子どもの“伸び率”日本一を目指す奈良学園登美ヶ丘の「人間力」を育む教育方針|中高一貫校

ぽてん読者の皆さんに、いま注目の学校を紹介するこの企画。本記事では、奈良市にある私立・共学の中高一貫校「奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校」の教育方針や特色あるカリキュラムを紹介します。

「子どもの伸び率日本一」をスローガンに掲げる同校は、6年間の学校生活を通じて生徒が大きな成長を遂げることができるよう、枠にはめない指導や自由にチャレンジできる環境づくりを重視しています。

大学受験に必要な「学び力」だけでなく、課題を見つけチームで答えを導き出す「探究力」、世界とつながり行動する「国際力」、そしてそれらの力の基盤となる「人間力」を養うカリキュラムをバランス良く組んでおり、授業の効果を高めるために1人1台ノートパソコンを使用するなどICT機器も積極的に活用しています。

今回は、校長を務める安井孝至先生と、広報部長の川本悠二先生にインタビューさせていただきました。

奈良学園登美ヶ丘は子どもの「伸び率」で日本一を目指す

奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校の校長を務める安井孝至先生がインタビューに応えるようす

編集部

まず、奈良学園登美ヶ丘が掲げる「子どもの伸び率日本一」というスローガンについて、その狙いや背景をお話しいただけますでしょうか。

安井先生

この学校経営スローガンは、「生徒一人ひとりが、自分自身も気付いていない潜在能力をどのように開花させるか」に焦点を当てた指導をしようという決意を込めて私が校長に就任した2019年に設定したものです。

「伸び率」には、学力や部活の成績といった数値に表れるものだけでなく、最後までやりきる力やコミュニケーション能力、人をリスペクトする力、新しいことを創造する力といった数字で測れない非認知能力も含まれます。6年間の学校生活で、こうした力がしっかりと伸びたと生徒自身が実感できるような教育をしたいと考えています。

そのため、教員には生徒を型にはめず、前例にとらわれることなく自由に新しい発想で、教育プログラムや授業内容を構築してほしいと伝えています。

編集部

生徒さんの力や能力が大きく伸びた例としては、どのようなものがありますか?

安井先生

中学はⅠ類・Ⅱ類のコースに分かれていますが、Ⅱ類からのスタートでも6年後には京都大学や国立大学の医学部に合格するレベルへと大きく学力を伸ばす生徒がいます。

部活では、中学1年生から本格的に陸上を始めた女子生徒が中学3年生で全日本中学校陸上競技選手権大会の100mで優勝し、奈良県中学新記録を樹立するなど、能力を開花させ活躍している例がたくさんあります。

編集部

「伸び率」を意識した教育によって、生徒さんはそれぞれの分野で大きく飛躍しているのですね。

仲間と協力し正解のない課題に取り組むことで「探究力」を育む

奈良学園登美ヶ丘の生徒たちがグループで探究学習に取り組むようす

編集部

ここからは、具体的な教育やカリキュラムの内容についてお伺いしたいと思います。奈良学園登美ヶ丘が重視する力のひとつに「探究力」がありますが、探究学習の特色についてお話しいただけますか?

安井先生

早いうちから主体性や柔軟な思考力、課題解決力とプレゼン力を身につけてもらうため、本校では中学1年生で探究学習を始めます。4〜5人のグループでテーマに取り組むのが特色で、仲間と協働して答えのない課題に挑むことによって自分の視野を広げたりお互いの良い部分を認め合うことの大切さを学びます。

編集部

探究学習ではどのようなテーマを扱っているのでしょうか?

安井先生

中学1年生は「正解のない問いに向き合う」という探究の基本を学ぶことを目的にしており、「奈良学園登美ヶ丘を日本一有名な学校にする方法」や「体育館で1億円稼ぐ方法」といったお題に対し、情報収集やディスカッションをしながらグループで結論を導き出します。

2年生は社会課題の解決をテーマにグループワークを行い、3年生になると企業様のご協力のもとインターンを体験し新製品の開発等といったテーマに挑戦します。高校生になると、より視野を広げてSDGsなどの地球規模の課題をテーマに探究を行います。

編集部

多くの人の前でプレゼンテーションを行う機会もあるのでしょうか?

安井先生

校内のコンテストで勝ち抜いたチームはさまざまな大会に出場し、発表を行います。例えば、2023年は中学2年生の2チームが日本最大級の探究学習の祭典「クエストカップ全国大会」の社会課題探究部門に出場し、このうち1チームが上位10チームに入りました。

高校1年生は、高校生が社会課題の解決方法を考える「SDGs QUEST みらい甲子園」に出場します。2023年は黒板の見えづらさをITで解決する「スマート板書ペン」を提案した本校のチームが関西エリア大会のファイナリスト12チームのひとつに選ばれました。

また、校内の交流会で他学年のプレゼンを見る機会もあります。

自らの興味や専門性を早くに認識することは自主的な進路選択につながる

奈良学園登美ヶ丘の生徒たちが探究成果の発表を行うようす

編集部

中学1年生から探究学習を行うことのメリットをどのようにお感じですか?

安井先生

自分自身の興味関心に早いうちから気づけることが大きなポイントだと考えています。自らの専門性を認識することは大学の学部・学科選びといった自主的な進路選択にもつながります。

また、生徒が自主的に結成したクラブに準ずる「自然再生研究会」では校内の人工池を市内周辺の生き物であふれるビオトープに変える活動を行い、その研究成果を学会やコンクールで発表し高い評価をいただきました。

研究会を作った生徒たちは2022年度に卒業し、うち2名は京都大学の特色入試に合格しました。研究活動や探究活動が進路の実現につながった好例と言えます。

編集部

6年間の探究学習で得たスキルは、大学に進学した後やその後の社会生活でも役に立ちそうですね。

海外研修だけじゃない!日本にいながら国際感覚を養うプログラムが充実

イングリッシュキャンプでネイティブの先生と生徒が話すようす

▲高校1年生が参加する「イングリッシュキャンプ」では、ネイティブの先生と3日間過ごし、英語によるコミュニケーション力を集中的に伸ばす。

編集部

奈良学園登美ヶ丘の国際教育についてもご紹介いただけますか?

安井先生

本校はオーストラリアのゴールドコーストの高校と教育連携しており、高校2年生は全員、2週間の語学研修へ行きます。このうち10日間は原則1人1家庭でホームステイをするので、英語漬けの環境で過ごすことができます。

この機会を探究学習とも結びつけ、SDGsをテーマに研究した成果を英語で発表する機会を設けたいと思っています。

また、高校1年生の秋には英語のネイティブの先生と3日間過ごす「イングリッシュキャンプ」に全員参加するほか、3学期には希望する生徒が約2ヶ月半、ゴールドコーストの連携校に通うターム留学に参加します。ターム留学では語学の上達はもちろんですが、現地の文化や生活習慣に触れたり、世界共通の社会課題などについて学び、意見交換することで国際人としての意識を高めてもらいます。

「グローバルコンピテンスプログラム」で主体的にディスカッション

編集部

日々の授業においては、どのようなプログラムを通じて国際力を高めていますか?

安井先生

先ほどご紹介したような海外研修などのグローバル体験に加えて、日常的な授業で行うグローバル教育を両輪で行うことが大切だと考えています。そのため、国際社会で役立つ英語コミュニケーションやグローバルマインドを養う授業「グローバルコンピテンスプログラム」を中学3年生から実施しています。

授業はネイティブ教員と日本人の英語教員がチームになってオールイングリッシュで行われ、生徒は課題に対してグループで意見交換し、考えをまとめて英語で発表します。

編集部

どのようなテーマでディスカッションを行うのでしょうか?

安井先生

例えば、「あなたが海外の学校の校長先生になったとしたら、どんな学校を作りたいですか?」といったテーマです。

生徒たちはダイバーシティを意識しながら、多様な学生が全員満足できるような学校づくりのアイディアを出し合います。「教室の配置はどうする?」とか、「どんな制服がいいだろう?」などと話しながら理想的な学校の姿を描いていきます。

編集部

オールイングリッシュの環境でも、生徒たちは活発にディスカッションしているのですね。

安井先生

そうですね。国際力や探究力を高めるさまざまなプログラムを実施していますが、共通するのは仲間とチームになって楽しみながら取り組めることです。楽しいからこそ主体的な学びが生まれるのだと思います。

グローバルコンピテンスプログラムに限らず、本校の教育を通じて身につけた国際力や探究力が本当に役に立つのは高校を卒業してからです。例えば大学のゼミでは、中高の段階で探究的な学習を経験してきた学生がリーダーシップを取ったり、多様な意見を述べてゼミの質を高めたりしています。

大学生、そして社会人として輝くことができるように、中高で探究力と国際力の基礎をしっかりと培ってもらいたいと考えています。

授業やコミュニケーション手段としてICT機器を積極的に活用

奈良学園登美ヶ丘の生徒たちがパソコンを使って授業を受けるようす

編集部

奈良学園登美ヶ丘は、授業や生徒とのコミュニケーションにICTを積極的に取り入れていると伺いました。

安井先生

ノートパソコンの「Chromebook」をひとり1台持つ「One to Oneシステム」が全学年に導入されているほか、各教室には電子黒板「xSync Board(バイシンクボード)」を完備しています。

編集部

ノートパソコンはどのような場面で活用していますか?

安井先生

例えば探究学習やグローバルコンピテンスプログラムではプレゼンシートの作成などを行ううえで欠かせない存在です。宿題の提出もノートパソコンを使って自宅からオンラインで行います。

学習シーンだけでなく、学校から保護者への連絡、生徒と担任の先生がコミュニケーションを取るツールとしても活用しています。

編集部

担任の先生とはどのようなやり取りがあるのでしょうか?

川本先生

日々の相談事や進路相談などが多いですね。かつて担任の先生とノートでやり取りしていたものがパソコンでのやりとりに変わったイメージで、いつでも気軽に連絡できるツールとして活用しています。

また、生徒からの相談内容によっては、パソコン上のやり取りで終わらせず顔を合わせて面談するなど、状況に応じた対応をするようにしています。

編集部

ICT機器の利用が学校生活に浸透し、当たり前の存在となっているのですね。

安井先生

本校ではICTが「文房具の一部」になっていると言えます。ただ、大学入試に向けては読む、書く、話すというアナログ学習も大事ですので、デジタル学習との最適なバランスを考えながら使うようにしています。

また、生徒のやる気を起こすマジックはICT機器にあるのではなく、教員のハートと授業テクニックにあります。このことを忘れずに、授業に工夫を凝らし続けたいと考えています。

奈良学園登美ヶ丘の特徴的な設備

奈良学園登美ヶ丘のグラウンド

編集部

奈良学園登美ヶ丘の設備の特徴についてもご紹介いただけますか?

安井先生

まず、天然芝の総合グラウンドが本校の自慢です。野球場1面とサッカーグラウンド1面、480mの陸上トラックを備え、観客席も設置しています。学校見学にいらした方は本格的なグラウンドに「わーっ!」と声が出るくらい驚かれますよ。

奈良学園の生徒が合同運動会で競技するようす

▲キャンパスには幼稚園や小学校もあり、運動会などの行事の際には異学齢が交流する機会も。

編集部

理科の実験設備についても、奈良学園登美ヶ丘ならではのものがあれば教えてください。

安井先生

本校には学校としては珍しく、天体観測ドームがあります。150mm口径の屈折望遠鏡と200ミリ口径の反射望遠鏡があり、月のクレーターもはっきりと見ることができます。望遠鏡はコンピュータ制御で動くので、見たい天体を入力するだけで自動でピントを合わせてくれます。

奈良学園登美ヶ丘の校舎の屋上に設置された天体観測ドーム

編集部

天体観測ドームはどのような時に利用するのでしょうか?

安井先生

春と秋に天体観望会を開いて希望する生徒が参加するほか、併設する奈良学園大学の先生が観望会を開催する時には望遠鏡に映った画像をオンラインで共有し自宅からパソコンで観測する取り組みも行っています。

編集部

実際に天体を観測することは、天体への興味や、「もっと知りたい」という好奇心につながりそうですね。

文武両道を推奨し、全国レベルの部活動も

編集部

クラブ活動の状況についてはいかがですか?

安井先生

本校には文化部が14、運動部が10あります。競技かるた部や辯論部は全国大会の常連ですし、囲碁・将棋部も文化系クラブのインターハイにあたる全国高等学校総合文化祭に出場しています。中学男子テニス部は、団体戦で全国大会に出場し、ベスト16に入りました。

編集部

文化系の部活も活躍しているのですね。学校として部活への参加を推奨しているのでしょうか?

安井先生

はい。先輩後輩が良好な人間関係を築きながら目標に向かって切磋琢磨するというのは中高でしかできない貴重な体験ですので、本校は文武両道を掲げています。

奈良学園登美ヶ丘の生徒には切磋琢磨しながら挑む「奈良登美・ファイティング・スピリッツ」がある

尚志祭で奈良学園登美ヶ丘の生徒たちがパフォーマンスを行うようす

▲小学5年生以上が参加する文化祭「尚志祭」では、弁論やクラス展示、演劇、音楽などの広い分野で日頃の成果を発表する。

編集部

安井先生は、奈良学園登美ヶ丘にはどのような生徒が多いとお感じですか?

安井先生

明るく素直で、人懐っこい生徒が多いですね。本校の生徒が伸びる秘訣は、この素直さなのではないかと思っています。

一方で、負けず嫌いな面を持つ生徒も多いです。勉強でも部活でも、友達といい意味でライバル関係になって切磋琢磨しながら勇猛果敢に挑んでおり、私はそんな彼らの勇姿を「奈良登美・ファイティング・スピリッツ」と呼んでいます。

尚志祭で奈良学園登美ヶ丘の生徒たちが演奏するようす

編集部

何事にも真っ直ぐ打ち込む生徒さんが多いのですね。川本先生は、奈良学園登美ヶ丘らしさはどんなところにあるとお感じですか?

川本先生

机に向かってする勉強だけではなく、探究学習やグローバル教育、クラブ活動など「欲張り」にやっているところだと思います。

生徒のなかには「こんなにたくさんできるのかな?」と感じる子もいますが、みんな次第にこの環境に慣れていきます。欲張りだからこそ、子どもたちの高い「伸び率」を実現できるのだと思います。

編集部

最後に、安井先生から読者の方に向けてメッセージをお願いします。

安井先生

開校から15年ほどの若い学校ですが、本校には自由な雰囲気の中で生徒が自身のポテンシャルに気付き、それを着実に伸ばしていくことができるような環境があります。

一人一人のニーズに向き合い、手厚く丁寧な指導を実践する学校として評価いただいているところです。特に、大学進学では第一志望の合格を勝ち取ってもらうために教員一丸となって責任を持って大切なお子様を支援させていただきたいと思っています。

編集部

先生方のお話を伺って、奈良学園登美ヶ丘の生徒が大きく伸びる理由がよく分かりました。

本日は、ありがとうございました!

奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校の学習支援と進学実績

奈良学園登美ヶ丘の図書館

奈良学園登美ヶ丘では2020年から個別指導塾と提携した放課後学習支援「尚志館」を実施しています。

尚志館では、運営指導員が生徒の目標や課題に合った学習計画を作り、生徒がこれに沿って自学自習を行う「質問型個別指導」と、苦手な科目や伸ばしたい科目について1対1でチューターの授業を受ける「カリキュラム型個別指導」があります。

同校を卒業した大学生などがチューターを務めるため、奈良学園登美ヶ丘のカリキュラムや教育方針を踏まえた指導を受けることができ、京都大学などの難関大学に合格したOGやOBと交流することは学習や進路へのモチベーション向上にもつながっています。

伸び率を意識した教育や放課後学習支援の結果、多くの生徒が国公立大学や難関私立大学へ進学しており、2023年度は7名が京都大学に現役合格しています。

■近年の進学実績(奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校の公式サイトより)
https://www.naragakuen.jp/tomigaoka/t_jun/proceed/result.html

奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校の卒業生の声

奈良学園登美ヶ丘の正門

ここでは、奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校で学んだ卒業生の声を紹介します。

楽しくて個性豊かな先生による授業は楽しく、受験に向けたサポートも手厚くしてもらいました。

少人数の学校だからこそ、生徒一人ひとりに寄り添った指導をしてもらうことができます。その結果、6年間塾に通わずに第一志望の大学に合格することができました。

個性的な仲間たちと刺激し合いながら、楽しい6年間を過ごしました。勉強面では充実した講座や丁寧な進路指導を受けることができました。

大学受験に向けた指導を高く評価する声が目立ちました。また、個性豊かな先生やクラスメイトに出会えたという声が多いのは、型にはめない指導を行う同校ならではの特徴と言えるかもしれません。

お問い合わせ

問い合わせ先 学校法人奈良学園 奈良学園登美ヶ丘中学校・高等学校
住所 奈良県奈良市中登美ケ丘3-15-1
電話番号 0742-93-5111
公式サイト https://www.naragakuen.jp/
tomigaoka/t_jun/