青山学院中等部の、生徒の自主性を育む「教科センター方式」とは?|中高一貫校

ぽてん読者の皆様に、今注目の学校を紹介するこの企画。今回は私立中高一貫共学校の青山学院中等部をご紹介します。

青山学院中等部は、学校法人青山学院によって運営されている総合学園の中の併設校の一つです。渋谷区にある緑豊かなキャンパスには幼稚園から大学院までが集っており、幅広い世代と共に学べる環境があります。中等部の生徒は毎年95%以上が高等部に進み、「青学」での学びをさらに深めています。

同校の教育の根幹にはキリスト教の精神があり、日々の礼拝や聖書の授業といったミッションスクールならではの時間を設けているのが特徴です。また各フロアが教科ごとにゾーン形成される「教科センター方式」を取っており、生徒の能動的な学びを助ける特色ある校舎の中で、幅広い学びを得ることができます。

そんな青山学院中等部の教育理念やカリキュラム、校舎の特徴などについて、広報委員長の筒井先生にお話を伺いました。

「サーバント・リーダーを育成する」青山学院中等部の教育理念

青山学院中等部の広報委員長・筒井先生

▲インタビューにご対応いただいた筒井先生

編集部

青山学院中等部の教育理念を教えてください。

筒井先生

「すべての人と社会のために未来を拓くサーバント・リーダーを育成する」というのが、青山学院全体に共通する教育のビジョンです。

サーバント・リーダーとは自ら進んで人と社会のために尽くす人物のことで、今世界で重要視されるリーダーシップ・スタイルです。具体例としては、アフガニスタンの人道支援に尽力した医師の中村哲氏のように人々の為に尽くした人が挙げられます。また、150年前の青山学院創設当初から本学院を支え奉仕し続けた津田仙(※)氏も、まさにサーバント・リーダーといえるでしょう。
(※)明治初期の佐倉藩士、農学者。女性の高等教育の進歩に大きく貢献した津田梅子の父にあたる

この考えはビジネス界におけるリーダーシップ論の中で生まれたものですが、その源流にはキリスト教の教えがあり、本学の教育方針と精神を同じくしています。「隣人を自分のように愛しなさい」というキリスト教の根幹を踏まえ、青山学院では人に仕え、人の支えになる人材の育成に取り組んでいます。

編集部

サーバント・リーダーの精神は、学校生活の中で生徒の皆さんにどのように落としこんでいるのでしょうか。

筒井先生

この理念やキリスト教の精神を浸透させる機会としては、毎日の礼拝や週に1回の聖書の授業、さらに様々な宗教行事があります。

また実践の場として、年に数回有志で校内清掃を行う「クリスチャン・フェローシップ(C.F.)」や老人ホーム慰問を行うという奉仕活動も実施しています。人のために尽くすことの喜びを知る体験を通じて、サーバント・リーダーシップを育んでいけたらと考えています。

青山学院中等部の聖書科のメディアスペースの展示

▲校内の「聖書科」の前には、聖書に関する展示もある

幅広い学びを得られる、青山学院中等部のカリキュラム

ほとんどの生徒が青山学院高等部に進学する同校では、ゆとりのある環境の中で、受験科目に限定されない幅広い学びの中で自分が本当に求めているものに出会える機会を提供しています。ここからは青山学院中等部の具体的なカリキュラムの特徴を紹介します。

生徒の主体性を育む「教科センター方式の授業」

編集部

続いて御校の特徴的な教育活動について伺います。まずは「教科センター方式」について、どのような取り組みなのか教えていただけますか?

筒井先生

教科センター方式は、2017年の新校舎使用開始に伴い始まった新しい学びの方式です。各教科の専用教室とメディアスペース、そして教科準備室を隣接させた教科専用ゾーンを作ることで、教科教育がより充実して学習ができるようになっています。

コロナ禍には教室移動が難しい時期もあったため、現在ではホームルーム形式と移動授業を組み合わせた形で実施しています。

青山学院中等部の教室

▲各教室のドアは開き戸で、同じフロアのメディアスペースと連結しやすくなっている。

編集部

メディアスペースというのはどのような空間なのでしょうか。

筒井先生

メディアスペースには各教科の教材や教具、その教科に関する生徒の作品やレポートを展示しています。授業の枠を超えてさまざまな展示によって生徒の知的好奇心を喚起する、多様な刺激が受けられる空間です。

編集部

専用教室がある科目というと音楽や美術、理科の実験が思い浮かびますが、そういった科目以外でも教科センター方式を取り入れているのですか?

