甲南女子中学校・高等学校の「人間性」を重んじる教育|中高一貫校

画期的な取り組みを実践する学校を紹介する本企画。この記事では、兵庫県神戸市にある女子校・甲南女子中学校・高等学校の特徴と魅力をお伝えします。

100年以上の歴史をもつ同校は、私立の中高一貫校です。伝統校ながらも、アサーショントレーニング(※)や国際教育といった時代のニーズに即したカリキュラムを導入しており、国公立大学や難関私立大学、医学部医学科などへも多数の合格者を輩出しています。
(※)お互いの主張を大切にした話し方や立ち振る舞いができるようになるためのトレーニング

今回は入試広報室・主任で国語を担当していらっしゃる松原先生にインタビュー取材し、甲南女子中学校・高等学校の教育理念やカリキュラム、生徒たちの学校生活などを詳しく教えていただきました。

100年以上の伝統校「甲南女子中学校・高等学校」の教育理念

兵庫県神戸市にある甲南女子中学校・高等学校の外観

編集部

まずは、甲南女子中学校・高等学校の教育理念をお聞かせください。

松原先生

初代専任校長・表甚六(おもてじんろく)が提唱した「清く 正しく 優しく 強く」を校訓としています。本校は、「訓育を以て日本一の学校たらしめたい」との思いで創立された学校です。学校生活でも折に触れて「清く 正しく 優しく 強く」を確認し合い、生徒たちの意識を高めています。

話し合いで解決する力を育む「アサーショントレーニング」

編集部

御校の教育理念はカリキュラムにどう反映しているのでしょうか?

松原先生

もっとも我が校らしい取り組みは「アサーショントレーニング」だと思います。アメリカで開発されたコミュニケーション教育の手法で、自分の意見を伝えつつ相手の気持ちをしっかりと聞く力を養います。人間性や道徳性を育むことにつながると考えています。

心理学の知見のある学校カウンセラーの方にも協力いただき、入学時から段階的に自己主張と傾聴を学べるプログラムを整えています。

例えば新中学1年生には、入学式前に一定の期間を設けて「スプリングセミナー」という研修を実施します。スプリングセミナーで友達の作り方はもちろん、相手を不快にさせずに気持ちを伝えるポイントなどをレクチャーし、楽しい学校生活につなげていくんです。

入学後には、総合学習をはじめとする授業で、グループワークを多く取り入れています。複数人で活動すると、意見の違いが生じることもありますよね。トラブルにならずに意見の違いを乗り越えるためには、相手との共通点を見出したり、妥協策を探ったりするスキルが重要です。

本校の生徒たちはアサーショントレーニングを体験しているので、部活や行事などで意見がぶつかったときにも、話し合いで解決していく生徒が多いです。

編集部

生徒同士で話し合いがうまくいかないときには、先生がサポートに入ってくださるのでしょうか?

松原先生

もちろんです。教員が間に入ってアドバイスをしながら、生徒たちの解決力を引き出していきます。勤務経験豊かな教員が、生徒たちの心情を汲みながらサポートを行っています。

甲南女子中学校・高等学校の現代にあわせた独自カリキュラム

甲南女子中学校・高等学校にあるアトリウム

▲生徒たちの憩いの場となっている「アトリウム」

甲南女子中学校・高等学校では、時代のニーズに即したカリキュラムを実践しています。代表的な総合学習「自己探求」・「国際教育」について、お話を伺ってみましょう。

興味・関心から学びを深めるカリキュラム「自己探求」

甲南女子中学校・高等学校の生徒たちの活動風景

▲アナログとデジタルを組み合わせ、グループの研究をまとめる

編集部

御校は、グループ別に好きなテーマを決めて課題を解決する総合学習「自己探求」を実践されているそうですね。実践例をいくつかお聞かせいただけますか?

松原先生

はい。「自己探求」は生徒の興味・関心に沿って進めるため、毎年テーマが異なります。

2022年度は、あるグループが生分解性プラスチック(※)をテーマに活動しました。生徒たちは生分解性プラスチックを実際に校内で作ってみたのですが、最初は上手くいかなかったようです。「自己探求」の授業を通して「なぜうまくいかないのか」理由を検証し、作り方を改善して挑戦を繰り返しました。
※製品の使用後に、特定の条件で生分解されるプラスチック

「自己探求」の活動をすすめていくなかで、必要に応じ、本校のネットワークを生かし、外部機関につなげるケースもあります。例えばジェンダー問題なら、現状を調べて課題点を見出し、生徒たちが考えた解決策を政府機関などを含めた関係各所に提示して意見を求めます。実際に議会を傍聴し、政治的な取り組みに触れるケースもありました。

商品開発に興味のある班は、地元の商店街とコラボして共同で商品開発を行ったこともありました。もちろん上手くいくことばかりではありませんが、どの班もあきらめずに「原因を分析して改善する」という行動につなげ、問題解決能力が身についていきています。

編集部

学校外の方々とつながることでリアルな声に触れることができるので、生徒さんたちの学びも深まりますね。生徒さんたちの反応はいかがでしょうか?

松原先生

「自己探求」は思考力や主体性を育む授業なので、生徒たちの表情も生き生きしているように感じます。最近は「タブレットを使って説明動画を作成しよう」「話し合いをオンラインでまとめてみよう」など、デジタルを活用した工夫も見られますよ。

留学制度あり!実践的な英語力を養う「国際教育」

編集部

国際教育に力を入れている御校には、留学制度があるそうですね。

松原先生

本校と協定を結んでいる海外の学校で、留学体験ができるようになっています。先方の状況もあるので実施できない年もありますが、短期ではカナダ、中期・長期だとオーストラリア・シンガポール・韓国などへの留学が可能です。

長期の留学だと1年間になるものもございますが、帰国後に同じ学年の仲間と一緒に卒業できるようカリキュラムを工夫しているので、留学のしやすさがあると思います。

編集部

国際教育の面で、留学以外にはどのような取り組みをされていますか?

松原先生

中学校2年生・3年生の英会話の授業で、英語だけを使って劇をする「英語劇コンテスト」を実施しています。例えば「ピーターパン」のシーンをいくつかに区切り、グループごとにセリフや動きなどを練習します。

甲南女子中学校・高等学校の英語劇コンテストの様子

▲「英語劇コンテスト」

英語劇コンテストの練習中にも、「この発音のほうが気持ちが伝わるのではないか」「こういう演出の方が効果的ではないか」といった話し合いの機会を設けています。毎年12月の発表に向けて1か月間ほどかけて練習するので、英語力の向上はもちろん、仲間との協調性も育まれているようです。

編集部

パンフレットに「英語の模擬裁判」の事例が紹介されていましたが、英語の授業の一環で実施したのでしょうか?

松原先生

本校では、教科の枠を超えて学びを深める「教科融合型授業」を実施しており、英語の模擬裁判はその一環で行ったものです。模擬裁判は、英語と公民の学びを融合した実践です。先生同士も連携しており、社会科の先生が裁判の内容を監修し、英語の先生が生徒たちの話し方や発音などに対するアドバイスを行います。

英語の模擬裁判に参加したのは高校3年生で、英会話のスキルを駆使して公民で習った裁判の流れを実演しました。裁判なので緊張感もあり、自分の英語力を試す機会にもなったと思います。

甲南女子中学校・高等学校のスクールライフ

甲南女子中学校・高等学校のスクールライフイメージ

甲南女子中学校・高等学校は「文武両道」を大切に、生徒たちの学力・体力・精神力を育てています。授業・部活の両面から、生徒たちのスクールライフに迫ってみましょう。

生徒の勉強スタイルや希望の進路にあわせて選べる「2コース制」

編集部

御校では、中学1年生から2コース制を採用しているそうですね。それぞれのコースの特徴を簡単にご紹介いただけますか?

松原先生

希望する学習スタイルや進路に合わせて、「スタンダードコース」と「Sアドバンストコース」のいずれかを選択できます。

スタンダードコースは、じっくりと学び学力をつけたい生徒向きで、私立大学(文系・理系)から国立大学まで、幅広い進路に対応したコースです。繰り返し学習を重視し、基礎学力の定着を目指します。成績が思うように伸びない場合には、春休み・夏休みに希望して講習を受けることも可能です。もちろん、先生側から補習を呼びかけるケースもありますよ。

一方のSアドバンストコースは、深く詳細に学び、国公立大学に合格できるような学力を身につけたい生徒のためのコースです。基礎をひと通り学習した後には発展的な問題に取り組み、国公立大学受験に対応できるような深い理解を目指します。春休み・夏休みの講習は参加必須で、5教科の受験を考慮して授業数も多めに組まれています。

コースによっての違いは進路や勉強スタイルに限られ、行事、部活動などに差はありません。成績に応じ、入学後のコース変更も可能です。

アーチェリー部・弓道部・オーケストラ部など個性豊かな部活動も!

編集部

御校には、どのような部活動があるのでしょうか?

松原先生

運動系から文化系まで、個性豊かな部活動がそろっています。運動系だと、アーチェリー部や弓道部が全国大会で優勝したことがあります。文化系ではバイオリン・チェロなどの弦楽の技術を高められる「オーケストラ部」があります。茶道部で使っている茶室は国の文化財になっているので、趣のある環境で活動することが可能です。

オーケストラ部が入学式で演奏する様子

▲入学式ではオーケストラ部の演奏が新入生を迎える

そのほかにも、コーラス部・ダンス部・放送部などたくさんの部活動があるので、お子さまの個性に合わせて活躍の場を見つけていただけると思います。

女子校だからこそ、本来の自分を発揮する生徒が多い

編集部

個性に合わせたコース選択、部活動が可能とのことですが、どのような生徒が多いのでしょうか。

松原先生

全体的に、切り替えの上手な生徒が多いです。授業中は真剣に活動に取り組む一方、休み時間や行事では明るく、元気な姿が見られます。女子校ということもあり、異性の目を気にせずに本来の自分を発揮する生徒が多いと感じます。

甲南女子中学校・高等学校よりご家族へメッセージ

甲南女子中学校・高等学校の松原先生

▲インタビューに対応してくださった松原稔幸先生

編集部

中学受験を検討しているお子さんや、ご家族へのメッセージをお願いします。

松原先生

本校は歴史や伝統に甘んじることなく、生徒や保護者のニーズに合わせて改革し続ける「動く学校」です。現在、コース変更の柔軟化や、総合学習の刷新など、さまざまな改革を進めています。設備の充実度にも力を入れており、最近では屋上を天然芝生にしました。

甲南女子中学校・高等学校の屋上風景

▲リニューアルされた屋上は出入りが可能。お弁当を食べたり、景色を楽しんだりできる

本校に興味を持ってくださった方は、ぜひ一度学校説明会にお越しください。年に4回実施している学校説明会では、学校の教育内容を説明するだけではなく、校舎を自由にご見学いただくこともできます。さらに、模擬授業や部活体験、生徒たちによる学校探検ツアーなどを通して、甲南女子中学校・高等学校の生活を体験することが可能です。明るく朗らかな本校の雰囲気を感じていただき、学校との相性を確かめていただきたいです。

公式:甲南女子中学校・高等学校「学校説明会」

編集部

お話からも、伝統を大切にしながらも国際教育やアサーショントレーニング、問題解決学習などを取り入れ、次世代で求められるスキルを育んでいらっしゃることが伝わってきました。本日は、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

甲南女子中学校・高等学校の進学実績

2023年は、卒業生172名で関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学といった難関私立大学の合格数が156でした。

また、「Sアドバンストコース」からは京都大学・大阪大学・神戸大学といった難関国公立大学はもちろん、国公私立大学の医学部医学科にも多くの合格が出ています。

公式:甲南女子中学校・高等学校「合格実績」

甲南女子中学校・高等学校の保護者からの感想・口コミ

最後に、甲南女子中学校・高等学校の生徒の保護者から寄せられた感想をまとめて紹介します。

校舎がとてもきれいで図書館の蔵書数も豊富。勉強熱心な生徒が多く、国公立大への合格者を輩出している。

「勉強を重視する」「部活と両立したい」などのニーズに合わせてコースを選べるのがうれしい。

叱るときは怒鳴りつけるのではなく、理由を説明しながら納得がいくように話をしてもらえる。子どもが嫌な気持ちにならずに済むので親としても助かっている。

保護者の感想からも、生徒たちの意欲を引き出す先生たちの姿や、設備の充実度がうかがえます。自分に合ったコースで無理なく学べる環境を評価している保護者も多いようです。

甲南女子中学校・高等学校の基本情報

住所 兵庫県神戸市東灘区森北町5丁目6-1
電話番号 078-411-2531(事務室)
※電話対応時間は平日7:45~18:00・土曜日は7:45~14:00
公式サイト https://www.konan-gs.ed.jp/