帰国生と自然体で会話する日常。「大妻中野中学校・高等学校」のグローバル教育|中高一貫校

独自の教育を実践する注目の学校を紹介する本企画。今回は、東京都中野区にある中高一貫の女子校「大妻中野中学校・高等学校」を紹介します。

同校は2002年から帰国生入試を開始しており、今では在校生の10%以上が帰国生です。帰国生と国内生が自然体でコミュニケーションがとれる環境の中で、いつの間にかグローバルな感覚を身につけることができます。

また、クラブ活動が盛んなことも特徴のひとつです。ほとんどの生徒がクラブ活動に参加し、自分の居場所を見つけ、楽しい6年間を過ごしています。

今回は、そんな大妻中野中学校・高等学校の取り組みやクラブ活動、学校生活の様子について、2024年4月に学校長に就任された諸橋校長と広報担当の篠原先生にお話を伺いました。

「自分」と「他人」のために生きる大妻中野中学校・高等学校の教え

大妻中野中学校・高等学校の諸橋隆男校長

▲大妻中野中学校・高等学校の諸橋隆男校長

編集部

諸橋先生は2024年4月に大妻中野中学校・高等学校の学校長に就任されたそうですね。1ヶ月ほど経ちましたが、率直な感想としてはいかがですか?(取材は2024年4月下旬に実施)

諸橋先生

いろいろとやらなければいけないことが多くあり、職責の重さを感じています。これまでは入試広報の立場で外部向けにお話しする機会も多かったのですが、やはり立場が違うので、同じことを言うにしても学校長という肩書きを考えて言葉を選ぶようになりました。

編集部

就任にあたっての想いをお聞かせください。

諸橋先生

現在、東京に限ったとしても私立の中学校に入学するのは全体の2割程度なんですよ。つまり、ある意味では恵まれた環境にいるわけです。そのことについて、決して当たり前のことではないと理解してほしいですね。

中学・高校の6年間で自分が成長し、自分自身の幸せを掴むことは大前提ですが、隣の人、周りの人を見る余裕があるはずということを、まず生徒に伝えようと思っています。

フランスに『ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)』という言葉があります。貴族階級はただ身分が高いだけではなく、それを人に与えることも必要という意味です。

時代が異なるのでそのまま伝えてもピンとこないかもしれませんが、要は学校での学びを通して自分が幸福になり、そして人のため、社会のために貢献できる人間になってほしいということです。それこそが建学の精神「学芸を修めて人類のために Arts for Humankind」につながると考えています。

大妻中野中学校・高等学校のグローバル教育

ここからは広報担当の篠原先生にも加わっていただき、大妻中野中学校・高等学校の特徴について、中でもグローバル教育について具体的に伺っていきます。

全校生徒の10%以上が帰国生。新年度以外の受け入れも柔軟に対応

大妻中野中学校・高等学校の図書室

▲4万冊以上の本を蔵書している図書室。英語のほかフランス語の本も揃っている

編集部

御校は帰国生が多く、全体の10%以上が帰国生だとお聞きしました。

篠原先生

そうなんです。全校生徒の10%以上が帰国生というのは、都内の女子校の中でもかなり多いほうだと思います。

今でこそ帰国生を受け入れる学校はたくさんあり、帰国生入試の機会も増えましたが、本校はかなり前から実施していました。2001年に起きたアメリカ同時多発テロの影響で、日本の企業が一斉に引き上げて帰国することになったのですが、当時は帰国生を受け入れる学校がほとんどありませんでした。

それに対して当時の校長が「海外で生活していた子どもたちを迎えられるような学校がなければいけない」と考え、2002年から帰国生入試がスタートしたという経緯です。

近年のコロナ禍でも同じ状況となりましたが、ご家族の予定で帰国が遅くなったり、逆に予定ではもっといるはずだったのに帰ってこざるを得なくなったりと、帰国生にはいろいろな背景があります。しかし、本校ではいかなる状況であっても柔軟な姿勢で対応するよう、心がけています。

編集部

その姿勢は今でも変わっておらず、幅広く受け入れていらっしゃるのですね。

篠原先生

はい。海外帰国生入試だけではなく、編入も柔軟に行っています。我々はほぼ毎学期に編入試験を行っていて、学期の途中で転出していく生徒もいれば、逆に帰国する生徒もいますね。

今年のケースで言えば、3月に急遽帰国が決まり、私立校を希望していた生徒がいました。3月になるとほとんどの学校で入試は終わっていますが、本校では編入試験という形で対応し、他の生徒と一緒に入学式を迎えることができました。

独自のカリキュラムを通し、帰国生と国内生が刺激し合って成長する

大妻中野中学校・高等学校の諸橋校長と広報担当の篠原先生

▲取材に対応いただいた諸橋校長と広報担当の篠原先生

編集部

帰国生が多い大妻中野中学校・高等学校では、どのような取り組みを通して生徒たちが交流していくのでしょうか?

