ワクワク・ドキドキの学びを提供「龍谷中学校・高等学校」が挑戦する自立した学習者の育成|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、佐賀県佐賀市にある中高一貫の共学校「学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校・高等学校」を紹介します。

同校は、1878年を起源とし、浄土真宗のみ教えに基づく人間教育を建学の精神とした教育活動に努めている伝統校です。高等部として、特別進学コース・文理進学コース・総合コース・保育コースの4コース、そして中等部が伝統を重んじながらも積極的に新しい取り組みを続けており、2020年4月からはその中等部の学びの内容と取り組みを再設定した「中高一貫理数グローバル」をスタート。ICTを積極的に活用した新たな学びを実践しています。

今回は、そんな龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバル独自の取り組みについて、教務主任の久我先生とSTEAM教育推進リーダーの中村先生にお話を伺いました。

浄土真宗の“み教え”に基づく、龍谷中学校・高等学校の教育目標

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルの教務主任の久我先生

▲取材に対応していただいた教務主任の久我先生

編集部

最初に、龍谷中学校・高等学校の建学の精神や校訓についてお聞かせください。

久我先生

本校は、浄土真宗本願寺派の宗門関係学校(龍谷総合学園)に所属する佐賀龍谷学園の龍谷中学・高等学校です。仏教精神、特に親鸞聖人が開かれた浄土真宗のみ教えを建学の精神として創立されました。

すべての人が平等に生かされているという生命の尊さに目覚め、感謝の心をもってお互いが敬愛し合う豊かな人格を育み、さらに社会の進展に貢献する強く明るい人間を育成することが本校の建学の精神です。

我々は、建学の精神から導き出された校訓として「合掌」「感謝」「自律」「明朗」の4つを掲げています。その上で、個性を伸ばすこと、生命を尊重すること、学力を向上させること、友情を育むことをモットーに、生徒たちがより良い学校生活を送ることを目指しております。

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルの校訓を刻んだ石碑

ICTを活用した独自の学びを提供する中高一貫の「理数グローバル」

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのプログラミング学習

編集部

御校で実践されている理数教育について、特徴的なトピックがあれば教えていただけますか?

久我先生

本校では、2020年4月より中高一貫の新コース「理数グローバル」をスタートしました。このプログラムでは、基本的な学びと授業の充実に加え、ICTを積極的に活用した独自の学びを提供しており、自ら学ぶことができる自立した学習者の育成を目指しています。

理数グローバルでは、身につけてほしい資質や能力を6つに区分しています。

1つ目は「挑戦する力」。目標を立て、試行錯誤しながら、目標実現のために意欲的に実践する力です。2つ目は「未来を描く力」。これは自分の関心から自己実現をするための計画を立てることができる能力です。

3つ目は問題課題について仮説を設定して、筋道を立てて考え、解決に導く「論理的に考える力」。4つ目は、周囲の人の価値観を理解して受け入れる「他者を理解する力」。5つ目は「コミュニケーション力」で、周りの意見をよく聞きながら、自分の意見を伝えることで良い関係を作る力となります。

そして6つ目は「プレゼンテーション力」。問題解決について自分の伝えたいことや意見を十分に伝えることができる力です。本校ではICT教育に力を入れていますので、ICTを活用したプレゼン能力を指しています。

この6つの資質・能力を、理数グローバルのコースで育成していきたいと考えています。

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのプレゼン風景

▲大勢の前で堂々とプレゼンをする生徒。スライド作成や話し方など多くの能力を身につけていく

試行錯誤を促し、答えを教えないことで成長していく

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのSTEAM教育推進リーダーの中村先生

▲取材に対応していただいたSTEAM教育推進リーダーの中村先生

編集部

理数グローバルの目標について、達成・反映されていると感じるエピソードがあればお聞かせください。

中村先生

探究学習として、2〜3年前、あるSDGsのイベントに参加した際、生徒たちが伝えたいメッセージを来場者に伝える取り組みがありました。その中で、ある生徒が卵容器のプラスチックゴミを小さくすることを思いつきました。

インターネットで調べたところ、お湯につけるとプラスチックが小さくなるという情報を見つけ、このアイデアを実際に試してみようと、学校でお湯を持ってきて実験を行いましたが、なかなかうまくいかず、最適なお湯の温度を探るために試行錯誤しました。

最終的には、黒板に小さなグラフを書きながら、異なる温度でプラスチックを観察していましたね。例えば、「この温度では効果が薄かったけど、次の温度ではより小さくなりそうだ」といった予測を立てながら、実験を進めていたんです。

この取り組みは、プラスチックゴミを減らすための創意工夫を通じて、科学的な探究と問題解決能力を育む貴重な経験となりました。

編集部

探究の授業を通して、先ほどの6つの資質能力を育んでいくための、働きかけや心がけなどはありますか?

中村先生

グローバル的な視野を持って物事を考えていくときには、いろいろな情報を集めなければならず、情報の集め方や探究の進め方などの方法は教えます。しかし、生徒が自分で走っていく力(自走)を妨げたくないので、こちらが先回りして「それは間違いだからこうした方がいい」など、答えを教えてしまわないように気をつけています。

探究学習においては、教師は伴走者に徹するべきだと思うので、生徒が何かやろうとしたときに「こうした方がいい」や「それはやめた方がいい」ではなく、あくまで伴走として「そう考えるなら次はどう考えるの?」といった具合に、生徒の持っている能力を引き出すための言葉を心がけています。

「フューチャーリーダープロジェクト(FLP)」としてリスタートした探究学習

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのSDGs活動

編集部

そのほかに、龍谷中学校・高等学校の特徴的な取り組みがあればぜひお聞かせください。

中村先生

2024年度から、「フューチャーリーダープロジェクト(FLP)」という探究の手法とスキルを取り入れた総合的な学習の時間をカリキュラムに取り入れています

FLPでは、中学1年生でSDGs探究学習、中学2年生でキャリア探究学習を学びます。SDGs探究学習とは、持続可能な社会を目指し、地域や社会の問題を自分事として捉え、考えるものです。キャリア探究学習とは、職場体験と関連して、職業や働くことについて探究していくものです。中学3年生のフューチャーデザイン探究学習では、働くことの先にある、生き方や自分自身の長い人生を踏まえた上で、実習をしていきます。

そして、4年生(高校1年生)・5年生(高校2年生)は理数グローバル探究実習といって、グローバル社会で役に立つ人になるために自分に何ができるのかを考え、それぞれ関心のあるテーマに取り組んでいきます。

編集部

探究学習が改めて「FLP」として始まり、生徒さんに何か変化や反応はありますか?

中村先生

まだ動き出したばかりなのですが、やはり生徒自身が「問いを立てる」のは相当難しいようです。ですから、問いを立てるときのサポートは行っていますが、生徒たちは何に興味があるのかについては、じっくりと時間をとることができたと思っています。

例えば、ある生徒はなぜ人は職業に就かなければならないのかという疑問をもちました。別の生徒はAIが将来私たちの仕事を奪うのかといった問いをもっています。それぞれの生徒の関心に合わせて、どのように問いを形にしていくかを共に考え、これから探究していく段階です。

特に中学2年生では、職業体験学習が一般的ですが、本校では職場体験はあくまでも情報収集の時間と捉えています。「働く」ということに対する問いを立てた上で、それを探究しながら、自分の問いを解決するための一つの情報として職場体験学習がある、そういう視点で取り組んでいるところです。

プログラミング入試を導入した龍谷中学校・高等学校の入試制度

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのプログラミング学習

編集部

龍谷中学校・高等学校の中学入試の特徴について、教えていただけますか?

久我先生

2023年度に新しく導入した、マインクラフトを使う「プログラミング入試」が特徴的ですね。佐賀県内で実施しているのは本校だけだと思います。

目的としては、いろいろな資質を持つ生徒を確保するために、新たな形式にチャレンジしてみようという想いがありました。また、大学入学共通テストで「情報」が導入されることもあり、プログラミングを含む情報リテラシーやデータの活用などは今後ますます重要になってきます。

実際、首都圏・関西圏ではプログラミング試験を導入している学校がすでにありましたので、地方ではありますが本校も県内の他校に先駆けて導入しようということになりました。

編集部

プログラミング入試には作文もあると伺いましたが、これはどういった意図でしょうか?

久我先生

プログラミング入試では、マインクラフトの操作が上手だとか、プログラミングができることだけで判断するわけではありません。それは実技のひとつとして評価しますが、題を与えられて感想や考えを自分の言葉でまとめたり、表現できるかを含めて評価するために作文を設定しています。

例えばプログラミングはかなりできたけど、作文は全く駄目だったという生徒もおります。そういった受験生は合格に達しなかった例もあります。

また、最後の個人面接で、プログラミングした作品を実際に投影しながら自分の言葉で、ポイントや難しかった点を表現してもらいます。そうした自己表現についても評価基準としています。

いろいろな入試形式で、子どもたちの個性を発揮してもらう

編集部

そのほかの試験の内容や判断基準についてお伺いできますか?

久我先生

本校の中学入試は大きく分けて3種類あります。12月に行う「12月入試」、1月上旬に行う「前期入試」、2月上旬に行う「後期入試」の3つです。

12月入試は「自己表現試験」として、グループワークをしながら自分の考えを発表したり、個人面接を行ったり、自己PRプレゼンをしてもらったりします。

前期入試は「適性検査試験」として、2023年度であれば国語と社会を融合した問題、算数と理科を融合した問題を出題しました。これは、佐賀県の県立中高一貫校が適性検査型の試験を実施しておりますので、それに合わせて取り入れているものです。

前期入試は、一般的な国語・算数・理科・社会の4教科試験、または国語・算数の2教科試験、そして小学校で学習した英語の内容を基本とし、リスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの力を試す英語の1教科だけの試験もあります。英語1教科試験を取り入れているのは佐賀県では本校だけかと思います。

中村先生

12月入試の自己表現試験は、グループワークと個人のプレゼンテーションの2部構成になっています。グループワークでは、本校がSDGsにも力を入れているため、例えば森林伐採は是か否かといったテーマを与えます。なかなか意見がまとまらない話と言いますか、必ずしもどちらかが是でもないし、非でもない、完全にどちらかに振り切れないテーマです。

正解のない問いに対して、受験者たちが自分たちの意見を出したり、他の意見を聞いたりしながら、その意見を調整して自分たちの答えを導き出していくわけですが、そういった調整力が非常に重要になってきます。

自分のことだけではなく人の意見を聞くことも大事ですが、自分の意見を言わないのも駄目ですし、他の人の邪魔をしないことも大事です。そういった他人の意見と自分の意見を調整して解決に導いていく力を評価します。

その後の個人のプレゼンテーションでは、小学生時代に自分がこだわりを持って頑張ってきたことをプレゼンテーション形式で行ってもらう試験内容です。中には、タブレットを持ってきて画面をプロジェクターにつないでプレゼンする受験生もいます。手法はともかく、自分の言葉で自分の考えを語ることができる力、表現力を、試験のときは見るようにしています。

編集部

学力以外の部分も大切に判断されているということですね。

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルからのメッセージ

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバル(中学部)の制服を着た生徒たち

編集部

最後に、龍谷中学校・高等学校に興味をもったお子さまや保護者の方にメッセージをお願いします。

中村先生

一般的に公立中学校は生徒数が多く、すべての生徒に関わることが難しいケースもあります。しかし本校は、1学年1クラスという小規模校なので、教師みんなで生徒全員を見ているイメージです。教員が自分の専門分野をベースに指導し、生徒一人ひとりと深い関係を築いていると思います。

