奈良学園中学校・高等学校の航空写真

「奈良学園中学校・高等学校」は豊かな自然で「科学に強い生徒」を育てる|中高一貫校

ぽてんをご覧の皆さんに、全国の個性豊かな学校を紹介するこの企画。本記事では、奈良県大和郡山市にある私立の中高一貫の共学校「奈良学園中学校・高等学校」にインタビューを実施しました。

同校は広大な敷地に里山を有しており、豊かな自然の中で学べる環境が整っています。また、その里山を先進的な探究学習のフィールドとしても活用していることもあり、平成24年度からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)として指定されています。

今回は教頭の上原朋之先生とSSH部・部長の原孝博先生に、同校の里山を利用した探究学習について詳しくお話を伺いました。

豊かな人間力の育成を目指す「奈良学園中学校・高等学校」

奈良学園中学校・高等学校の校舎

編集部

初めに、奈良学園中学校・高等学校の建学の精神や校訓について伺えますでしょうか。

上原教頭

建学の精神は「次代の社会を担い、世界に雄飛し、国際社会に貢献できる有為な人材の養成」で、校訓は「至誠力行(しせいりょっこう)」です。「至誠力行」とは物事に誠実に向き合って、何事も最後まであきらめることなくやり遂げる強い精神力を意味しています。

また、本校は1979年の開校以来、未来を創造する豊かな人間力を持った人材を育成することを目指し、さまざまな教育に取り組んでいます。

編集部

学校生活やカリキュラムにおいて、「豊かな人間力」をどのように養っているのか教えてください。

上原教頭

本校の定義する人間力とは「学力、自主性、協調性、体力」の4つをバランスよく兼ね備えることです。これらを育むために、学校のさまざまな活動や行事が行われます。例えば、体育祭は体力だけでなく自ら頑張っていく自主性や周囲と協力し合う協調性も育てる場です。

こうした人間力は社会に出て幸せに暮らしたり、社会に貢献したりするために必要な力です。ですから、私たち教員は、日頃から生徒の行動や発言を注意深く見守り、必要なときには指導をしています。

編集部

学校生活でその成果を感じることはありますか。

上原教頭

中学生から高校生になったときに大人の対応ができるようになっていて、成長を感じることがあります。また、卒業生がたくましく社会で頑張っていると知ったときには、私たちの教育は間違っていなかったと実感します。

奈良学園中学校・高等学校の教頭の上原朋之先生

▲教頭の上原朋之先生

広大な里山を活かした「奈良学園中学校・高等学校」の探究学習

奈良学園中学校・高等学校の森の教室

▲豊かな里山を活用した森の教室で環境教育を行っている

編集部

次に、奈良学園中学校・高等学校で実践している探究学習について伺えますでしょうか。

原先生

本校は広大な里山を活用した環境学習に力を入れており、平成24年度からはスーパーサイエンスハイスクール(※)にも指定されました。そのため、探究学習においても、自然に触れながら課題発見力や探究心を養っています。
(※)先進的な理数教育を実施する高等学校・中高一貫教育校で、文部科学省に指定されたもの

環境学習をカリキュラムに組み込んでいるほか、課外活動組織である「矢田の丘里山探究クラブ」を設立し、生徒が自分の興味を探究できる場を提供しています。また、他のスーパーサイエンスハイスクールや環境活動を行っている学校と連携して同じテーマで研究を行うなど、生徒たちは他校の生徒とも協力しながら大きな探究学習に取り組んでいます。

編集部

具体的にはどんな学習をしていますか。

原先生

一例としては、里山の木を伐採し、その処理方法を探究する活動を行っています。里山はおよそ30年間隔で木を伐採して手入れをしなければほとんど成長しない森になってしまうのですが、本校の里山も手入れが必要な時期にさしかかっています。そのような状況の中で、伐採した木を有効利用する手立てはないものか考えたところ、木質バイオマス発電の研究ができないかと模索しています。現在は、まずはこれらの木材を炭にすることで循環利用ができないかを考えており、これも探究対象となっています。

普段の生活では、里山や森と自分たちの暮らしがどのように関わっているのか意識することはほとんどないと思いますが、こうした探究学習を通じて、生徒たちは環境と自分たちの生活のつながりを実感できます。

また、他校と連携している理由は、周囲の人を巻き込んで協力することを学んでほしいからです。将来、環境問題に限らず、何か大きなことを成し遂げるときに、周りの人、もちろん日本人だけではなく、世界の人たちとも繋がることを意識してほしいと考えています。

奈良学園中学校・高等学校のSSH部 部長の原孝博先生

▲SSH部 部長の原孝博先生

編集部

これまでの探究学習で、印象に残っているものがあれば教えてください。

上原教頭

探究学習では、失敗を含む多様な経験を積ませることも目的のひとつで、そのため生徒の自主性を重視しています。自主性に任せていると面白いこともあって、あるとき棚田で稲作をしているエリアに水が供給できないという問題が起きました。

そこで生徒たちが地下水を掘り当てようと言い出しました。生徒たちが調べてみると地中に電気を通して、水のありかを調べる研究があることがわかり、たまたま本校のOBが京都大学で研究しているテーマだということもわかりました。そこで、OBに実験器具を借りて自主的に地下探査を始めたんです。1年ではなかなかデータが集まらず、後輩に引き継いでいって、3〜4年後にはついに水を掘り当てました。

奈良学園中学校・高等学校の生徒が井戸をつくっているようす

今では井戸にして、太陽光パネルも設置し、モーターで水を汲み出して水を棚田に供給できるような仕組みができました。生徒たちがやりたいことから始めて、成功も失敗もたくさん経験していく中で、仲間や後輩と協力し合い、成長していく。そのような経験を学校でたくさん積ませたいと思っています。

編集部

里山の環境を利用できる、奈良学園中学校・高等学校ならではの活動ですね。現在はどのような探究を進めていらっしゃるのでしょうか?

原先生

生徒発案で里山の使われていない範囲を整備して棚田を復元し、いろいろな作物を育てるプロジェクトを進めています。生徒たちは作物の生育に適する環境などを自分たちで調査し、独自の方法で水路を作り、水捌けも考えながら畑づくりに取り組んでいました。全て自分たちで調べて進め、とても頑張っているので、なんとか収穫までたどり着いてほしいですね。

ベトナムの農村への研修で、持続可能な未来について考える

奈良学園中学校・高等学校で実施しているベトナムドゥンラム村での研修の様子

▲ベトナムドゥンラム村での研修の様子

編集部

ほかにはどのような取り組みをしていますか。

原先生

奈良学園中学校・高等学校では中学1年生から高校1年生まで継続して、環境学習のカリキュラムを構築しています。各学年での学びを通じて、生徒は環境問題について考えるようになります。

中学1年生の夏には大学の先生による講義を受け、自然保護の基本概念、すなわち自然を適切に使い循環させながら守る方法を学びます。

高校2年生では、SSHの授業を特に先進的に行う「SS発展グループ」の生徒が、これまでの学習の集大成として、ベトナムへ研修に行き「持続可能な生活」を学びます。ベトナムの農業や農村の生活を体験することで、今後人口が減少していく日本でどのように持続可能な未来を作っていくかを考えるきっかけを提供しています。

ベトナム研修で行うべトナムバビ農園での農村体験

編集部

ベトナム研修に行った生徒の反応や変化についてはいかがでしょうか。

原先生

まず、ベトナム研修では普段の旅行では経験しない環境を体験するので、新鮮な驚きを感じるようです。農業を基盤とした生活を通じて、現代の便利な生活を見直すきっかけにもなっています。これらの経験は進路にも影響を与え、環境や農学により関心を持つ生徒が多いです。

編集部

奈良学園中学校・高等学校は里山を有するなど豊かな自然環境に恵まれていますから、もともと環境や農学などの分野に興味のある方の入学も多いのでしょうか。

原先生

そうですね。本校では小学生対象の科学教室「奈良学塾」を開催しているのですが、それらのイベントへの参加をきっかけに入学する生徒もいます。とくに夏の「奈良学塾」では里山での植物や昆虫の採集をテーマとしているので、経験した生徒は入学後も科学部や「矢田の丘里山探究クラブ」にも積極的に参加していますね。

奈良学園中学校・高等学校からのメッセージ

編集部

最後にぽてん読者にメッセージをお願いします。

上原教頭

奈良学園中学校・高等学校では受験勉強だけでなく、さまざまな体験を通じて深く考える力を養うことを重視しています。社会に出たときに必要な力は、教室や教科書だけでは学べないことも多いため、多くの実体験の場を用意しています。

本校では、授業を通して得た知識を応用した実験や、クラスや部活動の友達との関わりなど、多様な経験を大事にしつつ、受験勉強も頑張ることを目指しています。そのような環境で成長したい方や色々なことに挑戦したい方は、ぜひ本校にご入学ください。

編集部

御校の自然豊かな環境も、多様な体験をするのに適していると感じます。本日はありがとうございました。

奈良学園中学校・高等学校のリレーションブリッジ

▲ガラス張りの渡り廊下「リレーションブリッジ」

奈良学園中学校・高等学校の進学実績

奈良学園高等学校の2年生の勉強合宿

▲高校2年生になると、勉強合宿も実施しています。

奈良学園高等学校では、多くの生徒が難関の国公立大や私立大学に進学しています。令和6年は国公立大学に128名(うち、医学部医学科に11名)、早慶上理(※)に15名が合格しています。
(※)難関大「早稲田大学」「慶應義塾大学」「上智大学」「東京理科大学」をまとめた名称

進路に合わせたカリキュラムとていねいな指導、自習しやすい環境づくりの成果と言えそうです。

■合格実績(奈良学園中学校・高等学校公式サイト)

https://www.naragakuen.ed.jp/proceed/achievement.html

奈良学園中学校・高等学校の屋上庭園

▲見晴らし抜群の屋上を持つ同校。開放的なこの屋上でテスト勉強する生徒もいます。

奈良学園中学校・高等学校の卒業生・保護者の口コミ

奈良学園中学校・高等学校のコミュニティスペース

▲職員室に隣接するコミュニティスペース。生徒からの質問対応などに利用されている

ここでは、奈良学園中学校・高等学校の卒業生や保護者の声を紹介します。

(卒業生)奈良学園は、中学から大学受験を見据えた授業内容でした。例えば、中学の理科で学ぶ物理分野では、高校の物理に通じる考え方を学習。早い速度で効率良く学べる授業で、受験が近づくと入試の演習問題に取り組む時間をたっぷり確保してもらえたことも良かったです。先生が教育熱心で情熱的なことが奈良学園の魅力。先生も生徒も、勉強だけでなく部活や行事にも真剣に向き合う環境の中、高校3年まで卓球部で活動し、文化祭にも実行委員として参加。充実した6年間でした。公式サイトより一部抜粋)

(保護者)校風は全体的におとなしい子が多く、みんな仲がよさそうです。生徒個人の判断に任せつつも、しっかり勉強、部活動をする雰囲気を学校がうまく醸成してくれているようです。

(卒業生)僕は中高6年間サッカー部に所属し、キャプテンも務めました。目標に向かってやるべきことを考えて行動するのは、部活も受験も同じ。サッカーで培った粘り強さや集中力は受験にも役立つもので、勉強時間が少ないという危機感を持つことで、効率よく勉強できるようになりました。放課後に部活がある人を集めて朝補習を行うなど、先生が部活と勉強の両立を応援してくれることもありがたかったです。公式サイトより一部抜粋)

(保護者)自然に恵まれた環境で学べる進学校です。勉強面ではカリキュラムも整っているのと、補習が充実しているため、安心して任せられます。さらに、クラブ活動との両立も立派にこなしており、とても良いと思います。

これらの声からは、大学受験を見据えた効率的な勉強ができる環境であることだけでなく、クラブ活動や行事も楽しみつつ、充実したスクールライフをおくれる環境であることがよくわかりました。

奈良学園中学校・高等学校の行事を楽しむ生徒たち

▲体育祭に遠足にカレー作り。勉強以外にもさまざまな行事があります。

奈良学園中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人奈良学園
住所 奈良県大和郡山市山田町430
電話番号 0743-54-0351
問い合わせ先 https://www.naragakuen.ed.jp/
exam_student/#qa
公式ページ https://www.naragakuen.ed.jp/index.html

※詳しくは公式ページでご確認ください