生徒一人ひとりとの対話を重視する「精道三川台中学高等学校」の教育|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆様に、注目の学校をご紹介する本企画。今回は、長崎市にある中高一貫の男子校「精道三川台中学高等学校」をご紹介します。

カトリックの教えによる建学の精神のもと、系列の小学校も併せて、小中高一貫教育を実践。生徒一人ひとりに合わせたきめ細やかな対応を実施し、放課後に至るまで生徒の自律心や感性を高める仕組みがあります。また、海外の姉妹校と交流するグローバル教育に力を入れており、多くの生徒が難関大学に進学しています。

今回はそんな精道三川台中学高等学校の教育の特色や校風などについて、福田校長、広報部主任の松永先生、文教クラブ担当・広報部担当教員の田中先生に伺いました。

“人に幸せを与える人”を育成する「精道三川台中学高等学校」

精道三川台中学高等学校の福田道夫校長

▲インタビューにご対応いただいた学校長の福田先生

編集部

まず、精道三川台中学高等学校の成り立ちや建学の精神についてお聞かせください。

福田校長

本校の創立者は、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世によって「聖人」の列に加えられた聖ホセマリアです。彼の教えに賛同する人々が、確かな価値観を子どもたちに伝えるべく、世界各国に学校が作られました。その数は500を超えますが、1981年創立の本校はその一つです。

建学の精神は「カトリックの教育理念にしたがって、全人格的な成長を促し、本当の幸せを知り、味わい、人々にその幸せを与えることのできる人間の育成」です。この「幸せ」が何なのかが少し難しいのですが、自分が幸せになろうとするのではなく、人に幸せを与えることで、自分も幸せになるという考え方を指しています。

校訓は二つあり、「自由と責任」と、「Possumus(ポスムス)」です。

「自由と責任」ですが、人生には無数の選択肢があり、それを選ぶとき、人は誘惑や誤った価値観に惑わされることも少なくありません。「自由」とは「よりよい善を選ぶ能力」のこと。何でも好きに選ぶのではなく、確かな知性と強い意志を持ち、「よりよい善」を選ぶのが、自由を与えられた者の責任だと説いています。

「Possumus(ポスムス)」とは、「私たちはできます」という意味のラテン語です。これには、「困難のもとでも、挑戦の心、仲間の協力、粘り強さをもって、可能性を開花させてほしい」というメッセージを込めています。

精道三川台中学校の敷地内にある聖母子像

▲高校開校を記念して設置された「御慰めの聖母」

海外の姉妹校との交流も。精道三川台中学高等学校のグローバル教育

オーストラリアへの海外研修で精道三川台中学校の生徒が発表している様子

▲海外研修で訪れたオーストラリアの学校で、日本のアニメ、漫画について発表する精道三川台中学校の生徒たち

編集部

精道三川台中学高等学校のグローバル教育について具体的にどんな取り組みをされていますか。

福田校長

聖ホセマリアの精神に学び、志を同じくしている学校を、私たちは「姉妹校」と呼んでいます。小中高一貫校が多く、これを1セットと数えますと、世界中に約300セットがあります。

姉妹校同士では交流希望があれば、ほぼ実現できる状況にあり、本校では現在、オーストラリアのシドニー、香港、フィリピンのマニラの学校と毎年、交流があります。希望者全員が必ず行けるわけではありませんが、中高問わず、海外への門戸を開いています。

編集部

これまでに交流した中で、特に印象的だった交流先はありますか。

福田校長

フィリピンの学校へ留学した時が印象的でした。私たちが交流している学校は、フィリピンの中でもスーパーリッチと言われる富裕層が通うところだったのですが、その一方で、人々が毎日、大変な暮らしをしている貧しい地域を目の当たりにする機会がありました。本校の生徒は皆、貧富の差という現実に大変びっくりしていました。

編集部

日本にはない、海外ならではの事情を知ることで、生徒さんの変化や成長を感じる部分はありましたか?