篠原先生

一番特徴的なものは「フロンティア・プロジェクト・チーム」という本校独自の特別カリキュラムです。これは授業でもクラブ活動でもない、希望者参加制の自主学習チームで、土曜日の放課後に中学生も高校生も一緒に集まります。帰国生と国内生の壁だけでなく、学年の壁もありません。

具体的には、チーム内でいくつかのグループに分かれ、自分たちで課題を設定し、自分たちでリサーチし、解決策を模索し、発表会やワークショップの企画運営、ボランティア活動などにつなげていきます。

先生はサポート役に徹しており、課題は身近な地域社会のことからSDGsなど世界規模での問題まで幅広く、生徒自らが主体性を持ってグローバルな視点で社会問題を考える機会として役立っています。

編集部

印象に残っているエピソード等があればお聞かせください。

諸橋先生

フロンティア・プロジェクト・チームの活動やクラブ活動などで自然に交流が深まることで、帰国生も一般入試の生徒も刺激を受け、どんどん変わっていくんです。それが印象に残っていますね。

例えば帰国生に話を聞くと、「今まで英語を話せないふりをしてきた」「先生に指されるとわざと下手な発音で答えた」という生徒もいます。ところが本校に入学すると、帰国生を受け入れてきた歴史もあるので教職員も生徒も特別視しないので、いわゆる「普通」でいられるわけです。

そうした当たり前の日常の中で、帰国生は英語を当たり前に話すようになる。そして他の生徒も「こんなに英語を話せるのはやっぱりすごいことだな」と気づくんです。ある瞬間に英語に目覚めると言いますか、帰国生が大学の先生と平気で英語で会話するのを見て、スイッチが入って勉強を始めるというケースもありますね。

「グローバルリーダーズコース」で意識が変わり海外大学に進む生徒も!

大妻中野中学校・高等学校のラウンジ

▲放課後のイベントや保護者会にも使用されるラウンジ(正式名称:COSMOSアゴラ)

編集部

大妻中野中学校・高等学校のグローバル教育について、篠原先生からもエピソードを伺いたいです。

篠原先生

わかりました。ちょうど私が本校に赴任したあたりの2016年に世界で活躍する女性を育成する「グローバルリーダーズコース」ができたのですが、そこからの変化についてぜひ話したいですね。

今でこそ本校のグローバル教育は定着していますが、開設当初はまだ認知されていませんでした。そんな中、一般受験で入学していた生徒たちがグローバルリーダーズコースに入りたいということになったのです。入学時は特に英語に興味があったわけではなかったと思うのですが、このコースに入り、将来が変わりました。

例えば、ある生徒は英語に強く興味を持つようになり、ついには文部科学省が主催する海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の選考を通過して留学したのです。本人も自分がこんなにも英語にのめり込むとは思っていなかったと言っていましたね。

また別の生徒は、このコースでの学びを経た結果自分で理系に進む選択をして、「世界で活躍する医者になりたい」とハンガリーの大学の医学部に進学しました。もともと医学部志望だったのですが、帰国生とともに学ぶことによって刺激を受け、世界に目を向けるようになったのです。

グローバルリーダーズコースが導入された当初は、英語そのものや世界に出ていくことにそこまで興味がなかった生徒たちが、どんどん刺激を受けたということが特に印象に残っています。帰国生もそうでない生徒もだんだん入り混じって、刺激し合って学校生活を謳歌しているのが、大妻中野の特徴だと思います。

帰国生や留学生を支援する「グローバル・センター」

大妻中野中学校・高等学校のエントランスから続く通路

▲2011年に建てられた校舎はとてもキレイに維持されている

編集部

御校には、留学や進路をサポートする部署があるとお聞きしました。

篠原先生

そうなんです。グローバル教育全般を支援する取り組みとして、2020年より「大妻中野グローバル・センター」を開設しました。留学に関しても一手に引き受けており、世界8カ国・20校以上の学校と直接提携しています。

留学する生徒は外部の留学斡旋業者を頼るのではなく、本校で独自に作っているプログラムを活用します。また、センターにはネイティブの専任職員がおり、海外大学の出願や入学の手続きなどの進路相談にも対応しています。

海外からの帰国生は出入りが多く、一度転校して出ていって再び戻ってくるケースもあります。編入するにしても時期によっては大学受験にも関係してくるので、個別にパッケージを作って対応しています。

編集部

帰国生が多く在籍しており、その環境に刺激を受けて留学するなど、新しい道を開いていく生徒も多いという御校の特徴についてよく理解できました。

大妻中野中学校・高等学校のクラブ活動について

大妻中野中学校・高等学校合唱部の活動風景

▲中高合わせて180名が所属する合唱部の活動風景

編集部

続いて、大妻中野中学校・高等学校のクラブ活動についてお伺いします。特徴的なクラブはあるでしょうか?