龍谷中学校・高等学校には、スピード感をもって、さまざまな視点で、さまざまなスキルを学べる環境があります。また、自分で目標に向かって進む「自走力」を育むことに重点を置いており、教師が伴走者としてサポートします。これからの時代をしっかりと生き抜きたいと考える人にとって最適な学校です。

久我先生

本校では、中高一貫「理数グローバル」など、他校にはないさまざまな取り組みを行っています。私たち教職員と一緒に、すばらしい6年間を過ごしませんか?もし本校に興味をもっていただけたのであれば、ぜひ一度ご見学いただき、学校の雰囲気を感じてみてください。

編集部

本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

龍谷中学校・高等学校の進学実績

龍谷中学校・高等学校中高一貫理数グローバルのプレゼン風景

2020年よりスタートした中高一貫「理数グローバル」は現在(2024年)5年目のため、まだ進学実績がありません。そのため、ここでは龍谷高等学校の進路状況を紹介します。

2023年度(2024年4月)実績としては、特別進学コースは、佐賀大学(医・医含)、長崎大学、大分大学、熊本大学、鹿児島大学、東京医科歯科大学などの国公立大学や防衛大学校、職業能力開発大学ほか難関私立大学にも多数合格しています。

文理進学コースは、佐賀大学、鹿屋体育大学、名桜大学、早稲田大学、中央大学、国士舘大学、武蔵野大学、日本大学、帝京大学、東京農業大学、同志社大学、関西学院大学、龍谷大学、京都女子大学、近畿大学など国立大学・難関私立大学への合格者を多数輩出しています。

総合コースは、早稲田大学、日本大学、中央学院大学、関東学院大、昭和音楽大学、淑徳大学、中京大学、龍谷大学、大阪体育大学、びわこ成蹊スポーツ大学、関西学院大学、関西国際大学、IPU・環太平洋大学、広島工業大学、東亜大学など難関私立大学・有名私立大学への合格者を多数輩出しています。

保育コースは、西九州大学、九州龍谷短期大学、西九州大学短期大学部、そのほか幼児教育系に進んでいます。

■進路実績(龍谷中学校・高等学校公式サイト)
https://www.sagaryukoku.ed.jp/jhsc/course/

龍谷中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校・高等学校の朝の礼拝

▲朝の礼拝

ここからは、龍谷中学校・高等学校の口コミを紹介します。実際に通学していた卒業生や保護者の声をまとめました。

(卒業生)基本的に進学校ですが、部活動も盛んで文武両道の学校だと思います。校則は厳しくありませんが、先生に注意されたり、乱れた格好をした生徒はほとんどいませんでした。クラスは一致団結して仲が良かったので、楽しい学校生活を送れたと思います。文化祭や体育祭も楽しかったです。

(卒業生)指定校推薦の枠がたくさんあるので進学には困らないと思います。中には有名私大もあります。とてもオシャレな制服で気に入っていました。カーディガンやダッフルコートも可愛いです。食堂はとてもおいしくて、購買にはスイーツもいろいろ売っています。

(卒業生)ICT教育は県内トップレベルだと聞きました。先生方はみんな優しかったです。部活動は運動系も文化系もたくさんあり、全国大会に出場するような強豪部もありました。勉強も部活も先生方のサポートがしっかりしており、自分の力を伸ばしやすい学校だと思います。

(保護者)1学年の生徒数が少ないので生徒一人ひとりに先生の目が行き届いていると思います。わからないところは徹底的に、細かいところまで熱心に指導していただけました。生徒たちはみんな仲が良く、和やかに過ごしていました。

龍谷中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人佐賀龍谷学園 龍谷中学校・高等学校
住所 佐賀県佐賀市水ヶ江3-1-25
電話番号 0952-24-2244
公式ページ https://www.sagaryukoku.ed.jp/jhsc/(中学校)
https://www.sagaryukoku.ed.jp/hsc/(高等学校)

※詳しくは公式ページでご確認ください。