「武田中学校 武田高等学校」の“世界的視野を持つ人”を育成する教育|中高一貫校

特色ある教育に取り組む注目の学校を紹介する本企画。この記事では、1967年に創立した広島県東広島市の共学・私立の中高一貫校「武田中学校 武田高等学校」を紹介します。

「世界的視野に立つ国際人の育成」を建学の精神に掲げる同校は、積極的な国際交流や、国際人の育成を主眼に置いた「グローバルスタディーズコース」の創設など、独自のグローバル教育に力を入れています。

また、2019年にはSDGsの達成に向けた活動の実践校となる「SDGs宣言」を行い、学生生活のあらゆる機会を通じて社会課題の解決のために何ができるかを考え、行動しています。

今回は、そんな武田中学校 武田高等学校のグローバル教育やSDGs教育について、広報担当の恵京先生にお話を伺いました。

世界で活躍できる「世界市民」を育成する武田中学校 武田高等学校

武田中学校 武田高等学校の外観

編集部

まず、武田中学校 武田高等学校が大切にしている教育理念について教えてください。

恵京先生

本校は、「世界的視野に立つ国際人の育成」という建学の精神を掲げています。これには英語力と国際感覚を養い、日本に限らず世界で活躍できる「世界市民」を育成するという決意が込められています。

編集部

そのような目標は、武田中学校 武田高等学校の教育プログラムにどのような形で現れていますか?

恵京先生

国際的視野を広げ、真の国際人へと成長するために国際交流に力を入れています。

また、SDGs実践校として他校に先駆けいち早くSDGsに取り組んでいるのも本校の特色です。授業だけでなく委員会やクラブ活動など、学校生活のあらゆる機会を利用して持続可能な社会づくりに関わっています。

武田中学校 武田高等学校の「グローバル教育」

武田中学校 武田高等学校の生徒がインドネシアの留学生と踊るようす

国際交流に力を入れる武田中学校 武田高等学校では、海外の留学生を積極的に受け入れており、2023年度はオーストラリアとスイスから留学生を迎えました。

また、オーストラリアや台湾、パレスチナ・ガザ地区、インドネシアなど様々な国・地域の生徒が同校を訪れ交流しており、生徒は日本にいながら日常的に国際感覚や英語力を身につけています。

ここからは、そんな武田中学校 武田高等学校のグローバル教育の特色について詳しく伺っていきます。

ガザ地区の学生も来校。国際交流で視野を広げる

武田中学校・高等学校の生徒とガザ地区の学生が記念撮影するようす

編集部

2023年にパレスチナのガザ地区の生徒が来校したそうですね。滞在中はどのような交流を行いましたか?

恵京先生

ガザ地区の学生3名が、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員とともに本校を訪れました。

本校の生徒と一緒に柔道や美術を体験してもらい、日本らしさを知ってもらったほか、ガザの学生からは現地での日常生活についてお話ししてもらいました。

編集部

軍事衝突が激しくなるなか、過酷な環境で暮らすガザの学生の話を生徒さんはどのような思いで聞いたのでしょうか。

恵京先生

本校を訪れた当時はイスラエル軍による爆撃が始まる直前ではありましたが、日本で暮らす私たちとはかけ離れた環境で暮らす彼らの話は、生徒たちに「自分たちが当たり前だと思っていることが、必ずしも当たり前ではない」という気づきを与えたようです。

また、困難な状況でもガザの将来に希望を持ち前向きに頑張る姿を見て感銘を受けたと話す生徒もいました。

武田中学校・高等学校の生徒とガザ地区の学生が記念撮影するようす

▲ガザ地区の学生との記念撮影を楽しむ生徒の皆さん

編集部

まさに「世界的視野に立つ国際人」の育成につながる取り組みですね。交流を持つことになったきっかけについてもお話しいただけますか?

恵京先生

本校ではかねてから英語科のアシュリ・サウザー先生を中心に異文化理解を深める活動を行っており、ガザなどの紛争地域からゲストを招いて現地の状況を学ぶフォーラムなどを開催してきました。

サウザー先生は大学時代、パレスチナの難民キャンプで英語指導のボランティアをするなかで、戦争と難民の問題に直面しました。その後、広島で働きはじめたのを機に平和教育に力を注ぐようになりました。

こうした活動に加え、本校はUNRWAとも交流があったことから、来校が実現しました。

編集部

台湾やインドネシアの学生との交流では、どのようなことを行ったのでしょうか?

恵京先生

台湾からは小学生16名が訪問し、2日間にわたって本校の中学生と交流しました。ICTを活用した授業や、剣道や柔道といった武道の体験をしていただき、台湾の子どもたちからは現地の歌や竹を使った古典的な語りを聞かせてもらいました。また、グローバルスタディーズコースで中国語を選択している生徒たちは、中国語を使った交流を楽しんでいました。

インドネシアからは高校生と教員30名ほどが訪れ、半日交流を行いました。本校の高校生は平和をテーマに英語でプレゼンテーションし、インドネシアの生徒は国の説明や学校の説明、伝統舞踊の発表などをしてくれました。

異なる文化に触れることは、生徒の広い視野や多様なものの考え方に良い影響を与えていると感じます。

武田中学校 武田高等学校の生徒が台湾の小学生に剣道を教えるようす

▲台湾の小学生に剣道を教える生徒さん

グローバルスタディーズコースでは広島や平和についての授業も

武田中学校 武田高等学校の生徒がハワイのプランテーションで記念撮影するようす

▲グローバルスタディーズコースではハワイへの語学研修を実施。

編集部

高校では国際人の育成を主眼に置いた特別コースも設けていると伺いました。

恵京先生

2018年、創立50周年を機に「グローバルスタディーズコース」を創設しました。

1学年20人弱の少数精鋭クラスで、外国人講師や英語科教師、国際学の担当教師が担任に就きます。授業だけでなくホームルームも英語で行うほか、教室の掲示物も英語で書かれたものが多く、海外の学校にいるような雰囲気ですよ。

編集部

グローバルスタディーズコースの特徴的なカリキュラムとしては、どのようなものがありますか?

恵京先生

独自のカリキュラムに「広島学」や「平和学」があります。本校は広島にあるので、第二次世界戦時の原爆投下や戦争被害、その後の広島の復興を知り、平和について考えます。

原爆による悲劇を二度と起こさないためにも、生徒がいつか世界に出た時に広島のことを自分の言葉でしっかりと伝えられる人になってもらいたいという思いがあり、このような授業を取り入れています。

また、世界平和を願う上では、世界のさまざまな宗教や異文化、言語について学ぶことも不可欠です。そのため、正しい宗教観を育む「宗教学」、異文化交流で大切な「異文化コミュニケーション学」や「言語学」などで実用的な知識を学べるようにしています。

編集部

広島学や平和学では、どのようにして戦争や平和について学んでいるのでしょうか?

恵京先生

広島学としては、広島平和記念公園とその関連施設を訪れたり、広島や原爆をテーマに個人やグループで研究しプレゼンする授業などを行ったりしています。

平和学習では県内外の各地へフィールドトリップを行い、その地における戦争の歴史を学んでいます。例えば、戦時中に毒ガスの製造が行われていた大久野島を訪れた際には、毒ガスが隠されていた防空壕の跡を見学したり、当時の写真や映像が残された資料館を訪れたりして、化学兵器の恐ろしさや残虐さを知りました。他にも福山市にあるホロコースト記念館では、戦争の裏にある差別の歴史や人々の「正義」について学んでいます。

また、さまざまな専門家を本校に招いてお話ししていただく授業も行っています。最近ではミャンマー難民や日本平和のために取り組んでいる県内のお寺の住職さんにお越しいただき、「宗教と戦争」をテーマに講話をしていただきました。

戦時中は僧侶が戦争を奨励していた話や、殺人を禁じている仏教の教えなどをお話しいただき、「自分と異なる人たちを人間として見る」ことを強く訴える住職のメッセージは生徒たちの心に響いたようでした。

編集部

世界で紛争が相次ぐなか、これからの社会を担う人たちが平和について考えることは、とても大切なことですね。グローバルスタディーズコースでは、海外研修の機会もあるのでしょうか?

恵京先生

2年生の7月にハワイへの語学研修があります。3週間、州立ハワイ大学の協力により、現地のコミュニティーカレッジに通います。

そこでは英語のレッスンを受けるほか、ハワイの歴史や文化に触れ、現地の社会問題や環境保全の取り組みを体験します。また、各自が設定したテーマについて研修中にリサーチやインタビューを行い、その結果を英語でプレゼンテーションするなど盛りだくさんの内容です。

編集部

ハワイの大自然に触れながら異文化や語学を学ぶことは貴重な経験になりますね。

留学生受け入れで日常的に多様性への理解や国際感覚を養う

編集部

留学生の受け入れについても、ご紹介いただけますか?

恵京先生

毎年さまざまな国から留学生をお迎えしており、これまで中国や韓国、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなどから長期留学生を受け入れ、現在はスイスとオーストラリアの生徒が高校で学んでいます。(2024年5月現在)

編集部

留学生との学校生活は、生徒の成長にどのような影響を与えているとお感じですか?

恵京先生

英語で話すことへの抵抗感がなくなるほか、文化や習慣が異なることを当たり前のこととして受け入れる姿勢につながっています。その結果、日本人同士であっても違いがあることを認め、お互いを尊重する雰囲気も醸成されていると感じます。

編集部

日常的に外国人と触れ合うことで、国際感覚を身につけ多様性への理解を深めているのですね。

武田中学校 武田高等学校が力を入れる「SDGs教育」とは

武田中学校 武田高等学校の生徒が自然の中でSDGs教育を受けるようす

編集部

武田中学校 武田高等学校が力を入れるSDGsの取り組みについてもご紹介いただけますか?

恵京先生

まず、本校に入学した生徒にはSDGsを理解してもらうためのカードゲーム「2030SDGs」を体験してもらいます。未来の世界がどうなっていくかをシミュレーションできるもので、このゲームを行う公認資格を持った先生(ファシリテーター)のもと、生徒たちが交流しながらSDGsの考え方を理解します。

また、中学校ではSDGsに関する教科横断型授業を実施しています。例えば、「気候変動」というテーマでは、英語の授業で環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんの演説を聞き、理科で気候変動から世界を守る方法を考えるなど、ひとのテーマを複数の教科を通じて考えることで社会問題を多面的にとらえる力をつけます。

このほか、1〜3年生が学年の枠を超えて6つの班を編成し、SDGsの17の目標のうち年間6つについて調べ学習を実施します。このようにして、3年間で17すべての目標に触れます。

編集部

中学校だけでもじつに多様な取り組みを実施しているのですね。高校ではどのような活動がありますか?

恵京先生

高校では、1年生は「広島」、2年生は「アジア」、3年生は「世界」をテーマに、個人またはグループで探究します。スポーツやファッション、観光、医療などのテーマに沿ってさまざまな角度からSDGsの課題を分析しています。

また、中高共通の取り組みですが、2021年からは「SDGs未来都市東広島推進パートナー制度」に登録した企業との連携も開始しました。これまでに有機栽培を実施する農園で農業体験をさせてもらったり、食品ロスの削減に取り組む地元のクレープ店や、さまざまな地元の食材を使ったかりんとうで有名な和菓子店の商品を校内で販売したりしました。他にも、文化祭では「SDGsマルシェ」というエリアを作り、これまでにつながってきた企業や学校に出店してもらい、商品や活動を紹介しています。

武田中学校 武田高等学校の生徒がクレープを手に持つようす

▲SDGs啓蒙のため、食品ロス削減などに取り組むクレープ店の商品を学校で販売。

SDGs活動をきっかけに将来の目標を見つける生徒も

編集部

授業以外の場面でも、SDGsを意識した取り組みがあればご紹介いただけますか?

恵京先生

委員会活動でも、委員会ごとにSDGsに関係する取り組みを行っています。

例えば、美化委員会は使い捨てカイロを回収し、カイロを活用して水質改善を行っている団体に寄付しました。ほかにも、生活委員会がペットボトルのキャップを集め、発展途上国の子どものワクチン代にあてる「エコキャップ運動」に参加したり、図書委員会がSDGsに関する本を紹介したりしています。

学級委員が集まる代議員会は、3年生が使い終わった問題集を集めて在校生に配布するプロジェクトを立ち上げました。

3年生が使い終わった問題集をほかの生徒がもらいにくるようす

編集部

SDGsの活動は、生徒さんにどのような変化をもたらしましたか?

恵京先生

SDGsの活動をきっかけに自分の将来の目標が見つかったと話す生徒がいます。

また、大学受験の面接の際に、SDGsについて深く学び行動してきた実績を自信を持って伝えることができたという声もあります。

編集部

自分に何ができるかを考え、しっかりと行動した経験は、自身の将来や受験にも役立っているのですね。

武田中学校 武田高等学校からのメッセージ

武田中学校 武田高等学校の恵京先生

▲インタビューにお応えいただいた恵京先生

編集部

最後に、記事をご覧の子どもや保護者に向けて、メッセージをお願いします。

恵京先生

本校は、机に向かっているだけではなく、五感で感じたことを成長の糧にしてほしいという思いから、中学校で体験授業を多く実施しています。

例えば、日本の和の心を学ぶことを目的に生け花や茶道を体験したり、和菓子屋さんに来ていただいて和菓子作りに挑戦したりしています。また、学校近くの幼稚園に通う子どもを招いてふれあう体験もあります。家庭科の授業の一環で人を思いやる情操教育を目的に実施しているもので、生徒が自分たちで輪投げなどのおもちゃを手作りして一緒に遊んでいます。

国際交流やSDGsなど、本校には生徒の視野を広げ進路が見えてくるような活動がたくさんあります。

ぜひ本校で可能性を広げ、世界に羽ばたいていただきたいと思います。

編集部

本日はありがとうございました!

武田中学校 武田高等学校の体験授業のようす

▲和菓子作りや子供との触れ合いなど、勉強以外の教育にも力を入れている

武田中学校 武田高等学校の進学実績

武田中学校・高等学校の図書館

武田高等学校には、グローバルスタディーズコースのほかに、国公立大や難関私立大を目指すAコース、中堅大学を目指すBコースがあります。

Aコースでは生徒の学力を踏まえた授業を展開しており、受験に向けては志望理由書や面接、集団討論に対応するために教員が1対1で生徒を指導しています。大学の合格実績は年々上昇し、2023年度は72%の生徒が国公立大学に合格しました。

Bコースでは、幅広い知識や教養が求められる近年の大学入試に対応するため文理融合型のカリキュラムを導入しており、ほぼ全員が進学しています。

グローバルスタディーズコースでは、関西大学の外国語学部など国際・外国語系の大学に多数の合格者を出しています。

■進学状況(武田中学校 武田高等学校の公式サイト)

https://takeda.ed.jp/?page_id=82

武田中学校 武田高等学校の卒業生・在校生・保護者の口コミ

プラネタリウムを生徒がみるようす

▲武田中学校 武田高等学校にはプラネタリウムもある。

最後に、武田中学校 武田高等学校の卒業生や在校生、保護者の声を紹介します。

(卒業生)グローバルスタディーズコースでは、外国の人と交流する場が多くあったので、非常に広い世界を知ることができました。

(卒業生)武田の良さは先生と生徒の距離が近いことです。平日でも土曜勉強会でも分からないところがあれば先生方が時間を作ってくださり一対一で理解するまで教えてくださいます。

(在校生)先生方の指導が良いので、頑張れば必ず伸びると思います。

(保護者)近代的な校舎でスタイリッシュな学校です。山に囲まれ、伸びのびとした環境で学べます。

国際交流が自分の成長にプラスになったという声や、質の高い学習指導を受けられるという声が多く上がっていました。

※卒業生の声は、武田中学校 武田高等学校のデジタルパンフレットから一部を抜粋しました。

武田中学校 武田高等学校へのお問い合わせ

武田中学校 武田高等学校の校舎外観

運営 学校法人呉武田学園
住所 広島県東広島市黒瀬町大多田443-5
電話番号 0823-82-2331
問い合わせ先 https://takeda.ed.jp/?page_id=175
公式ページ https://takeda.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください