける際に必要な旅費を一部助成。
子育て支援金(出産祝い) 出産の1年以上前より町内に居住している方の出産時にお祝い金を支給。
※第1子5万円、第2子10万円、第3子以降15万円
妊婦・乳児健診助成 妊婦14回の健診費用と新生児聴覚検査・産婦健康診査、乳幼児健康診査1回の健診を助成。
※鹿児島県外での受診の場合は、一部の助成となる
子ども等医療費助成 6歳未満の乳幼児(未就学児)の健康保険等の対象となった医療費の自己負担分を助成。

公的支援とあわせて大切なのが、伊仙町に古くから伝わる「くわどぅたから(子は宝)」の精神です。伊仙町には家族、親族だけでなく、地域全体で子育てを応援する風土が根付いており、子どもの誕生や成人などを近隣住民もあわせてお祝いするという地域文化があります。

地域との付き合いが薄いことなどを理由とした子育て世帯の孤立化は全国的に課題となっていますが、伊仙町ではそのような状況とはほぼ無縁なのではないでしょうか。強力な「地域力」が子育て家庭を支え、子どもを産み育てやすい環境をつくりだしていると言えます。

さらに注目すべきは、伊仙町の教育環境です。町内には小学校は8校、中学校3校と、6,000人規模の人口の町では珍しいほどの数の学校があります。

場所によっては小規模校となり、小学1、2年生が合同の学級となっているところもありますが、住んでいる地域の近くに通える小学校があることは、子育てをする上での安心材料になるのではないでしょうか。

さらには地元学とキャリア教育を行う「いせん寺子屋」や、農業体験など、子どもの学びへの支援も充実しています。

伊仙町の児童の農業体験の様子
▲伊仙町の子どもたちの農業体験の様子

また、伊仙町では離島留学制度の「結い結い留学」の取り組みもあります。これは伊仙町外の子どもが一時的に伊仙町の小規模校に通学することを支援するための制度で、島外出身者と島内出身者がお互いに刺激を与えながら成長できる機会となります。

このように、伊仙町では子どもがさまざまな刺激を受けながら成長できる環境が整っています。

伊仙町は「情熱の島」!活気ある地域イベント多数あり

伊仙町ではイベントやお祭りが多く、活気に満ちた様は「情熱の島」と呼ばれるほどです。離島で育まれた独自の文化も多く、特に有名なのは“闘牛文化”です。

なくさみ館は大人数を収容できる闘牛用の施設で、島外からも多くの闘牛ファンが訪れています。朝や夕方にはときどき闘牛がお散歩しており、伊仙町ならではの光景を楽しむことができます。

伊仙町なくさみ館での闘牛の光景
▲迫力ある闘牛の様子が楽しめる伊仙町のなくさみ館

11月に実施される町最大のイベント「ほーらい祭」も盛況です。ほーらい祭では花火が打ちあがるほか、著名アーティストのライブイベントやレーザーショーなど盛りだくさんのプログラムで町民を楽しませています。

その他にも、地域では小さなイベントがたくさん開催されています。子どもが生まれたときの名づけお祝いは、何と100人から500人ほど集まるそう。子どもの入学祝いや成人の祝いも盛大に行われています。

このようなイベントやお祭りを通して地域の結びつきを深めていることが感じられます。移住した際にはこれらのイベントを思いっきり楽みながら、伊仙町ならではの文化に触れてみてはいかがでしょうか。

伊仙町の暮らしに関する情報

ここからは、伊仙町での暮らしに欠かせない情報を紹介していきます。

気候 高温多湿の亜熱帯海洋性気候に属し、年間を通じて温暖な気候。夏から秋にかけては台風が多いため注意が必要。
8月の平均気温:28.4度
1月の平均気温:15.2度
※参考:気象庁ホームページ
人口 長寿のまちとして知られ、実際に85歳以上の割合が人口の10%を占めている。

総人口:約6,500人
※参考:総務省人口動態統計
病院 徳之島全体では10件の病院や診療所あり。町内で治療が難しい場合は沖縄県、鹿児島県へ行くことも。

病院:1件
歯科医:2件
学校 保育施設:保育所2か所、幼稚園2か所、こども園(認定こども園含む)3か所
小学校:8校
中学校:3校
食べ物 サトウキビ、パッションフルーツなど
交通 公共交通手段はバスのため自家用車必須。
亀徳港(徳之島町)まで車で30分、徳之島空港(天城町)まで車で40分。
レンタカー、タクシー、自転車なども使用される。
近隣都市 大島郡徳之島町・天城町

離島ならではの不便はあるが、快適に安心して暮らせる環境

気になる生活面について、離島であることで特に病院や買い物に不安を覚える人もいるかもしれません。しかし町内には内科、外科、小児科、リハビリテーション科のあるクリニックがあり、買い物施設としてはチェーン店やスーパーもあります。さらに採れたて野菜が楽しめる直売所や個人商店・小売店もあるため日常生活に不便はありません。

とはいえやはり買い物はインターネットショッピングに頼る局面も多いそうです。インターネットで注文すれば通常3日程度で届くようですが、離島のため届けられないというネットショップもあるため、その点には注意が必要です。

気になるインターネット環境も、町内全域に光回線が通じており、たいていの家庭ではWi-Fiを設置するため、特に他地域と変わりません。まちの中でも海や森深い場所では回線がつながらないこともありますが、住宅街ではつながらないことはまずないそうです。

全体的に病院や買い物環境も整っており、保育施設や小中学校の数も充実しているなど、快適に安心して暮らすことができます。

もちろん物資は船輸送なので天候などによっては止まってしまうこともあるなど、離島ならではの不便はあります。しかし食料品は近所で配り合ったりと、地域の助け合いの中で解消しているようです。

集落ごとに暮らしの違いあり

伊仙町内には31の集落があります。まち全体がコンパクトであり、さらには車社会でもあるため、生活に大きな不便がある集落はありません。しかし古里(ふるさと)集落は浜に面していたり、馬根(ばね)集落は山に囲まれていたりと地形の差はさまざまで、また集落ごとに育まれている独自の文化も見られます。

目手久(めてぐ)集落には島内最大の観光闘牛場があり、伊仙町を代表する文化である闘牛文化の中心地です。また阿権集落は、昔ながらの珊瑚が組まれた石垣が特徴。観光スポットも多く、観光客がよく訪れる地です。

さらには、最も小規模な集落で数十戸しかない中山(なかやま)集落に対し、伊仙町役場などの主要な建物がある伊仙集落では1,000戸以上の人口が集まっているなど、人口規模も集落によって大きく差があります。

伊仙町への移住をお考えの際には、ぜひ集落ごとの特徴も見て、自分の希望する暮らしを叶えられる集落を見つけてみることをおすすめします。

仕事情報:町内求人は充実。町内コワーキングスペースもあり!

伊仙町ではサトウキビや畜産、じゃがいもやマンゴーなどの生産をしている農家が多くなっています。何と農業に従事している人が就業者のうちで約3分の1にのぼるそうです。

伊仙町でのサトウキビ収穫の様子
▲伊仙町の基幹産業はサトウキビを中心とした農業

一方で、移住してきた人などはさまざまな職種に就いているのも特徴です。島内求人は十分にあり、特に保育士の募集が多いようです。

伊仙町の正社員の求人数を大手求人サイトで調べると、約30件の正社員の求人がヒットしました。(2023年5月現在)
※参考:求人情報の一例

近隣も含めると、約100件と、正社員の求人数が大幅に増えました。
※参考:求人情報の一例

伊仙町には、旧農業高校の跡地を利用したサテライトオフィス兼コワーキングスペースがあります。起業向けの貸しオフィスとしても、1日からの個人利用もできるため、働く場所を選ばない職種の人には最適なのではないでしょうか。

伊仙町サテライトオフィス見取り図
▲コワーキングスペースもある伊仙町サテライトオフィス(町公式サイトから引用)

住まいに関する情報:賃貸の需要大!住みながらゆっくりと探すのもおすすめ

住まいに関しては賃貸の需要が大きくなっています。家賃相場は4~6万円が主流ですが、古い一軒家の場合はもう少し安い価格帯で借りられることもあるそうです。

住まいへの支援としては、「移住定住促進住宅」という子育て世代向けの町営住宅があります。子ども1人対していくらか家賃が軽減されるなどお得に住める制度ですが、その分人気で競争率も高いのが特徴です。

前提として、口コミによる情報収集が主流のため、島外から希望の住まいを探してもなかなか見つけるのは難しいかもしれません。住みながら地域での情報を集め、ゆっくりと理想の住まいを探してみるのが良いのではないでしょうか。

伊仙町への移住者の声

伊仙町移住者の声

ここでは、実際に伊仙町に移住された方の声を紹介します。

  • 伊仙町の景色や風の流れにとても魅力を感じた。
  • 集落や町の皆さんが温かく受け入れてくれた。
  • 伊仙町に来たことで、人との関わりや活動が大きく広がり、多くの刺激を受けることができた。
  • 伊仙町の人から、他人に寛大になる心を学ばせてもらっている。
  • 移住して最初は友達がいなかったが、少しずつママ友や知り合いが増えてきた。島の人たちがわざわざ車を停めて話しかけてくれるように。

都会では決して味わうことができない雄大な自然と、地域での人付き合いに魅了されている人が多いようです。のんびりした空気の中でも、新しい発見や多くの刺激がある環境と言えるでしょう。

伊仙町への移住に向けて利用したい窓口・支援

伊仙町への移住に向けて、まずはいきなり移住するのではなく、島暮らしの体験をしてみることが重要です。

伊仙町には宿泊施設も多くあります。観光として遊びに訪れても、島の暮らしの良さを十分に感じていただけると思います。

伊仙町の移住に関するお問い合わせ

担当課 未来創生課
住所 〒891-8293
鹿児島県大島郡伊仙町大字伊仙1842
電話番号 0997-86-3111
対応時間 8:30~17:15
公式サイト 町公式サイト:https://www.town.isen.kagoshima.jp/index.html
移住特集ページ:https://www.town.isen.kagoshima.jp/mirai/search-idx/ijuteju.html