全生徒が海外研修に。「城西中学・高等学校」が体験重視のプログラムを用意する理由

この企画では、ぽてんをご覧の皆さんに「いま、注目を集めている学校」を紹介していきます。今回は、生徒の自由を尊重した教育方針を掲げ、大学や専門学校などの系列校も多い「城西大学附属 城西中学・高等学校」にインタビューしました。

同校が近年立ち上げた新教育プログラムは、生徒の「体験」を重視しています。全生徒が参加するオーストラリアの海外研修や、学外の方たちと一緒に進めていく独自のプロジェクトなど、大学進学のみならずその先まで見据えた6年間になるようにサポートしているのです。

そんな城西中学・高等学校の理念や取り組み、魅力的な校内施設などについて、入試広報部長である坂本純一先生にお話しいただきました!

城西中学・高等学校が大正時代から保つ「自由と実践重視」の校風

城西中学・高等学校入試広報部長の坂本先生

▲学校の理念について語る入試広報部長の坂本先生

編集部

まず、城西中学・高等学校が何を大事にして生徒の皆さんと向き合っているかという想いをお聞かせいただけますか?

坂本先生

創立当初から「天分の伸長」「個性の尊重」「自発活動の尊重」という3つの建学の精神を持っています。現在では様々な体験を通して五感を刺激し、自発的に学ぶ意欲を引き出すこと、人間関係の中で成長し自分も他人も尊重できる自己肯定感の高い人になることが大切だという考えに結びついています。

創立の時点では「城西実務学校」という名称で、貿易実務を学ぶ学校として創設されました。その後、関東大震災等を経て実務学校としての役割を終え、1925年(大正14年)に野口援太郎という教育学者が「城西学園」に改称した上で学園長となっています。

野口援太郎は大正自由教育運動(※)に深く関わっていて、寄宿生活の中での様々な経験を通した学びと自治活動を教育に取り入れた池袋児童の村小学校を運営するほか、日本で初めて理科の授業に「実験」を取り入れた人物の一人なんです。その想いが現在も引き継がれています。
(※)大正自由教育運動:子どもの気持ちを中心とした自由を尊重する教育方針とその広がり。大正デモクラシーを追い風に、欧米の教育理念を輸入する形で始まった。

城西中学・高等学校のエントランス付近にある「報恩感謝」の掲示

▲校舎の入口近くには校訓である「報恩感謝」の文字が

坂本先生

また、五代目の校長である新藤富五郎が掲げた校訓「報恩感謝」の考え方も校内に根付いています。自由に伸び伸びと成長していくその根幹には「人に受けた恩を返すために努力していく」という姿勢があることも、生徒たちには日々伝えています。

編集部

自由というのは「自分勝手に何でもしていいよ」ということではなく、周囲と助け合うような人間関係がベースにあるということですね。

城西中学・高等学校の新教育プログラムとは

編集部

城西中学・高等学校の教育理念は、日々の学びの現場にどう落とし込まれているのでしょうか?

坂本先生

全体のカリキュラムや授業での工夫など各所にあらわれていますが、ぜひお伝えしたいのは2018年に始まった中高一貫型のプログラム「JOSAI Future Global Leader Program」です。

これは、体験を通した学びと世界や地域、社会とのつながりを重視した授業を6年間かけて展開すること、そして生徒間だけでない人間関係の中で自己肯定感を持って成長していくことをテーマにしてスタートしたものです。2023年には「One and Only」、意訳すると「自分を頼れる人になろう」というフレーズも打ち出しています。

■JOSAI Future Global Leader Programの詳細はこちら!(城西中学・高等学校公式サイト)
https://josaigakuen.ac.jp/education/feature/

全生徒が2週間の海外研修に!留学生からも刺激を受ける

城西中学・高等学校の制服一覧

編集部

JOSAI Future Global Leader Programの一番の特徴は何になりますか?

坂本先生

プログラムの最初の中間目標として、中学3年生の3学期に実施する全員参加型の「オーストラリア海外研修」を行っています。

この研修はオーストラリアのブリスベンで2週間ホームステイをしながら現地校に通うという内容で、英語だけで展開される現地の授業にトライする以外に、日本とは大きく異なる環境に飛び込むということに重きを置いていますね。

このオーストラリアの学校はキャンパスの広さが当校の10倍くらいあって、なんと校内に「生徒用の託児所」もあるんです。年齢や人種問わず幅広いバックグラウンドを持つ生徒が通っているほか、自動車を解体したりカフェ経営を実地で学ぶこともできたりと、授業の自由度も桁違いです。

具体的な生徒の反応を挙げると、海外の同年代の考え方がわかって面白かったという声や、初めて親元を離れての生活の中でホストファミリーから洗濯機の使い方を初めて教わったというものまで、幅広いです。お客様気分で研修を受けるのではなく、短期間とはいえ現地の生徒と同じ生活を送るので、非常に刺激を受けています。

編集部

限られた生徒だけでなく、基本的には全員その体験ができるというのは、学校全体に大きな影響がありそうです。城西中学・高等学校は、以前から国際交流に力を入れていたのですか?

坂本先生

はい。私たちは国内の学校の中でも交換留学の制度をかなり早めに取り入れていて、1982年(昭和57年)にアメリカ・オレゴン州のスィートホーム高校と姉妹校になり、生徒の交流が始まりました。

そのときには文部科学省(当時は文部省)に掛け合って、海外で学ぶ期間の単位認定についても法的に認められるようにしました。当校はその第1号です。

現在も、高校1年生のすべてのクラスに1人ずつ留学生が在籍しています。十代のうちに将来を考えて日本に来ようというメンタリティがあるので、受け入れ側の生徒たちも刺激を受ける部分が多いようです。

もちろん、いつもそんな堅いことばかり考えているわけではないですよ。単純に友達として日本を知ってほしいからいろいろ行動を共にしているようで、先日は「一緒に銭湯に行ってきました!」と報告してくれました(笑)。

超実践型の「αゼミ」で、企業や自治体と連携して商品開発することも

城西中学・高等学校の物理実験室

編集部

城西中学・高等学校の「JOSAI Future Global Leader Program」では、実体験を重視しているとおっしゃっていましたが、海外研修以外で特徴的な取り組みはありますか?

坂本先生

当校では、学校という限られた場所、限られた人だけでなく、外の世界から自分の意志で学んでいくという取り組みを積極的に実施しています。

まず、高校1年生は「Beyond(ビヨンド)」という探求プログラムを受講します。これは、12個の中からテーマを選び、校外から招いた特別講師にゼミ形式で学んでいくという内容です。テーマはLGBTQだったり、野生動物の保護だったりと、世界の課題解決に関するものが中心となっています。

また、希望制となりますが、さらにユニークなものとしては高1〜高3が対象の「α(アルファ)ゼミ」があります。こちらは「超実践型」のキャリア特別講座で、校外のいろいろな団体や企業と連携してプロジェクトを実行することで、いわばビジネスシーンでも役立つような能力を身につけていきます。

編集部

αゼミにおいて、生徒の皆さんは具体的にどんなプロジェクトを進めてこられたのですか?

坂本先生

一例としては、地域活性化のプロジェクトとして生徒のアイデアを出発点に「吹屋ベンガラの湯」という特産品であるベンガラと唐辛子をイメージした真っ赤な入浴剤が商品化されたケースがあります。

これは、修学旅行でベンガラの産地である岡山県の吹屋地区を訪れたことをきっかけに、地域のNPO法人および自治体と打ち合わせを重ね、自分たちで作ったプレゼン資料をもとに提案した上で、採用となったものです。

しかも、「良いアイデアを出してくれてありがとう。あとは大人たちがやります」というわけではありません。プレゼン後もオンライン会議を定期的に行い、想定する購買層や商品デザインなどについても生徒が引き続き考えて、1年かけてやっと商品になったんです。

自主性を重視するとよく言いますが、学校生活ではただ授業を受ける、出された課題をこなすという受け身の姿勢になってしまいがちです。このαゼミによって、プレイヤーである自分が価値を生み出して相手に渡す経験ができることは、生徒にとって非常に大きいと思います。

「相手が喜ぶことを実現したいから、今の自分にはこういう分野の知識が必要だ」と認識することで、日々の勉強の価値を改めて見出すきっかけになっていますね。

編集部

学外の責任ある立場の人たちと、同じ目標に向かって計画を進めていくというのは、高校生にとって貴重な経験となるのでしょうね。

城西中学・高等学校の施設とエピソード

城西中学・高等学校の体育館でバスケットボールの練習をする生徒たち

城西中学・高等学校にはどんな施設があるのか、そこで生徒の皆さんはどう過ごしているのか。ここからは校内を探検し、坂本先生にいろいろなお話を伺っていきます!

たくさん食べてたくさん話し合う場所「しいの木ラウンジ」

城西中学・高等学校のしいの木ラウンジ

▲学食であり、コミュニケーションスペースでもある「しいの木ラウンジ」

編集部

目の前にすごくおしゃれで落ち着いた空間が広がっているのですが、いったい何のスペースでしょうか?

坂本先生

ここは「しいの木ラウンジ」といって、2021年秋にリニューアルオープンした食堂です。10時から利用できて、昼休みは食事をする生徒でいっぱいになりますし、それ以外の時間帯も軽食を販売しています。

城西中学・高等学校のしいの木ラウンジにある食券機と掲示物

▲月替りのAランチ・Bランチは彩りも栄養も抜群。食べ盛りの生徒に向けてパンやスナック類も充実!

編集部

学食というと「値段とボリュームが最優先」というイメージがあるのですが、こうして拝見すると値段が安いだけでなく、メニューもバラエティに富んでいますね。

坂本先生

そうですね。料理専門家が毎月メニューを変更するランチセットは、Aランチがボリューム重視、Bランチがワンプレートでヘルシー路線と、2つのタイプから選べます。また、日替りの麺類も人気ですね。

やっぱりたくさん食べたい年頃なので、Aランチにパンをプラスしたり、放課後にポテトをつまんだりしていることもあります(笑)。

城西中学・高等学校のしいの木ラウンジ内スペース

▲左右の衝立は移動可能。奥の壁はホワイトボードなので、複数人で相談や教え合いをしたいときに最適

編集部

衝立で区切られたスペースもあるんですね。ここはグループで食事をする場所ですか?

坂本先生

食事はもちろんですが、このあたりの壁は可動式になっています。しいの木ラウンジはグループ学習や行事などのミーティングで使用することも多いので、人数によって区切る空間を変えられるようになっているんです。

ちなみに、奥の壁はホワイトボードになっています。難しい問題を解くためにみんなの目に見えるように書き出してみたり、部活の作戦を立てるために使ったりと、思い思いに利用してくれています。

日々の授業も体験重視。放課後は図書室を積極的に活用

城西中学・高等学校の教室

編集部

続いて、教室にやってきました。研修などの特別なプログラム以外では、授業でどのような工夫をされているのでしょうか。

坂本先生

基本的な方針は変わらず、体験を重視しています。たとえば、国語の授業だとつい最近「落語教室」で江戸期の文化などを学んでいました。現役の噺家の方をお招きして、高座を一席見せていただいたんです。実際に一流の芸に触れると、理解度も変わってきますよね。

また、私は理科を教えているのですが、実験もかなり多く実施しています。これは、実際に手を動かすのが大事だと考えているからで、中学1年生は「マッチを擦って火を起こす」ことから教えていますね。やっぱり、お家で火を使う機会も少なくなっていますから。

編集部

授業が終わった後は、教室で自習をすることも多いんですか?

坂本先生

教室でもよいのですが、先ほどのしいの木ラウンジだったり、図書室を利用する生徒も多いです。特に図書室は横に自習室もありますし、近くの廊下に机を並べていて、そこで教師が質問に答える光景もよく見られます。

城西中学・高等学校の図書室の新着図書スペース

▲図書室の新着図書。小説以外にもSDGsやChatGPTに関する本など幅広いラインナップが揃っている

編集部

ずっと勉強を続けていると集中力も途切れてしまうでしょうし、興味ある分野の本を眺められるのもよいですね。

坂本先生

そうですね。多い生徒だと年間に200冊以上も借りて読破しているケースもあります。貸出数が多いと表彰する制度もあるので、競うわけではないですがモチベーションアップに繋がっていると思います。

サニブラウン選手も活躍した陸上部など、クラブ活動も盛ん

城西中学・高等学校の校庭

編集部

城西中学・高等学校はクラブ活動も活発だと伺っていますが、いかがでしょうか。

坂本先生

おっしゃるとおりです。文化系では東京代表として全国大会(NHK杯)に出た放送部のほか、ギター部や吹奏楽部など、関心のある分野で積極的に練習などに取り組んでいます。

また、運動系では陸上部が輝かしい実績を残していますね。高校生を中心におよそ100人のメンバーがいて、シドニー五輪に出場した山村貴彦監督のほか、オリンピックや箱根駅伝で活躍したコーチが教えているんです。

城西中学・高等学校の校舎内に飾られている陸上部OBのユニフォーム

▲サニブラウン選手と中島選手のサイン入りユニフォーム。陸上部のメンバーは今日もOBの誇りを胸に走る

編集部

校舎に入ってすぐのスペースに飾られているユニフォームも、陸上部のものですか?