筒井先生

現在はすべての科目で教科センター方式を取り入れているわけではなく、科目によってはホームルームで行う場合もあります。社会や国語などでは教科センター方式の授業が特に多いですね。

青山学院中等部の国語科のメディアスペース

青山学院中等部の数学科のメディアスペース

青山学院中等部の理科のメディアスペース

青山学院中等部の社会科のメディアスペース

▲国語科(1枚目)、数学科(2枚目)、理科(3枚目)、社会科(4枚目)の各メディアスペース

編集部

教科センター方式を取り入れることで、生徒の皆さんにはどのような変化が生まれていますか?

筒井先生

教室で教えられる教科の内容だけではなく、メディアスペースでは多様な学びに触れられることで刺激を受け、学びの姿勢が前向きになってきていると感じます。与えられたものをこなすだけの勉強ではなく、自ら興味を持って主体的に取り組む勉強スタイルに変化しつつあるのではないでしょうか。

“本物に触れる”多様な経験ができる「選択授業」

青山学院中等部の筒井先生

編集部

青山学院中等部が幅広い学びを得る上で行っている取り組みとしては、「選択授業」も特徴的だと思います。この選択授業はどのようなものなのか教えていただけますか?

筒井先生

選択授業は1971年に始まった、50年以上続く取り組みです。全体を均質に伸ばす教育が主流だった当時、生徒の個性を活かし将来の可能性を広げることに着眼点を置く新たな教育として誕生しました。

選択授業は中学3年生が週2時間履修するもので、ほとんどの生徒が青山学院高等部に内部進学するからこそ、受験科目にとらわれない多様な学びを提供しています。具体的には中学校の指導要領の範囲には含まれていない、韓国語やソーシャルイノベーション、暗号、名画の模写などの20以上の講座からなっており、専門的な内容を取り扱うことも多く、中学生ながら大学のゼミのような内容を学べるのが魅力です。

編集部

かなりユニークな内容の講座がたくさんあるのですね。その中でも人気がある講座があれば教えてください。

筒井先生

「暗号」は古典から現代まで続く暗号の歴史を、数学理論から紐解いていくという講座です。数学に対して苦手意識のある生徒も、暗号と絡めることで楽しく学べる内容になっています。

他にも中国語や韓国語の講座は、語学の授業だけでなく中華街に行って食事をしたり韓国料理を皆で作ったりと楽しみながら学べるので、かなり人気ですね。海外に訪問するプログラムもあるため、学んだことを実践的に試せるのもポイントです。

また、体育では、年によって変わるのですが「ラクロス」や、「スポーツ発見」ではボクシングやランニング、パデルといった競技の専門家の話を聴きながら授業を進めているのも人気があります。

編集部

この選択授業では、どういった点に重点を置いて授業を行われているのでしょうか。

筒井先生

青山学院中等部では「本物に触れる」教育を大切にしており、選択授業でもその点に重点を置いた授業を行っています。例えば俳句の授業では、青山学院大学出身で俳人として活躍する方に講師としてお越しいただき、プロの方から俳句のポイントを教えていただいています。

私自身も美術で「テンペラ画」を教えています。テンペラ画とは卵の黄身を使用して描く15世紀から18世紀頃の中世ヨーロッパの絵画技法で、それを体現しながら当時の絵画の歴史を学ぶという授業です。テンペラ画を描く際に扱う、においの強い「ニカワ」に実際に触れてみるなど、「本物」からしか得られない体験ができるので、生徒にとって大きな刺激となっていると思います。

編集部

選択授業は生徒さんにどのような影響を与えていると思われますか?

筒井先生

多分野で「本物」に触れることで、生徒の視野が広がっているなと感じます。それは進路選択にもつながっており、実際に私のテンペラ画の授業をきっかけに美術大学や芸術大学に進学した生徒も少なくありません。選択授業が興味・関心の入口になり、生徒の将来の可能性を広げていることを実感しています。

都心に位置する青山学院中等部でのスクールライフ

青山学院キャンパスの風景

東京都渋谷区、渋谷駅から徒歩約13分の位置にある青山学院中等部。都会の一等地にあるキャンパスで、普段生徒の皆さんはどう過ごしているのでしょうか。ここからは同校に受け継がれる校風や校舎の特徴など、青山学院中等部で送るスクールライフを紹介します。

国際感覚に根ざした「自由」な校風

青山学院中等部のエントランス

編集部

青山学院中等部の「青学らしさ」は、どういった点にあると思われますか?

筒井先生

元々アメリカの宣教師が創立した背景があるため、青山学院全体にアメリカの自由な風土が根付いています。創立当時の明治時代から英語教育など先進的な教育を実施しており、その教育スタイルは福沢諭吉氏も視察に訪れるなど注目を集めていました。

その青山学院全体の校風が、戦後まもなく創立された本校にも受け継がれています。例えば制服でいうと、初めて制服が制定された1960年頃から今までデザインが変わっておらず、また女子生徒は巻きスカートなどでなければ特に指定はなく自由にスカートを着用してよいということになっています。このことからも、当時から国際感覚に基づく自由な校風があったことがお分かりいただけるかと思います。

生徒に接する際も、自由と自主性を尊重することを大切にしています。もちろんルールを守ることも大切ですが、ルールで縛り付けるよりも一人ひとりの個性を伸ばしていけるような成長をサポートできたらと考えています。

再開発が進む渋谷だからこそ、企業など外の世界からの刺激が得られる

編集部

青山学院中等部は渋谷区という立地も特徴ですが、この立地にあることのメリットはどのようなところにあると思われますか?

筒井先生

渋谷区は近年再開発が進んでおり、Googleをはじめとする多くの企業が進出しています。中学生の頃から、学校の外のさまざまな世界を肌で感じられる環境があるのは、子どもの視野や将来の選択肢を広げていく上で大きなメリットです。選択授業などいろいろな機会を通じて、近隣の企業などと連携した学びを提供していけたらと考えています。

編集部

繁華街が近いことを懸念する保護者の方もいるかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

筒井先生

確かに渋谷に通うことに対して心配される保護者の方も少なくありません。ただし生徒は駅から学校まで直線で動きますし、本校の場所は渋谷駅の中心からはやや離れた比較的静かな場所にあるので治安に関してあまり問題はないと思います。実際に繁華街でトラブルが起きたという例もこれまでほとんどありません。

下校時刻が決まっているので大体の帰宅時間も分かります。何より学校生活がかなり充実していて盛りだくさんなので、学外での遊びよりは学内での活動に集中しているというのが実際のところです。

ビオトープに礼拝堂も!青山学院中等部ならではの充実した設備

編集部

2017年に使用が開始された新校舎も青山学院中等部の魅力ですが、先ほどご説明いただいたメディアスペース以外にも、特徴的な設備などがあれば教えてください。

筒井先生

メディアスペースに関連した設備に「メディアセンター」という図書館があります。吹き抜けの2階スペースにも書架があって、まるでハリーポッターに出てくるような図書館のイメージもあるかもしれません。このメディアスペースと各教科のメディアセンターは連携しており、教科のメディアスペースで興味を持ったものについて、メディアセンターに来るとさらに深く調べられるようになっています。

青山学院中等部のメディアセンター(図書館)

青山学院中等部のメディアセンター(図書館)

▲メディアセンターは2層構造になっており、個別・集団学習スペースも備えている

筒井先生

また6階は全体が理科のフロアなのですが、東西南北に庭があるのが特徴です。それぞれの庭で太陽の光の当たり具合によって、植樹をしたりカブトムシを飼ったりと特徴があり、南の庭はビオトープになっています。学校の中に自然があって、「本物」に触れながら学べるという大きなメリットがあります。

青山学院中等部のビオトープ

▲南の庭にあるビオトープ

筒井先生

礼拝堂があるのも本校ならではの魅力です。礼拝は毎日、全校生徒が一堂に荘厳な場所に会して実施しています。時間に追われる日常の慌ただしさの中で、自分の心を静かにして向き合える時間というのは、現代人の我々の中では、今特に必要とされている時間だと私は思います。

