宮城県涌谷町への移住ガイド:子育て支援が充実!「金」のまちで始める新生活
この記事では移住を考えている人に向けて、宮城県涌谷町(わくやちょう)の特徴や仕事、住まいなどの暮らしに役立つ情報をご紹介します。
宮城県涌谷町は、宮城県北部の遠田郡に位置する人口約14,800人のまちです。日本で初めて金が採取されたまちで、数多くの貴重な国史跡や文化財が存在することから歴史の趣を感じられます。
今回は、涌谷町まちづくり推進課の成澤さんに、地域の魅力や暮らし、移住支援などについてお聞きしました。
涌谷町の3つの魅力:自然・歴史・コミュニティ
涌谷町は、南部の江合川・北部の迫川・東部の北上川によって囲まれた丘陵地と平地で、まちの中央には標高236mの箟岳山(ののだけやま)が連なる風光明媚なエリアです。
そんな涌谷町への移住は、次のような方に適しています。
- 子どもたちが楽しめる娯楽が多い場所に住みたい
- 子どもに自然体験をさせてあげたい
- 新しい土地に馴染む自信がない
上記の理由を、涌谷町に見られる3つの特徴から解説します。
四季折々の多彩なイベントで地域が活性化
▲涌谷町の花見スポット「城山公園史料館」。公園内にはソメイヨシノやヤマザクラなど約250本が咲き誇る
涌谷町は、山岳信仰の聖地である箟岳山を筆頭に豊かな自然に囲まれ、町内には県指定文化財や史跡が存在する、自然と歴史が融合しているまちです。涌谷町では、このようなまちの魅力を堪能できるイベントが季節ごとに多数開催されています。
涌谷町の代表的なイベントと言えば、桜の名所である城山公園史料館で開かれる「桜まつり」です。園内には約250本ものメイヨシノやヤマザクラが咲き誇り、毎年4月になると町内外から大勢の花見客が訪れます。
4月の第3日曜日に「桜まつり」のメインイベントとして開催されるのが、「東北輓馬(ばんば)競技大会」です。馬に荷重を乗せたそりを引かせて障害物のあるコースを走らせる大会で、東北各地から集められた輓馬がタイムを競います。鮮やかに障害物を乗り越え駆け抜ける姿は迫力満点です。
涌谷町の夏の風物詩と言えば、毎年8月に江合川河川敷で開催される「わくや夏まつり花火」。祭りの当日は、たこ焼きや焼きそば、かき氷、クレープなどの多くの屋台が出店され、地元の子どもたちや家族連れで賑わいます。
▲「わくや夏まつり花火」。周囲には高いビルや木々がなく、大迫力の花火を堪能できる。
毎年11月には⺠謡まつりの大会「秋の山唄全国大会」が行われ、全国の⺠謡愛好家が美声で観客を魅了します。イベント名は、五穀豊穣の神とされる箟岳山を唄った涌谷町発祥の⺠謡「秋の山唄」が由来です。
▲「秋の山唄」の会場には、全国から参加した民謡歌手の美声が響き渡る。
1月に行われるのは、1000余年継承される宮座式行事「箟岳・白山祭」です。山岳信仰の代表的な祭りと言われ、宮城県の無形民俗文化財に指定されています。
▲箟峯寺境内の白山堂で開催される「箟岳・白山祭」(県重要無形文化財)
涌谷町は子どもから大人まで楽しめるイベントが豊富です。文化的なイベントもあり、県内外から多くの方が訪れます。
日本初の金の産出地:日本文化遺産にも認定
▲涌谷町を代表するテーマパーク「天平ろまん館」では、砂金採り体験ができる
涌谷町は日本で初めて金が発見された地です。749年の東大寺大仏建立の際には、涌谷町の金が大仏の表面に使用されました。
2019年に、気仙沼市・南三陸町、岩手県陸前高田市・平泉町が文化庁が認定する日本遺産として登録され、2022年には、石巻市も日本遺産として追加認定登録をされました。
現在は、3市3市町村が文化庁が認定する日本遺産として登録されています。
そんな金のまちである涌谷町には、⻩金山産金遺跡の史跡をはじめ、金の産地を肌で感じられる観光スポットが多数あります。
中でも子どもたちに人気なのが、文化施設「天平ろまん館」の砂金採り体験です。天然砂金が採れるという珍しい体験に、子どもだけでなく大人も一緒に夢中になれるでしょう。
他にも、金ニラ、かぼちゃ、黄金レモンといった「金色野菜」の開発に挑戦するなど、金は涌谷町の食文化にも浸透しています。
