“好き”を極める東海大学付属相模高等学校中等部の理念と取り組み|中高一貫校

独自の教育を実践する学校を紹介する本企画。今回は神奈川県相模原市にある共学の中高一貫校「東海大学付属相模高等学校中等部」を紹介します。

同校は、東海大学の付属校として、中高大一貫の教育システムを展開。生徒たちの「好き」をサポートすることを第一に考えながら、大学受験のための勉強ではなく、興味があることを、楽しみながら伸び伸びと学ぶことができる、独自の教育プログラムを実践しています。

今回は、そんな同校の建学の精神や教育理念、独自の取り組みについて、生徒募集対策室・事務局長の関根先生にお話を伺いました。

夢や興味を第一に考える東海大学付属相模高等学校中等部の教育理念

東海大学付属相模高等学校中等部の関根先生

▲取材にご対応いただいた生徒募集対策室・事務局長の関根先生

編集部

まずは、東海大学付属相模高等学校中等部の建学の精神についてお聞かせください。

関根先生

本校の建学の精神「若き日に汝の思想を培え、若き日に汝の体軀を養え、若き日に汝の智能を磨け、若き日に汝の希望を星につなげ」は、ほぼ全ての教室に掲示しており、本校理念の土台となっています。

4つ目の言葉にあるとおり、「希望を星につなぐ」ために、中等部から10年間の一貫教育を通して、しっかりと思想を培い、体力を養い、知恵を磨いていってほしいと考えています。

編集部

その精神のもとでさまざまな取り組みをされていると思うのですが、御校の教育において一番の特徴は何になるのでしょうか。

関根先生

多くの学校では大学受験が大きなテーマになっていますが、本校においては約8割が東海大学に内部進学するため、受験勉強に縛られず、生徒たちの夢や興味を第一に考えることができることでしょうか。

大学の4年間も合わせると、人生の中で一番多感である10年間になると思いますが、その中で思想を培いつつ、本当に自分の好きなものは何なのかを突き詰めていくことができるのです。私たち教員は、そうした生徒たちの“好き”を応援することが役割だと思っています。

もちろん、決して大学受験を否定するつもりはありません。ただ、本校は受験ありきの勉強ではなく、建学の精神で掲げている「思想」「体躯」「知能」を育み、希望を叶えるための学びを実践している学校です。

東海大学付属校ならではの教育プログラムとは

東海大学付属相模高等学校中等部のグラウンド

東海大学付属相模高等学校中等部では、東海大学の付属校という特徴を活かし、さまざまな取り組みを行っています。ここでは、同校が行っている「学園オリンピック」「東海大学理工系学部での体験講座」「ハワイ研修」についてお話を伺いました。

さまざまな才能を伸ばす「学園オリンピック」

東海大学付属相模高等学校中等部のトロフィー類と、内閣総理大臣賞を受賞した生徒

▲各分野の俊英が集い、成長していく同校。右は内閣総理大臣賞を受賞した生徒

編集部

最初に、東海大学の付属校ならではの取り組み「学園オリンピック」についてお聞かせください。

関根先生

東海大学の付属学校は、北海道から九州までたくさんあります。その中で、さまざまな付属生の才能を伸ばしたいということで始まったのが「学園オリンピック」です。

現在、国語、理科、芸術(音楽・美術)、ディベート、数学、英語、知的財産の8つの文化部門とスポーツ部門を開催しています。スポーツ部門に関しては高校生だけです。

オンラインで大学の教授の方々に自分の作品を見てもらったり、知的財産部門では発明品のアドバイスをもらったり、それぞれ興味のある分野の大学教授から直接指導を受けています。

編集部

「学園オリンピック」でのエピソードがあればお聞かせください。

関根先生

美術部門に参加して大学の教授から指導を受けた生徒が、全国書画展覧会の「画の部」で内閣総理大臣賞を受賞しました。

学園オリンピックで良い成績を収めることで、優先的に好きな東海大学の学部学科を選ぶことができるというメリットがあります。条件によっては奨学金の支給もあります。

編集部

スポーツ部門はオンラインというわけにはいかないので、これはキャンパスに集まって対戦したのでしょうか?

