生徒の視野を広げる「立命館慶祥中学校・高等学校」のグローバル・シチズンシップ教育|中高一貫校

注目の学校を紹介するこの企画。今回取り上げるのは、北海道にある共学の私立中高一貫校「立命館慶祥中学校・高等学校」です。

立命館大学の附属校だからこその潤沢な教育資源を生かし、スーパーサイエンスハイスクール(※)の認定校として先進的な教育を行っています。また、道内屈指の進学校でもある同校では、中学入学から大学進学に特化したコースを設けています。
(※)スーパーサイエンスハイスクール:理科・数学や科学に関する先進的な研究を行う高等学校を指定する制度。文部科学省が認定する

そんな立命館慶祥中学校・高等学校の教育や校風について、中学校教頭の手代木俊一先生にお話を伺いました。

「世界に通用する18歳」を育てる立命館慶祥中学校・高等学校

立命館慶祥中学校・高等学校の手代木俊一教頭の写真

▲取材に応じていただいた、中学校教頭の手代木俊一先生

編集部

立命館慶祥中学校・高等学校の教育目標をお聞かせください。

手代木先生

学校目標は「世界に通用する18歳」です。この場合の世界とは、広く社会そのものを指しています。生徒たちが大人になって、さまざまな分野で活躍できる人間になってほしいという思いが込められています。

そのために、「チャレンジ精神に満ちた人」「社会の変化に対応して、自ら深く考えて行動する人」「グローバル・シチズンシップ(※)を備えた人」という3つの目標を掲げています。
(※)自身や自国の都合だけを考慮して物事を見るのではなく、地球市民の一員として広い視野をもって物事を捉え行動する人

「チャレンジ精神に満ちた人」とは、失敗を恐れずに困難に挑戦する粘り強さ、それを乗り越える強い意志やたくましさをもつ人のことで、「社会の変化に対応して、自ら深く考えて行動する人」とは、社会の変化や課題を的確に読み取る洞察力をもち、課題解決に向けて行動できる人を指します。

また、2023年度は「18歳が変わると世界が変わる」、2024年度は「世界と未来のすぐ近く」というキャッチフレーズも発信しています。本校の卒業生たちが世界中のさまざまな場所で活躍することで、いずれは世界を変えられる大きな力になっていくだろうというメッセージが込められています。

国内外での体験型研修を通して「グローバルな視点」を育む

立命館慶祥中学校・高等学校の中3ニュージーランドでの研修風景

▲中3の「ニュージーランド研修」では、現地の生徒たちと同じように学び、暮らします

編集部

中高の6年間を通して、さまざまな国内・海外研修に取り組んでいらっしゃいますね。

手代木先生

はい。本校の教育目標の一つ「グローバル・シチズンシップ」を育むための取り組みです。

中1は地元について知る「北海道研修」、中2は立命館学園の本拠地「京都」で、日本を知る「京都研修」を、中3は「ニュージーランド研修」を行います。

生徒たちにとって身近な北海道から世界へとフィールドを広げ、徐々にステップアップしていく仕組みになっています。

編集部

中1の北海道研修はどのような内容でしょうか?

手代木先生

畑作や酪農などが盛んな道東エリアで「20年後、30年後の未来を見てこよう」をテーマに、ICTやAI、ドローンなどのロボット技術を取り入れた「スマート農業」を行っている自治体を訪ねます。

更別村で行った研修では、国の交付金事業でもある「スーパーヴィレッジ構想」を学びました。村民全員にタブレットを配布してオンライン医療の提供を促進するなど、デジタル技術を活用して地域の課題解決に取り組んでいる実例に触れることができました。

自治体全体の取り組みと、そこに関わるさまざまな人たちの働く姿を見ることで、社会に出てからの姿をイメージしやすくする狙いもあります。

編集部

中2の「京都研修」は、どのようなテーマで行われるのでしょうか。

手代木先生

京都では日本文化について学びます。メインはさまざまな企業人や職人に、自らアポイントを取り付けてインタビュー取材をするというもので、伝統と未来の融合をテーマに取り組みます。伝統工芸を引き継ぐ職人や老舗の和菓子屋、特色ある取り組みを行っている企業など、京都だからこそ出会える人々に直接話を聞くことで、生徒たちの視野は大きく広がります。

立命館慶祥中学校・高等学校の中2京都研修での企業インタビュー風景

▲「京都研修」では、グループに分かれて企業にインタビュー取材を行います

全員参加するニュージーランド研究では、「ファミリーの一員」として3週間を過ごす

立命館慶祥中学校・高等学校の中3ニュージーランド研修でハカを披露する生徒たち

▲現地校の生徒たちとニュージーランドの伝統舞踊「ハカ」を披露

編集部

中3で実施される「ニュージーランド研修」についてお聞かせください。

手代木先生

ニュージーランド研修も生徒全員が参加します。ホストファミリー宅に1人でホームステイし、「ファミリーの一員」として3週間を過ごす、本校独自の実体験型の研修です。

ニュージーランドに到着した翌日から、現地の生徒と一緒に学校に通い、数学や歴史など、ニュージーランドの授業を受けます。現地の学校で生活する間、現地の生徒1名がバディとしてサポートしてくれます。

言語や習慣の違いを乗り越えてコミュニケーションが取れるようになる経験は、「世界」の壁を低くし、「海外で挑戦してみたい」という思いを抱くきっかけになるようです。また、家族と離れて過ごす3週間、友人たちと支えあって過ごすことにも意味があると思っています。

研修では、ニュージーランドの先住民族「マオリ族」について学ぶプログラム学習や1 day tripも行うのですが、そこで知った伝統舞踊「ハカ」を練習して、事後報告会のプレゼンテーションで披露する生徒もいました。

進路決定のきっかけにも!問題意識をもって取り組む高2の海外研修

立命館慶祥中学校・高等学校の高2ガラパゴスでの研修で生徒が撮影したウミイグアナの写真

▲ガラパゴスでの研修で生徒が撮影したウミイグアナ。珍しい生物を間近に観察します

編集部

高2の海外研修には、他校ではあまり例を見ないコースがありますね。

手代木先生

ガラパゴス、ボツワナ共和国、北欧、ネパールなど、本校独自のコースを用意しています。

編集部

具体的にはどのようなことを現地で学ぶのでしょうか。

手代木先生

慶祥の研修は、机上の学びではなく、本物にふれる体験(現地密着型海外研修)をします。例えばネパール研修のテーマの1つにある「国際関係」は、ネパールの問題や日本が抱えている課題を、「国対国」ではなく、「人対人」として、どう向き合っていくかを学びます。

事前学習では、政府高官や現地の大学生と繋がり、学術的な学びをします。それを受けて現地では、ストリートチルドレンの保護施設で一緒に素手でご飯を食べたり、ヒンズー教の聖地である川で行われている火葬を目の当たりにします。

他にも日々高くなるゴミの堆積場の匂いの中で平然と生活する人々の様子に戸惑いを感じさせました。それは、ゴミをゴミ箱に捨てるという文化がないネパールという国の風習・生活・宗教のリアルを体験することです。例えば、移民のインド系の子ども達から物乞いをされた時には「お金を渡すことが支援になるのか」を自分自身で考え、行動させます。「国対国」であった国際支援という大きなテーマを、生活レベルに落とし込んで地球市民としてどうかかわっていくかを考えることになります

これこそ慶祥が、常に生徒に問うている「誰のために学び、誰のために生きるのか」を具現化した研修です。最終的には、ネパール大使や関係者に政策提言というところまでつなげていきます。

編集部

研修に参加した生徒たちからはどのような感想が聞かれますか。

手代木先生

将来の進路を決定付ける経験ができたと感じる生徒は多いですね。例えばガラパゴスでの研修では、生物の多様性や進化の過程を目の当たりにします。研修を通して、環境問題に興味をもつ生徒や生物そのものに興味を引かれ、研究の道に進む生徒、獣医師を目指したいと考える生徒もいます。

過去にボツワナ共和国での研修に参加した生徒は「将来はアフリカ開発に携わりたい」と決心し、今は外務省に勤務しています。アフリカの現状を実際に見たことで、「自分にも何かできることがあるのではないか」と感じたそうです。

本校には全員参加の研修だけでなく、ハーバード大学研修プログラムなど、高校生はもちろんのこと、プログラムによっては中学生からも参加できる希望制の研修も多数あり、卒業するまでに3〜4つの研修に参加する生徒もいます。

立命館慶祥中学校・高等学校の高校の希望制海外研修先を示した地図

▲希望制海外研修先も充実しており、高校生から参加が可能

進学や学校生活を見据えたコース設定で「無駄なく・無理なく」希望進路をかなえる

編集部

中学校から大学入試を見据えたコース選択を行うそうですね。

手代木先生

中学には「一貫コース」と「SPコース」の2つのコースがあります。

「SPコース」は、東京大学や京都大学、医学部医学科を目指すための受験指導がメインです。模擬試験の成績を指導の柱にして教科指導を行うコースで、課題にも多く取り組みます。「一貫コース」では、学習に対する負荷をやや軽めにして、興味関心のあることに全力で打ち込むことで、自分の「得意」や「好き」を見つけ、立命館大学をはじめとする、さまざまな大学・学部へと学びをつなげていきます。

どちらのコースも、中学生の間は自律学習の習慣をつけることを重視しています。

高校3年生になると、これまでの2つのコースの区分けが「立命館コース」「難関大コース」「SPコース」と、希望進学先ごとに3つに分類されます。特に、「立命館コース」では「大学0年生」とも呼べるような高度な授業を受けられます。

編集部

進路を変更したいと考える生徒への対応はいかがですか。

手代木先生

中学校では英語や数学を中心に、中2までに、中学での学習内容を終了するように進んでいきます。ですが、一貫コース・SPコースとも授業進度は同じため、定期試験、模擬試験の結果や自分の進路目標を踏まえたうえで、コース変更が可能です。

コース変更のための選考は年度末に行います。中学までは「一貫コース」でのびのび過ごし、高校から「SPコース」へ変更する生徒もいますよ。自分がやりたいことや自分の進路意識に合わせて、学ぶ環境を生徒が選べるようにしています。

高度な学びと自律学習を後押しする、立命館慶祥中学校・高等学校の学習環境

編集部

自律学習への取り組みについてお聞かせください。

手代木先生

例えば課題などは、全員が同じものに取り組むスタイルだけでなく、個々にあったものを自分で選択して取り組めるようにしています。

全員共通の課題は極力減らし、学力がある生徒にはさまざまな検定への受験や数学オリンピックなどへの参加を促すなど、より発展的な学習をすすめます。学力に不安を感じている生徒には、問題集の解き直しをすすめるなど、基礎を固めることを目的に課題に取り組むよう指導します。

今は教員からのアドバイスで生徒が選択する形ですが、いずれは全てを生徒自身で決定して取り組める時間を設け、実践できるように指導していく予定です。

学習面だけに留まらず生活面でも、これまでの「こうすべき」を指示する教育ではなく、「どうすべきか」を生徒が自分で考えるように指導することで、まずは生徒が主体的に物事を考える姿勢を育んでいきたいとも考えています。

アクティブ・ラーニング専用棟「Co-Tan」が生み出す「生徒が自ら学ぶ環境」

立命館慶祥中学校・高等学校のアクティブ・ラーニング風景

▲「Co-Tan」での授業風景。生徒同士で相談しながら課題に取り組みます

編集部

立命館慶祥中学校・高等学校の「Co-Tan」とはどういった施設ですか。

手代木先生

2019年に完成したアクティブ・ラーニング専用の学習棟です。天板がホワイトボードになっている机がある教室や、イスのない教室など、グループワークに適した教室がそろっています。可動式の間仕切りがあり、必要に応じて教室の広さを変えられるなど、大人数でのディスカッションやプレゼンテーションにも対応できるようになっています。

編集部

「Co-Tan」では、どのくらいの頻度で授業が行われるのでしょうか。

手代木先生

教員や教科にもよりますが、私が担当している数学では週の半分くらいは「Co-Tan」で授業を行っています。生徒同士で直接話し合いや教え合いができるので、より主体的に取り組む生徒が増えているように思います。まず授業中に寝るということがなくなります(笑)。

スーパーサイエンスハイスクール認定校である本校では、理科実験室などの先進的な施設や器具が充実していることはもちろんですが、「Co-Tan」の完成で、より主体的かつ深い学びへ発展すると考えていますと考えています。

「好き」を最大限に活かせる立命館慶祥中学校・高等学校の校風

立命館慶祥中学校・高等学校には、自分の「好き」を生かして、校内外で活躍する生徒がたくさんいます。そして、そんな生徒たちに寄り添い、好きなことに熱中する姿勢を応援し背中を押す雰囲気があるといいます。

立命館慶祥中学校・高等学校の個性あふれる生徒たちやその取り組みについてお話を伺いました。

生徒の挑戦を応援!「得意」を伸ばすチャンスと環境がそろう

編集部

正課の取り組み以外にも、さまざまなことにチャレンジしている生徒が多いそうですね。

手代木先生

はい。自分の好きなことや興味関心のあることが明確な生徒が多いのも本校の大きな特徴だと感じています。お互いに熱中できる何かがあるからこそ、生徒同士も波長が合うようです。

学校としても、生徒たちが得意なことを伸ばすためのチャレンジには、惜しみなくサポートをしています。

編集部

生徒たちのチャレンジについて具体的なエピソードや成果はありますか。

手代木先生

最近では、MATLAB(※2)を使用して資料分析した成果を発表する「MATLAB EXPO」のプレゼンテーション部門で、自然科学部のロボット班の高2の生徒が全国1位を獲得したことでしょうか。
(※2)トヨタ自動車の自動運転システムなどにも使用されている数値解析ソフトウェア

