横浜翠陵中学・高等学校の「考え、チャレンジする人」を育てる教育とは|中高一貫校

ぽてん読者の皆さまに、特色ある教育プログラムで注目を集める学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは神奈川県横浜市にある私立・共学の中高一貫校「横浜翠陵中学・高等学校」です。

1986年に女子高として開学した同校は、1999年に中学校の併設、2011年に共学化と、時代と共に進化。2011年にはスクールモットー「Think&Challenge!」を制定し、「考える力」や「挑戦する心」を育む教育を行っています。

今回は、そんな横浜翠陵中学・高等学校の教育内容ついて、入試広報部長の田島浩平先生に詳しく伺いました。

「考える力」を重視する横浜翠陵中学・高等学校

横浜翠陵中学・高等学校の田島先生が校舎の前に立つようす

▲インタビューをお受けいただいた田島先生。入試広報部長で、担当教科は理科。

編集部

はじめに、横浜翠陵中学・高等学校の教育理念について教えてください。

田島先生

本校の校訓は「考えることのできる人」です。

学校を運営する「学校法人堀井学園」を1940年に創立した堀井章一先生は、生徒が兵隊のように扱われるのではなく自立して行動できる人になってほしいという思いから、学園の建学の精神を「考えて行動できる人の育成」としました。その精神が、本校にも息づいています。

テクノロジーが進化した現代においても、人の「考える力」はAIに負けないものです。だからこそ、本校では中高の6年または高校の3年で、しっかり考えることのできる人を育成したいと考えています。

編集部

そのような人を育てるうえで、教員の方々が意識していることは何ですか?

田島先生

教員の役割はレールを敷いて手取り足取り面倒を見ながら生徒をレールに乗せてあげることではなく、選択肢を示してあげることだと考えています。

「こういう選択肢があるけれど、実際に一歩踏み出すのは自分だよ」と言って、生徒が自分で考えて適切な道を選んで進む「自立した人」になれるようにサポートしたいと考えています。

「Think&Challenge!」のスクールモットーに込めた想い

横浜翠陵中学・高等学校の体育祭で生徒が大縄跳びに挑戦するようす

編集部

横浜翠陵中学・高等学校はスクールモットーも掲げていますね。

田島先生

共学化した2011年に、スクールモットー「Think&Challenge!」を新たに制定しました。

「Think」は先ほどご紹介した校訓「考えることのできる人」に通じており、「Challenge」には、一歩を踏み出す勇気を持ってほしいという思いが込められています。

一歩踏み出すことによって世界が変わったり、新しく見える世界があります。生徒には自分の知っている世界の中にとどまるのではなく、海外に出たり専門外の分野に挑戦したりしてほしいと思っています。

編集部

挑戦を通じて視野を広げてほしいという願いが込められているのですね。

田島先生

その通りです。そして、挑戦の連続によって小さな達成感が積み重なり、それが大きな達成感へとつながることを期待しています。

部活動においても、小学校や中学校から取り組んできたものを継続することも大切ですが、本校では新しい部活にチャレンジすることも推奨してます。

本校の部活はどこも初心者大歓迎のアットホームな雰囲気なので、挑戦しやすい環境だと思いますよ。

横浜翠陵中学・高等学校の新体操部とダンス部の生徒たち

▲練習に打ち込む新体操部とダンス部。ダンス部のパフォーマンスは、文化祭「翠陵祭」の目玉になっている。

基礎の徹底やグローバル教育。横浜翠陵中学・高等学校の特色ある教育とは

横浜翠陵中学・高等学校の生徒がパソコンを使って授業を受けるようす

▲横浜翠陵中学・高等学校ではICTを活用した授業も積極的に行っている。

編集部

横浜翠陵中学・高等学校の校訓やスクールモットーは、実際の授業やカリキュラムにどのように落とし込まれているのでしょうか?

田島先生

基礎があるからこそ、しっかりした家が建ちます。それと同じで、基礎・基本が身に付いているからこそ、そこから考える力が生まれると考えています。

中高一貫校の場合、中学の段階から先取り学習を行う学校も多いと思います。しかし、基礎を大切にする本校では「何回もやる、できるまでやる」をキーワードにして、先取り学習はほとんど行いません。

編集部

基礎をしっかり身に付けるために、授業内容ではどのような工夫をしていますか?

田島先生

本校では小テストを頻繁に行うのですが、難しい応用問題を出すのではなく、基礎的な問題を出します。例えば私が担当する理科では元素記号の小テストなどを行い、合格するまで何回も再テストを受けてもらいます。

再テストを3回受けてもらうようなこともあり、生徒や保護者の皆さんには「追いかけます、最後まで」とか「理解できるまでしつこく繰り返します」とお伝えしています。

編集部

基礎を重視した授業の手応えを実感するのはどのような時ですか?

田島先生

外部の中学から本校の高校に入学した生徒の場合、入試が終わった瞬間に中学の学習内容を忘れてしまうケースがよくあります。

しかし、内部進学した生徒の場合は、高校で中学の内容を学び直す必要がほとんどありません。しっかりと土台ができているのでスムーズに高校の学習内容に入れますし、基礎を応用しながら「考える力」を発揮できていると感じます。

中学3年生で全員がニュージーランドで海外研修

編集部

横浜翠陵中学・高等学校のグローバル教育についてもご紹介いただけますか?

田島先生

本校では、自分の可能性を広げ世界で活躍できる人になるために、国際感覚と「使える英語力」を身に付けるグローバル教育を行っています。

大きな特色は中学3年生の全員が参加するニュージーランド研修です。高校で海外に行く学校は多いですが、本校では中学生活における最大のチャレンジとして、海外研修を実施しています。

編集部

スクールモットー「Think&Challenge!」の「Challenge」に通じる取り組みですね。現地ではどのように過ごすのでしょうか?

田島先生

2週間、ひとつの家庭に生徒1人または2人でホームステイし、現地の学校で授業を受けたり文化交流を行います。

行く前は不安を感じる生徒や保護者もいて、出発式では泣いてしまう生徒もいます。しかし、そのような生徒ほど、研修を終えて帰国する頃には、今度は「日本に帰りたくない」と言って泣き始めます。チャレンジして大きな壁を乗り越えたからこそ、達成感も大きいのではないでしょうか。

編集部

研修を終えた生徒さんからはどのような感想があがっていますか?

田島先生

勉強してきた英語が現地の人に通じた時や、相手の話している英語を理解できた時に大きな喜びを感じたという生徒が多いですね。その手応えがモチベーションとなり「もっと英語を勉強したい」と言う子もいます。

高校も海外研修が充実。メキシコの学校への交換留学も

編集部

高校ではどのような海外研修がありますか?

田島先生

難関私大・国際関係学部を目指す「国際コース」の2年生は、約10日間のイギリス研修が必修となっているほか、希望者を対象とした2ヶ月半のニュージーランド留学があります。

また、国公立大や難関私大を目指す「特進コース」と、GMARCHなどの上位四年制大学を目指す「文理コース」の2年生の希望者に対しては、2週間の海外研修を実施しています。2024年度はカナダに行きます。

このほか、アメリカ、メキシコ、中国、オーストラリアにある姉妹校や交流校との交換留学制度もあります。

編集部

メキシコ留学ができる学校は珍しいですね。

田島先生

メキシコでは、ホームステイしながら1977年に日本初の国際校として設立された「日本メキシコ学院」に通います。2024年は私も同行したのですが、ホストシスターと一緒に授業を受けたほか、民族衣装を着てメキシカンダンスを体験したりと、現地の文化に触れる機会もたくさんありました。

2週間の滞在が終わって帰国する時には、生徒とホストファミリーが空港で泣きながらハグをしてお別れしていました。

留学生の受け入れによって日常的に国際感覚を養える

編集部

海外研修以外に、普段の学校生活を通じて国際感覚や英語に触れる機会はありますか?

田島先生

本校は留学生の受け入れを行っています。滞在期間はさまざまですが、常に留学生がいる環境があります。現在はドイツから来た高校2年生の女子留学生が本校で学んでいますよ。

また、2024年6月には、友好提携を結ぶアメリカ・メリーランド州の「セントポール女学院」から5名の短期交換留学生を迎え、1週間ほど生徒達の家にホームステイしながら授業を受けたり日本観光を楽しんだりしました。

編集部

留学生の存在は、生徒さんにどのような影響を与えていますか?

田島先生

留学生との交流を通じて、その国に対する興味や関心が高まることは多いですね。

2024年に交換留学でメキシコに行った生徒のひとりは、本校が迎え入れたメキシコからの交換留学生が自分の家にホームステイしたことをきっかけにメキシコに興味を持ったそうです。

このように、留学生は本校生徒の「新しい扉」を開けてくれるきっかけになっています。

編集部

留学生も、生徒の「Challenge」を促す大切な要素になっているのですね。

横浜翠陵中学・高等学校の探究学習は「自分の意見」を重視する

編集部

横浜翠陵中学・高等学校の探究学習についてもご紹介いただけますか?

田島先生

中学では、グローバルな視野で挑む課題解決型の総合学習プロジェクト「翠陵グローバルプロジェクト(SGP)」を実施しています。

調べて発表するという基本的なスタイルは一般的な探究学習と同じですが、SGPでは自分の意見・提案を必ず入れることを大事にしています。

編集部

どのようなことについて探究を行うのでしょうか。

田島先生

学年によって内容は異なりますが、3年間を通じたテーマは「世界をハッピーにするために私たちができること」です。

世界で今起きている問題を知り、その解決のために私たちは何ができるかを考え、プレゼンのスライドを作って、ひとり20分の発表を行います。

SGPの一環で、校内模擬国連も実施しています。生徒がどこかの国の大使になり、自分の国の内情を踏まえたうえで自国の利益と世界の平和秩序をどちらも実現できるような意見を出します。

過去の模擬国連では、国連本部にカフェを作る場合のメニューをテーマにしました。

国連なのでさまざまな国のメニューが想定されますが、誰もが自分の国の特産品をメニューに入れたいと考えます。例えば韓国ならキムチを出すことを提案しますが、ほかの国も納得できるようなメニューを提案する必要があります。そこで、ほかの国の特産品と組み合わせるといったアイディアを出しながら、合意形成を図ります。

編集部

世界の国の事情を知るだけでなく、交渉スキルも養われそうですね。

田島先生

その通りです。会場を自由に歩きながら各国大使と交渉を行う「アンモデ」という討議にも挑戦しながら、自分の考えが採用されるような立ち回り方を学んでいきます。

編集部

SGPに参加する生徒さんの様子について、田島先生はどのようにお感じですか?

田島先生

特に中学1年生に言えることですが、ほかの国のことについて詳しく知るという経験はほとんどの生徒にとって初めてのことです。だからこそ、自分が調べた国のことを、「自分だけが知っている情報」としてほかの生徒に伝えたいという熱量を感じますね。

「韓国は実は貧富の差が激しい」とか、「シンガポールにはこのような制度があり、日本も取り入れたほうがいいと思います」など、教員にとっても勉強になるような情報やアイディアを積極的に発信してくれます。

高校では企業の課題を解決する企画や商品を立案

編集部

高校ではどのような探究学習に取り組んでいますか?

田島先生

高校では、商品アイディアや売り込み方などを考える「翠陵クエスト」を2024年度から始めました。

例えば、「雨の日に、濡れずに車から降りれるような傘を作る」といったお題を出して、自由な発想でチームでアイディアを出します。

2年生になると、企業様からいただいた課題に対してアイディアを提案します。2024年度はイオンリテール様や大和ハウス工業様などにご協力いただいており、学内インターンを通じて企業の課題を理解し、解決するための企画や新商品を考えます。

編集部

2024年度から始まったばかりということですが、生徒さんの反応はいかがですか?

田島先生

まだ始まったばかりの取り組みですが、アイディア次第では実際に企業様に採用いただける可能性もありますし、生徒の達成感にもつながるのではないでしょうか。

また、ひとつの答えを見つけに行くのではなく、さまざまな方面から情報を集め、試行錯誤しながら自分なりの答えを導き出すことは、「未来に生きる力」につながると考えています。

SGPも翠陵クエストも担任が担当しているので、生徒の得意なことや特性を把握したうえでアドバイスし、しっかりとフォローできていると感じます。

横浜翠陵中学・高等学校からのメッセージ

横浜翠陵中学・高等学校の吹奏楽部が演奏するようす

編集部

田島先生は、横浜翠陵中学・高等学校の生徒さんについてどのような印象をお持ちですか?

田島先生

元気な生徒も物静かな生徒もいますが、素直で物事に真剣に取り組む点ではみな同じだと思います。

私が担当する理科の授業で、中学1年生に植物のスケッチを提案したら、みんな夢中になって黙々とスケッチに取り組んでくれましたよ。

文化祭や体育祭なども、一丸となって取り組んでいます。

横浜翠陵中学・高等学校の体育祭で生徒が大玉転がしするようす

▲体育祭や文化祭は、中学・高校合同で開催している。

編集部

先生と生徒のコミュニケーションや関係性については、どのようにお感じですか?

田島先生

距離が近く、日常的に雑談する機会が多いです。生徒との面談も年に4回あり、悩んでいることなどがあればしっかりとヒアリングしています。

また、学校生活や学習内容を記録する「チャレンジノート」を週に1回、担任に提出します。目的は自身の学習を可視化して計画や振り返りをしやすくすることですが、悩みや心配ごとがあれば書いてもらい、教員からアドバイスやコメントをもらうことができます。教員と生徒との重要なコミュニケーション手段の一つとなっています。

編集部

最後に、記事をご覧の子どもさんや保護者の方にメッセージをお願いします。

田島先生

横浜翠陵は私立中高としては小規模な学校で、中学の場合は1学年60人ほどで2クラス編成です。小規模だからこそアットホームな雰囲気があり、教員が生徒一人ひとりとしっかりと向き合うことができます。

また、本校は横浜にありますが、大自然に囲まれた丘の上に立地しており、四季折々の景色を見ながらのびのびと穏やかに学校生活を送っていただけると思います。この緑豊かなキャンパスが好きで6年間皆勤賞で卒業した生徒も多数います。

アットホームな校風を求めているご家庭、環境の良い場所での学びに興味をお持ちのご家庭はぜひ本校をご見学いただければと思います。

編集部

基礎を重視する教育やグローバル教育、探究学習など、「Think」と「Challenge」を意識した教育を行う横浜翠陵中学・高等学校。世界で活躍できる人に必要なスキルをしっかりと身につけられる学校だと感じました。

本日は、ありがとうございました!

横浜翠陵中学・高等学校の進学実績

横浜翠陵中学・高等学校の校門

横浜翠陵中学・高等学校では2022年度以降、GMARCHなどへの現役合格者が大幅に増加しています。

2023年度入試では、国公立では東京学芸大学や東京都立大学などに合格者を出したほか、私立の上位校では法政大学に16名、立教大学に11名、青山学院大学9名、東京理科大学に5名などの合格者を出しました。

■横浜翠陵中学・高等学校の進学実績(公式サイト)

https://www.suiryo.ed.jp/result/

横浜翠陵中学・高等学校の在校生・在校生・保護者の口コミ

最後に、横浜翠陵中学・高等学校の在校生や卒業生、保護者の声を紹介します。

(在校生)自然に囲まれているので、勉強に集中しやすいです。授業はわかりやすく、先生に質問しやすい雰囲気もあります。

(卒業生)個性が尊重され、それぞれが責任感を持って行動している学校です。生徒の学習意欲も高いと感じました。

(保護者)少規模なので一人ひとりの生徒によく目を配っていただけます。先生は根気良く指導をしてくれ、定期的なミニテストなどもあるので知識の定着が期待できます。

(保護者)子どもの自己肯定感を高めるような教育を行ってくれます。体育祭や文化祭など中高合同で開催される学校行事はとても有意義です。

自然に囲まれた学校環境の良さや、小規模校ならではきめ細かな教育に魅力を感じるという声や、基礎の定着を重視する教育を評価する声が目立ちました。

横浜翠陵中学・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人堀井学園
住所 神奈川県横浜市緑区三保町1
電話番号 045-921-0301
問い合わせ先 https://www.suiryo.ed.jp/suiryo-info/contact/
公式ページ https://www.suiryo.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください