康楽館で築100年を超える現役芝居小屋と郷土の魅力を満喫するデート|秋田県小坂町

この記事でご紹介するのは、秋田県鹿角郡小坂町に建つ明治期の洋館「康楽館」を訪ねて、100年以上前から活躍する現役の芝居小屋を見学し、郷土の歴史・文化の魅力を再発見するデートプランです。

いつもと気分を変えてちょっと知的なデートを楽しみたい、レトロな建物とお芝居をゆったりと堪能したい、そんな二人にはぴったりのスポットになると思います。周囲には、かつて栄華を極めた小坂鉱山にまつわるスポットも多く残され、エリアとしてデートを楽しめるのも嬉しいですね。

今回は、康楽館の特徴や魅力、デートでの楽しみ方などについて、副館長の和田さんに語っていただきました。

国重要文化財、明治の芝居小屋「康楽館」

「康楽館」の正面外観と常打芝居の幟旗
▲築100年超の米国ゴシック風の洋館。現役の芝居小屋なので、感動もひとしお

「康楽館」は、小坂鉱山で働く人々の福利厚生施設として、100年以上前に誕生した芝居小屋。和洋折衷の明治期ならではの洋館建築で、国指定の重要文化財になっています。人力で動かす舞台装置など、明治の芝居小屋の雰囲気もそのままです。

ここからは、そんな康楽館について、具体的に見ていきましょう。

小坂鉱山で働く人々の福利厚生施設として誕生した芝居小屋

編集部

今回は、こちら康楽館に初めて伺いましたが、明治期のお洒落な洋館が今でも現役の芝居小屋として活躍中と分かり、かなり嬉しい驚きです。一転して内装は和風で、そこもまた興味深く感じます。

最初に、康楽館の成り立ちやロケーションなどについて、ご説明をお願いします。

和田さん

こちら秋田県鹿角郡小坂町は、北には十和田湖、南には八幡平が広がっており、豊かな自然環境に恵まれた地域です。

一方、小坂町は鉱山で栄えた街でもあり、小坂鉱山に勤務する従業員や、その家族たちの福利厚生施設として、今から100年以上前の明治43(1910)年に、芝居小屋・康楽館が誕生します。

さまざまな催し物を開催してきた康楽館ですが、高度成長期のテレビの普及や、経年による機能低下などを理由に、昭和45(1970)年以降は使用されなくなってしまいました。

「康楽館」の客席を2階から眺めた様子
▲客席を2階から眺める。一度は幕を下ろすものの、小坂町営の芝居小屋として見事に復活

その後、観光資源としての活用を企図し、昭和61(1986)年に小坂町営の芝居小屋として、康楽館は甦ります。平成14(2002)年には、国指定の重要文化財となり、今に至りました。

築100年を超えて今なお現役!歌舞伎や落語を開催

編集部

和田さんが思われる、康楽館の一番の特徴とは、どのような部分でしょうか?

和田さん

康楽館は、正面外観と客席天井は西洋風、内部が回り舞台や花道・桟敷席を備えた純和風という、和洋折衷の芝居小屋となっています。芝居小屋としては、和洋折衷の造りは大変に珍しく、一番の特徴ですね。

しかも、築100年を優に超えて今なお現役で活用されており、ほかの芝居小屋に比べて、稼働率が断トツで高いことも、康楽館ならではの特徴でしょう。毎年4月下旬~11月初旬までの「常打(じょううち)芝居」(※1)は、芝居ファンのお客さまや観光のお客さまなど、多くの方々にお楽しみいただいております。
(※1)特定の場所で、常に興行している芝居を指す。

「康楽館」の常打芝居の公演日程表(2022年)
▲常打芝居の公演日程表の例(2022年)

常打芝居のほかにも、歌舞伎や落語、郷土芸能、各種コンサートなど、折々での特別公演も開催しているんですよ。有名な歌舞伎役者さんも、随分とお見えになりました。

客席は飲食OK!米国ゴシック風の外観に人力舞台装置が活躍中

編集部

康楽館で、和田さんが特にお気に入りの部分・シーンなどあれば、ぜひ教えてください。

和田さん

まずは、何と言っても康楽館の正面外観ですね。白とパステル調の木造で、米国ゴシック風の外観は、明治期の日本らしい洋館に仕上がっています。しかも現役で、日々しっかりと活躍していますから、感無量です。

次に、2階客席(二階桟敷・向う桟敷)から眺める、常打芝居中に「回り舞台」が動くシーンでしょうか。回り舞台は、直径およそ10m。回り舞台の下(奈落)には、4ヵ所に力棒が備えられ、黒子4名の人力により回転させる仕組みになっています。100年以上前から使われている舞台装置です。

「康楽館」の舞台下にある人力の回り舞台装置
▲奈落(舞台下)に設置された人力の回り舞台装置。もちろん、100年以上前から使われている

編集部

和田さんおすすめの康楽館の楽しみ方などがありましたら、教えていただけますか?

和田さん

館内の客席は、飲食自由となっておりますから、ちょっとしたおやつや、ドリンク類を館内の売店で購入して、常打芝居をご覧になってみてはいかがでしょうか。カップルで、リラックスして楽しめると思いますよ。

>>公式サイト「康楽館売店・そば処」ページ

なお、食品衛生上の観点から、外部からの飲食物のお持ち込みは、ご遠慮いただいています。

常打芝居の観劇も!周囲も見どころ豊富な康楽館の魅力

「康楽館」の楽屋内部の様子
▲舞台裏にある役者の控室・楽屋の様子。本当に明治から活躍している建物なのだと体感できる

編集部

カップルがデートの一環で「康楽館」を訪れた場合、見学できる内容について、ご説明をお願いします。魅力や見どころなどについても、触れていただけると嬉しいです。

和田さん

康楽館では、常打芝居の観劇と、建物の施設見学が可能です(観劇なしの施設見学のみも可)。

常打芝居は、毎年4月下旬~11月初旬にかけて、複数の劇団が代わる代わる公演していますよ(2022年中の公演は終了)。舞台内容は、大衆演劇からレビューショーまで幅広く、小学生の子供さんからご年配の方に至るまで、老若男女問わずに楽しんでいただけることも魅力です。

>>公式サイト「 康楽館常打芝居 」ページ

公演中の回り舞台や、すっぽん(切穴)(※2)が動くシーンも見どころで、ご覧になれば、きっと感動していただけると思います。
(※2)花道の七三に位置する、役者をせり上げるための装置。ロープと木の滑車を使い、黒子2名の人力で操作する一種のエレベーター。

また、建物の施設見学は、康楽館スタッフのガイド付きです。手動式のすっぽんや、回り舞台の仕組み、楽屋の落書きなどは、必見となりますね。

「康楽館」の楽屋に残された役者の落書き(サインなど)
▲楽屋に書き残された役者のサインなど。たくさんの人間模様が生まれたのだろうなと想像

編集部

来館の季節やタイミングが異なることで、違った楽しみ方がありましたら、教えていただけますか?康楽館だけでなく、周囲を含めてお話しいただいても大丈夫です。

和田さん

周囲も含めてのお話ですが、春の桜は、例年ゴールデンウィーク頃まで観賞できます。北国ならではですね。

5月下旬~6月初旬になると、アカシアの花が満開となりまして、街中が甘い芳香に包まれます。アカシアの花は、小坂町花に指定されていて、毎年6月前半に「アカシア祭り」が開催されるんですよ。8月初旬の「小坂七夕祭り」では、武者やアニメキャラクターなどをモチーフにした山車が運行されます。

>>小坂町役場「観光情報」

どちらのお祭りも、康楽館周辺の公園や駐車場をおもな会場として開催されるので、当館の見学と一緒に楽しんでいただけるでしょう。

「康楽館」に近い「小坂鉄道レールパーク」の様子(夜間)
▲付近にある「小坂鉄道レールパーク」

また、夏になると、「小坂鉄道レールパーク」から続く線路沿いにアジサイが咲きまして、長い期間にわたって観賞いただけるんですよ。12月には、お隣の「旧小坂鉱山事務所」でクリスマスマーケットが開催されて、周辺がクリスマスイルミネーションで装飾されるので、夜間はとても幻想的な光景になります。

デートでの楽しみ方も選べる明治のハイカラな芝居小屋

ここまでは、「康楽館」の特徴や見どころなど、観光で立ち寄った際の魅力を中心に伺ってきました。ここからは、デートの一環で訪れた場合に特化して、お話を聞いてみましょう。

館内でのランチもOK!隣接スポットにはお洒落なレストランも

編集部

康楽館の館内には、レストランやカフェなど、飲食できる施設はあるのでしょうか?