本校の小学生向けプログラミング教室「Rits Kids Science」でもご協力いただいている団体「e-kagaku」と連携し、優秀な生徒には本格的な科学体験ができる機会が与えられています。この生徒は、成層圏に人工衛星を打ち上げての周辺環境の調査や、潜水艦で琵琶湖の水質調査に取り組んでいました。その結果をMATLABで解析し、「MATLAB EXPO」への参加につなげたようです。

そのほかにも、読書好きな生徒たちの文学作品を発表する場として、文芸誌を発行し配布する機会があったり、生徒の学びにつながる学外イベントなどへの参加を呼びかけたり。教員がファシリテーターとなって、実際にさまざまなチャンスの場を設け、アナウンスもしています。

編集部

環境が整うことでチャレンジへのハードルが下がるのですね。

手代木先生

そうですね。さらにいうと、さまざまな趣味・趣向の生徒がいるので、ほかの生徒が好きなことに熱中することに対して寛大といいますか、暖かく見守る雰囲気があります。だからこそ、誰の目も気にせず安心して好きなことに取り組める環境なのだと思います。

例えば本校にはバスが大好きで、日々バス通学の生徒のために自主的に整列誘導をしてくれる生徒がいます。運転手の方々ともすっかり打ち解けていて、バスのダイヤのみならず、お一人ひとりのシフトまで覚えているようで、今やバス会社公認の存在です。

また、その活動に賛同する「同志」のような生徒もいて、周りの目を気にせず一緒に取り組む姿も本校ならではだと思います。

立命館慶祥中学校・高等学校の生徒によりバス誘導の様子

▲雨の日も雪の日も、登下校時には駅のバス停留所に立つ生徒の姿が

手代木先生

日本の社会の改善点として、何か一つのことに深く傾倒していると、少し変わった人という目で見られる風潮があると思います。しかし、本校でなら、徹底的に「好き」を行動に移すことができます。

立命館慶祥中学校・高等学校からのメッセージ

編集部

最後に、私立中学受験を考えているお子さんや保護者の方々にメッセージをお願いします。

手代木先生

立命館大学の附属校ということもあり、大学の学びに触れる機会も多く教育資源が豊富です。だからこそ本物にふれ本物に学ぶ機会がたくさんありますし、本校ならではの大きなチャレンジも数多く用意されています。

また、個性豊かな生徒がたくさんいる本校でなら、必ず刺激的な毎日を送ることができるでしょう。今、心のうちにやりたいことや挑戦したいことを秘めている人も、まだ決まっていない人も、ぜひ本校の扉を開いてほしいと思います。

編集部

ありがとうございました。

生徒のチャレンジを後押しする校風や大学の附属校だからこその充実した学習環境が、生徒の視野を広げ、世界で活躍できる真のグローバル・リーダーを育てることにつながるのだろうと感じました。立命館慶祥中学校・高等学校から羽ばたく18歳たちの活躍が、今からとても楽しみです。

立命館慶祥中学校・高等学校の進学実績

立命館慶祥中学校・高等学校は、立命館大学の附属校でありながら、東京大学、京都大学、北海道大学などの有名国公立大学や医学部医学科への進学が目覚ましく、2023年度はのべ44名が医学部へ合格しました。

立命館大学、立命館アジア太平洋大学への進学が全体の半数、早稲田・慶應・上智・東京理科・ICU・GMARCHなど有名私立大学への進学も目立ちます。

立命館慶祥中学校・高等学校の卒業生・保護者・在校生の声

ここでは立命館慶祥中学校・高等学校の卒業生・保護者・在校生の声をお届けします。

<在校生>55,000冊の本があるメディアセンターや理科室が4教室あり、施設も綺麗で充実しています。

<在校生>文武両道の学校です。野球部やラグビー部などの運動部はもちろん、競技かるた部、自然科学部など文化部も活躍しているし、個人活動をしている人や自分の好きを極めている人もいて、選択肢がたくさんあります。

<保護者>漢字や英単語、数学などの小テストに加え、宿題や資格取得対策など勉強面での取り組みが充実。親としては安心です。

<保護者>先生方に熱意があり、生徒同士が切磋琢磨しあう環境です。勉強だけでなく、海外研修などを通して内面の人間力もしっかりと成長させてくれます。

<卒業生>海外研修の経験が大学受験に活きる!立命祭など盛り上がるイベントがたくさんある。自由度が高く、自分がやりたいことに挑戦できる! ※公式サイトより一部抜粋

きめ細かな学習フォローはもちろん、ハイレベルな研修、施設の充実などを評価する声が多く聞かれました。

立命館慶祥中学校・高等学校へのお問い合わせ

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住所 北海道江別市西野幌640-1
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