福田校長

日本とは異なる様々な現実を見て、「自分たちはこのままでは駄目だ」との思いを強くする生徒は少なくありません。「先生、どうしたら英語の能力があがりますか」「何をしたら世界に羽ばたけるような人間になれますか」など、海外に行った生徒からはたびたび今の自分を変えようとするような、前向きな相談が多く寄せられます。

編集部

留学がよい刺激となっているようですね。ほかに普段の授業におけるグローバル教育の取り組みについて教えてください。

福田校長

中学校では、週5回の英語の授業のうち2回を、ネイティブの外国人教諭が担当しています。

また、海外の姉妹校からの留学生との交流も大切な機会となっています。

来月にはフィリピンから、10月にはオーストラリアから10数名が来る予定です。ホームステイ形式で、短くて3、4日、長ければ1週間近く滞在し、本校での授業や、学校行事に参加してもらいます。(取材は2024年5月)

留学生がいて当たり前だという感覚が生徒達に芽生え、日本にいながらにして、密度の濃いグローバル教育が実践できていると感じています。

オーストラリアの姉妹校の生徒が精道三川台中学高等学校を訪問し、発表したときの様子

▲オーストラリアの姉妹校の生徒が本校を訪問。姉妹校との交流は盛んに行われている

生徒の経験値を上げる、放課後の活動「文教クラブ」

精道三川台中学高等学校の田中先生と生徒

▲インタビューにご対応いただいた田中先生

編集部

精道三川台中学高等学校には「文教クラブ」という取り組みがあると伺いました。具体的な内容について教えてください。

田中先生

「文教クラブ」では、希望する生徒が放課後、本校から車で10分ほど離れたところにある分教室「文教スタディ・センター」に集まり、平日は主に勉強会、土日はフットサル大会やボルタリングなどのレクリエーションを行っています。

毎週金曜日は、お菓子を食べながら、姉妹校の外国人の方や留学生らと直接、もしくはオンラインで英語だけで会話をする「Snack in English」という企画もあります。文教クラブは、他校の生徒も参加することができます。

編集部

とても楽しそうな取り組みですね。なぜ文教クラブを設けているのでしょうか。

田中先生

文教クラブの設立には、「本当にいいもの知り、感性と心を磨いてほしい、勉強や遊びを通じて友達やほかの学年と交流してほしい」という思いが込められています。

学校の外にいる時間、つまり自由時間には、子どもたちの心が形成される要素があります。保護者の方々においても、自由時間には、様々な経験を通じて多くのことを学んでほしいとのニーズが非常に高いということも理由です。

編集部

文教クラブではどのような活動をしているのでしょうか?

田中先生

「心・知・体」を軸にした活動を行っています。

「心」の活動では、カトリックの司祭による説教やボランティア活動などを通して、誠実さや寛大さなどを学びます。

「知」では、文教スタディ・センター内の学習室で放課後に勉強会を行っています。「一対一での対話」を意識しており、毎週15分~20分、子ども一人ひとりの話をじっくり聞き、悩んでいれば励まします。家族に相談しにくいことなども話してくれ、生徒自身が気持ちを整理できたり、より高い望みへ導いたりする機会になっています。

「体」では、様々なスポーツや遠足など、仲間と一緒に体を動かすことで友情を深め、健康な身体とチャレンジ精神を身につけていきます。

このような軸は持っていますが、文教クラブでは子どもたちがやりたいことに応え、興味のあることに大人が協力し、経験させることを意識しています。

「Snack in English」は、ある生徒からの希望がきっかけで始まりましたし、「サッカー選手権のベスト16の試合がみたい」「京都に行きたい」「ローマで1週間過ごしたい」との提案を受け、実現したこともあります。ローマへの参加は2人でしたが、実際に行くと行かないとでは刺激が違います。生徒の要望にはできるだけ応えるように意識しています。

編集部

文教クラブでの経験を通して、生徒さんに変化はみられますか。

田中先生

中学1年生の時は海外には興味を示さなかった生徒が、文教クラブの経験を通して海外に触れ、2年生の時に学校で一人しか行くことのできない3か月間のオーストラリア留学に参加するほどになりました。言葉に不自由な環境のなかで、孤独感も感じたのだと思いますが、帰国して「孤独を感じる人をつくってはいけない」と語るなど、成長が見られました。

文教クラブには中高の生徒が参加していますので、先輩後輩の交流を経て、幼かった生徒も後輩が入ってくる頃には面倒見の良い生徒へと成長します。学年を超えた交流で、対話する力が育まれているようにも感じます。

精道三川台中学高等学校の文教クラブで行われた登山、花見、カジノ大会

▲文教クラブでは中高の生徒が登山やカジノ大会、花見など様々なイベントを楽しみ、交流する

「教え込むことが教育ではない」精道三川台中学高等学校に根付く精神

精道三川台中学高等学校の日常の授業の風景

▲精道三川台中学高等学校での普段の授業風景

編集部

精道三川台中学高等学校の雰囲気を教えてください。

田中先生

生徒の取り組みに対し、先生たちは全力でかかわる、といういいムードが精道三川台中学高等学校に根付いていると感じています。

例えばディベート部では、7月の大会に向け、生徒と先生による真剣な議論を半年間かけて、話す内容を組み立てていきます。教育は教え込むということだけではなく、対話、活動を通して教育していくという考え方を実践しています。

また、私は中学校のサッカー部の顧問をしており、数年前に部員数がわずか3名だったときがありましたが、いまや試合に出られるほどの規模になりました。それは、当時のメンバーが先生としっかりと対話し、周りの友達をどんどん部に誘うなど、自ら考え、行動に移してくれたからです。

このように、本校の生徒は非常に自主性、積極性がある生徒が多いと思います。

精道三川台中学高等学校からのメッセージ

精道三川台中学高等学校の校舎に続く階段

編集部

最後に、この記事をご覧の保護者、受験生の皆さんにメッセージをお願いします。

福田校長

私たちは「圧倒的な個へのかかわり」という合言葉を日々使っています。小さな学校ですが、一人ひとりの生徒に対して、複数の先生たちや外国の人たちが関われる環境だということが誇りです。また、教員一同、常にそのようになければならないと考えています。自分が知らない、気付かない可能性を見つけて、広げていきたいと思っている皆さんは、是非本校へ入学してくれたら嬉しいです。

松永先生

生徒一人ひとりをみていると、この学校にはどんどん伸びていく環境があり、一人ひとりにスポットライトが当たっていると感じています。自分の能力を伸ばしたい、輝かせたいと思っている人は、是非本校へいらしてください。

編集部

本日は、大変参考になるお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!

精道三川台中学高等学校の進学実績

精道三川台中学校の表札の写真

精道三川台中学高等学校の卒業生はその大半が四年制大学に進学しています。2023年度は大阪大学などの難関国公立大学のほか、私立大医学部にも合格者を輩出しています。

■精道三川台中学高等学校の進学実績(公式サイト)
https://seido-gakuen.net/secondary/introduction-high-school/

精道三川台中学高等学校の保護者・在校生の口コミ

精道三川台中学高等学校の生徒の休み時間の様子

ここでは、精道三川台中学高等学校の保護者、在校生から寄せられた口コミを一部抜粋して紹介します。

(保護者)学年を問わず、中学生~高校生の先輩、後輩の仲が良い。カトリックの教えが基盤にあるからなのか 学校の校風と伝統は、まわりの人に対して優しく思いやりがあり、親切である。勉強だけできる人間ではなく、社会貢献のできる人材の育成に力を入れている点も大変評価できる

(保護者)英語教育を含め学習面から生活面まで担任の先生や個人指導の先生だけではなく、教科の先生までもが、一人に対するきめ細かな対応をしてくださり、親も安心して学校に通わせる事ができる

(保護者)個々の習熟度に合わせ、長所を引き出し、学習の習慣、自主性を身につける事が出来る。先生方は生徒全員を把握していて自主勉強の添削、アドバイスなど、様々なことについても気軽に相談でき、アットホームな雰囲気である。

(在校生)ソフトテニスは九州地区でも有数の強豪校。サッカー部も市内ではトップクラス。

先生のメッセージにもあった通り、きめ細やかな対応に満足する声が多く上がっていました。生徒一人ひとりに合わせた対応も精道三川台中学高等学校の強みと言えそうです。

精道三川台中学高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人 精道学園
住所 長崎市三川町1234-1
電話番号 095-845-6161
問い合わせ先 mikawadai.chuko@seido.ed.jp
公式ページ https://seido-gakuen.net/secondary/

※詳しくは公式ページでご確認ください