岩手県奥州市にある「奥州市埋蔵文化財調査センター」2階の常設展示室入口に並ぶ鎮兵たちの像

奥州市埋蔵文化財調査センターから古代東北のロマンを体感するデート|岩手県の博物館

この記事では、岩手県奥州市の「奥州市埋蔵文化財調査センター」を見学して、古代から続く東北地方の歴史・文化の魅力を再発見するデートプランを紹介します。

奥州市埋蔵文化財調査センターは、国指定史跡・胆沢(いさわ)城跡のすぐそばにある地域博物館。胆沢城(※1)の資料が数多く展示され、古代東北エミシ(蝦夷)の英雄・アテルイ(※2)を紹介するエリアも充実しています。

(※1)坂上田村麻呂が802(延暦21)年に造営し、10世紀中頃まで鎮守府として機能した。
(※2)8世紀末~9世紀初頭に陸奥国胆沢(現・岩手県奥州市)で活躍したエミシの族長。

今回は、そんな奥州市埋蔵文化財調査センターの展示内容や魅力、デートでの楽しみ方などについて、同センターの専門学芸員・大堀さんにお話を伺いました。 

古代東北のロマン!奥州市埋蔵文化財調査センターの展示

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の正面外観▲美しい田園風景の中にたたずむ地域博物館。広々としていて、何とも気持ちがいい環境

奥州市埋蔵文化財調査センターは、史跡が点在する奥州市の広大な田園風景の中に建ちます。9世紀初頭に時の征夷大将軍・坂上田村麻呂が造営した胆沢城跡にほど近く、東北の歴史ロマンを強く感じる立地です。

それでは、奥州市埋蔵文化財調査センターの展示内容について、具体的に見ていきましょう。

歴史ファンも見応え十分!奥州市埋蔵文化財調査センターの常設展

編集部

今回初めて奥州市埋蔵文化財調査センターに伺いましたが、想像していた以上に規模が大きく、広々とした立地に驚いています。

最初に、施設のコンセプトや目的などについて、おもなところをご紹介ください。

大堀さん

当センターは、古代城柵遺跡の胆沢城城のガイダンスを中心とした展示公開施設です。同時に、奥州市内遺跡発掘調査や歴史講座・体験学習会(ワークショップ)・出前体験事業なども実施しています。

隣接する「胆沢城跡歴史公園」では、史跡の散策に加えて、AR(拡張現実)体験や季節の草花を楽しむこともできますよ。アプリ「AR胆沢城」では、胆沢城の門や、エミシの英雄・アテルイを出現させることも可能です。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」で配布するアプリ「AR胆沢城」で撮影した写真の例
▲アプリ「AR胆沢城」で撮影した写真。騎乗の人物は、征夷大将軍・坂上田村麻呂

編集部

館内のメインの展示(常設展示)について、教えていただけますか?

大堀さん

常設展示は、胆沢城跡から出土した歴史資料が中心であり、1階の展示コーナーと、2階の展示室に分かれています。

1階には、「アテルイコーナー」を設置していまして、エミシの英雄・アテルイと、当時エミシと呼ばれた地元の人々の生活について学ぶことが可能です。

2階には、胆沢城跡の発掘調査で出土した歴史資料や、当時の兵士たち、エミシについて、9つのコーナーに分けて展示しています。展示室の入口では、鎮兵(ちんぺい)(※3)たちの像が整列して出迎えてくれて、なかなか絵になるシーンですよ。

(※3) 古代、陸奥・出羽の防備の任に当たるため、朝廷により東国で徴兵され、派遣された兵士のこと。

とりわけ貴重な展示資料には、漆紙文書(うるしがみもんじょ)があります。漆紙文書は、漆の硬化作用によって土中でも腐らずに残った古代の文書でして、当時の社会の実像に迫ることができる、極めて重要な歴史資料です。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」で常設展示される「漆紙文書」(複製品)
▲胆沢城跡から出土した漆紙文書(複製品)。写真の展示資料は、803年の暦

英雄アテルイも活躍!定時上映する「古代東北蝦夷の世界」は必見

編集部

常設展示の中で、大堀さんが特にお好きな展示資料がありましたら、ご紹介をお願いします。

大堀さん

ぜひ一度は視聴いただきたいのが、2階の常設展示室中央にある映像コーナーで定時上映される「古代東北蝦夷の世界」です。発掘調査で出土した歴史資料や、朝廷軍とエミシ軍の戦いを通して、古代東北の歴史とエミシの実像に迫ります。エミシの英雄・アテルイの活躍ぶりにも注目です。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」2階の常設展示室中央にある映像コーナー
▲2階の常設展示室中央の映像コーナー。定時上映される「古代東北蝦夷の世界」は必見!

編集部

館内で、おすすめの見学方法などがありましたら、ぜひ教えてください。

大堀さん

当センター内で、まずは導入部分として、先の映像資料をご覧になってから、2階の常設展示室を見学されるとよろしいでしょう。初めての方でも、グッと展示資料を理解しやすくなるはずです。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」2階の常設展示室内部の様子
▲2階の常設展示室内部。映像コーナーで「古代東北蝦夷の世界」を視聴してから、常設展示を見学しよう

その後、隣接する胆沢城跡歴史公園を散策していただくと、古代東北のロマンを体感できると思います。

ちなみに、センター内1階のエントランスホールでは、先に触れました歴史公園でのAR体験を楽しめるタブレットや、その場にいながら古代の胆沢城の姿を眺められるVRゴーグルの貸出も行っています。無料なので、ぜひご利用くださいね。

AR体験などの詳細については、公式サイトの「胆沢城跡歴史公園」ページをご参考になると分かりやすいですよ。

>>公式サイト「胆沢城跡歴史公園」

貴重な歴史資料が一度に勢揃い!骨太の企画展にも注目してみよう

編集部

奥州市埋蔵文化財調査センターの企画展(特別展示)についても教えてください。過去に人気だったものや、その理由について、お聞かせいただけますか?

大堀さん

「文字資料を掘る―出土文字の集成から蘇る岩手の古代―」や、「仙北街道クロニクル」、「鎮守府胆沢城と辺境」などのテーマで、これまで古代や地域の歴史を掘り下げる企画展を行ってきました。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の企画展「仙北街道クロニクル」の様子(2021年)
▲企画展「仙北街道クロニクル」の様子(2021年)

地域に密着し、豊富な歴史資料が一度に勢揃いする企画展は、歴史ファンから専門家に至るまで、幅広い層の皆さんから好評を得ていますよ。

エミシ側の視点も奥州市埋蔵文化財調査センターの魅力

「奥州市埋蔵文化財調査センター」に隣接する「胆沢城跡歴史公園」の外郭南門
▲隣接する「胆沢城跡歴史公園」の外郭南門跡。両脇に見えるのは、胆沢城を囲んでいた築地塀(ついじべい)を復元したもの

編集部

大堀さんが思われる、奥州市埋蔵文化財調査センターの最大の魅力は、どちらになるでしょうか?

大堀さん

アテルイに代表されるエミシの歩みは、東北古代史へのロマンを掻き立ててくれます。中央・朝廷側からの目線だけでなく、地元・エミシ側の視点からも歴史を紐解いていることは、当センターの大きな魅力ではないでしょうか。

また、展示されている豊富な歴史資料からは、古代城柵・胆沢城の豊かなイメージも湧いてくると思いますよ。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」1階ロビーに展示される「胆沢城の復元模型」
▲1階ロビーに展示される「胆沢城の復元模型」

編集部

ほかの類似施設と差別化できる部分や、ちょっと自慢したい部分などがありましたら、ぜひお話しください。

大堀さん

野外の史跡見学と、館内の資料見学とをセットで楽しめることは、当センターならではのウリになると思います。カップルがデートの一環で訪れるとしても、展示資料だけを眺めて終わりにはならないことは、アピールできるポイントではないでしょうか。

加えて、各種の体験学習会(ワークショップ)や、講座のメニューも毎年ご用意しています。ご興味があれば、公式サイトの「講座」ページをチェックしてみてください。

>>公式サイト「講座」

「奥州市埋蔵文化財調査センター」で実施された体験学習会「親子で楽しむ縄文人なりきり体験」の様子
▲体験学習会「親子で楽しむ縄文人なりきり体験」の様子。大人カップルの参加に向くワークショップ(体験学習会)もある

編集部

奥州市埋蔵文化財調査センターには、展示内容以外での見どころなどはありますか?

大堀さん

当センターに隣接する胆沢城跡歴史公園では、夜間のライトアップを実施しており、折に触れて影絵の投影なども行っています。日が落ちた後の景色も、なかなか幻想的で趣深く、デートのムードを盛り上げてくれるでしょう。

編集部

来館する季節や時期によって、違った楽しみがありましたら教えてください。

大堀さん

隣接の胆沢城跡歴史公園では、春はサクラやツバキ、ヤマブキ、夏はアジサイやシモツケ、秋には紅葉や木の実などなど、四季折々での自然の移ろいをのんびりと眺めることができますよ。

元来が自然豊かなロケーションなので、周りの環境と一緒にデートを楽しめることも、当センターの魅力になるかと思います。

デートでの楽しみ方も多彩な奥州市埋蔵文化財調査センター

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の体験学習会「平安のお守り卯槌(うづち)をつくろう」の完成品
▲体験学習会(ワークショップ)「平安のお守り 卯槌をつくろう」での完成品

ここまでは、奥州市埋蔵文化財調査センターの展示内容や魅力など、観光で立ち寄ることを念頭に伺ってきました。ここからは、デートで訪れる場合に特化して、さらにお話を聞いてみましょう。

公式サイトは要チェック!カップルで参加できるワークショップも

編集部

奥州市埋蔵文化財調査センターには、イベントやワークショップなど、カップルで楽しめるプログラムはありますでしょうか?

大堀さん

折々のタイミングで、当センターでは各種の体験学習会(ワークショップ)を開催中です。体験学習会は、親子で楽しめるものがメインですが、「平安のお守り 卯槌(うづち)をつくろう」など、中には大人のカップルが楽しめるプログラムもあります。

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の体験学習会「平安のお守り卯槌をつくろう」の制作途中
▲体験学習会(ワークショップ)「平安のお守り 卯槌をつくろう」での制作途中の様子。五色の糸を結んで、四角く切った桃の木に通す

ご興味がある方は、公式サイトの「体験」ページをチェックしてみてください。お二人でチャレンジしてみれば、思い出深いデートの一日になること請け合いですよ。

>>公式サイト「体験」

奥州市埋蔵文化財調査センター周辺のデートスポット

編集部

奥州市埋蔵文化財調査センターを見学する前後に立ち寄れる、おすすめのデートスポットが近隣にもありましたら、ご紹介をお願いします。

大堀さん

当センターから1kmほど北上すると、胆沢城と同じ頃、9世紀初頭のご創建と伝えられる「鎮守府八幡宮」が鎮座しています。朝廷側の征夷大将軍・坂上田村麻呂ともゆかりが深い古社です。やや狭い道を向かいますが、境内は広く立派で、皆さん驚かれますよ。

静かな凛とした空気感がある神社ですから、お二人で心穏やかに参拝いただけるでしょう。お参り後には、ゆったりと境内を散策してもいいと思います。

>>鎮守府八幡宮(公式サイト)

また、南東に500mほど下ったところにある「薬師堂温泉」は、日帰り入浴もできる、綺麗な温泉宿です。天然のナトリウム塩化物泉で、界隈では貴重な庭園露天風呂もあって、のんびりとくつろげますよ。

日帰り利用の場合、個室での休憩も可能ですし、ランチやディナーをリーズナブルな価格でいただける食事処も整備されているので、訪れやすいスポットですよ。

>>薬師堂温泉(公式サイト)

奥州市埋蔵文化財調査センターからのメッセージ

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の企画展「文字資料を掘る」で解説する大堀さん(中央)▲今回のインタビュー取材に応じていただいた専門学芸員の大堀さん(中央)。企画展にて解説中

編集部

これから奥州市埋蔵文化財調査センターを訪れるカップルへのメッセージや、今回のインタビュー取材で伝えきれなかった想いがありましたら、ぜひお話しください。

大堀さん

ある地域について深く知りたいと思ったら、そこの歴史を学ぶことが何よりの早道です。当センターで、胆沢城と古代東北エミシの世界へと、お二人でタイムスリップしてみてください。

編集部

奥州市埋蔵文化財調査センターの大きな魅力は、地域の歴史を中央の朝廷側からの視点だけで紐解くのではなく、地元のエミシ側・一般民衆側の視点からも捉えている点だと重ねて感じました。

奥州市出身のカップルが訪れれば、地元に一層誇りと愛着を持てるようになると思います。県外・市外からデートの一環で立ち寄った二人ならば、奥州市の魅力に気付いて、もっと知りたいと感じることでしょう。

大堀さん、本日はお忙しい最中にお時間を割いていただき、大変ありがとうございました。

奥州市埋蔵文化財調査センターの口コミをチェック!

「奥州市埋蔵文化財調査センター」の専門学芸員・大堀さん
▲大堀さん、今回は大変お世話になりました!

ここまで、奥州市埋蔵文化財調査センターについて、さまざまな魅力を伺ってきました。実際に見学された皆さんによる口コミや、感想についても、デートの参考にチェックしておきましょう。

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胆沢城跡に関する展示資料が充実していて、見応えがあります。
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朝廷の立ち位置だけではなく、古代東北のエミシの視点にも立つ歴史探究に共感。
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定時に解説ビデオが上映されていて、最初に視聴すると、展示資料の理解がしやすくなります。
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アテルイやエミシのことを知りたいなら、見学しておくべき。学芸員さんも親切でおすすめ。

口コミの評価は全体的に高く、古代東北の英雄・アテルイや、エミシのことを知りたいと考えて来館する方も相当多い印象です。展示資料の豊富さや、学芸員さんが親切なことを魅力に感じている方も目立ちます。

地元の歴史・文化を掘り下げる地域博物館ですが、誰でも気軽に立ち寄りやすい雰囲気でした。カップルがデートの一環で見学しても、充実したひと時を過ごせそうですね。

奥州市埋蔵文化財調査センターの料金・混雑しない日時

入館料 (一般)一人300円
※小・中・高校生は無料
※講座や体験学習(ワークショップ)は、参加費別途
割引 要問合せ
予約 不要
※講座や体験学習(ワークショップ)に参加を希望する場合は、事前申込が必要
比較的混雑しない日時 基本的に混雑はなく、随時スムーズに見学可能

※金額はすべて税込表示です。

奥州市埋蔵文化財調査センターの基本情報(アクセス・営業時間)

住所 〒023-0003
岩手県奥州市水沢佐倉河字九蔵田96-1
連絡先 (電話)0197-22-4400
(メール)maibun@oshu-bunka.or.jp
(Web)公式サイト「お問い合わせメールフォーム」
アクセス

【車】
(東北自動車道)水沢ICから約5分

【公共交通機関】
(JR東北本線)水沢駅下車
・タクシー利用で約10分
・水沢駅前よりバスに乗車、八幡バス停下車で徒歩約5分
※バスは運行本数が少ないので注意

駐車場 無料駐車場あり
※普通車45台分
開館時間 9:00~16:30
※最終入館時刻は16:00
休館日 毎週火曜日・年末年始
公式サイト http://www.oshu-bunka.or.jp/maibun/
公式SNS Twitter

※最新の情報については、公式サイト等でご確認をお願いいたします。
※記事中の金額はすべて税込表示です。