自ら生き方を決める自立した女性を目指す「麴町学園女子中学校高等学校」のみらい型教育|中高一貫校

麴町学園女子中学校高等学校は、1905(明治38)年に設立された歴史ある私立の中高一貫校です。鉱物学を専門に研究し教鞭もとっていた大築佛郎氏が、女子の地位の向上と女子教育の重要性を感じ設立しました。

「科学の目を開くことをはじめ、広い知識や教養を身につける新時代の良妻賢母を育成する」、「男子とならびそう、これからの広い女子教育を向上する女学校を設けたい」を建学の精神とし、時代の流れに即した女性の育成を目指す学校です。現在は、キャリア教育プログラム「みらい科」、「アクティブイングリッシュ」、「グローバルプログラム」と「思考型授業」の4つの柱を中心に教育を展開しています。

そんな時代の変化に対応できる精神を育む取り組みについて、麴町学園女子中学校高等学校の堀口校長にお話を伺いました。

麴町学園の教育目標は「人生を自らデザインする自立した女性」の育成

麴町学園女子中学校高等学校の堀口校長

▲麴町学園女子中学校高等学校の堀口校長

編集部

麹町学園女子中学校高等学校の教育理念やビジョンを教えてください。

堀口校長

本校の教育理念は「聡明・端正」です。聡明は 「物事に対してみずからしっかりと向き合い、よく理解し、適切な判断のもとに行動することができる」、 端正は「身の周りの物や私達の言葉・態度などが、隅々まで、心をこめてきれいに整えられている」という意味です。

「聡明・端正」が意図する内容を、今の時代の生徒たちにも理解してもらえるよう教育ビジョンを定めています。それが「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性」になることです。知性と品性を兼ね備えた、しなやかでたくましい自立した女性になることを目指しています。

女子生徒は、時に社会の価値観に押さえつけられることがあります。しかし現在は、これまで男性ばかりだった業界にも女性が進出しており、今後は今以上にさまざまな分野における女性の活躍が期待される時代です。女性だからという価値観で縛るのではなく、何事にも積極的に取り組んでいけるよう生徒の興味を広げられるような教育が大切だと思っています。

編集部

麴町学園の教育理念や教育ビジョンは、どのように生徒たちに伝えられているのでしょうか。

堀口校長

入学後のオリエンテーションなどで積極的に伝えるようにしています。将来の職業についても、生徒たちには「新しいものに挑戦していこう」と話をしています。また日常的に、授業やホームルーム、道徳の時間などでも、理念やビジョンを踏まえた内容を取り込んでいます。

麴町学園女子中学校高等学校の特徴的なカリキュラム

麴町学園の廊下にあった書道部の書

▲書道部の力強い書から生徒たちの強い意思が感じられるようです

ここからは、麴町学園女子中学校高等学校の特徴的な授業である「みらい科」、「アクティブイングリッシュ」、「グローバルプログラム」と「思考型授業」の4つの教育の柱について詳しく紹介します。

麴町学園の「みらい科」で課題に向き合う力を磨く

編集部

まずは、独自のキャリア教育プログラムである「みらい科」について教えていただけるでしょうか。

堀口校長

みらい科の授業は週に1時間実施しています。グローバル・ローカルともに目を向け、社会に出て直面する課題にしなやかでたくましく対峙できる女性になることを目指したプログラムです。

中学生の段階では自己理解や地域理解、国際理解を深めるための調べもの学習がメインです。高校生になると、企業とコラボして本格的な活動をします。2022年から2023年にかけては、「防災」をテーマに昭文社様、ニップン様とコラボレーションしました。

昭文社様と実施したのは防災マップ作りです。地図の見方や作り方を教えていただき、被害想定から地図完成まで、現地調査やディスカッションを念入りに行いました。ニップン様とは被災したときの食事について学び、ガスや電気が使えない場合に何ができるかということをディスカッションしました。

みらい科の授業で作った防災マップ

▲昭文社とのコラボで実際に作った防災マップ

堀口校長

企業とのコラボレーション企画の活動期間は約半年です。グループに分かれて活動し、最後は企業の方にプレゼンテーションする場を設けて成果を発表します。

大事にしているのは、調べたことに対して何をどう考えたのか、それをどう表現するかです。中学生のうちから調べてディスカッションをして、発表することを繰り返しているので、高校生になると大きな成長が見られます。

このみらい科の授業では、グループディスカッションや発表を通して互いの考えを認め合うことで、しなやかさやたくましさが育てられます。生徒自身の将来の目標をデザインするきっかけにも繋がってくるのではないでしょうか。

編集部

みらい科の活動成果を確認できる機会は、コラボレーション企画後のプレゼン以外にもあるでしょうか?

堀口校長

みらい科の活動の集大成として、高校1年から2年の2年間で論文作成にも挑戦しています。自分の興味・関心のある事柄について文献調査・実態調査などを通じて分析をし、問題点を明らかにしながら自分の考えを掘り下げていきます。

これまでは論文という形のみで成果を示していましたが、今後はプレゼンテーション力が身に付くような形にすることも考えています。

編集部

みらい科における取り組みは、今後も進化していくのでしょうか?

堀口校長

2024年度からは、みらい科で「探究」という取り組みを始めます。大学でいうゼミのような形式で、ひとつのテーマを研究していく取り組みです。例えば、発酵やプログラミング、地方創生、和歌など、時に教科横断型に研究を深めながら、生徒の興味関心を引き出していく予定です。

社会に出ると、ひとつの科目だけ勉強しておけばよいということはありません。中高生のうちから総合的に学ぶことに取り組んでもらいたいと考えています。

編集部

具体的にはどのような授業を思い描いていますか?

堀口校長

発酵なら、「発酵を促す麹ってなに?」と疑問を持つことからスタートし、発酵の歴史や腐敗との違い、発酵に関わる微生物について、生徒が調査やディスカッション、実験を繰り返していくイメージです。せっかく「麹町」にある学校ですし、新しい発酵食品が作れたりしたら非常に面白いですね。

また、和歌に出てくる月の形を理科の知識を使って推測したり、数学と社会の知識を掛け合わせて起業に必要な資金をどう集めるか考えたり、といった研究も想定しています。

使える英語が身につき、英語を好きになる「アクティブイングリッシュ」

海外研修の写真が飾られた壁

編集部

次は、「アクティブイングリッシュ」という英語教育について教えてください。

堀口校長

アクティブイングリッシュは使える英語を身につけるための、「聞く・話す・読む・書く」の英語4技能をバランスよく習得する英語教育メソッドです。文部科学省の『英語教育の在り方に関する有識者会議』の委員を務める予備校講師の安河内哲也先生に監修をしてもらいました。

特に、学校教育で不足しがちな英語を「話す」機会を授業内外で多くつくっています。教材はすべて音声が付属したものを使っていますし、生徒の学習モチベーションを刺激するため、英語圏への多彩な研修旅行を用意しています。

また、ネイティブの教員が常駐し、昼休みや放課後に英語を使った会話やゲームが楽しめる「i Lounge(アイラウンジ)」という教室も設けています。

「i Lounge」の様子

▲「i Lounge」の様子

堀口校長

成績の測定でも、「話す」を重視しています。「聞く・読む・書く」については75点満点の筆記試験で測り、残りの25点は普段の授業などでの「話す」力を評価します。スピーキングテストや「i Lounge」で積極的に英語を発話することで加点されていく仕組みです。

このようにして、学校全体で実践的な「コミュニケーションツールとしての英語」を修得する環境を作っています。

編集部

アクティブイングリッシュの授業の様子はいかがでしょうか?

堀口校長

授業中に手拍子を打ちながら英語の歌を歌ったり、先生が出すクイズに我先にと答えたり、本当に楽しそうな様子です。先生よりも生徒のほうが話す機会が多いので、とても賑やかなのも特徴ですね。

またアクティブイングリッシュでは、生徒を英語嫌いにさせないということも目標の1つにしています

英語を好きになってもらうために、中学では文法の間違いなどは気にせずに話すよう促します。高校生では、大学受験のため文法の勉強も必要となりますが、英語が嫌いでなければ文法の勉強も自然と頑張れるんです。

大学進学した卒業生からは、周りの学生が英語の授業で話さないし手も挙げないから、自分が「英語を最も話す人」になったという話をよく聞きます。卒業して大学や社会に出ると、周りの人との英語力の差を感じるのだとか。これは本校のアクティブイングリッシュの成果だと思います。

麴町学園の図書室に並ぶ本たち

▲書籍でも麴町学園の英語教育について紹介されました

「グローバルプログラム」ではダブルディプロマプログラムを利用した留学も可能!

編集部

「グローバルプログラム」として実施されている、海外研修について教えてください。

堀口校長

生徒全員が参加する研修は、高校2年生の海外修学旅行があります。行き先は変わる場合もありますが、2024年度は中高一貫コースではオーストラリア、高校からの入学コースではアイルランドを予定しています。

希望制の研修は、ニュージーランド語学研修という夏季休暇中の2週間、姉妹校に通うカリキュラムがあります。昨夏には高校生約30名が参加しました。中学生から参加できるのですが、高校生の希望者が多い場合は参加できないこともあります。ただ、高校生になれば希望者は一度は参加できます。

編集部

留学の機会もあるのでしょうか?

堀口校長

ニュージーランドまたはアイルランドの提携校への留学が可能で、期間は約3ヶ月のターム留学と1年留学の2パターンがあります。また、本校が導入している「ダブルディプロマプログラム」を利用して2年間留学することもできます。日本と留学先の2ヶ国の卒業資格を得られるので、海外への大学進学が有利になるメリットがあります。

いずれの留学も英検取得級などの条件があるのですが、条件をクリアしている生徒が多いため希望者も多いです。

編集部

海外研修や留学を通して、生徒にどのような変化があるでしょうか。

堀口校長

海外では、英語だけでなく外国の文化も含めて、日本では学べないことを多く学べます。そこから多くのことを感じ取り、生徒なりに色々と考えることもあるでしょう。そのためか、これから自分が何をするかという目標を明確にして帰ってくる生徒が多いと感じます。

アクティブラーニング型の「思考型授業」で、主体的に協調・解決する力を育む

カフェ形式の自習スペース

▲カフェ形式の自習スペースで一生懸命に自習に取り組む生徒たち

編集部

4つの柱の最後の要素である「思考型授業」について教えてください。

堀口校長

「思考型授業」はアクティブラーニング型の授業形式で、授業の効果を高める本校独自のシステムです。自ら課題を見つけ、主体的に仲間と協働しながら解決できる力を身につけることを目標に行っています。PBL(問題発見・解決)型授業など、知識を活用しながら課題解決に向けて思考することを促すものです。

特に理科の授業で重点的に取り組んでいます。身の回りの自然現象や科学の疑問について、興味関心を育むことを目的にしたアクティブサイエンスでは、実験とグループ学習を中心に生徒が主体的に探究していけるような授業を行っています。これは創立者である大築佛郎の「科学の目を開くことをはじめ、広い知識や教養を身につけた女性を育てる」という意思を具体化したものです。

このアクティブサイエンスで理科に興味を持った生徒を対象として、中学2年次から「サイエンス探究クラス」を編成します。これは、2024年度から新たに始めるクラスです。

編集部

「サイエンス探究クラス」について、もう少し詳しく教えていただけますか?

堀口校長

サイエンス探究クラスでは、実験や観察を通じて理科の面白さを伝え、理科を好きになってもらうことを目的としています。

例えば「CO₂」の化学式を知っていても、なぜ炭素と酸素がくっつくのかは知らないことが多いですよね。なぜ化学反応が起こるのか、何と何が反応しやすいのか、などを理屈も含めて伝えることで理科の面白みを知ることができます。

大事にしたいのは、その疑問を自分で調べていくことです。通常、理科の実験は先生が実験の手順書を作ります。生徒は自分の頭で考えないまま、実験がうまくいったという結果になります。それでは興味関心を深められないです。理科への好奇心を中学生のうちから持っていると、新しいことや変化に怯えずにチャレンジしているようになるのではないかと思っています。

また、理科への関心を高めるための設備を本校3階の「ルーフガーデン」に設けています。

校舎3階の屋外にある「ルーフガーデン」

▲校舎3階の屋外にある「ルーフガーデン」

堀口校長

最近では、野菜や植物を教科書でしか見たことがないという子どもが多いんです。生徒にほうれん草や小松菜、ハーブなどが育っていく様子を見てもらい、生育にも携わってもらうことで、興味を持ってもらいたいと考えています。

編集部

理科の面白さを知ることで、子どもたちにどのような変化があるでしょうか?

堀口校長

理科の面白さを知ることで理科が好きになる、そうすると大学受験などでも主体的に勉強できるようになります。これは英語の場合と同様です。先生に言われて勉強するのではなく、面白さを知って主体的に学びを深めたくなる環境が理想的だと考えています。

また、高校進学時に理系に進む選択肢も増えます。「数学が苦手だから文系」といった消極的な選び方をする生徒も中にはいるでしょう。しかし英語も理科もできれば、文系と理系どちらにも進むことが可能です。「これを学びたい」というポジティブな理由で進路を選択できるようになってほしいですね。

机と椅子が並べられた教室内

麴町学園女子中学校高等学校のカフェ風自習室サクラCAFE

スカイスタジオで体育中の生徒たち

大築アリーナで生徒たちがバレーボールをする様子

校外学習を発表した「羽田新聞」

▲右にスクロールすると麴町学園での生徒たちの様子がうかがえます

麴町学園女子中学校高等学校からのメッセージ

インタビューに応じていただいた堀口校長

編集部

麹町女子中学校高等学校に興味を持った方に、メッセージをお願いします。

堀口校長

本校は交通の便がよいので、様々な地域から生徒さんが通われています。個性も様々ですが、入学時に大人しく消極的であった生徒さんも、卒業時には自分のことを表現できるようになっています。

またこれまでお話した通り、生徒さんの好奇心や意欲を伸ばす授業を行っています。先生が言ったことを真面目にやるのではなく、型破りでもよいからチャレンジしてほしいです。

積極的にいろいろなことをやってみたい、新しいことや面白いことをやってみたいという、想像力のあるお子さんはぜひ本校に向いているといえるのではないでしょうか。

編集部

本日はたくさんの貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

麴町学園女子中学校高等学の卒業生の声

自習スペースの様子

卒業生からの声を一部抜粋して紹介します。

安心して通える学校です。小テストの結果が悪いと、放課後の補講などでサポートしてもらえます。

伝統校ですがアクティブイングリッシュやサイエンスなど、時代の移り変わりに合わせているのが魅力です。iPadを利用して授業するので、操作に慣れるまで先生がサポートしてくれました。

アットホームな雰囲気です。思い切っていろいろなことに挑戦できました。設備が整った綺麗な校舎で過ごせ、制服もかわいいです。

自習室があり、チューターがいるので勉強を教えてもらえます。試験前は助かります。中学生のうちから大学入試を意識したガイダンスがあり、指定校や高大連携校が充実しているので安心して相談できました。

充実した設備の中で、積極的に学習できる環境があるという声が多くありました。先生との距離感が近く、アットホームな雰囲気も魅力のようです。

麴町学園女子中学校高等学校の進学実績

学園内にあるベンチで談笑する生徒

麹町学園女子高等学校は2020年に​海外協定大学推薦制度(UPAA)に加入し、海外大学進学を実現する体制を整えています。この制度を利用し、毎年多くの生徒が海外の大学に進学しています。

▼2024年海外大学合格実績

大学名 国名 合格者数
マンチェスターメトロポリタン大学 イギリス 2名
エクセター大学 イギリス 2名
イーストアングリア大学 イギリス 3名
ロンドン大学シティ校 イギリス 1名
カーディフ大学 イギリス 1名
ブリストル大学 イギリス 1名
クィーンズ大学ベルファスト イギリス 2名
ニューカッスル大学 イギリス 1名
スターリング大学 イギリス 1名
ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン アイルランド 1名
サンフランシスコ州立大学 アメリカ合衆国 1名
シドニー大学 オーストラリア 1名

英語教育に力を入れている麴町学園女子では、英検利用の入試制度がある大学への進学が非常に多くなっています。東洋大学グローバルコース(高校入学者向けコース)により、東洋大学進学者が多いことも特徴的です。

中学3年生から進路ロードマップを作成して将来に向けての準備を行い、有名大学の進学フェアを開催するなど、行きたい大学を具体化する取り組みを実践しています。

国公立大学では東京外国語大学など、私立大学は東洋大学をはじめ有名大学への進学者を輩出しています。大学合格実績詳細は、公式サイトをご覧ください。

麴町学園女子中学校高等学校の基本情報

学校名 麴町学園女子中学校高等学校
所在地 〒102-0083 東京都千代田区麹町3-8
電話番号 03-3263-3011
公式サイト https://www.kojimachi.ed.jp/

※最新の情報は公式サイトでご確認ください。