坂本先生

はい。これはOBであるサニブラウン・アブデル・ハキーム選手が東京オリンピックに出場したときのものと、中島佑気ジョセフ選手が世界選手権に出たときの全日本のユニフォームですね。

編集部

現在所属している生徒たちは、偉大な先輩を参考にして日々トレーニングに励んでいるんですね。

城西中学・高等学校からご家族・お子様へのメッセージ

城西中学・高等学校入試広報部長の坂本先生

▲坂本先生いわく「城西には穏やかで助け合い精神を持つ子が多い」とのこと

編集部

それでは、この記事をお読みのお子さんと保護者の皆様に、坂本先生からメッセージをいただけますか。

坂本先生

城西中学・高等学校では、お伝えしたように数多くの体験ができるプログラムを用意しているのですが、究極的には「自分の足で歩けるようになること」が大事だと考えています。

それがどんな道であれ、自分が興味を持って進んだ分野で世の中の人々のために貢献して感謝されるような人になってほしいという想いがあるので、学校生活において自分から一歩踏み出して、そのきっかけを見つけてほしいんです。

卒業したあとの10年後、20年後に、その子がどんな人生を送っているか。高い地位や名声があるかではなく、自分の天分を最大限発揮して社会に貢献し、他者から感謝される人、他者に感謝できる人になっているか、本当の意味で幸せな人になっているかどうかが重要なので、そういった長期的な視点を持ってこの大事な6年間を全力でサポートしています。

大学の合格実績も非常に大事ですし、我々も望むとおりの進学ができるように伴走していきますが、生徒たちにはさらにその先の将来を考えてほしい。そんな理念に共感いただける方は、ぜひ学校選びのポイントの参考にしていただき、当校も候補のひとつにしていただければ嬉しいです。

編集部

城西中学・高等学校は自由を大事にする教育方針を掲げ、さらにさまざまな体験の機会があることで、生徒の自主性を生み出しているのだなと感じました。感謝を忘れず、人との関わりの中で自分の道を選ぶ。そんな将来像を思い描いているのであれば、ぴったりの学校ではないでしょうか。

本日はありがとうございました!

城西中学・高等学校の進学実績

城西中学・高等学校は、「城西大学附属」とあるように系列校である城西大学に進む生徒もいるものの、約9割は外部に進学しています。近年は、国公立大学や難関の私立大学に多くの合格実績が出始めています。

また、2024年度からは高校の「普通クラス」を「AC(アカデミック&クリエイティブ)クラス」に改編し、高2で文系・理系、高3で理工系や医療系など志望にさらに特化したコース分けをして進路のサポートを実施します。

伝統校でありながら時代に対応したキャリアサポートをするべく変化を続けているため、生徒が自分の希望する進路を選択しやすいのが、同校の強みだと言えそうです。

■近年の大学合格実績(城西中学・高等学校公式サイト)
https://josaigakuen.ac.jp/career/data/

城西中学・高等学校に通う生徒の保護者の声

城西中学・高等学校に通うお子様を持つ保護者の皆様の声を集めてみたので、その一部をご紹介します。

先生が非常に熱心。上を目指したい子どもに対してきっちり補習などでフォローしてくれるので、やる気を出している。

生徒の雰囲気がすごく伸び伸び、ゆったりとしている印象。登下校などのマナーも良いように思う。

留学生と触れ合う機会が多く、刺激を受けているみたいです。

保護者や教職員、地域の方が集まってコーラスをしていたり、イベントを一緒に実施したりと、繋がりが深いので安心できる。

「穏やかで落ち着いた雰囲気の学校」「目標に向かって努力しながら自分らしく成長していける校風」という意見が比較的多かったです。また、教職員との保護者との距離が近く、相談しやすいというのも高い評価を受けていました。

お問い合わせ

問い合わせ先 城西大学附属 城西中学・高等学校
住所 東京都豊島区千早1丁目10-26
電話番号 03-3973-6331
公式サイト https://josaigakuen.ac.jp/