また、箟岳山の眼下に広がる黄金の雲海は、まさに金のまちにふさわしい絶景です。通常は箟岳山から仙台平野と栗駒山を一望できますが、春と秋は一定の気象条件が重なった日に限り、朝日に照らされた黄金の雲海を拝むことができます。
▲箟岳山から望む雲海。4月上旬~5月下旬、もしくは10月上旬~11月下旬の早朝が狙い目
涌谷町は日本最初の金の産地として観光客が多く訪れます。特産物は黄金野菜の他に、「金のいぶき」やハト麦茶などレパートリーが豊富です。
温かい地域コミュニティが残るまち
涌谷町は約14,800人程度と人口密度が低いため、都会と比較するとゆったりとした時間を過ごせます。そして、人口が多くない分情報をキャッチしやすく、困っている人へ手を差し伸べるという人柄の良さも特徴です。地域の信頼関係が強い特徴から、文化や伝統を重んじる人も少なくありません。
例えば、保育施設や地域の方々が主体となって運営している「子育て支援サークル」の存在です。5つのサークルがあり、給食試食会やイベント参加の呼びかけ、児童書の貸し出しなどを行って交流の場を提供しています。
他に町民の人柄を感じられるのが、有料会員制の「わくや地域子育て応援団(ファミリー・サポート・センター)」です。家事の手伝いや一時預かり、塾・保育施設などが利用できるサービスで、利用したい人と援助したい人の信頼関係で成り立っています。
これらのサービスからわかるように、「困っている人をサポートしたい」という助け合いの心が地域に根付いていると言えるでしょう。
涌谷町の暮らし:気候・交通・施設・レジャー情報
▲箟岳山からは雲海はもちろん、四季折々の美しい景色を眺められる
ここでは、涌谷町での暮らしに役立つ情報をご紹介します。気になる仕事情報や住まいについてもまとめています。
気候 | 涌谷町に観測地点がないため、近隣の古川市のデータを掲載 8月平均気温:23.7℃ 1月平均気温:0.0 ℃ ※参考:気象庁 |
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人口 | 人口:約14,800人 世帯:約 6,001世帯 (※2023年4月30日時点) |
病院 | ・病院・クリニック:8件 ・歯科:6件・眼科:1件 (※2023年5月時点) |
学校 | ・保育施設:4園 ・小学校:3校 ・中学校:1校 (※2023年5月時点) |
文化・芸術 | ・史跡黄金山産金遺跡 ・史跡長根貝塚 【県指定文化財】 ・見龍院御霊屋 ・黄金山産金遺跡出土古瓦 他 【町指定文化財建造物】 ・見龍廟 ・千石家薬医門 ・西光寺薬医門 ・妙見宮(長床・本殿) ・箟峯寺白山堂・仁王門 他 |
特産物 | ・野菜(小ねぎ、ほうれん草、水菜) ・おぼろ豆腐・おぼろ汁 ・奥州涌谷かりんとう ・わくやさま ・焼きまんじゅう ・高機能性玄米食専用米「金のいぶき」 ・涌谷町産はと麦100%「城山の金さんのはと麦茶」 他 |
交通 | 【空港】仙台空港(涌谷駅から車で約1時間) 【電車】石巻線・気仙沼線:涌谷駅 (涌谷駅から仙台駅まで乗り換え約1時間15分) 【バス】涌谷町民バス 【車】仙台市まで約1時間 |
レジャー | ・わくや万葉の里 天平ろまん館 ・わくや天平の湯 ・涌谷町釣り公園 ・石仏広場 ・追戸横穴歴史公園 |
イベント | 1月:箟岳白山祭 4月:かたくりまつり、わくや桜まつり、東北輓馬(ばんば)競技大会 7月:採燈大護摩供 8月:わくや夏まつり、納涼花火大会 11月:秋の山唄 他 |
近隣都市 | 大崎市、登米市、石巻市、栗原市、美里町 |
涌谷町は年間を通して比較的涼しい気候です。江合川と鳴瀬川の流域に広がる水田地帯で、6月~8月頃は冷たく湿った季節風「やませ」が冷夏をもたらします。1月の降雪の深さの平均は80cmとやや深いものの、豪雪地帯ではありません。
移動手段には平日限定で運行するコミュニティバスがありますが、車は必須です。町内にはスーパーや個人商店、ファッションチェーンストア、ホームセンターがあり、日用品・食料品の買い物に困りません。
加えて、宮城県内でも比較的大きな都市である大崎市と石巻市まで、車で約30分程度とアクセスが良好です。百貨店のサテライトショップや映画館、24時間営業の大型ショッピングセンターなどがあり、お出かけの範囲が広がります。
東北最大の都市である仙台市までは車で約1時間で、休日に仙台市内へ買い物に出かけるにもそこまで不便がありません。電車の移動時間も約1時間とあり、仙台市内の高校・大学への通学や通勤も可能です。
代表するレジャー施設は、産金のテーマパーク「わくや万葉の里 天平ろまん館」と日帰り温泉「わくや天平の湯」です。それぞれに物産館やレストランなどが併設していて、子どもから大人まで一日中楽しめます。
▲日帰り天然温泉「わくや天平の湯」。隣接する宿泊施設「研修館」にはトレーニングルームも完備しており老若男女問わず楽しめる
子どもや保護者の交流の場にもなっているのが「涌谷中央公園」です。2015年に老朽化した遊具の入れ替えや道路の舗装が行われました。
▲子どもたちの遊び場「涌谷中央公園」。子どもの成長度合いに応じた遊具が豊富
子育て支援制度:出産から就学までをサポート
涌谷町は子育て支援に力を入れていて、出産から育児、就学に役立つ制度が豊富です。以下では支援制度の一例を紹介します。
支援制度 | 内容 |
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出産育児一時金 | 50万円支給(2023年3月31日以前の場合42万円) |
児童手当 | 中学校修了前の子どもを養育する保護者に支給 ・0歳~3歳未満:15,000円 ・3歳~小学校修了前:10,000円(第1子・第2子)、15,000円(第3子以降) ・中学生:10,000円 |
子ども(乳幼児)医療費助成 | 0歳~18歳の医療費のうち、保険診療の自己負担分を助成 |
母子・父子家庭等医療費助成制度 | 保険診療による医療費の一部を助成 |
就学援助制度 | 就学にかかる費用の一部を補助 【生活保護を受けている世帯】 ・修学旅行費、医療費(学校から治療の指示のあった虫歯等にかかる治療費) 【生活保護受給世帯と同等の貧困していると認定された世帯】 ・学用品費、新入学用品費、修学旅行費、校外活動費、学校給食費、医療費 |
第3子小学校入学祝金 | 第3子以降の子ども1人につき3万円を支給 |
出産・子育て応援交付金 | 妊婦1人当たり5万円、子ども1人当たり5万を支給 |
妊婦健康診査受診 | 14回分の妊婦健康診断を助成 |
「子ども(乳幼児)医療費助成」は、2017年より給付対象を15歳から18歳まで拡大して、所得制限を撤廃しました。他にも、少子化対策を推進するための「第3子小学校入学祝金」のような支援もそろいます。
上記以外にも、出生後に絵本をプレゼントする「こんにちは赤ちゃん事業」や、無料の乳幼児健康診査・相談、小学校1年~6年生の児童を対象にした「放課後児童クラブ」の設置など、多角的に子育てをサポートしています。
また、涌谷町では「幼保連携型認定こども園 子どもの丘」を新設。子育て支援センターも併設されているため、子育てに関する相談も気軽にできますよ。
公式:涌谷町「わくやでワクワク子育て」
公式:社会福祉法人 遊創の森「子どもの丘保育所・子育て支援センター」
子育て世帯のサポートに力を入れているため、子育てと教育にかかる費用負担を軽減できます。
仕事事情:地元産業と仙台市への通勤
大手求人サイトで、涌谷町と30分圏内で通える近郊都市の「正社員の求人数」を検索した結果は以下の通りです。
※参考:求人情報の一例(涌谷町のみ)
※参考:求人情報の一例(涌谷町から25km圏内)
涌谷町 | 約300件 |
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30分圏内の近郊都市(大崎市・古川市・栗原市・美里町 など) | 約16,400件 |
※縁結び大学独自調べ(2023年6月時点)
涌谷町の求人は、製造業などの工場勤務の職が多く見受けられます。30分圏内にある大崎市や石巻市は、県内でも比較的大きな都市なので、通勤範囲を広げれば事務職や営業職のようなオフィス勤務の職種も見つけやすくなるでしょう。
また、涌谷町は「黄金野菜」や、小ねぎ、ほうれん草、水菜などの野菜が特産品であるように、農業が盛んなため就農希望者も歓迎しています。
仙台市内に電車や車で約1時間で行けるため、近隣都市だけでなく仙台市へ通勤している人もいらっしゃいます。
住まい探し:賃貸・購入の選択肢と支援制度
大手住まい情報サイトで涌谷町の賃貸物件を調べたところ、約15件ヒットしました。(※2023年6月時点)
※参考:賃貸物件の一例
涌谷町の家賃相場は4.74万円で、1DK~2DKは4.5万円、2LDK~3DKは4.99万円です。仙台市の家賃相場が5.62万円で、1DK~2DKが6.41万円、2LDK~3DKになると7.61万円なので、仙台市よりも約1万~2.5万円ほど安い傾向にあります。
※参考:家賃相場
涌谷町では、移住者を対象に建売住宅購入時に助成金を給付する「涌谷町移住促進住宅取得補助事業」を実施しています。建築費と中古修繕費を対象に最大で50万円の助成を受けられるため、賃貸住宅や空き家バンクを利用するよりも、建売を購入する人の割合が高いようです。
涌谷町移住促進住宅取得補助事業 | 対象:町内に住宅を取得後、1年以内に世帯全員が転入した世帯 ・基本補助金:補助対象経費の5%。上限20万円 ・子育て世帯(妊娠中も含む)加算:第1子10万円、第2子はさらに5万円加算、第3子以降はさらに5万円加算。加算上限20万円 ・町内建築業加算:10万円 ※参考:わくや新生活応援補助事業 |
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空き家バンクには2023年6月現在、8件登録がありますが、大半は土地のみの登録で「住宅・土地」の件数は多くありません。入念に建築計画を立てたい人や、ライフスタイルに合わせた理想的な家を建てたい方は、空き家バンクを利用してみてはいかがでしょうか。
公式:涌谷町「空き家バンク」
建売を購入する方が多いため、まちの中心地には建売物件が増え始めてきました。建売住宅の購入を検討されている方は、ぜひ制度をご活用ください。
移住者の声:涌谷町での新生活の実態
ここでは、涌谷町へ移住した人の声を紹介します。
- 町立の幼稚園・保育所のカリキュラムが充実していて、豊かな自然を感じながらのびのびと子育てができます。
- 生活するうえで車は必須ですが、JRや町民バスが通っているので「田舎過ぎない田舎」を求める人にとっては快適な環境です。
移住した人の多くが、涌谷町を「ほどよい田舎」と表現しています。涌谷町は近隣都市だけでなく仙台市へのアクセスも良いため、川や山の豊かな自然がありながらそこまで不便を感じないようです。
また、子育て支援に力を入れているとあり、保育施設のカリキュラムが充実している点や、豊富な子育て支援制度に魅力を感じるという声もありました。
移住支援制度と相談窓口:スムーズな移住をサポート
涌谷町への円滑な移住を実現するためには、移住支援の内容や相談窓口を事前に知っておくことが重要です。ここでは、涌谷町が実施している移住支援金制度と、移住に役立つ情報を提供している窓口をご紹介します。
東京圏からの移住者向け支援金制度
涌谷町では、宮城県とともに地方創生推進交付金を活用して、東京圏からの転入者を対象に移住支援金を支給しています。
移住支援金 | 東京圏から涌谷町に移住し、対象求人へ就業するなどの一定の要件を満たす方 ・支給額:単身:60万円、世帯:100万円 ・18歳未満1人につき100万円を加算 |
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予算の範囲内の支給となるため、移住支援金の給付を受けたい場合は、事前に相談窓口へ問い合わせましょう。
「移住支援金」相談窓口:宮城県「みやぎ移住サポートセンター」
涌谷町への移住に関するお問い合わせ
▲涌谷町まちづくり推進課の成澤さん
担当課 | まちづくり推進課 まちづくり推進班 |
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住所 | 〒987-0192 宮城県遠田郡涌谷町字新町裏153-2 |
電話番号 | 0229-43-2119 |
対応時間 | 8:30~17:15 (土・日曜、祝日および12月29日~1月3日を除く) |
公式サイト | http://www.town.wakuya.miyagi.jp/ |