充実の進路指導に海外交流・SDGs教育も実施「福山市立福山中・高等学校」の独自プログラム|中高一貫校

ぽてん読者の皆さまに、特色ある教育プログラムで注目を集める学校を紹介するこの企画。今回紹介するのは、広島県福山市にある公立中高一貫共学校「福山市立福山中・高等学校」です。

福山中・高等学校は、東京大学、京都大学、一橋大学などの難関国立大学に合格者を輩出する進学校。海外の姉妹校などと連携した積極的なグローバル教育のほか、持続可能な開発のための教育を推進する探究学習でも有名です。

また、確かな学力を定着させるための少人数クラスや、表現力、議論する力を身につけるための「コミュニケーション科」など、独自のプログラムで生徒たちの成長を促進しています。

今回は、福山中・高等学校の特徴的なプログラムや教育方針について、校長の脇谷靖伸先生、中学校教頭の平山祐輔先生、高等学校教頭の大町司先生にお話を伺いました。

共感・知性・意志を重んじる福山中・高等学校の校訓「i.spirits」

福山市立福山中・高等学校の脇谷靖伸校長

▲お話を伺った福山市立福山中・高等学校の脇谷靖伸校長

編集部

初めに、福山中・高等学校の校訓や教育方針について教えてください。

脇谷校長

2004年に福山中・高等学校が中高一貫校となったとき、改めて制定した校訓が「i.spirits(アイスピリッツ)」です。「i.spirits」にはアルファベットの「i」を頭文字にもつ「interaction(共感)」、「intelligence(知性)」、「intention(意志)」を大切にしたいという想いが込められています。

「i.spirits」が意図する共感と連帯の創造、主体的な英知の確立、向上心と社会性の確立が、そのまま福山中・高等学校の教育方針となっています。

編集部

英単語で表記されている校訓は珍しいですね。

脇谷校長

そうですね。新しく生まれる中高一貫校として、「豊かなコミュニケーション能力の育成や、国際社会に貢献できる人材育成を謳う学校」でありたいという意図から、敢えて英語表記の「i.spirits」が本校の校訓になったという背景があります。

編集部

校訓の言葉選びの中にも、福山中・高等学校が目指す教育の在り方がそのまま反映されているのですね。

海外の姉妹校などとの文化交流が盛ん。福山中・高等学校のグローバル教育

韓国の大東中学校の生徒たちの訪問を記念した福山市立福山中学校の集合写真

▲韓国の大東(デドン)中学校の生徒たちの訪問を記念した集合写真

編集部

福山中・高等学校は「国際社会に貢献できる人材育成」を掲げていらっしゃいます。具体的なグローバル教育の内容について教えてください。

大町教頭(高校)

本校は、カナダのハミルトン市立グレンデールセカンダリースクール、オーストラリアのダウンランズカレッジと姉妹校の提携を結んでいます。また、地元福山市と姉妹都市である韓国の浦項(ポハン)市の大東(デドン)中学校、浦項高校・浦項女子高校とも積極的な交流を行っています。

編集部

近年では、具体的にどのような国際交流が実施されていますか。

大町教頭(高校)

実は先日まで、浦項市の浦項高校と浦項女子高校の生徒さんが本校を訪問してくれていました。先週は、浦項の大東中学校の生徒さんもお越しくださったところです。本校から海外への留学も活発に進めていますが、海外からの受け入れをすることで生徒に国際感覚を養っていく活動にも力を入れています。

編集部

海外の学生と直接交流できる機会は、生徒たちにとって学びの多いものになりそうですね。実際に国際交流を深める中で、福山中・高等学校の生徒たちに変化は見られましたか?

大町教頭(高校)

まず、言語の壁を痛感することで、さらに外国語学習をがんばろうと意欲を持ったのではないかと感じます。グローバル化が進む中で、生徒たちはこれから世界と繋がりながら生活をしていきます。相手とコミュニケーションを図るうえで、言語の習得は必須。その重要性を感じてくれていると思いますね。

編集部

海外の学生との交流が、語学学習のモチベーションにつながっているのですね。

大町教頭(高校)

そう思います。加えて、自分たちのことを伝えるためには、地元のこと、日本のことを知っておく必要があると感じてくれているようです。地元について考える中で、もっとこんな地域でありたい、こんな学校にしたい、といった課題意識にもつながっています。

福山市立福山高等学校の大町司先生教頭

▲お話を伺った福山市立福山高等学校の大町司教頭

韓国の中学生を招き日本語・韓国語・英語でコミュニケーション

韓国から訪れた学生たちを迎える福山市立福山中・高等学校の生徒たち

▲韓国から訪れた学生たちを迎える福山中・高等学校の生徒たち

編集部

近年の国際交流の中で、特に印象的だったイベントはなんでしょうか。

脇谷校長

韓国の浦項高校・浦項女子高校のみなさんと交流した際の、最後のイベントが特に印象に残っています。

浦項高校・浦項女子高校と福山高等学校の生徒が一室に会して、交流を振り返るイベントを実施しました。その際、本校の生徒たちの多くは、韓国語で自分たちの想いを伝えたんです。上手に韓国語が話せるわけではありませんが、スマートフォンの機能などを駆使してなんとか想いを伝えようという姿勢を見せてくれました。

編集部

訪問してくれた韓国の学生たちの言語を使って、発表に挑戦されたのですね。

脇谷校長

はい。同様に浦項高校・浦項女子高校のみなさんも、日本語で想いを伝えてくれました。部屋の中では、日本語・韓国語・英語が入り混じった状態で、つたないながらもお互いの想いを伝えようとする気持ちがあふれていたのがとても印象的でしたね。

編集部

生徒たちにとって、リアルなグローバル社会を実感できる体験になったのですね。

脇谷校長

はい、私も見ていてとても感動しました。今回の国際交流を経験した生徒たちが、今後は積極的に海外に留学したい、行ってみたいと感じてくれたと思います。グローバルな視野を身につけるうえで、やはり直接海外の方と交流することが大切だと改めて感じています。

SDGs教育で文部科学大臣賞を受賞。福山中・高等学校の探究学習

地元企業を訪問して探究学習に取り組む福山市立福山中・高等学校の生徒たち

▲地元企業を訪問して探究学習に取り組む様子

編集部

福山中・高等学校は、ユネスコ・アジア文化センターのESD(※)重点校形成事業において、サステイナブルスクールに認定されています。2019年にはNPO法人日本持続発展教育推進フォーラム主催の「持続発展教育(ESD)大賞」にて、文部科学大臣賞を受賞されました。
(※)Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育。現代社会の問題を主体的に捉え、持続可能な社会の実現に向けて主体的に行動することを目指して行う学習・教育活動

ESDに代表される福山中・高等学校の探究学習について、教えてください。

平山教頭(中学)

福山中・高等学校では、中学校で課題発見に取り組み、高校で実際に課題解決を実行するという6年間を見通した探究活動を行っています。

中学校では、総合的な学習の時間に「My探究」という活動を取り入れています。生徒自身が関心を持っているテーマについて「My探究プロジェクト」を立ち上げ、突き詰めていくという内容です。テーマの似た生徒同士でチームを組んだり、一人で研究したりと、探究スタイルはさまざま。それぞれに合わせた形で探究を進めています。

編集部

探究学習の取り組みは、中学校からスタートしているのですね。高校では具体的にどんな取り組みをされていますか。

大町教頭(高校)

高校では、「グローカル人材育成事業」に力を入れています。1年生のときに地元企業の課題をヒアリングし、解決策をプレゼンテーションする活動を行うものです。みんなで実際に街に出て活動したり、企業や団体のSDGs活動を研究して課題の解決を探ったりする「探究的な学び」を実践しています。

探究学習で地元の漁業について現地で学ぶ福山市立福山中・高等学校の生徒たちの様子、地元企業を訪問して学ぶ福山市立福山中・高等学校の探究学習の様子

▲実際に地元の企業や団体を訪問して課題発見・解決につなげる探究学習の様子

編集部

中学校から続く探究学習で身につけた力を、実際の企業の課題解決に向けて発揮できるのですね。

大町教頭(高校)

はい、そうです。6年間で培った力は、探究学習に限らずすべての教科に対して自分で考えて解決していく姿勢につながっていると感じます。生徒たちが大人になったときに、社会の課題について自ら気づき、改善していけるよう力をつけてほしいと願っています。

福山市立福山中学校の平山祐輔教頭

▲お話を伺った福山市立福山中学校の平山祐輔教頭

福山中・高等学校の中高一貫校ならではの学校生活

福山市立福山中・高等学校の校舎

▲福山中・高等学校の校舎正面の風景

ここからは、公立の中高一貫校である福山中・高等学校の学校生活の様子や、卒業後に向けた進路指導について、詳しくご紹介します。

中高合同の学校行事や部活動で成長を加速させる

編集部

福山中・高等学校は、2004年から中高一貫校になったと伺いました。中学生と高校生が一緒に活動する機会は多いのでしょうか。

脇谷校長

はい、一番初めに中高合同で行うのが入学式です。少し前まで小学生だった中学校1年生と、高等学校1年生が一緒になって入学を祝います。文化祭や体育祭などの学校行事も、中高で一緒に行います。

大町教頭(高校)

福山中・高等学校の学校行事は、地域の施設をお借りして実施しているのも特徴ですね。文化祭は福山市の「ふくやま芸術文化ホールリーデンローズ」、体育祭は「エフピコアリーナふくやま」という大きな体育館をお借りして実施しています。そのほか、市内の陸上競技場でマラソン大会を実施しています。

編集部

大きな会場を利用して、中学生と高校生が一緒に学校行事を行っているのですね。学校行事以外にも、中学生と高校生が一緒に取り組む活動はありますか。

脇谷校長

部活動も、中高一緒に行っているものがあります。例えば吹奏楽部は、中学生と高校生が一緒に活動しています。定期演奏会に向けて、みんなで楽しく活動しています。バスケットボール部も、中高の繋がりを生かした活動をしています。

福山市立福山中・高等学校吹奏楽部の定期演奏会の様子、少林寺拳法部の練習風景、野球部の様子

▲福山市立福山中・高等学校には吹奏楽部、野球部、少林寺拳法部などの多彩な部活動がある

大町教頭(高校)

実のところ、本校に中学校はありませんでしたから、中高一貫校になるときに中学生と高校生がうまくやっていけるのだろうかと心配もありました。しかし実際に始まってみると、むしろ良い効果がたくさん見られていますね。

平山教頭(中学)

はい。やはり中学生にとっては高校生の姿がとても頼もしく見え、「先輩のようになりたい」という1つの憧れになっているようです。先輩の姿を見て、自分も高校生になったら生徒会活動をしてみたいという生徒の声もよく聞きます。

大町教頭(高校)

そうですね。高校生の側からも、言葉には出しませんが、「自分たちが先輩だからしっかりしよう」という気持ちが見て取れますね。

編集部

福山中・高等学校の中学生と高校生が学校行事や部活動を通じ、共に成長している様子がよくわかりました。

高い進学率を実現する独自カリキュラムときめ細やかな学習指導

chromebookを活用した福山市立福山中学校の授業風景

▲chromebookを活用した福山中学校の授業風景

編集部

福山市立福山高等学校は、大半の生徒が国公立大学や私立大学に進学されています。東京大学、京都大学、一橋大学など、最難関国立大学に合格した生徒もいるとうかがいました。学習指導で気をつけていることはありますか。

平山教頭(中学)

まずは中学生の段階から、2つの特徴的な取り組みにより確かな学力の定着を図っています。

1つ目が、英語と数学の少人数授業です。福山中学校は定員が1学年120名で、1クラス40名の合計3クラスに分かれているのですが、クラスをさらに半分に分けた20名できめ細かな授業を行っています。

編集部

生徒数が少ない分、一人ひとりに合った指導が実現しているのですね。

平山教頭(中学)

はい、そうです。2つ目の特徴が、他校にはないオリジナルのカリキュラム「コミュニケーション科」です。生徒たちの表現力、議論する力を養うために、国語・英語の教科を中心に年間35時間のコミュニケーション力に特化した授業を実施しています。

「コミュニケーション科」も、生徒20名ずつの少人数授業です。国語の教員が2名、日本人の英語教員と外国人講師各1名の計4名の教員が担当して、日本語でのディベートや英語のスピーチなどをきめ細かく指導しています。

少人数でディスカッションする福山市立福山中・高等学校の生徒たちの様子

▲コミュニケーション科の授業にて少人数でディスカッションする生徒たちの様子

編集部

少人数授業とコミュニケーション科の2つが、福山中学校の学習面での特徴なのですね。これらの取り組みの結果として、生徒たちへの学習面で具体的な効果は表れていますか。

平山教頭(中学)

全国学力・学習状況調査という文部科学省が実施する全国の学力調査があるのですが、昨年度、福山中学校はすべての科目で全国平均を約20ポイント上回る結果となっています。特に点数が伸びているのが、国語と数学、英語ですね。学力面での効果が、数値の面からも証明される結果となっています。

編集部

「確かな学力を定着させる」という方針で行われている取り組みが、成果として表れているのは素晴らしいですね。では、福山高等学校での取り組みはいかがでしょうか。

大町教頭(高校)

前提として、中学校でしっかりと生徒たちに学習習慣が身に着いた状態で、高校の学習をスタートできているのが強みです。そのうえで高等学校では、全体の約8割以上は国公立大学への進学を希望する背景もあり、特に個別面談・指導に注力しています。

個々の生徒に対して、担任1人だけではなく教科の先生もアドバイスをするなど、学年全体で指導します。各生徒の強みや弱みをしっかり分析して、適切な進学先を見つけるアドバイスをしたり、学習に対する指導をしたりすることで、高い進学率を維持できていると考えます。

編集部

中学校・高等学校で一貫して実施されるきめ細やかな指導が、福山中・高等学校の学力向上や大学進学で成果を上げていると感じました。

福山中・高等学校からのメッセージ

福山市立福山中・高等学校を上空から見た様子

▲上空から見た福山中・高等学校の広大な敷地

最後に、福山中・高等学校に関心のある小学生や保護者の皆さまに向けて、メッセージをお願いします。

脇谷校長

福山中・高等学校は、落ち着きがあって前向きに学習に取り組んでいる生徒ばかりです。学業だけでなく、学校行事や部活動に対しても、いつも一生懸命。大学進学を一番の目標としながらも、留学や探究活動などの多彩な取り組みがあり、夢中になれる環境です。

教職員も、生徒たちの夢を叶えようとしっかりバックアップしていきます。ぜひ一緒に、福山中・高等学校で学んでもらえたらと思っています。2024年8月には、中学校は24日(土)・高等学校は23日(金)に、それぞれでオープンスクールを開催する予定ですので、ぜひ本校の良さを直接ご覧いただけたらと思います。

平山教頭(中学)

福山中学校には、他の公立中学校では実施していない特色ある取り組みがたくさんあります。そんな福山市立福山中学校ならではの特色を、オープンスクールや学校説明会などで知っていただけると嬉しく思います。

大町教頭(高校)

最後にもう1つ。福山中・高等学校には、「もふお」という名前の羊がいます。生徒が散歩に連れて行ったり食事を与えたりして、生徒の癒しになってくれています。同時に、命を大切にする心の育成にもつながっていると感じます。オープンスクールなどにお越しの際は、本校のマスコット「もふお」にも会いに来てくださいね。

福山市立福山中・高等学校のアニマルセラピー、羊の「もふお」と生徒たち

▲福山中・高等学校のアニマルセラピー、羊の「もふお」と触れ合う生徒たち

編集部

今回の取材を通じて、福山中・高等学校で積極的に行われているグローバル教育や探究学習、中高一貫したきめ細やかな学習サポートが、生徒たちの豊かな学校生活につながっていることがわかりました。ありがとうございました!

福山中・高等学校の進学実績

福山高等学校では、2024年に国公立大学に延べ90名の合格者を輩出しています。中には京都大学や一橋大学、大阪大学などの国公立大学、早稲田大学や上智大学、青山学院大学などの名門私立大学に合格した生徒もいます。

また、例年国公立の医学部や歯学部などにも複数名が合格。進学校として高い合格実績を残し続けています。

公式:福山市立福山高等学校令和6年度大学入試等合格状況

福山中・高等学校の保護者・在校生の口コミ

最後に、福山中・高等学校の保護者や在校生の感想・口コミをご紹介します。

(保護者)公立で中高一貫校、国公立大学進学率も良いなど、中々良い環境だと思います。海外の姉妹校と交流したり、期間限定ながら動物(羊:もふお)の世話をしたり、勉強以外のコミュニケーションにも力を入れています。

(在校生)自由で真面目な学校。先生も熱心な方が多く、学習面で困ることはあまりない。部活動も活発で、学校全体に活気が溢れている。中学生、高校生、教職員が一丸となって大きく盛大な行事を実行することが多い。

(在校生)他の中学校よりも勉強は難しいですが授業は楽しいです。入学する前には宿題が多く大変ということを聞いていましたが、そこまで多いという印象はないです。コミュニケーション科という授業もあり、とても楽しいです。

授業や学習面でのサポート体制だけでなく、学校行事や普段のコミュニケーションに対する満足の声が多くみられました。

福山中・高等学校へのお問い合わせ

運営 福山市立福山中・高等学校
住所 広島県福山市赤坂町赤坂910番地
電話番号 084-951-5978
公式ページ https://www.edu.city.fukuyama.hiroshima.jp/kou-ichifuku/

※詳しくは公式ページでご確認ください