岩手中学校・高等学校の「生きる力」を育てる実践的な学びとクラブ活動とは|中高一貫校

この記事では、特色ある教育に取り組む“注目の学校”として、岩手県盛岡市にある「岩手中学校・高等学校」をご紹介します。

私立の中高一貫校である同校は、大正15年設立の長い歴史を誇る伝統校です。岩手県内で唯一の男子校であるほか、中学の入学金が無料であることも大きな特徴となっています。

教育面では、中学においては全科目で探究的学びを実践しており、高校においては2年次から選択可能な「プログラミングコース」が設けられている点が同校ならではの魅力です。また、クラブ活動では囲碁将棋部の活躍が全国的に有名なほか、豊かな自然を活かした山岳部やスキー部などもあり、どの部も活発に活動しています。

今回、ぽてんでは新田校長とプログラミングコース主任・囲碁将棋部顧問の藤原先生にインタビュー取材を行い、同校の教育方針や学習カリキュラムの特色、校風などを詳しく教えていただきました!

『石桜精神』をモットーに生きる力を育成する岩手中学校・高等学校

岩手中学校・高等学校の新田校長

▲インタビュー取材に応じてくださった新田校長

編集部

まず、岩手中学校・高等学校の教育方針について教えてください。

新田校長

本校では『石桜(せきおう)精神』を建学の精神として掲げ、逆境にも負けない不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を身につけることを教育方針としています。

盛岡には樹齢300年以上とされる「石割り桜」という有名な観光名所があるのですが、巨岩を割って根をおろし、毎年美しい花を咲かせるその様に感動した創立者の三田義正先生が本校のシンボルとして定め、そのたくましさや生命力を『石桜精神』と名付けたことが由来です。

岩手中学校・高等学校にある三田義正氏の銅像

▲創立者・三田義正氏の銅像

この『石桜精神』を受け継ぎつつ、進路に適応した学力を養う「積慶(せきけい)」・運動を通じて心身を鍛える「重暉(ちょうき)」・思いやりや協調性のある人材を育成する「養正(ようせい)」の3つを校訓として掲げながら生徒の成長をサポートしています。

ちなみに、不撓不屈の精神というと「とにかく何でも努力させる」といったイメージがあるかもしれませんが、我々は今の時代に合った形で、まずは少しでもいいからチャレンジしてみることを教えています。苦手なことでも逃げずに向き合うことによって人間的に成長し、生きる力を身につけてから卒業してもらうことが私たち教員の願いです。

キャリアに繋がるスキルが身につく!岩手高等学校の「プログラミングコース」

岩手高等学校のプログラミングコースの合宿の様子

▲高校のプログラミングコースで実施している「アイデアソン合宿」の様子

岩手中学校・高等学校は、中学では「中高一貫SSコース」としてアクティブラーニングやICT教育をベースに学力と人間性の向上を目指した教育指導を行っています。また、高校では1年次に「総合進学コース」と「特別進学コース」に分かれ、2年次からは実践的なカリキュラムで情報スキルを養う「プログラミングコース」も選べる仕組みです。

ここでは、高校のコースとしては珍しい「プログラミングコース」の魅力について詳しくお話を伺いました。

プログラム言語の習得やプログラム開発など、本格的なITスキルを学べる

岩手中学校・高等学校の藤原先生

▲インタビュー取材に応じてくださったプログラミングコース主任・囲碁将棋部顧問の藤原先生

編集部

御校では、高校2年次から「プログラミングコース」を選べることが大きな特徴ですよね。いったいどのようなコースなのか、ご紹介ください。

藤原先生

プログラミング教育は基本的に小学校から取り入れられていますが、本校の「プログラミングコース」はより発展的なカリキュラムとなっています。初めは日常的な課題を解決させるための探究学習から入り、その課題の解決に向けたプログラムを開発して実装させるところまで行っていることが特徴です。

校内にはさまざまなソフトウェアを利用できるハイスペックPCを導入しており、課題の探究と同時にJavaなどのプログラム言語も並行して学びます。また、プレゼンテーションスキルを養うための教育にも力を入れています。

岩手高等学校のプログラミングコースでのCG演習の様子

▲コンピューターグラフィックスの演習授業も行われます

編集部

具体的な実装例を教えていただけますか?

藤原先生

たとえば、自転車に乗るときのヘルメット着用率の低さを課題として掲げ、「着用率を100%にするためにはどうすればいいのか」を探究してプログラム開発へとつなげる、といった取り組みです。

ヘルメットの着用は努力義務となっていますが、現時点(2024年6月時点)では着用していなくても特に罰則はなく、実際に岩手県内のヘルメット着用率は15%ほどとあまり浸透していません。しかし、いずれは「義務化」となる可能性もありますし、何よりヘルメットは事故による被害を最小限に抑えられる有効なアイテムですので、大変有意義な取り組みだと考えています。

一般的な探究学習であれば「生徒指導の先生や生徒会がヘルメット着用を推奨する」「ポスターを作成して掲示する」などの案が出て終わることもあるかもしれませんが、本校ではIT技術を駆使して解決を目指します。たとえばヘルメットにマイクロチップを埋め込んで、そのマイクロチップとスマホのアプリを連動させることでヘルメットを着用せずに自転車に乗っているとアラームが鳴る、といったシステムを開発するイメージです。

そういった実用的なプログラム開発を行っていき、うまくいけば将来的には岩手高校発のプログラムとして広めていくこともできるのではと考えています。こうした本格的な取り組みは大学のソフトウェア学部や企業などが行っている内容ですので、生徒からの注目度は非常に高いです。

編集部

どのくらいの生徒さんがプログラミングコースを選んでいるのでしょうか?

藤原先生

希望制で40名以内で募集をかけており、2024年度においては2年生が28名、3年生が36名です。1年生に関しては入学前のアンケートから非常に人気があったため、来年度はさらに人数が増えるのではと想定しています。これからどんどん需要が高まってくると思いますよ。

ちなみに、近年の大学入試においては探究の分野での推薦入試枠が広がってきており、本校のプログラミングコースでの経験は大きなアドバンテージになると考えています。

岩手中学校・高等学校ではクラブ活動にも魅力がたくさん

岩手中学校・高等学校ではクラブ活動への積極的な参加を促しており、なかには全国大会に出場するなどの輝かしい成績を収めている部もあります。ここでは、同校でのクラブ活動に焦点を当ててお話を伺いました。

囲碁・将棋部は全国大会・東北大会の常連!

岩手中学校・高等学校の囲碁・将棋部の活動風景

▲囲碁・将棋部の活動風景

編集部

藤原先生は囲碁・将棋部の顧問をされていらっしゃると伺いました。これまでにかなりの好成績を残していらっしゃいますが、経験者の入部が多いのでしょうか?

藤原先生

私は部の立ち上げからこれまでずっと顧問をしてきまして、2024年度に31年目を迎えたのですが、実はルールを知らない状態で入部する生徒が非常に多いです。最初のうちは県大会に出てもなかなか思うように戦えなかったのですが、少しずつトーナメント表の上のほうまで勝てるようになってきて、部の設立から4年目で全国大会に出させてもらえるようになりました。

それ以降、全国大会に行くにはどのくらいの力が必要かが体感でわかってきて、自分の実体験も踏まえつついろいろと工夫しながら教えています。私自身将棋がプロ並みに強いわけではないですし、全国には私よりも強い顧問の先生がたくさんいると思うのですが、私なりに「子どもたちの力を最大限に伸ばすための環境づくり」を徹底的に行っていることが成果につながっているのではと感じています。

編集部

具体的にどのような環境づくりを意識されていらっしゃるのか教えてください。

藤原先生

「楽しい」「面白い」といった気持ちがずっと続くような環境づくりを心がけています。将棋は多少勉強する必要があるのですが、単に覚えるのではなく、面白がって覚えていけるように工夫している形です。

また、生徒の自主性を尊重することも心がけています。たとえば負けてしまったときに、私のほうから「この手が悪かった」などと指摘することはありません。負けた原因を自分から探すように仕向けており、自分で調べて「この手があったのか」と別の選択肢を見つけることで、次からは同じ局面のときに自分にとって有利な展開へと持っていくことができると考えています。

編集部

生徒さんはどのように振り返りを行ったり、別の手を見つけたりされているのでしょうか?

藤原先生

将棋の本を見たり、似たような局面で戦っているプロの将棋を見たりして勉強しています。実は将棋にはいろいろな戦法・戦型があり、戦法・戦型によってやり方が全く異なるんです。そのため、生徒には自分の使う戦型に関してとことん勉強して、自分の武器だといえるくらいまで探究するように話しています。

編集部

囲碁・将棋部ということで、囲碁をやっている方もいらっしゃるのですね。

藤原先生

はい。最初は「将棋部」だったのですが、だんだんと囲碁の選手も育ってきたので「囲碁・将棋部」と名乗っています。今では、囲碁のほうでも全国大会にも出場するレベルになっていますね。

山岳部では登山を通じて「生きる力」を養い、スポーツクライミングにも挑戦

岩手中学校・高等学校の山岳部の部室

▲山岳部の部室。スポーツクライミングの練習設備も作っています

編集部

山岳部も、昔からある伝統的な部活だそうですね。校長先生が顧問をされていると伺いました。

新田校長

はい。2024年度は中高あわせて16名の部員がおり、登山だけでなく今流行りのスポーツクライミングも行っています。登山もクライミングも、部活として行っている学校はとても珍しいと思います。

登山は大変さもありますが、山頂に到着して頂上からの景色を見たときには「わぁ!」「すごい!」と歓声が上がり、達成感に包まれます。また、テントを設営して寝る場所を確保したり、食事の準備や後片付けをしたり、けが人が出たら応急処置をしたりといったことも生徒たち自身で行うため、まさに文部科学省が推奨している「生きる力」を育める部活だと思いますね。

スポーツクライミングについては、学校から自転車で20分ほどの専用施設で行います。かなり本格的な施設で、実はこの恵まれた環境を求めてマレーシアから転校してきた生徒もいるほどです。ちなみにその子は青森に実家があるのですが、寮に入って本格的に活動しており、マレーシアでオリンピック代表選手になる夢に向かって日々頑張っています。

テニス&ソフトテニスの強豪校!アイスホッケーなどの珍しい部もあり

岩手県盛岡市にある「岩手中学校・高等学校」の校庭

編集部

ほかに、強いクラブや珍しいクラブなどがあればご紹介ください。

新田校長

本校にはテニスとソフトテニスが両方あるのですが、どちらも強く、インターハイなどの各種大会で好成績を収めています。どちらかというと片方に注力する傾向があるので、両方の強豪校というのはあまり見られないと思いますよ。

また、ラグビー部は県内で最も古い歴史があるほか、アイスホッケー部があるのは県内で本校のみです。どの部においても、顧問の工夫によって生徒が主体的に取り組める環境が整っています。

クラブ活動に魅力を感じて入学を決める生徒もたくさんみられ、本校の特色のひとつであると感じています。ちなみに、クラブ活動を本格的に行うことを目的として寮に入っている生徒もおり、2024年度は20人弱が寮生活を行っていますよ。

岩手中学校・高等学校の体育館内観

岩手中学校・高等学校の校風について

岩手中学校・高等学校の校舎から手を振る生徒たち

編集部

御校の雰囲気についても教えていただけますか?

新田校長

本校は東北唯一の男子校で、とても気さくな雰囲気です。変にかっこつけずにとにかく自然体で学校生活を楽しんでいる生徒が多い、フランクな校風です(笑)。

また、中学SSコースは中高一貫校で6年間の付き合いですので、一生付き合える関係性が築けているように感じます。実際に、卒業生同士で誘い合って遊びに来てくれることも多いですよ。

あとは、クラブ活動はじめ、多くの課外活動などでも目標に向かって努力している生徒が多く、活気に満ちあふれた学校です。

岩手中学校・高等学校からのメッセージ

岩手中学校・高等学校の空撮写真

編集部

最後に、岩手中学校・高等学校に興味をお持ちの方へメッセージをお願いします。

新田校長

本校では生徒一人ひとりがしっかりと成長して卒業できるよう、教職員が一丸となり、輪になってサポートしております。「指導してやらせる」のではなく、背中を押すことを意識して、ともに伴走しながら目標達成を目指しているアットホームな学校です。

男子校ならではの気さくで活気ある雰囲気も魅力ですので、ぜひ一度遊びにいらしてください。

編集部

先生方の温かなサポートがあるからこそ、生徒さんたちは主体的にのびのびと勉強やクラブ活動に臨めるのだと感じました。たくさんのお話をありがとうございました!

岩手中学校・高等学校の進学実績

岩手中学校・高等学校の授業風景

岩手中学校・高等学校の卒業生の進路は、大学や専門学校、就職と多岐にわたります。たとえば2023年度卒業生においては、大学・短大への進学が65%、各種専門学校が17%、就職が14%、その他が4%でした。

ちなみに、同校は全国100以上の大学における指定校推薦枠を確保していることから、推薦で進学を決める生徒も少なくありません。岩手医科大学や八戸学院大学、東北学院大学といった東北エリアの大学のほか、明治大学や日本大学、東京工科大学といった東京の大学、関西方面の大学など幅広い繋がりがあり、同校が輩出した卒業生の各地での評判の高さがうかがえます。

公式:岩手中学校・高等学校「進路情報」

岩手中学校・高等学校の卒業生・在校生の口コミ

岩手中学校・高等学校の生徒たち

▲中学校では地元の店舗と連携して市場での販売をお手伝いしたり、キャップハンディ体験ができたりと多様なプログラムがあります

授業がわかりやすく、わからないことがあると先生が親身に教えてくれます。

新しいことにチャレンジしたい気持ちを後押ししてくれる先生や先輩がたくさんいます。

クラブ活動が盛んで、懸命に力を注げる環境があり、毎日が充実しています。

個人の活動に理解があり、やりたいことと勉強を両立しやすいです。

岩手中学校・高等学校の卒業生・在校生からは、先生の親身なサポートやクラブ活動の充実度などが高く評価されています。なかには「生徒同士の仲が良い」「いじめが少ない」といった声も多く、活気に満ちた温かな雰囲気の学校だと感じました。

岩手中学校・高等学校へのお問い合わせ

運営 学校法人 岩手奨学会
岩手中学校・高等学校
住所 岩手県盛岡市長田町7-60
電話番号 019-624-4445
問い合わせ先(メール) 中学校:junior@iwate-jh.ed.jp
高校:sekiou@iwate-jh.ed.jp
公式ページ http://iwate-jh.ed.jp/

※詳しくは公式ページでご確認ください