社会貢献できる人を育てる、神戸海星女子学院中学校・高等学校の教育とは|完全中高一貫校

ぽてんをご覧の皆さんに、全国の個性あふれる学校を紹介するこの企画。本記事では、神戸市にあるカトリック系の女子校で完全中高一貫校の「神戸海星(かいせい)女子学院中学校・高等学校」にインタビューを実施しました。

神戸海星女子学院中学校・高等学校は、「マリアの宣教者フランシスコ修道会」管区長マリー・ムスチェ・ド・カンシーが“新しい時代に生きる女性たちの教育”を目指して開設しました。

同校は、他者への貢献を喜びとすることを目標としており、医学部医学科など他者の命を守る医療系に進学する生徒が多いことが特徴のひとつです。

今回は広報部広報部長の秋山伸彦先生に、教育理念や神戸海星女子学院中学校・高等学校独自の取り組みについてお話を伺いました。

自己・他者への肯定感を育む、神戸海星女子学院中学校・高等学校の教育

神戸海星女子学院中学校・高等学校の広報部広報部長・秋山伸彦先生

▲インタビューに応じてくださった、広報部広報部長の秋山伸彦先生

編集部

初めに、神戸海星女子学院中学校・高等学校の教育理念をお教えいただけますか?

秋山先生

本校の教育理念は「真理と愛に生きる」です。「生徒一人ひとりが神に愛され生かされている存在であることを知り、自らを他者のために役立たせることに喜びを見出すこと」を目標としています。

私たちはカトリックの学校ですので、キリスト教の価値観に基づいた全人教育を行なっており、次の3本の柱を中心とした教育を実践しています。

1つめが、自分を見つめて祈る心を育てること。神に愛される存在として自己肯定感を高め、思春期の6年間の間に「自分らしい生き方」について考えてほしいという思いがあります。

2つめが、異文化を理解する心を持つこと。外国語学習や交換留学、フランスへの修学旅行などを通じて国際的な視野を養うことを目指しています。また、世界の人口の約3分の1はキリスト教徒ですので、宗教教育でキリスト教の価値観に触れることが、異文化への理解につながるという側面もあります。

3つめが、人のために自分を役立たせる心を持つこと。自己肯定感を持つということは他者への肯定感を持つことに繋がります。そして、他者を大切にすることが、奉仕や福祉といった自分を役立たせるという考えにも繋がっていきます。

神戸海星女子学院中学校・高等学校の礼拝朝礼

▲礼拝朝礼。祈ることで心に余裕が生まれ、自分を客観的に見つめることにもつながる

奉仕や福祉の精神を学ぶ「ユニバーサル体験学習」と「社会奉仕グループ」

神戸海星女子学院中学校・高等学校で語らう生徒たち

編集部

「自分を役立たせる」という考えを学ぶために取り組んでいることはありますか。

秋山先生

中学1年・2年時に「ユニバーサル体験学習」「特別支援学校との交流」を実施しています。白杖体験や車椅子体験をしたり、特別支援学校と交流することで、障がいのある方や介助する方のことを知り、自分なりの考えを深めていく学習です。特別支援学校との交流では、単に一緒にゲームをしたり遊んだりということだけでなく、メッセージカードを作るなど事前にアイデアを出しながら準備をしています。

それとは別に有志による「社会奉仕グループ」があります。これは自発的に参加するもので、街頭募金をしたり、古切手を集めて慈善団体に寄付しています。また、文化祭でグッズ販売をして、その収益でケニアのスラム街の学校に通う孤児や貧しい生活を強いられている子どもたちを支援するなど、活動は多岐にわたります。

さらに、生徒会として、フィリピンのミンダナオ島に靴を送る活動も長年続けていますし、奉仕や福祉に関する活動は本校では身近なものとなっています。

編集部

生徒発信の活動もあるのでしょうか。

秋山先生

RDD(世界希少・難治性疾患の日)の啓発活動は生徒の発案です。希少・難治性疾患をみんなに知ってもらおうと始まったもので、クラスや文化祭で希少・難治性疾患の解説をしたり、製薬会社を訪問したり他校の生徒と意見交換をすることで、病気に対する理解を深めています。

編集部

そうした活動は生徒たちにどういった影響があるのでしょうか。

秋山先生

「人のために私は何ができるかな」と考えるようになる生徒が多いように思います。誰かが困っていたらスッと手を差し伸べて手助けできる生徒が多いです。

キャリア形成にも影響はあって、例えば、東京大学に進学したある卒業生は文系で大学に入学しましたが、最終的に医学部に進学しました。「発展途上国の過疎地域の医療システムを作りたい」と考えての進路変更です。本校での奉仕や福祉に関する活動が、「いろいろチャレンジして社会や人のために役立ちたい」という思いに繋がったのだと思います。

大学入学がゴールではなく、社会に出たときに自分は何をすべきか・自分をどう社会に役立てるかということを自ら考えられる「学び続ける力」を養っていくことが、奉仕や福祉に関する活動の目的であり、本校のテーマのひとつでもあります。

仏語コンクールで優勝も。神戸海星女子学院中・高のグローバル教育

神戸海星女子学院中学校・高等学校のステラマリスホール

編集部

グローバル教育に力を入れている御校では、フランス語も学べると伺いました。詳しく教えてください。

秋山先生

本校はフランス人によって創立されたこともあり、フランス語の授業を週1回実施しています。中学3年生のときに英語かフランス語を選択できるのですが、約半数の生徒がフランス語を選択します。

フランス語は他校では非常勤教員ということが多いですが、本校では日本人の専任教員が教鞭をとっています。生徒の飲み込みが早く、中には実用フランス語技能検定試験を受験する生徒もいます。

また、西日本のフランス語コンクール(「西日本高校生フランス語スケッチコンクール」「西日本高校生フランス語暗唱コンクール」)では優勝最多校になっていますし、「神戸大学フランス語プレゼンテーション大会」にも2年連続で優勝したことがあります。

今年も高校2年の生徒が「優勝しました!」と嬉しそうに報告してくれたので、努力が報われて良かったなと喜んでいるところです。

本校は修学旅行先もフランスなので、それも生徒のモチベーションに繋がっているようです。

編集部

修学旅行先での生徒の皆さんの様子はいかがですか?

秋山先生

修学旅行では、ノルマンディーからモン・サン=ミシェルの辺りに行き、修道院を訪問してミサを体験したり、聖堂を訪れるなどしています。小さな町では自由時間があり、買い物をしたりカフェに行ったりしてフランス語を試す機会があるのですが、フランス語でコミュニケーションを取れている生徒も多いです。

現地の人から「あなたたちどこから来たの?」と訊かれてフランス語でしっかり回答でき、さらには日本語の挨拶まで教えて楽しそうに交流している様子には感心しました。

フランス語をしっかり学びたいという生徒も多く、本校にはそれをサポートできる環境があります。

さらにフランス語を学びたい生徒がフランスへ留学できるよう、COLIBRI(コリブリ:日仏高等学校ネットワーク)に加盟しています。留学中はフランス人のご家庭にホームステイしながら、現地でフランス語を学び、異文化にどっぷり浸かってくるので、大きな刺激になるようです。

少人数の英会話授業に合宿。外国人との交流が多く、国際的視野を養える

編集部

神戸海星女子学院中学校・高等学校では、国際的な視野を養うための教育にも力を入れていると伺いました。どのような取り組みをしているのでしょうか?

秋山先生

外国語教育と異文化理解教育、修学旅行の3本柱で取り組んでいます。

まず英語教育については昔から力を入れており、ネイティブ教員による英会話授業を少人数で実施し、聞く力と話す力を強化している他、異文化理解教育の一環で外国人との交流をする機会も多いです。

異文化理解教育については、中学3年生時に異文化理解合宿を実施しています。淡路島のホテルに一泊して、英語圏のさまざまな国や地域出身の留学生とコミュニケーションを取る中で英語力を磨きます。

また、中学3年生と高校1年生時は、姉妹提携しているオーストラリアの学校と隔年で交換留学をしているほか、高校1・2年生時は、希望者を対象に夏休みに短期のイギリス語学研修を行なっています。

交換留学については希望者が多いため抽選になってしまうのですが、オーストラリア人留学生を受け入れている期間は、ゲームをするなど学年全員で交流しています。

編集部

英語を話す機会が多く、英会話力の高い生徒が多そうですね。日頃の成果を発表するような場もあるのでしょうか?

秋山先生

中学2・3年生では「レシテーションコンテスト」を実施しています。これは著名人のスピーチなどを英語で暗唱するもので、人権や異文化など複数のテーマの中から選ぶことができます。クラス予選、学年予選を通過した代表生徒12名と司会生徒3名が講堂での本選に出場します。

また、高校1・2年生ではスピーチコンテストがあります。自分でテーマを決めた5分程度の英語スピーチを夏休みの課題として提出し、原稿審査を通過した生徒はクラス発表予選に出場します。クラス予選、学年予選を経て、8名の代表者と3名の司会者が講堂での本選に出場します。「レシテーションコンテスト」と共に、40年以上続く本校の伝統行事です。

神戸海星女子学院中学校・高等学校からのメッセージ

神戸海星女子学院中学校・高等学校の体育祭

▲体育祭は生徒全員で作り上げていく

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

秋山先生

自分の個性や力を伸ばしていきたいと考える方には、ぜひ神戸海星女子学院中学校・高等学校に入学していただきたいと思っています。なぜなら、本校はのびのびした生徒が多い学校だからです。

女子校で異性の目を気にする必要がないこともあり、のびのびと自由に成長できる環境があります。また、体育祭や文化祭は生徒自らが企画・運営を行なっており、自立心も育まれます。

本校ではコース制を導入しておりませんので、中学1年生から高校3年生まで150人がずっと一緒に進学していきます。その中でさまざまな個性が刺激を与え合い、切磋琢磨しています。医師を目指す生徒もいれば芸術系への進学を希望する生徒もいて、多様な生徒たちの中で自分の個性も伸ばしていくことができます。

また、本校はカトリック系の学校ですが、クリスチャンの生徒は多くなく、お寺のお嬢さんや神社の宮司のお嬢さんも通学しています。宗教にとらわれず、入学をご検討いただければと思います。

学校説明会や公開行事などで本校に足を運んでいただき、生徒と触れ合って、本校の魅力を直接体験してください。

編集部

秋山先生、本日はありがとうございました。

神戸海星女子学院中学校・高等学校の進学実績

神戸海星女子学院中学校・高等学校の理科の実験

▲理科の実験の様子。理系進学者の増加には、3人の女性理科教員の存在も大きい

神戸海星女子学院中学校・高等学校の2022年度の進学実績を見ると、医学部医学科は国公立大学に12人、私立大学に26人が合格しています(延べ人数)。また、薬学部への合格者数は国公立大学が5人、私立大学が38人です(延べ人数)。2022年度の国公立大学の医学部医学料の合格者数は、全国の女子校で第5位です(「週刊朝日(2022.4.29付))。

また、おもな国公立大学には合計54人、おもな私立大学には合計294人が合格しています(延べ人数)。国公立大学の合格者は、半分以上が理系学部に進学しています。背景には実験や観察など体験重視の理科教育の充実があります。

好実績の要因は、生徒たちの興味・関心を大切にした進路指導をしていることと、一部の教科では先取り学習のカリキュラムを実施している点が挙げられます。

卒業生による職業ガイダンスでは、会社員、医師、国連職員、音楽家など、さまざまな分野で活躍する卒業生から仕事の話を聞いたり、大学教員による出張授業では「法学入門」や「再生医療」など大学で学ぶ講義を受ける機会があります。どちらも自分の興味や才能を見つめ直し、将来の方向性を考える良い機会となっています。

■進学状況(神戸海星女子学院中学校・高等学校公式サイト)
https://www.kobekaisei.ed.jp/jr-high/advanced-to-univ.html

神戸海星女子学院中学校・高等学校の在校生・保護者の口コミ 

神戸海星女子学院中学校・高等学校の生徒に数学を教える先生

▲同校では、職員室前で先生を呼び、わからないところを質問する生徒も多い。

神戸海星女子学院中学校・高等学校の在校生と保護者の声から、いくつかを抜粋しました。

(在校生)
学校の雰囲気が穏やかで、落ち着いて勉強ができます。勉強は苦手なところを補習してもらえ、クラスの半数程度が参加することもあります。部活や施設もとても充実していて楽しいです。

(在校生)
生徒一人ひとりに向き合った指導をしてくれ、分からないことは丁寧に教えてくれます。友人とは大学入試や英検を話題にすることも多いです。

(保護者)
学校見学会や文化祭で感じた印象通り、優しい生徒が多く、先生も穏やかな方が多いです。

(保護者)
学年が進むごとに生徒間で「勉強しないと」という空気になっていきます。授業についていけない生徒用のプログラムも設置されていて心強いです。

神戸海星女子学院中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 神戸海星女子学院
住所 兵庫県神戸市灘区青谷町2丁目7-1
電話番号 078-801-5601(代表)
問い合わせ先 078-801-5601(代表)
公式ページ https://www.kobekaisei.ed.jp/jr-high/

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