学校にいるときは当たり前に感じていても、社会に出てからこの礼拝の時間の大切さを実感することも多いようです。忙しい中でも落ち着いたひと時を持てることが、心の豊かさにもつながってゆけるのだと思います。

青山学院中等部の礼拝堂

都心の真ん中でも、広々したグラウンドや複数の体育館を確保

青山学院中等部のグラウンド

編集部

青山学院中等部では部活動も盛んに行われているのでしょうか。

筒井先生

はい。約30種類以上という豊富なクラブ数を誇っており、自分の興味・関心に合わせたクラブ選択ができます。1人2部まで加入することができるので、加入率は100%を超えています

編集部

クラブ数が多いと、特に運動部は活動場所の問題が出てくると思いますが、その点はいかがでしょうか。

筒井先生

人工芝のグラウンドはサッカーコートが1面取れる広さを有しており、体育館も複数あるため、クラブはそれぞれの場所で活動場所を確保できています。とはいえ中高それぞれが部活動を行っているため、毎日練習があるわけではなく、曜日を分けて使用するようにしています。そのことによって、学習とのバランスのとれた活動を生み出しています。

そのような活動ですが、中には毎年全国大会に出場しているクラブもあります

青山学院中等部の体育館

青山学院中等部の体育館にあるトレーニング設備

青山学院中等部の温水プール

▲トレーニング機器を備えたアリーナに温水プールと、運動設備が充実

青山学院中等部からのメッセージ

青山学院中等部の筒井先生

編集部

最後に、青山学院中等部での学校生活に興味を持ったお子様、保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

筒井先生

私たちは、情報が氾濫するこの時代、広くいろいろなものを見渡せる視野を持つことが不可欠だと考えています。そのため青山学院中等部では、幅広い学びに向き合うことで物の見方を豊かにする教育を大切にしています。

中学時代の3年間は心も体も大きく成長する時期です。本校の教育を通じて、豊かな心を育んでもらえたらと思います。

最後に、受験に取り組んでいるお子様やその保護者の皆様は大変なことも多いと思いますが、一つひとつに丁寧に向き合うことで将来に必要な力が必ず身につきます。皆さんに輝かしい未来が訪れることを心から願っています。

編集部

筒井先生、本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

青山学院中等部の進学実績

青山学院中等部の卒業生の95%は青山学院高等部に進学し、高等部卒業生は80%以上が青山学院大学、女子短期大学へ進学しており、高い内部進学率となっています。

高校卒業後の他大学への過去3年間の進学実績を見ると、東京大学や京都大学、東京工業大学といった難関校への合格者を輩出しています。また、武蔵野美術大学や東京藝術大学の合格者もいるということからも、選択授業をはじめとする幅広い学びが、多様な進路実現のきっかけになっていることがうかがえます。

■青山学院中等部・高等部の進学実績(公式サイト)
・中等部:https://www.jh.aoyama.ed.jp/admission/after_course.html
・高等部:https://www.agh.aoyama.ed.jp/introduction/after_course.html

青山学院中等部の保護者・在校生の口コミ

ここでは、青山学院中等部に寄せられた保護者の方や在校生の口コミを一部抜粋して紹介します。

自由で、のびのびとした華やかな学院生活を送ることができる。

駅から少し歩くが、渋谷駅の中心より静かな場所にあるので治安面で不安に感じたことはない。

広々とした校庭や温水プール、メディアスペースなど設備が魅力。メディアスペースは土偶や標本なども展示されており、興味を持って楽しめる。

内部進学ができるので受験勉強にとらわれず、本当の意味での勉強ができる。

宿題が多く感じるが、その分子どもが自宅学習の習慣を身につけることができた。学校の学びが家でも活きているなと感じる場面が多くある。

子どもが幅広い学びを身につけられる環境を評価する保護者の声が多く聞かれました。在校生の口コミからは、都心の便利な立地や充実の設備、自由を尊重される校風への魅力を感じている生徒が多いことが伺えます。

青山学院中等部へのお問い合わせ

運営 学校法人青山学院
住所 東京都渋谷区渋谷4-4-25
電話番号 03-3407-7463(中等部直通)
問い合わせ先 https://www.jh.aoyama.ed.jp/contact/index.html
公式ページ https://www.jh.aoyama.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください