獨協埼玉中学高等学校が目指す「主体性と人間性」を養う教育とは|中高一貫校

ぽてん読者の皆さんに、注目の学校を紹介するこの企画。本記事では、140年もの歴史を持つ埼玉県越谷市の中高一貫校「獨協埼玉中学高等学校」の教育理念や教育カリキュラム、そして学校の雰囲気などを紹介します。

「自ら考え判断し、行動することのできる若者を育てる」という理念を持つ同校は、ドイツを中心にヨーロッパ文化への理解を深めることを目的に設置された獨逸学協会、現在の「獨協学園」が有する学校の一つ。約8万平方メートルの広大な敷地でのびのびと過ごせる環境のなか、人間形成に資する幅広い教養と基礎学力を身につけることに力を入れています。

今回は、校長の尾花信行先生にインタビューさせていただきました。

獨協埼玉中学高等学校の教育理念「全人格的人間形成」とは

獨協埼玉中学高等学校の校長・尾花信行先生

▲インタビューに応じてくださった校長の尾花信行先生

編集部

はじめに、獨協埼玉中学高等学校の教育理念である「全人格的人間形成」について詳しくお話しいただけますでしょうか?

尾花先生

獨協埼玉中学高等学校は、140年の伝統を持つ獨協学園の一校として、学問を通じた人間形成を目指してきました。教育機関として知的な学びを子どもたちに届けるだけでなく、豊かな感性や人間性を育むことも掲げているのが「全人格的人間形成」です。

この言葉をよりわかりやすく表現すると、自ら考え、判断し、行動できる自立した若者を育成すること。そして多様性を受け入れながら、自分の意見をまとめられる力が身につく教育を届けること。「全人格的人間形成」という理念のもと、知識だけでなく人格的な面も重視し、主体性と人間性を兼ね備えた生徒の育成を目指しています。

編集部

大学受験などを見据えた授業と、人間性を育む教育とはどのようにバランスを取られているのでしょうか?

尾花先生

獨協埼玉中学高等学校も100%近くの生徒が進学する進学校ではありますが、「人間形成」を目的とする本校では、進学をその過程の一部と考えています。

そのため促成栽培的な効率主義ではなく、学びの重要な要素として「回り道」を意識的に教育の中に設けています。

各教科の授業でも、「自発的に考える力」を養うプログラムを実施

顕微鏡を使い、理科の実験を行う生徒たち

編集部

「回り道」の教育とは、具体的にどのようなものでしょうか?

尾花先生

例えば理科の実験の場合、生徒たちは教員が示した通りに実験を行うのが一般的です。しかし本校では、実験の手順をあらかじめ見せることはせず、生徒自身に試行錯誤してもらっています。そうすることで初めて、実験の面白さを感じ、なぜ上手くいかないのかを自ら考え始めるんです。これにより、考察力や探究心、自発的に考える力が身につけられます。

また英語の授業では、文法や読解などの基礎学習を行いながら、コミュニケーション能力を高めることにも力を入れています。また、言語学習の本質を理解できるよう、「なぜ英語学習を行うのか」「英語が使えることでどのように世界が広がるのか」ということを感じ取ってもらうことも大切にしています。

このような回り道は、時間もかかるし手間もかかるし、うまくいく子どももいれば、うまくいかない子どもも出てきます。しかしながら、自ら体験し、疑問を持ち、考える過程を持つことで、最終的には自分の目的を達成するために必要な勉強に向けて自主的に行動する姿勢が育まれていくと考えています。

主体性の要となる課外活動とボランティア活動

編集部

その他に、「全人格的人間形成」を実現するためのプログラムがあれば教えてください。

尾花先生

生徒たちが主体性を身につける機会の1つに「ボランティアステージ」という活動があります。具体的には、車いすバスケットを実際に体験したり、目の不自由な方たちに来ていただいてお話を聞きながら、自分たちに具体的にどのような支援ができるのかを考えたり。ボランティアステージは、少しずつ形を変えながらではありますが、体験を通して多様性を理解する場になっています。

編集部

ボランティア活動を通して、生徒たちにどのような変化があったでしょうか。

尾花先生

目の不自由な人たちと交流をした生徒の中には、駅前などで「点字ブロック上に立ってしまうことはありませんか?」という健常者への呼びかけを、自発的に行っている子がいます。活動で得た知識をその場で終わらせず、点字ブロックへの理解を呼びかけるポスターを校内に掲示し、きちんと次に繋げている様子もありました。

また学校の長期休暇中に、自主的にボランティア活動を行う生徒たちもいます。幼稚園で園児のお世話をしたり、地域の清掃活動に参加したりと活動内容は様々です。生徒たちには、何かのために積極的に貢献しようと思えるものであれば、どんな活動をしてもよいと伝えています。選ぶボランティアの内容にも、生徒それぞれの興味関心が表れていると感じますね。

生徒たちはボランティア活動という日常と離れた体験の中から、多様な視点を養い人間性を育んでいます。体験を通して気づきを得ながら、思いやりの心や社会への関心が自然と芽生えているようです。

田植え体験を楽しむ中学1年生の生徒たち

編集部

田植えを行っていると伺ったのですが、これも「人格形成」を目的とする教育の一環なのでしょうか?

尾花先生

その通りです。本校では中学一年次に、学校のすぐ前の田んぼで田植え体験を行っています。田植えという共通の体験をしても、田んぼの土に触れて楽しくはしゃいでいる子もいれば、田んぼに生息する生き物や日本の稲作文化へ関心を示す子がいたりと、興味の対象は生徒によって本当にさまざまです。

中学に入学してすぐに行うこの田んぼ体験は、生徒たちそれぞれの興味関心を広げるきっかけの一つになっています。

獨協埼玉中学高等学校の特徴的な教育カリキュラム

ここからは、獨協埼玉中学高等学校が力を入れている英語学習や、獨協大学への進学を目的とした「獨協コース」という独自カリキュラムなど、特徴的な授業について紹介していきます。

海外留学生を招き、最大5日間の英語漬けキャンプを実施

グローバルスタディーズプログラムに参加する生徒たち

▲グローバルスタディーズプログラムで一日中英語でコミュニケーションを取る生徒たち

編集部

御校では、国内留学体験という取り組みをされているそうですね。詳しく教えていただけますか?

尾花先生

国内留学体験は、中学2年生の時に行います。主に留学生や長期休暇で来日している学生を招いて、2泊3日で朝から夜までずっと英語で生活を共にします。

また、高校1年生になると、GSPと呼ばれるグローバルスタディーズプログラムにも参加します。こちらも留学生などを招きますが、さらに長い5日間を学校内で一緒に過ごします。ちなみに招待する海外留学生は70名ほどです。5日間もの間、多くの外国人と交流するので、英語に興味を持つ生徒もいれば、彼らの文化に関心を示す生徒もいたりとさまざまです。言語学習だけではわからない幅広いテーマに触れる機会になっているようですね。

編集部

国内留学体験やGSPを通して、英語学習面における生徒たちの変化はあるでしょうか。

尾花先生

日本人の生徒たちは「綺麗な英語を話さなきゃ」と構えてしまい、それがコミュニケーションを阻害してしまうケースも少なくありません。ですが、国内留学体験やGSPで触れ合う海外の方は、授業で先生方が話す綺麗な英語とはちょっと違って、必ずしも正しい英語ではありません。それでもコミュニケーションがとれると体感することで、自信が芽生え、英語を頑張るきっかけとなる生徒も多いです。

またGSPでの5日間体験は、海外での語学研修に関心を持つきっかけの一つにもなっており、現在は姉妹校交流も含めて、ドイツ、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランドなどに行っています。

海外での語学研修に参加した生徒たちの集合写真

▲海外での語学研修に参加した生徒たち

英語教育ではネイティブ教師とコミュニケーションする機会も多い

ネイティブの先生による英語の授業を受ける生徒たち

編集部

獨協埼玉中学高等学校の大きな特徴でもある、語学教育についてお話いただけますか?

尾花先生

英語学習では、ネイティブの教師が複数名常駐しており、授業外での日常的な会話や単独授業などでコミュニケーションする機会が多くあります。授業ではアメリカンイングリッシュをベースにしていますが、さまざまなルーツを持つ教師がいるので国ごとの発音のクセがあるのが実情です。でもそれは、リスニングの勉強にもなりますし、逆に良い部分だととらえています。

編集部

英語学習において、その他にも力を入れられているプログラムはあるでしょうか?

尾花先生

本校では「5ラウンドシステム」という総合的に英語力を向上できる指導法を導入しています。これにより、『聞く・話す・読む・書く』の4技能もバランスよく身につけることができます。

また、国内留学体験やGSPなどの大きな行事の合間に、英会話の授業でスピーチコンテストに向けた取り組みなどもしています。国内留学のような大きな行事は単発開催なので、英語へのモチベーションがどうしても一時的になってしまいます。そうではなく継続的にモチベーションを維持していけるよう、意識して計画しています。

編集部

御校では、英語以外の多言語を学ぶ機会もあるのでしょうか。

尾花先生

本校の高等部では、希望する生徒にドイツ語を履修できる環境を用意しています。獨協学園は、前身のドイツの文化伝統を学ぶ「ドイツ学協会」から始まった歴史があるためです。このドイツ語の学習がきっかけとなって、大学へ進学してより専門的にドイツ語学習に突き進むケースもかなり多いんですよ。

こうした獨協学園の起こりやドイツ語の学習環境から、本校は「語学の獨協」とも言われています。

1万6000字のレポートで大学に向けた教養を身につける「獨協コース」

獨協コースを受ける生徒たち

編集部

獨協埼玉中学高等学校の大きな特徴である「獨協コース」についてもお話しいただけますか?

尾花先生

獨協コースは、その名の通り獨協大学へ進学することが目的のクラスです。したがって、一般的な受験勉強は行いません。その代わり、大学に入学するために必要な教養を身につけていきます。例えば英語の授業では、ディベートやプレゼンテーション、正しい文法を使って文章を書くといったことなどが大部分を占めています。

本コースの最大の特徴は、卒業要件として1万6000字以上の卒業論文の執筆が課されることです。これがかなり本格的で、作文やちょっとしたレポートとは遥かに違う仕上がりなんです。また、多くの生徒たちは、4万字前後のボリュームの論文を完成させています。

「獨協コース」を希望する生徒は、2年生後期から生徒1人につき教員1人がつく個別の論文制作を始めます。さらに、進学する大学の学部学科の教授から、年に数回直接指導を受ける機会もあるんです。大変恵まれた環境であると同時に、かなり厳しい経験にもなります。しかし、このような経験があるからこそ、大学に入学してからのレポート執筆にあまり苦労しなくなります。

子どもたちの成長は、本当に面白いものです。このような精度の高い論文制作を経て、大学でもリーダーとなれるような子どもたちを育成することは、本校だけでなく大学側にとっても、重要な機会となっています。先ほどの回り道のお話と同じで、多くの時間と労力を要するんですが、同時にとても面白い取り組みです。

獨協埼玉中学高等学校での学校生活を紹介

図書館で勉強する生徒たち

編集部

生徒の雰囲気や学校の様子についても教えていただけますか?

尾花先生

私はもともと本校の英語科教員で40年ほど生徒の様子を見てきたのですが、全体的に穏やかな子が多いように感じます。もちろん、ボールを持って外に遊びにいくような活発な子や、教室や図書館で本を読んでいる子、朝一番に来て宿題を一生懸命やっている子など、それぞれに個性があります。でも自分とは少し異なる個性を持つ子とでも、ごく自然に共存している生徒たちが多いですね。

編集部

そのような生徒が多い理由としては、御校の「全人格的人間形成」の教育が影響しているのでしょうか。

尾花先生

それもありますし、ご家庭の教育や学校の雰囲気も関係していると思います。本校の建物は築40年以上ですが、教室や廊下、階段のスペースなどにかなり余裕を持った作りになっています。このような学校環境も相まって、子どもたちもギスギスすることなく、ゆったりと過ごすことができているのではないでしょうか。それが自然と、他者に心を向けられる寛容や優しさに繋がっているのかもしれません。

編集部

そもそも敷地面積も広大で、いろんな施設が大きいですよね。

尾花先生

敷地だけで考えると、東京ドーム約1.7個分の広さがあります。また本校は田舎にあるので、周りに高い建物もなく、地平線上に富士山や日光の男体山が見えるような環境です。そのため都心にある学校とはかなり環境に違いがあるかもしれませんね。

そうはいっても、都心からのアクセス自体は良いので、東京から通っている生徒さんもとても多いんですよ。

編集部

都市部からの通学アクセスも良く、都内とは違うゆったりとした環境で学生生活が過ごせるのですね。

獨協埼玉中学高等学校の第2体育館

▲体育館もバスケットコートが縦方向に2面取れるほど広々としています

獨協埼玉中学高等学校からのメッセージ

編集部

最後に、記事をご覧の読者に向けてメッセージをお願いします。

尾花先生

本校の教育理念である「全人格的人間形成」について、最初にお話しさせていただきましたが、学習面だけでなく、部活動や行事などもまさに生徒主体で動いています。

例えば体育祭では、すべて自主運営で作り上げ、生徒たちが当日の運営もこなします。だからこそ、体育祭の最後は、みんな涙涙で...。こういう瞬間を見ると、やはり全人格的人間形成に大きな価値を感じますね。

また本校を選んでくださった方の中にも、生徒自身の意図や行動を大事にすること、自分の夢を叶えるために勉強も大切にしていくこと、その両方を理解している生徒さん・ご家庭が多いと感じています。

それから教育理念そのものだけでなく、その理念を尊重しながら生徒たちに接している教員たちもまた、獨協埼玉中学高等学校の大きな柱となっていることも、本校の魅力の一つだと確信しています。

獨協埼玉中学高等学校の進学実績

獨協埼玉中学高等学校は、「学力の充実」と「将来に向けての刺激」の2本の柱を基に、進路指導を行います。「学力の充実」では、進路の実現を叶えるため、高校1年次から3年次まで段階的に学習内容を組み立てます。また「将来に向けての刺激」では、進路ガイダンスや大学による出張講義などを通して、漠然とした将来へのあこがれを、より具体的な目標へと昇華させます。

また、獨協大学と獨協医科大学への内部推薦は、高校3年間の内申書で一定の基準を満たすことで、推薦資格が与えられます。

■近年の進学実績(獨協埼玉中学高等学校の公式サイトより)
https://www.dokkyo-saitama.ed.jp/exam_hs_5.html

獨協埼玉中学高等学校の卒業生の声

獨協埼玉中学高等学校の2人の女子高校生

ここでは、獨協埼玉中学高等学校で学んだ卒業生の声を紹介します。

先生が凄いです。本当に親身になって教えてくれますし、授業も分かりやすい。また質問をしやすい雰囲気です。獨協埼玉は文系が強い高校ですが、文系含め文理両方の先生が素晴らしいです。

先生の指導も確かで若い先生も居るので、受験に関しても安心して頼ることができます。外国人の先生もいて、海外留学も経験できとても教育熱心な学校だと思います。

勉強は大変ですが、個性豊かな子が多く、学校生活の毎日が楽しいです。この学校に入ってよかったと思える学校だと思います。

学習面の環境に満足しているという声が目立ちました。また、在籍している先生方を高く評価している人も多くいました。

獨協埼玉中学高等学校の基本情報

獨協埼玉中学高等学校

問い合わせ先 獨協埼玉中学高等学校
住所 埼玉県越谷市恩間新田寺前316
電話番号 048-977-5441
公式サイト https://www.dokkyo-saitama.ed.jp/

※詳しくは公式サイトでご確認ください