曹洞宗大本山がルーツの「鶴見大学附属中学校・高等学校」は禅の教えで感謝の心を養う|中高一貫校

特色ある教育に取り組む学校を特集するこの企画。今回は、横浜市鶴見区にある共学の中高一貫校「鶴見大学附属中学校・高等学校」をご紹介します。

2024年度で創立100周年を迎えた同校の母体は、鶴見区にある仏教・曹洞宗の大本山「總持寺(そうじじ)」。「禅の精神」を根幹に、感謝の心を育むことを重視しています。

校舎は教科ごとにエリアを分け、専門の教室で授業を実施しています。生徒が授業ごとに移動をする、つまり「学びに行く」ことで、主体的に学ぶ姿勢を養っています。

今回は、そんな鶴見大学附属中学校・高等学校入試広報部の保田仁美先生に、学校の魅力や教育に込めた思いを伺いました。

感謝を忘れない素直な生徒を育む鶴見大学附属中学校・高等学校

入試広報部の担当者

▲入試広報部の保田仁美先生

編集部

最初に、鶴見大学附属中学校・高等学校の教育理念についてお聞かせいただけますか?

保田先生

本校の建学の精神は「大覚円成(だいがくえんじょう)・報恩行持(ほうおんぎょうじ)」です。わかりやすくお伝えすると、「ありがとうの言葉をしっかり言えるようになろう」「素直な人間であるように」といった意味を表しています。

そういった振る舞いができる人のことを、本校では真実の「真」に「人」で「真人(ひと)」と呼び、「感謝を忘れず 真人となる」という目標を掲げています。

禅の精神に基づく教育。日々の黙念で、自分自身と向き合う

鶴見大学附属中学校・高等学校の仏教行事

編集部

建学の精神を体現するために、具体的にはどのような教育をしているのでしょうか?

保田先生

本校は、横浜市鶴見区にある曹洞宗の大本山「總持寺」によって創立されたことから、禅の精神に基づく人格教育を大切にしています。

校門や校舎内などあらゆる場所に仏様をまつっていて、生徒には校門を入る時に「仏様に一礼をしてから入るんですよ」と伝えています。昼食時には「五観の偈(ごかんのげ)」という、食べ物や作り手への感謝の思いなどを示すお経を全員で唱えます。

このように、普段の生活ではともすると忘れてしまいがちな礼儀や感謝の思いを、禅の教えに沿って常に意識してもらっています。このことが、他人を敬う態度や思いやる姿勢につながってくるのではないかと考えています。

編集部

毎朝黙念をする「こころの時間」も設けているそうですね。

保田先生

はい。本校では生徒に「一日は黙念で始まり、黙念で終わる」と呼びかけています。朝、教室に担任が来るとすぐにホームルームを開くのではなく、教室を暗くし、姿勢を整え、目を閉じて「今日は一日、何をしようかな」などと各々に自分と向き合う時間をつくってもらいます。

帰宅前も電気を消すまではしませんが、その日一日を静かに振り返ってもらう時間を設けています。

編集部

生徒たちは「こころの時間」をどんな様子で過ごしているのですか?

保田先生

本校は基本的に教室のドアを開けていて、ホームルーム前や休み時間は生徒たちがワイワイと話している声が響いているのですが、「こころの時間」では、騒いでいた子どもたちが一斉に静かになります。

私も今まで黙念の際に「うるさいよ」などと注意したことはありません。それくらい生徒たちは真剣に黙念に取り組んでいます。

曹洞宗大本山で取り組む早朝座禅をきっかけに、朝の勉強習慣を身につける生徒も

「總持寺」で開かれる鶴見大学附属中学校・高等学校の「耐寒参禅会」の様子

▲「總持寺」で開かれる「耐寒参禅会」に参加する生徒

編集部

仏教に関する行事などもあるのでしょうか?

保田先生

總持寺で毎年1月、4日間連続で朝の7時から30分ほど座禅を組む「耐寒参禅会」という行事があります。真冬の早朝なので気温は2、3度。何枚もカイロを貼って参加している教員もいるほどの寒さの中で実施します。

生徒の参加は希望制なのですが、全校生徒の約85%が参加、中学生はほぼ全員が参加しています。生徒の間では「耐寒参禅会に参加するのは当たり前だよね」という雰囲気があるようです。

編集部

耐寒参禅会には、どのような狙いがあるのでしょうか?

保田先生

耐寒参禅会は本校の禅教育の集大成的な位置付けです。「普段の教えは、こういうところにつながっているんだ」と意識してもらう機会になっています。

生徒からは最初は「つらい…」などと漏れてくるのですが、4日目を迎えると「一周回って平気になった」という声が聞こえてきます。こんなに朝早くから全校で取り組む行事も、普通はなかなかないと思うので、そこから得られる連帯感、達成感のようなものもあると思います。

また、この行事をきっかけに朝早く起きる習慣も身に付くようです。耐寒参禅会が終わった後も、そのまま同じ時間に起きて朝の勉強を習慣化させる生徒もいます。「あれだけ寒くてしんどい思いをしたことに比べれば、寒くない場所でできる勉強は苦じゃない」といったような話も耳にしますよ。

生徒間で飛び交う「ありがとう」。全ての物事に感謝する精神が生まれる

編集部

こういった禅の教えを通じて、生徒はどのように成長していくのでしょうか?

保田先生

やはり、全ての物事に感謝できる心を育めていると感じます。例えば、プリント1枚配る時も、生徒間で「ありがとう」と声をかけ合う姿がよく見られます。

編集部

建学の精神にある「感謝を忘れない」姿勢そのものですね。

保田先生

そうですね。あとは、黙念や座禅で培った集中力が、部活動や学校行事にも生かされている印象があります。私は生徒会の顧問をしているのですが、文化祭の企画・運営を生徒が協力してスムーズに進めていく様子などからも、集中力の高さを感じますね。

鶴見大学附属中学校・高等学校の文化祭でバンド演奏をする生徒

▲文化祭の様子

授業とHRの教室を分けた「教科エリア+ホームベース型校舎」

鶴見大学附属中学校・高等学校の教科エリア型の教室で行われているHRの様子

▲教科エリアの教室での授業の様子

編集部

鶴見大学附属中学校・高等学校は、校舎のつくりにも特徴があるそうですね。

保田先生

ホームルームをする教室と授業を行う教室を別にした、全国的にも珍しい「教科エリア+ホームベース型校舎」という構造になっています。生徒たちは朝のホームルームを終えると、「国語なら国語エリア」というように、教科ごとに区分されたエリアに移動し、そこにある専用の教室で授業を受けます。

校舎の2〜4階が認知能力を養う国語・数学・英語・理科・社会で、地下が非認知能力を養う芸術・情報・家庭科のエリアになっています。

生徒の移動を促し「学びに行く」姿勢を培う。コミュニケーションの活性化も

編集部

「教科エリア+ホームベース型校舎」のメリットはどんなところにあるのでしょうか?

保田先生

常に各教科に最適な環境が整った教室で授業が受けられることに加え、生徒が自ら移動して「学びに行く」ことが、学びの主体性にもつながっていると考えています。

鶴見大学附属中学校・高等学校の校舎内を移動する生徒

▲校舎内を移動する生徒。授業の度に教室が変わるので気分転換にもなる

保田先生

ずっと同じ教室で授業をしていたら、前の授業で使った教科書を出しっぱなしにしている生徒や寝ている生徒がいると思うですが、「教科エリア」での授業では開始前に「教科書を出しなさい」「起きなさい」と呼びかける時間が省け、その分授業をする時間を増やせます。

授業ごとに気持ちを切り替えやすいからか、授業中に寝ている生徒もあまり見ませんね。

編集部

教室間の移動が良い気分転換にもなっているのですね。

保田先生

あとは、校舎内の移動が多くなる分、すれ違う生徒同士や生徒と教員の間でコミュニケーションが活発になっていると感じています。

これは私の経験なのですが、授業間の移動中に、前年度に教えていた生徒が落ち込んでいるような様子を見かけて、「どうしたの?」と声をかけたことがありました。するとその生徒は「部活の顧問の先生に怒られてしまった」と打ち明けてくれました。

自分の中高時代を思い返すと、学年が変わって授業を教えてもらわなくなった先生とはあまり接点が持てなくなるケースが多かったので、そういう面から考えると、この構造はプラスになっていると思います。

実際に生徒から「先生とコミュニケーションが取りやすくて、距離が近く感じる」という話を聞いたこともあります。私から見ても人懐っこい生徒が多いように感じますね。

鶴見大学附属中学校・高等学校の校内案内図

▲校内案内図。広いキャンパスで生徒は伸び伸びと過ごしている

鶴見大学附属中学校・高等学校の部活動

ここからは、鶴見大学附属中学校・高等学校で精力的に活動している部活動についてお伝えしていきます。

架空のローカル線のジオラマを作り、全国大会奨励賞を受賞した鉄道研究部

鶴見大学附属中学校・高等学校の鉄道研究部がジオラマを制作する様子

▲ジオラマを制作する鉄道研究部の生徒

編集部

御校の特徴的な部活について教えていただけますか?

保田先生

自然科学部や鉄道研究部は面白い取り組みをしていますね。鉄道研究部はついこの間、BSのテレビ番組に出ていました。

2023年度は鉄道模型の出来栄えを競う「鉄道模型コンテスト」に5年ぶりに参加し、架空のローカル線とその車両、駅舎を組み合わせたジオラマを作り、奨励賞とベストライター賞という賞をダブル受賞していました。

駅舎に関する本を読み込んだり、部員がローカル線を訪れた時のことを思い出したりしながら制作していて、プラットホームの高さや駅舎の窓、屋根の塗装など細かいところにもこだわったようですよ。

鉄道研究部のジオラマは、文化祭でも多くの来場者に注目されていました。

編集部

鉄道研究部を目当てに入学してくるような子どももいるのでしょうか?

保田先生

はい。学校説明会などで鉄道研究部について聞かれることは多いですし、小学生のお子さんにも高い関心を持ってもらえていると感じています。

50年以上ミツバチを育てる自然科学部は“環境保全の伝道師”を目指す

自然科学部の部員の方々が地域住民と交流しているようす

編集部

自然科学部はどのような活動をしているのですか?

保田先生

自然科学部は伝統的にミツバチを育てていて、本年度(2024年度)で52年目となります。ミツバチが寒さに弱く死んでしまったり、女王蜂が逃げてしまったりと、継続的に育てることには苦労もあるようですが、文化祭でハチミツやその加工品を販売していて人気を集めていますね。

また、活動が長年続いていることから、地域との交流も多く、地域の方々への認知度も上がってきています。現在は、鶴見区の「ベルロード商店街」にあるビルの屋上に養蜂箱を設置しています。目的は、地域の方々にミツバチに愛着を持ってもらい、保全に関心を持ってもらうことだそうです。

部員(2024年度は中高男女約30人)は、自分たちが環境保全の伝道師のような役目を担いたいと考えているようで、「NEAL」という自然体験活動指導者のリーダー資格を取る生徒も増えてきました。

編集部

自然科学部は、地域にとっても大切な存在なのですね。

保田先生

そうですね。地域の方々とハチミツを使って商品開発をする準備もしているんですよ。

本校には文化部以外の運動部も、メジャーな種目はそろっています。部活によっては中高合同で一生懸命活動していますね。

鶴見大学附属中学校・高等学校からのメッセージ

編集部

最後に、鶴見大学附属中学校・高等学校に興味を持った子どもや保護者の皆様にメッセージをいただけますか?

保田先生

本校ではあいさつや礼儀を大切にしている分、自然とコミュニケーションをとる機会も増えますし、元々人見知りだった生徒も人懐っこく成長している印象があります。

また、文化祭をはじめ学校行事もたくさん用意していて、その中で友人と協力しながら目標を成し遂げる達成感や楽しさを知ってもらいたいと考えています。

禅の教えを含め、勉強以外も学べることが多い学校だと思いますので、興味を持った方はぜひ、ご入学を検討していただけますと幸いです。

編集部

勉強だけではなく、人として生きていく上で大切な事も教えてくれるというのは、保護者にとっても子どもにとってもありがたいことではないかと感じます。保田先生のお話から、学校の雰囲気の良さも伝わってきました。本日は、どうもありがとうございました!

鶴見大学附属中学校・高等学校の体育祭の様子

▲学校行事の一つである体育祭で競技に臨む生徒

鶴見大学附属中学校・高等学校の進学実績

授業で発表をする鶴見大学附属中学校・高等学校の生徒

鶴見大学附属中学校・高等学校の2023年度の卒業生は203人で、うち国公立大学に進学した生徒は、東京外国語大学に2人、東京学芸大学に1人、東京農業大学に1人、横浜市立大学に2人でした。

また、早稲田大学に11人、慶應義塾大学に1人、上智大学に5人、東京理科大学に2人と、有名私立大学にも合格者を輩出しています。

内部推薦による進学率は、鶴見大学が全体の2%、鶴見大学短期大学部1%です。今年度より歯学部コースを設置し、鶴見大学歯学部への進学をさらに有利なものにしております。(取材時は2024年6月)

鶴見大学附属中学校・高等学校の在校生・卒業生の口コミ

最後に、鶴見大学附属中学校・高等学校の在校生・卒業生などの口コミをご紹介します。

(在校生)
とても優しい先生ばかり。安心して通う事ができます。先生に質問すると親身になって答えてくれます。

(在校生)
教科ごとに、とても良い先生がいます。「この人について行きたい」と思えるほど素晴らしい先生にも出会えるので、学習面はとても充実していると思いました。

(在校生)
先生、生徒共にとても個性的で、毎日が楽しいです。

(卒業生)
この学校には、受け身にならず勉強できる環境が整っているので、「自分から学んでいる」という気持ちで過ごせました。

(卒業生)
仏教の学校ですので、毎日の読経や仏教行事があるのですが、特に抵抗なく取り組めました。

教員の面倒見の良さを評価する口コミが多く見られました。ほかにも、「大学進学へのサポートも充実している」といった声もありました。

鶴見大学附属中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人総持学園
住所 横浜市鶴見区鶴見2-2-1
電話番号 045-581-6325(代表)
問い合わせ先 https://tsurumi-fuzoku.ed.jp/inq/form.php
公式ページ https://tsurumi-fuzoku.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください