体験し、チャレンジする3年間を。四條畷学園中学校で生徒が伸びやかに成長する理由

長い伝統があらわれた行事、先進的な教育プログラムなど、特色ある取り組みを続ける学校を取材するこの企画。今回は、大阪府大東市の私立中学校である四條畷(しじょうなわて)学園中学校にインタビューさせていただきました。

同学園は、中学校だけなく幼稚園や小学校、そして高校・短期大学・大学と多くの系列校を持っている総合学園です。しかしながら、ただ自動的にエスカレーターを進んでいくのではなく、3年間でさまざまな経験を積むことで成長し、自分の道を見つけていってほしいという姿勢があるのです。

そんな四條畷学園中学校、通称「なわがくちゅう」の特徴について、教頭の山田先生、生徒指導部長の小椋先生、広報部長の中司先生にお話を伺いました!

取材にご対応いただいた四條畷学園中学校の中司先生(広報部長)、山田先生(教頭)、小椋先生(生徒指導部長)

四條畷学園中学校が貫く報恩感謝と「人をつくる」理念

四條畷学園中学校の校舎

▲中学生が学園生活を送る6階建ての「若草校舎」

編集部

最初に、四條畷学園中学校の教育理念をお聞かせください。

山田先生

建学の精神として代々引き継いでいるのは「報恩感謝」の想いです。入学式や卒業式はもちろんのこと、生徒指導部が生徒に話しかけるときも登場するようなキーワードで、2026年に100周年を迎えるいまとなっても、その4文字を忘れることはありません。

その精神を根底に、本校では「人をつくる」という教育理念を掲げています。そして、人をつくるために必要な2つの要素を「Manners makes man(マナーズ・メイクス・マン)」と「実践躬行(じっせんきゅうこう)」という言葉で表しているんです。

前者は礼儀正しさや態度を身につけることにより、品性人格の備わった人をつくるということ、後者は自分の力で何度も実行することの重要性を説いています。

編集部

実践躬行は「知識だけでなく体験すること」の大切さを伝えていらっしゃると思いますが、たとえばどんな体験の機会があるのでしょうか?

山田先生

行事がすごく多いことが挙げられますし、あとはその計画から実行まで生徒の関わる度合いの大きさも特徴的です。文化祭である「畷学祭(なわフェス)」などのイベントでは、学校側も材料を揃えるくらいのことはするのですが、生徒たちは自分で考えてブラッシュアップさせていき、新しい体験を積んでいますね。

中司先生

体験することで恐れがなくなるので、生徒たちもどんどん積極的になっています。授業で「この問題を解きたい!」と手を挙げるのは序の口で、この前は入学して一年も経っていない中学1年生の子が「生徒会長に立候補していいですか」と聞いてきました(笑)。

もちろん、失敗することもあります。それが無謀なこと、危険なことであったなら、私たちも注意します。でも、挑戦することは誰も止めないんです。明確な目標を持っている子、まだ悩んでいる途中の子など状況は異なりますが、みんな挑戦している。それが「なわがくちゅう」らしさだと思います。

素直かつマナーを大事にする生徒たち

四條畷学園中学校図書館のスペースで話す山田先生・小椋先生と生徒3名

編集部

四條畷学園中学校の生徒の特徴として、チャレンジングな姿勢以外に感じているものはありますか?

山田先生

一言で言うと、素直でかわいらしい。関西らしい表現にするなら「おぼこい」生徒が多いと思います。私はもともと小学校教師志望でしたが、中学校に配属され、少しとまどいがありました。しかし、実際に関わってみると純粋で素直な生徒が多いことに驚きました。

ぎゅうぎゅうに詰め込まれて勉強してきた生徒は少なく、伸びしろが大きいという印象です。すごく教えがいがあり、3年間での学力面や精神面での成長は目を見張るものがあります。

編集部

小椋先生はいかがですか?

小椋先生

私というより外部から来校された方の感想なのですが、「どの生徒さんも気持ちよく挨拶してくれますね」とよくおっしゃっていただけるんです。これは、教師自身が進んで挨拶をしている影響もあるのかなと思います。先ほどの「Manners makes man」の精神が伝わっていて、非常に嬉しいです。

素直さも礼儀正しさも、これから社会に出るにあたって、ある意味では絶対に色あせない武器ですよね。昔から変わらない本校の生徒の強みだと感じているので、これからも継続させていきたいです。

四條畷学園中学校の特徴とは

四條畷学園中学校は、2021年度にスタートした「3年コース」において、中高6年間ではなく中学3年間の中で多様な体験ができるようなプログラムを用意しています。その詳細を含め、同校の特徴についてお話しいただきました!

探究活動「G-pro」で現場を知り、実際に体験できる

机に向かう四條畷学園中学校の生徒3名

編集部

四條畷学園中学校で過ごす3年間の中で、生徒の皆さんはどのような体験ができるのか、御校ならではの取り組みについてお教えいただけますか?

小椋先生

私たち独自のものでは、探究活動「G-pro」を紹介したいですね。

この「G」は、単純に「学園」の頭文字でもありますが、3年後の高校受験も控えた多忙かつ多感な時期に「自分」を見つめること、過去だけではなく未来のことも考えるため「時代」を学ぶこと、そして四條畷という「地元」に触れることという3つの意味を込めています。

そのプログラムで共通しているのは、とにかくリアルに触れる、リアルを聞くということです。各界のプロフェッショナルをお呼びして教壇に立っていただいたり、逆に生徒が現場に伺ったりすることで、他では得られない体験ができると考えています。

そこで自分なりの課題を見つけ、関心を深めて調べていき、中3の夏は総まとめとしてみんなの前で発表します。見て聞いて終わりでなく形にすることで、自分が好きなものは何なのか、現時点では何ができるのかを肌感覚で理解できるのです。

四條畷学園中学校の小椋先生

編集部

過去のG-proでは、どんな方から学ぶことができたのでしょうか。

小椋先生

カンテレさんやコマツさんのような誰もが知る大企業の方からお話が聞けたり、動物園など普段なかなか仕事のようすを知ることが少ない業界の方からメッセージをもらったりしましたね。社会貢献という意味合いもあり、皆さん快くご対応いただけて嬉しい限りです。

その場では飾りのない率直な言葉で、プロの仕事がどんなものなのか、働く意義、大変さなどを語ってもらっています。生徒たちも最初は戸惑うことはありますが、やがて「こんなふうになるには、中学のときにこうしたほうがいいかも」などと、自分を知って変えていくきっかけにしているみたいです。

あとは、卒業生とのつながりも大いに役立っています。地元企業の職場体験を計画したときには、教師が70社くらい手分けして挨拶に行ったのですが、OBたちが「うちは5人受け入れ可能です!」「1日だけじゃなくて2日間来たらどうですか?」などと協力してくれるんですね。

しかも、仕事の概要だけ伝えて終わりという内容ではなく、たとえば理髪店であればお客様の髪の毛を洗うところまで体験できます。これも、「なわがくちゅう」の先輩・後輩だからという気持ちから提案してくれるのだと思います。

およそ100年の歴史がつくる「ファミリー感」

四條畷学園中学校の中庭と制服

▲緑あふれる中庭「若草庭園」と、イタリアの有名ブランド「ベネトン」がデザインした制服

編集部

四條畷学園中学校の特徴は、どんなところだと感じていますか?

中司先生

中学校で過ごす時間が充実している生徒が多いことと、あとは「ファミリー感」でしょうか。

本校はOBが毎週のように来校するのですが、その度に「本当に楽しい3年間だった」「中学の友達とはずっとつながっている」と聞きますね。保護者の方々も、カリキュラムや進学実績などは気になると思うのですが、やはり一生の友達を見つけて笑顔で過ごしてほしいと考えていらっしゃると思います。その点でもすごく自信があります。

あと、約100年の歴史を持つ学校なので、親子三代で通っていただいているというご家族もあります。地域にとって「あの学校に通わせたい」という存在になれているのかなと感じますし、一番の評価だと思います。生徒と教員だけでなく、ご家族やOB、地域の皆様もあわせてひとつの家族のように存続できているのが、本校の誇らしいところです。

四條畷学園中学校の山田先生

山田先生

先日、本校で「成人を祝おう会」を開催したのですが、それぞれ地元での成人式終了後にその学年の卒業生約150人のうち130人くらいが集まってきたんです。幹事がいろいろと企画して盛り上がりましたし、駆けつけた教員も一緒に、最後は記念写真を撮りました。

この学年がたまたま多かったということではなく、毎年このようなイベントへの出席率は高いですね。あとは、地元に残る生徒同士だと仕事でもつながったりしているようです。

編集部

卒業後もみんなで集まりたい、先生と話したいという気持ちが強かったり、自分の子どもも通わせたかったりするのは、御校で過ごした時間がすごく充実していた何よりの証拠ですね。

四條畷学園中学校の独自の取り組みを紹介!

JR学研都市線の「四条畷」駅から徒歩1分と、大阪市内を含め各地からのアクセスがよい立地である四條畷学園中学校。その中でどんな学園生活を送っているのか、各施設の写真とともにいろいろなエピソードをお聞きしています。

スケジュール管理は生徒自身が行う。少人数制の英語授業も

四條畷学園中学校の図書館の風景

▲蔵書が約5万冊の図書館は、生徒のアイデアも反映されたリニューアルプロジェクトで改装された

編集部

四條畷学園中学校で過ごすスクールライフから、特徴的な部分をご紹介いただけますか?

中司先生

本校はノーチャイム制を導入しているので、各時限の始まりと終わりは生徒が自ら管理していく必要があります。それにより、自分の行動を段取りしてあらかじめ準備する意識が芽生えるんですね。

最初は1日単位の管理であっても、それを続けていくとより長い期間のスケジュール管理能力が身についていきます。「この課題は今のうちに進めておこう」などと自分で考えて、OBがチューターとなる自習室や図書館を使って主体的に学習を進めているんです。

編集部

各教科の授業で、独自に工夫されているものはあるでしょうか。

中司先生

少人数制の英語授業「RC(Reading&Communication)」は数十年前から続けている本校オリジナルのプログラムなので、ぜひ紹介したいです。

これは中1・中2を対象にクラスを2つに分けて実施するもので、ネイティブと日本人の教師がペアを組んで手厚く教えています。今でこそ少人数制の授業は当たり前になっていますが、我々は時代を先取りして取り組んできました。

RCの授業内容は、英語を読んで聞いて伝えるというコミュニケーションを重視していて、高校受験対策である通常のカリキュラムとは目的が異なっています。ツールとしての英語を習得することで、生きる力を育むという想いを、生徒も受け止めてくれていると感じていますね。

海外研修を早くから開始。歴史のある行事が多い

四條畷学園中学校の中司先生

編集部

御校ならではという行事やイベントは、何かありますか?

中司先生

先ほど時代を先取りしたRC(少人数制英語授業)の話をしましたが、1996年に始まったニュージーランドの海外研修も、全国の学校の中でかなり早く始めたと思います。

この研修では本校の生徒が行くだけではなく、ニュージーランドの学校からも生徒を迎え入れていて、しかもホストファミリーはどちらも各校の生徒の家族が務めます。ひとつの学校さんとこれだけ長く信頼のある関係性を築けているのも、うちの特徴ですね。

「Manners makes man」という横文字の理念にも表れていますが、我々は創立時からグローバル教育にも力を入れているので、ぜひ多くの方に知ってほしいです。

山田先生

行事関連でいうと12月のスキー教室も歴史が長くて、これまでに53回も実施してきました(取材は2024年2月)。コロナ禍の影響で1回だけ見送ったのですが、それ以外は毎年続けていますね。

クラブ活動も活発。卒業してもつながりは変わらない

四條畷学園中学校の総合ホール

▲総合ホール(体育館)。ここで練習を重ね、近畿大会などで結果を残すクラブも

編集部

四條畷学園中学校のクラブ活動についてはいかがでしょうか。

中司先生

クラブ活動はものすごく活発なんですよ。全国的に学校の部活は地域移行(※)が進んでいる傾向で、本校もそれに逆行しているわけではないのですが、およそ20種類のクラブが頑張って活動しています。
(※)部活動の地域移行:学校教員ではなく地域団体や事業者が部活動の指導を担う仕組み

全国を目指して熱心に練習するクラブもあれば、週2〜3回の自分らしいペースで活動するクラブもあり、選択肢は幅広いですね。全体の9割の生徒が、何かしらのクラブに入っていると思います。