関根先生

以前は東海大学の湘南キャンパスに一堂に会して、3日間かけて開催していました。その分野に特化した生徒が集まってくるのでお互いに与える刺激は大きいはずです。

また、日本中に友達ができ、今でこそ違うところに住んでいたとしても、大学で再び出会えます。学園オリンピックでつながった絆が、大学以降も生きてくるというのは生徒たちにとって本当の喜びであると思いますね。

東海大学の理工系学部で、理系への興味喚起を図る講座が受講できる

編集部

御校では、東海大学の理工系学部教員の方々から学ぶ体験講座があるとお聞きしましたが、これについてお聞かせください。

関根先生

今、理系離れが懸念されていますが、本校の大学自体は理系の方が強いので、理系への興味喚起を目的としています。

昨年度のケースで言えば、中等部の生徒全員で東海大学の理工系学部に足を運び、午前中はさまざまな高度な設備を使って専門的な授業を受けました。ドローンや宇宙などテーマはさまざまです。午後は研究室の先生方にインタビューする企画で、少人数のグループで専門的な話を聞くことができました。その日は一日中、大学キャンパスで過ごしました。

東海大学理工学部で学ぶ東海大学付属相模高等学校中等部の生徒

▲東海大学理工系学部での体験講座

編集部

そうした取り組みは、実際に中等部の生徒さんが理系分野に興味を持つきっかけになっていますか?

関根先生

なっています。本校では130名程度が中等部から高校に上がり、高校から新たに440名程度の生徒が入学してきます。高校で理系文系に分かれますが、付属生の方が理系を選ぶ比率が高いです。

大学の優れた施設や知識を目の当たりにすると、イメージが湧くようで、中等部で体験することは意味があると思っています。

編集部

キャンパスの研究室に行くと、パンフレットやWebサイトで見るのとは違う実感が得られるわけですね。

関根先生

そうですね。入学してすぐの宿泊行事では、海洋学部がある静岡のキャンパスにも行きます。船を持っている学部は珍しいと思いますね。

系列校のハワイキャンパスで過ごす「ハワイ研修」

東海大学付属相模高等学校中等部のハワイ英語文化研修の様子

編集部

ハワイでの研修も御校ならではの取り組みだと思うのですが、こちらについてお聞かせください。

関根先生

これは中等部の卒業生を対象にした15日間の英語研修で、高校入学までの春休みを利用して実施します。昨年度、実に5年ぶりに実施したのですが、価値ある行事だと再認識しました。(取材は2024年5月中旬)

研修は外部の斡旋業者を介するものではなく、ハワイ東海インターナショナルカレッジ(HTIC)のキャンパスで過ごす、本校ならではのメリットを生かした独自のプログラムとなっています。ハワイ東海の教員が授業をし、ハワイ東海の施設に宿泊し、ハワイ東海のスタッフがサポートする学校行事なので、コスト面もセキュリティ面も恵まれていると思います。

編集部

ハワイ研修の具体的な活動について教えていただけますか?

関根先生

ハワイ東海大学のお世話になるとは言え、地元の方々とも接してほしいということで、到着して初日には現地の高校を訪問しますし、ファーマーズマーケットで朝食を摂る機会もあります。すぐには円滑にコミュニケーションをとれるわけではありませんが、まずは恐怖心を取り払うことからのスタートです。

基本的に、半日は授業で半日はハワイの文化や自然を体験するもので、最終日にジャパニーズカルチャーをハワイの方々に発表するというところにつながります。また、毎日フラダンスのレッスンがあり、これも最終日に披露します。

さらに、平和学習も盛り込んでいます。本校の修学旅行では広島を訪れますが、太平洋戦争を日本の立場から見るだけではなく、アメリカ側から見ることも必要です。グローバル教育の一環としてパールハーバーに行きます。歴史学にも重きを置いた、充実した15日間のプログラムとなっております。

ハワイ研修に出発する前、2週間くらいはしっかりと事前学習をするので、実質15日間以上の濃厚な内容だと思います。

東海大学付属相模高等学校中等部のハワイ英語文化研修の様子

▲研修風景。フラダンスでの文化交流や、茶道のプレゼンテーションも実施

編集部

ハワイ研修における生徒さんの反応や、行く前後で生徒さんに変化があれば教えてください。

関根先生

研修の最終日には卒業式のような「認定式」があるのですが、みんな帰りたくないと言って泣いています。やはり現地の方々との交流が楽しかったので名残惜しいのだと思います。

そして何よりも英語が本当に好きになって帰ってきます。行く前は不安を抱えている生徒が多いのですが、英語に対する恐怖心はなくなり、高校に入学してから英語に取り組む姿勢が変わったという話はよく聞きます。自由参加ではありますが、本校としてはこうした海外研修に一定の効果を実感しております。

東海大学付属相模高等学校中等部の部活動について

東海大学付属相模高等学校中等部の柔道部

▲全国大会で三冠に輝いた柔道部

編集部

東海大学付属相模高等学校中等部には強豪と言われる部活動が多くありますが、その中でも特に紹介したい部活動についてお聞かせください。

関根先生

2023年度、最も実績を残したのは柔道部です。中学柔道には日本一を決める大会が3つあるのですが、初めて三冠を取りました。高校生の三冠は過去にありましたが、中等部の三冠は本校史上初です。

編集部

そういった好成績を生み出す背景には、何があるのでしょうか?

関根先生

冒頭で言いましたように、本校では生徒の“好き”を応援したいと思っています。それはスポーツに限ったことではないので、本校には「部活さえやっていればいい」といった雰囲気はありません。そのため、運動部の生徒たちも勉強をがんばっていますし、行事にも参加します。そういったバランスが良い結果につながっているように思います。

近年は、日本中で部活動の見直しが盛んに行われていますが、本校では依然と変わらずに、本校教員がしっかりと指導しております。また、本校は私立としては珍しいのですが、土曜授業は月1回の実施であるため、土曜日も貴重な活動日となっています。

中学では初心者からでも相模原市の優勝を目指す、高校では全国大会出場を目指す、そして大学では日本一を目指す。生徒たちのレベルに合わせて段階的に追い求めるものも上がっていけば良いと考えております。

東海大学付属相模高等学校中等部の吹奏楽部

▲吹奏楽部

編集部

文化部も盛んだとお聞きしましたが、いかがですか?

関根先生

先ほどの学園オリンピックの話でも触れましたが、内閣総理大臣賞を取った生徒は美術部の所属です。これも日本一ですので、本校史上初の快挙であり、美術部も大きな成果を残した1年でした。

吹奏楽部は、神奈川県では金賞をとり、マーチング・吹奏楽・アンサンブルコンテスト、この3つで東関東まで進みましたので非常にがんばっていると思います。

文化部は積極的に中高との交流を図っており、中学生は高校生の先輩方から多くの刺激を与えてもらえる、非常に恵まれた環境だと思っています。

東海大学付属相模高等学校中等部からのメッセージ

東海大学付属相模高等学校中等部の学校生活のひとコマ

編集部

では最後に、東海大学付属相模高等学校中等部に興味を持ったお子さまや保護者の方にメッセージをお願いします。

関根先生

本校は「生徒の好きを一番に考えたい」というところに全てが集約されている学校だと思っています。今、さまざまなメディアで若者の自己肯定感が低い、幸せ充実度が低いなどと言われていますが、「好き」という感情は、自己肯定感や幸せの根底にあるものだと考えているので、好きなことは胸を張って言ってほしいと思っています。

仮に、今はまだ好きなことが見つかっていないのであれば、一緒に好きを探そう、一緒に好きを見つけようと言いたいです。中学高校で好きなものを見つけた結果、日本有数の総合大学である東海大学は、「好き」をもっと伸ばしてくれるはずです。そして11年目にその好きが仕事になっていれば素晴らしいと思いませんか?

本校は余裕のある時間と伸び伸びとした空間の中で、生徒たちが主体性を持って、自分の「好き」と向き合う学校です。中学受験を考えているお子さんは、一生懸命塾に通って勉強すると思うのですが、本校が求めるものは基礎学力の定着です。スタートラインに立てるだけの基礎学力さえあれば、それぞれが好きなコースを設定して、好きなペースで走っていってもらいたいと考えています。

編集部

生徒さんの「好き」を伸ばすことを念頭に、10年一貫教育を実践している御校独自の取り組みについてよくわかりました。本日は、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

東海大学付属相模高等学校中等部の進学実績

東海大学付属相模高等学校中等部の学校名の看板

東海大学付属相模高等学校中等部では、内部推薦制度により、卒業生の約8割が東海大学およびハワイ東海(HTIC)に進学します。また、付属推薦による進学者には、大学の入学金半額免除の適用もあります。

東海大学は全国にキャンパスを展開する総合大学であり、実に23学部62学科・専攻・課程を有しています。また、常に次代を見据えた新しい学部・学科も新設されています。

2023年度の東海大学への進路実績内訳としては、工学部52名、体育学部36名、文化社会学部30名、政治経済学部28名、情報理工学部23名、文学部22名、健康学部21名、医学部20名、建築都市学部19名、そのほかの学部104名となっています。

東海大学以外の大学に進学した生徒は107名です。内部進学に限らず、すべての生徒に寄り添いながら、すべての生徒の進路を全力でサポートしています。

■進路について(東海大学付属相模高等学校中等部の公式サイト)
https://www.sagami.tokai.ed.jp/senior/course/

東海大学付属相模高等学校中等部の卒業生・保護者の口コミ

東海大学付属相模高等学校中等部の学校生活のひとコマ

ここでは、東海大学付属相模高等学校中等部の卒業生や保護者の声をご紹介します。

(卒業生)中学・高校・大学の10年一貫校です。8割が内部進学で東海大学に進みます。受験のための勉強ではなく、自分はどうなりたいのか、将来は何をしたいのかをきちんと考えながら、自分のやりたいことをできる学校だと思います。

(卒業生)将来必ず役に立つ礼儀や立ち居振る舞い、きちんとした人間性を身につけることができます。校風はゆったりしていて、建学の精神がしっかりしています。この学校を卒業したことを誇りに思います。

(保護者)部活は文化系・スポーツ系ともに充実しています。私立でも少人数の学校だと部活数が少なかったり、先生と生徒の距離感が近すぎたりしますが、生徒と先生の距離感がちょうど良いと感じました。それでいて、熱心な先生が多いと思います。

(保護者)文武両道の学校で、きちんと挨拶ができる、自分の意見が言える、明るく元気な生徒が多いように感じました。先生方は、子どもたちのどんなに小さな揉め事や悩みに対しても早めに丁寧に対応してくれるので非常に心強く、安心して通わせることができました。

東海大学付属相模高等学校中等部の各施設

▲野球場や体育館、食堂、図書館など、施設も充実している

東海大学付属相模高等学校中等部へのお問い合わせ

運営 東海大学付属相模高等学校中等部
住所 神奈川県相模原市南区相南3-33-1
電話番号 042-742-1251
問い合わせ https://www.sagami.tokai.ed.jp/contact/
公式ページ https://www.sagami.tokai.ed.jp/

※詳しくは公式ホームページでご確認ください。