和田さん

館内であれば、「そば処」があります。山菜そば・うどん(各600円)や天ぷらそば・うどん(各550円)などをお出ししており、客席もしくはロビーでお召し上がりいただくかたちですね。食券は、売店でお買い求めください。

>>公式サイト「康楽館売店・そば処」ページ

「康楽館」内の売店・そば処の様子
▲「康楽館」内の売店・そば処の様子。蕎麦やうどんは、客席もしくはロビーでいただく方式

ちなみに、隣接する「旧小坂鉱山事務所」の2階では、「レストランあかしあ亭」が営業していますよ。冬季には休業となるのですが、レトロな内装が素敵な洋食店です。そちらの方が、ランチデート向きかもしれませんね。

>>小坂まちづくり株式会社「小坂鉱山事務所・施設紹介 」ページ

オリジナルアイテムも揃う!カップルでお土産探しも楽しめる

編集部

館内には、ドリンク類や、ちょっとしたおやつなどを買える売店があるとのことでしたが、デートの記念になるようなお土産品なども、何か扱われているでしょうか?

和田さん

「せり上がりパウンドケーキ(1,200円)」などは、お土産に人気ですよ。康楽館限定のパッケージ入で、秋田県産の純正日本タンポポを使用して作りました。小坂町特産のヘルシーな「アカシア蜂蜜(1,000円~)」も、お土産には喜ばれる一品です。

「康楽館」オリジナルのお土産「せり上がりパウンドケーキ」
▲「康楽館」オリジナルのお土産で、人気の「せり上がりパウンドケーキ」。これで1,200円は、かなりお買い得!

ほかには、康楽館の「オリジナルTシャツ(2,140円)」なども置いていますので、覗いてみてくださいね。

>>公式サイト「康楽館売店・そば処」ページ

ちなみに、お隣の「旧小坂鉱山事務所」の売店では、「小坂七滝ワイナリー」のワインなども取り扱っていますよ。小坂町産の山ぶどう系品種(小公子・ワイングランド・岩木やまぶどう)使用して、小坂町で醸造した、まさに小坂が生んだオリジナルワインです。

>>小坂七滝ワイナリー

ワイン好きのカップルならば、おうちデートのお供にしてもいいかもしれませんね。昨今では、山ぶどうの滋味豊かな風味が、ワイン愛好家からも注目されているようですよ。

康楽館周辺のデートスポット

「康楽館」内部の客席の様子

編集部

「康楽館」を訪ねる前後にカップルが立ち寄れる、おすすめのデートスポットが近隣にありましたら、ぜひ教えてください。

和田さん

すでに少し話題に出ましたが、康楽館の周囲には、「旧小坂鉱山事務所」や「小坂鉄道レールパーク」などの施設があります。康楽館と同様、いずれも鉱山が残した産業遺産を観光施設として転用したもので、管理運営の主体も「小坂まちづくり株式会社」であり、同じなんですよ。

>>小坂まちづくり株式会社「小坂鉱山事務所・施設紹介 」ページ
>>小坂鉄道レールパーク

お時間があれば、康楽館とあわせて回ってみてください。公園や庭園、河川敷も周りにあるので、カップルでのんびりと散策するのにも、おすすめのエリアとなっています。

とりわけ、「旧小坂鉱山事務所」の豪壮華麗な正面外観は必見です。夜間のライトアップ時には、黄金色に輝いて、何ともロマンチックな雰囲気になりますよ。

「康楽館」に隣接する「旧小坂鉱山事務所」の正面外観
▲「康楽館」に隣接する「旧小坂鉱山事務所」の正面外観。ベランダには、イスラム建築の意匠も採り入れられている

あと、「旧小坂鉱山事務所」内にある「モダン衣装室」もご紹介しておきましょう。ご利用日の3日前までの予約が必要になりますが、古い洋館に似合うクラシカルなドレスを多数取り揃えていて、お好きな衣装を30分以内に、何回でも着て楽しむことが可能です。

インスタ映えする写真を撮りたいカップルには、なかなか面白い体験になると思いますよ。

>>小坂まちづくり株式会社「小坂鉱山事務所・モダン衣装室 」ページ

康楽館からのメッセージ

「康楽館」の副館長・和田さん
▲今回お世話になった和田副館長

編集部

これから康楽館を訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いなどがありましたら、ぜひお話しください。

和田さん

カップルでのご来館は、大歓迎です。リピーターとして、毎月ご来館される方もいますよ。一度ご来館いただければ、ご満足される方が多い施設です。

建物の施設見学であれ、常打芝居の観劇であれ、皆さんが期待されている以上のものをご提供できるように努めておりますので、ぜひお越しください。

編集部

このような明治期に建てられた芝居小屋で、今でも現役で長期公演を行っているところは、ほかに耳にしたことがありません。明治期の洋館らしいレトロな外観を眺めていると、いつまでも残ってほしいと感じますね。

和田さん、本日はお忙しい合間にお時間を作っていただき、大変ありがとうございました。

康楽館の口コミ・感想をチェック!

「康楽館」の正面外観(その2)

ここまで康楽館について、さまざまな魅力を伺ってきました。デートの参考になるよう、実際に康楽館を見学した皆さんの口コミや、感想についてもチェックしてみましょう。

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明治から残る木造ゴシック様式の洋館で、素晴らしい雰囲気です。しかも現役の芝居小屋という感動!
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舞台下の装置や楽屋、花道など隅々まで見せていただいた。100年を超える歴史をリアルに体感できる施設。
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建物は国指定の重要文化財ですが、常打芝居も日本の芸能遺産だと実感しました。外国人の友だちを連れて来たら、すごく喜びそうです。

口コミの評価は、全般的に高い印象です。老若男女を問わず、見学してよかった、いつまでも残ってほしいとの声が目立ちました。常打芝居を初めて観劇したけれど、とても感動した!という感想も散見されます。

カップルがデートの一環で訪れても、来てよかったと思えるスポットだと感じました。

康楽館の料金・割引・予約・混雑しない日時

「康楽館」の常打芝居に出演される役者さんたち

料金 【常打芝居の観劇と施設見学(ガイド付き)】
大人(高校生以上):一人2,200円
※特別席(座椅子と1ドリンク付き)は、+550円
【施設見学(ガイド付き)のみ】
大人(高校生以上):一人660円
※所要30分程度、毎日9:00~、30分刻みでのスタート

  • 「2館共通券(康楽館+小坂鉱山事務所)」、「3館共通券(康楽館+旧小坂鉱山事務所+小坂鉄道レールパーク)」の設定もあり。詳しくは、公式サイトの「康楽館料金」ページをご参照
>>公式サイト「康楽館料金」
割引
  • 障害者手帳を提示できる方は、それぞれ1,980円/600円に割引(団体料金を適用)
  • 小坂町民は、特典が適用されるケースもあるので、要問合せ
予約 原則不要
混雑しない日時 一定していない

※金額は、すべて税込表示です。

康楽館の基本情報(アクセス・営業時間など)

住所 〒017-0202
秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字松ノ下2番地
連絡先 (電話)0186-29-3732
(Web)公式サイト「お問い合わせ」ページ
アクセス 【車】
(東北自動車道)小坂ICから約3分【公共交通機関】
(JR花輪線)鹿角花輪駅下車/十和田南駅下車・秋北バス小坂行を利用・康楽館前バス停下車約1分(JR奥羽本線・花輪線)大館駅下車・秋北バス小坂行を利用・康楽館前バス停下車約1分
駐車場 無料駐車場2ヵ所あり
※国際交流広場駐車場(普通車87台分)、古館駐車場(普通車80台分)
開館時間 9:00〜17:00
※最終入館時刻は、16:30
休館日 年末年始
公式サイト http://kosaka-mco.com/

※最新の情報は、公式サイト等でご確認をお願いいたします。
※記事中の金額は、すべて税込表示です。