四條畷学園中学校のクラブ連絡掲示板

▲学内のクラブ連絡掲示板。生徒がイキイキと活動しているようすが見て取れる

山田先生

本校にはファミリー感があるという話がありましたが、同じクラブの生徒だとなおさら結びつきは強いですね。

中司先生も私もサッカー部の顧問をしておりますが、もう50歳くらいになる卒業生が毎年OB会を開いてくださり、OBと現役の中学生とで試合もやります(笑)。それ以外にも、各クラブで合宿の手伝いに来てくれたりと、卒業してもフォア・ザ・チームの精神は変わらないです。

四條畷学園中学校の音楽室

▲音楽室のようす。高校の吹奏楽部は全国大会の常連校として有名

四條畷学園中学校からご家族・お子様へのメッセージ

四條畷学園中学校の山田先生と小椋先生

編集部

最後に、山田先生から読者の方に向けてメッセージをいただけますか?

山田先生

四條畷学園中学校は、勉強面のサポートのみならず探究の機会を多く設けることで、生徒の可能性を必ず伸ばす学校です。その点は自信を持っています。

あと、あまり大きな声では言えないのですが、関西の名門校や進学校の先生方から「自分の子どもを四條畷に通わせたい」とおっしゃっていただけることも多いです。私たちの風土や取り組みが、学校教育のプロの方々に評価されていることは、ぜひ皆さんに知っていただきたいですね。

とはいえ、実際のところはやはり見てみないとわからないという方も多いと思います。本校は「年1回の学校見学だけ」というような制限はなく、いつでもオープンにしています。中には春から毎月見学に来て志望を決めたという親御さんもいらっしゃるので、ぜひ遠慮なくお越しいただければと思います。

編集部

先生方のお話を伺って、四條畷学園中学校の伝統や生徒・先生・OB同士の繋がりの深さ、そして数々の体験の機会など、その魅力が一層理解できました。本日はありがとうございました!

四條畷学園中学校のキャリア支援と卒業後の歩み

四條畷学園中学校が中高一貫の6年間ではなく中学3年間に集中したコース設定にしているのは、高校受験という挑戦をすることで、さらなる成長のきっかけをつかんでほしいという想いがあるからだと、中司先生は話されていました。

そのため、学校では個人のレベルに応じた授業や定期的な面談のほか、24時間365日のオンラインサポートを実施するなど、応援する姿勢を明確に打ち出しています。生徒の皆さんもそれに応え、「仲間と一緒に受験に向けて頑張ろう」という雰囲気が校内に浸透しており、北野や洛南などの難関校に複数の合格実績があります。

進学先の比率としては系列校の四條畷学園高等学校に進学する生徒が2割程ですが、内部進学ではなく受験が必須です。「なわがくちゅう」のカルチャーが好きで、この環境でもっと成長したいという生徒も、もちろん歓迎しているということでした。

中学生活という多感な時期は、誰にとっても大切な3年間です。その限られた時間を、先生に支えられ、友達と励ましあいながら目標に向けて努力していけるのは、同校のような特色ある私立校ならではだといえるでしょう。

■高校進学実績はこちらから(四條畷学園中学校公式サイト)
https://jh.shijonawate-gakuen.ac.jp/achievement/achievement.html

四條畷学園中学校の在校生・卒業生の声

四條畷学園中学校の生徒の皆さん、そして卒業生の皆さんの声を集めてみました!

先生方がすごく熱心に教えてくれています。休み時間に質問しに行くと、廊下の机で一生懸命教えてくれるので、「頑張らないとな」と感じます。

探究校外研修、またクラブ活動などで仲間と特別な時間を過ごすことが多いので、入学後に仲良くなりやすいです。

現在医学部に在籍していますが、合格できたのは中学校での勉強習慣がベースとなっています。塾にいかずに授業に真剣に取り組むことで十分に学力がつきましたし、部活も含めやりたいことをやらせてもらえたのがよかったと思います。

看護師として多くの方と触れ合う毎日です。中学校のときに、ディベートや探究型の理科の実験など「自分で考える」機会が多かったからこそ、相手の考えることを想像する力が身についたので、すごく役立っています。

お問い合わせ

問い合わせ先 四條畷学園中学校
住所 大阪府大東市学園町6番45号
電話番号 072-876-1321
公式サイト https://jh.shijonawate-gakuen.ac.jp/