諸橋先生

ぜひご紹介したいのは合唱部で、NHK全国学校音楽コンクールの金賞・内閣総理大臣賞を始め、数々の受賞実績があります。ただ、実力があるのは確かなのですが、本校の合唱部が素晴らしいと思うのは、おごらず、謙虚であり、全生徒に愛されているところです。

彼女たちがよく言うのは「感謝」という言葉です。それは口先だけではなく、心の底からの想いであることは普段の言動からもうかがえます。賞を取ることも大切ですが、部員一人ひとりが伝統あるクラブであろうとする品位があり、それこそが本校の誇りだと思っています。

編集部

合唱部員のみなさんは周りに感謝の心を持っているので、生徒みんなが「合唱部は自分たちの学校の代表だよね」と自然に思うということですね。

大妻中野中学校・高等学校のクラブ活動の予定が書かれたホワイトボード

▲クラブ活動の予定が書かれたホワイトボード。新入生歓迎期間のため賑やかな書き込みが目立つ

大妻中野中学校・高等学校チアリーディング部の活動風景

▲チアリーディング部の活動風景

編集部

その他のクラブについても、ぜひお聞かせください。

篠原先生

運動部と文化部合わせて、本校には30近くのクラブがあります。入部は義務ではありませんが、ほとんどの生徒がクラブ活動に参加しています。

本校の部活動は、先ほどの合唱部やチアリーディング部、ダンス部など華やかなクラブがクローズアップされがちです。ただ、他にも頑張っているクラブはたくさんありますよ。例えば箏曲部(琴)は部員数が多く、いろいろなところで演奏しています。

どのクラブも堅実に練習を重ね、生徒一人ひとりが目標に向かっているので、それぞれの魅力があります。ときには苦しいことがあると思いますが、楽しみながら活動を行う中で自分たちの居場所を作っている。それが本校クラブ活動の特徴だと思います。

大妻中野中学校・高等学校バスケット部の活動風景

▲バスケット部の活動風景

大妻中野中学校・高等学校からのメッセージ

大妻中野中学校・高等学校の校舎外観と校名看板

▲大妻中野中学校・高等学校の校門

編集部

最後に、大妻中野中学校・高等学校に興味を持ったお子さまや保護者の方に向けてメッセージをお願いします。

諸橋先生

帰国生が多い本校では、海外の経験があり英語が堪能な生徒と一般入試で入った生徒の壁がなく、自然体でコミュニケーションがとれる、本当の意味でのグローバルな環境が整っています。

中学受験は素晴らしい経験になると思いますが、どこを選ぶかを決めるのはやはりお子さまの感性です。例えば同じように見える女子校であったとしても、最後はお子さまが何か感じるものが必ずあるはずです。そうしたお子さまの意見を尊重してあげてほしいと思います。

そして、本校に興味を持っていただけたなら、ぜひ説明会に足を運んでいただけると非常に嬉しいです。

編集部

今回取材に伺って、生徒の皆さんの明るく弾けるような笑顔が印象に残りました。英語に取り組んで海外を目指す、クラブ活動で結果を出すなど生徒によって目標はさまざまだと思いますが、楽しく学校生活を送っていることは共通しているのですね。本日はありがとうございました!

大妻中野中学校・高等学校の進学実績

大妻中野中学校・高等学校では、ほとんどの生徒が4年生大学に進学しており、国立大学や難関私立大学の合格実績も数多くあります。

2023年度は217名のうち206名が4年生大学に進学。埼玉大学やお茶の水女子大学、東京藝術大学などの国立大学へ入学した生徒もいます。また、早稲田大学、慶応大学、上智大学、東京理科大学をはじめ、様々な難関私立大学の合格者を輩出しており、付属校である大妻女子大学への進学割合は14.3%で31名でした。全体の78.3%の生徒は大妻女子大学以外の4年制大学に進学しています。

また、早くから帰国生入試を開始するなどグローバル教育に取り組んでいることもあり、海外の大学を受験する生徒も多く、2023年度はのべ15名が合格し、5名が国公立を含む海外大学に進学しています。

■進路実績(大妻中野中学校・高等学校公式サイト)
https://www.otsumanakano.ac.jp/guidance/results/

大妻中野中学校・高等学校の卒業生の声

ここでは、大妻中野中学校・高等学校の卒業生の声を紹介します。

分からない問題があれば放課後に残って教えてもらえるなど勉強のフォロー制度が充実しています。

中高一貫校なので6年間ずっと一緒に過ごせる仲間ができ、楽しい学校生活を過ごすことができました。

校舎がとても綺麗でエレベーターもあって都会的です!

生徒のことを考えてくれる先生がたくさんいる学校だと思います。

海外から編入しました。生徒も先生も良い人ばかりで充実した学校生活を過ごすことができました。

諸橋先生がお話しになっていましたが、学校を見学した方のアンケートで一番多いのが「とにかく学校生活が楽しそう」というものだったということです。生徒の皆さんの感想を見ても、学外の声を見ても、楽しい6年間が過ごせる学校だということがわかりました。

大妻中野中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 大妻中野中学校・高等学校
住所 東京都中野区上高田2-3-7
電話番号 03-3389-7211(代)
問い合わせ先 https://www.otsumanakano.ac.jp/
contact/
公式ページ https://www.otsumanakano.ac.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください